毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

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第十三章 青春の1ページ

第百七話 ティアの口付け争奪戦

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季節は巡り、学園に再び賑やかな季節――学園祭がやってきた。
二年一組の教室では、クラス出店やミスコンの出場者、さらには今年から新設された「クラス対抗演劇会」についての会議が始まっている。

クラス委員長のナディアと副委員長のクラウドは、一年のときも同じ顔ぶれ。
二人とも息ぴったりで、教室の前で張り切っていた。

「はいっ!
みんな~、出店の案どんどん出してね!」
ナディアが元気よく進行する。

「去年はメイドカフェだったけど、今年はどうする?」
クラウドも同じテンションで声を上げた。

「一年のときとメンバーほとんど変わってないし、今年は別のことやっても良くない?」
ティアが手を挙げて意見を出す。

すると――

「ティアがメイドやったら、優勝間違いなしじゃない?」
隣のメリルがニヤリと笑って言った。

「もう、メリル! 
去年あれだけ恥ずかしかったのよ!? 
二度とやらないって決めたの!」
ティアは頬を膨らませながら抗議する。

だが、教室の空気は一瞬で盛り上がった。

「メイド喫茶もう一回やろうぜ!」
「やっぱりそれだよな!」
「ティアのメイド服、破壊力エグかったもんな!」
「私もメイドやりたい~!」

あっという間に「メイド喫茶推し」多数決。

「私はやらないからね!」
ティアは腕を組んでぷいっと横を向く。

「よしっ、それじゃあ“メイド喫茶”で決まり~! ティア、よろしくね!」
ナディアが笑顔で宣言した。

「ナディア!? 
私、今“やらない”って言ったわよね!?」

「あれ? 
そうなの? 
でも、やるでしょ?」
ナディアは悪びれもせずに笑顔で返す。

「ティア、私もやるから一緒にやろうよ。」
隣でメリルが優しく微笑む。

「うっ……ずるい、そう言われたら断れないじゃない!」
ティアは両手で顔を隠しながら小さく悲鳴を上げた。

こうして、
――今年もティアのメイド喫茶出演が“自動確定”してしまったのだった。

「さて! 出店は“メイド喫茶”で決まりっと!」
ナディアが満足げに黒板に“メイド喫茶”と大きく書き込む。

「次は~、クラス対抗演劇会ね!」
クラウドが手をパンッと叩くと、教室の空気が一気にざわついた。

「演劇ぃ!? 
え、私セリフ覚えるの苦手なんだけど!」
「ダンスじゃなくて演劇? 
新しいな!」
「どうせやるなら恋愛モノがいいよな!」

みんながワイワイ言い合う中、ナディアが勢いよく手を挙げた。

「はいっ! 
私、やりたい演目決めてるの! 
タイトルは――
『勇者と囚われの姫』!!」

「……あー、なんか嫌な予感がするわね。」
ティアが頬に手を当てて呟く。

「ちなみにクライマックスは、勇者と姫がキスをして真実の愛で世界を救うの!」
ナディアが満面の笑みで説明した瞬間――

「きっ……キス!?」
教室の空気が一瞬にして凍りついた。

次の瞬間、男子たちの目がギラリと輝く。

「姫役はティアがいい!!」
「異論なし!!」
「ティア姫のキスシーン見たいっ!!!」

「はあぁぁ!? 
誰がそんなのやるって言ったのよ!!」
ティアの顔が真っ赤になって叫ぶが、既にクラスの空気は“ティア姫”で決定済みの様子。

「よしっ、姫役はティアで決まり~!」
ナディアが楽しそうに黒板に“ティア=姫役♡”と書き込んだ。

その瞬間、アーサーが勢いよく立ち上がる。

「待てぇぇぇい!!」
アーサーが叫んだ。

「その“勇者役”、俺がやる!」
真顔で拳を握るアーサーに、教室中がざわついた。

「アーサー!
ずるいぞ!」
「俺だって勇者やりたいっ!」
「ティア姫とキスだぞ!? 
一世一代のチャンスだ!!」

――そして始まる、男子たちによる勇者役争奪バトル。

「勇者役は俺だぁ!!」
「やらせるかぁぁ!!」
「ちょっ、お前杖で殴るな!!」
「拳で語るタイプのオーディションやめて!!」

ティアはその光景を見ながら、額に手を当ててため息をつく。

「もう……男子って、ほんとバカなんだから。」

「ティア、他の男にはやらせない!」
アーサーが熱く言い放つ。
「俺が必ず“勇者”になる!」

「……もう好きにして。」
ティアは頬を赤らめながらも、どこか嬉しそうに小さく笑った。

こうして、学園祭のクラス演劇――
“勇者と姫の物語”は、早くも波乱の幕開けを迎えるのだった。

「よーし、それじゃあ今度こそ――公平にくじ引きで決めよっか!」
ナディアがクラスの前に立ち、手作りの箱を掲げた。

「異議なーし!!」
男子たちが一斉に叫ぶ。
(※実力勝負ではアーサーが勝つので、くじ引きに賭ける魂胆である)

「勇者の座はこの手でつかむッ!!」
「勝負の神よ、俺に微笑めぇぇぇ!!」
「ティア姫の隣を引き寄せる運命力、今こそ解放ッ!!」

教室中が、異様な熱気に包まれた。



ティア(小声で):
「なんか……学園行事というより宗教儀式っぽいんだけど……」

メリル(くすくす笑いながら):
「ティア、運命の勇者が誰になるか楽しみだね♡」

ティア(頬を赤らめて):
「た、楽しみって……別にどっちでも……いいけど……(アーサーならいいけど)」



ナディア
「はいっ! 
それじゃあ、一人ずつ引いてね!
 “当たり”を引いた人が勇者役だよ~!」

次々と男子が列を作ってくじを引いていく。

「うおぉぉぉ……ハズレだぁぁぁ!!」
「チッ、またダメか……!」
「クソッ、俺の運命力どこ行った!?」

教室中に紙くずが散乱。
みんなが外れを連発する中――

「おっしゃあぁぁぁ!! 当たりィィィィ!!!」

勢いよく紙を掲げたのは――クラウド。

「……え?」
「クラウド!?」
「マジで!? クラウドが勇者!?」

一瞬の沈黙ののち、男子たちが机に突っ伏して泣き出す。

「終わった……ティア姫がクラウドの腕の中に……!」
「神よ、なぜ俺ではない!!」
「アーサーじゃないなんて……想定外だぁぁ!」


アーサーは静かに立っていた。
拳を握りしめ、うつむいたまま動かない。

ティア(焦り気味に):
「あ、アーサー……その、大丈夫……?」

アーサー(小声で):
「……運命は……残酷だな。」

「いや、くじ引きだからね!? 
運命とか関係ないから!」
ティアが即ツッコミを入れるが、アーサーはすでに“勇者敗北モード”。


クラウド(満面の笑みで):
「よぉ~し、俺がティア姫を救う勇者だな!!
……原作キスシーンってあったっけ?」

ティア:「ちょっ!?」
クラス全員:「ぎゃああああ!!原作にはあるぞ!」

男子たち:「クラウド爆発しろ!!!」
女子たち:「クラウドがんばれぇ~♡」

アーサー:「……………」
(後ろで机がミシミシいってる)

ナディア(明るく):
「はいはい! じゃあ勇者役はクラウドで決定~! 
台本は私書くから、練習も楽しみにしててね~♪」

ティア(涙目で):
「た、楽しみじゃないわよっ!!」


数日後、教室にナディアが颯爽と登場した。
手には分厚い束の紙。

「お待たせ~っ! 
ついに完成しました! 
二年一組・クラス対抗演劇『勇者と囚われ姫』!!」
教室が一気にざわつく。

「おおっ、ついに!」
「どんな話なんだ?」
「キスシーンはどうなった!」

ナディアはニヤリと笑って、全員に台本を配っていく。

「はいっ、クラウド勇者とティア姫、仲良く読んでね~♪」

ティア:「な、仲良くって……な、何その言い方っ!」
クラウド:「あはは、まあ台詞合わせも大事だしな~」
ティア:「うるさいっ!」(顔真っ赤)



数分後、全員が台本を開き――静まり返った。

次の瞬間、教室のあちこちで
「えっ!?」
「マジ!?」
「おいおいおいおい!!」と悲鳴が上がる。

ティア:「な、なにこれぇぇぇ!?!?」
台本の最後のページには、大きくこう書かれていた。


《最終場面:勇者と姫のキスシーンは、アドリブでおまかせ♡》
~2人で相談して決めてね♡~
    ──脚本:ナディア



「ナディアぁぁぁぁ!!」
ティアの怒声が教室に響く。
顔は真っ赤、耳まで茹でダコ。

「だ、だってぇ~! 
本番での“生の感情”が大事だと思ってぇ♡」
ナディアが悪びれもせずに笑う。

クラウド(にやりと笑って):
「ふ~ん、アドリブね。
じゃあ……練習のとき、どんなキスがいいか相談しようか?」

ティア:「ば、ばっかじゃないの!?!?」

クラウド:「冗談だって~、
顔赤すぎだぞ、ティア!」

クラス全員:「ティア顔真っ赤~!!」
「お姫様照れてる~!!」

ティア:「みんなもうっ!
黙りなさぁぁいっ!!!」(バンッ!と机を叩く)


その隅で、アーサーが机に突っ伏していた。
(※彼は勇者役をくじで外した人)

アーサー(小声で):
「……台本、書き換えられないのか……?」

メリル(苦笑しながら):
「アーサー、嫉妬がダダ漏れだよ~?」

アーサー:「うるさい……俺はただ、芸術的見地から言っているだけだ……」

ナディア:「じゃあ!
来週から本格的な練習開始ねっ♡ 
特にラストシーン、楽しみにしてるから!」

ティア:「楽しみにしないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


こうして――
二年一組の“伝説の演劇”は、すでに台本の段階で波乱の幕を開けていたのだった。
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