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第十四章 セイントスター世界学園へ
第百十七話 序列決定
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教室に戻ると、次の時間割の授業が始まった。
一時間目は神域の理論講義。
ティアはノートを取りながら、時折隣の席のアリーシアに質問を投げかけるほど真面目に取り組んでいた。
そして次の時間――学園の名物とも言える「決闘実習」が始まる。
ティアも初日は観察重視かと思われたが、すでに幾つもの決闘をこなしながら、戦闘と学問の両立を見事にやり遂げていた。
――そして、その日の最後の決闘が始まる。
相手の名は、幽玄族(ゆうげんぞく)のミラ・トナマ。
「ミラさん。
あなたと決闘ね。」
ティアが声をかけると、対面した少女は静かに一礼した。
闘技場に静かでありながら、緊迫した空気感が満ちる。
「ティアさん。
こちらこそ、よろしくお願いします。」
その声音はまるで風鈴のように澄んでいて、どこか現実感が薄い。
ミラの姿はこの世のものとは思えなかった。
瞳には黒目がなく、全体が淡いピンク色に光を帯びている。
肌は雪のように白く、透けるように儚い。
長い白髪がふわりと揺れるたび、彼女の輪郭が一瞬、霞のようにぼやける。
――まるで、そこに存在しているのに、触れられない幻。
ティアは無意識に彼女のステータスを読み取ろうとした。
だが、魔力視を向けた瞬間、視界がノイズに包まれる。
「……見えない?」
薄く眉をひそめるティア。
ぼやけた光の中に、数字も文字も浮かばない。
まるでステータス自体が霧の結界に覆われているようだった。
『防御結界……か、この私の腐食絶滅眼でも見通せないとは、流石は何処かの世界の英雄ね。』
内心でそう呟きながら、ティアは相手を正面から見据えた。
ミラは微笑んだ。
その笑みは無垢で、どこか哀しげでもある。
「私たち、似ている気がしますね。
……どちらも“人ならざる者”。」
「そうかしら?
あなたはとても神秘的よ。」
ミラの瞳がふわりと光を帯びる。
その瞬間、ティアの肌をかすめるような冷気が走った。
まるで空気ごと彼女が死の静寂に変えていくかのようだった。
「……面白い。
手加減は、要らないわね。」
ティアは微かに微笑むと、蒼い魔力をゆらりと解き放った。
――幽玄と神魔。
二人の存在が対峙した瞬間、闘技場の空気が震え、
審判も息を呑むほどの緊張感が漂う。
ここから始まるのは、ただの決闘ではない。
“存在そのもの”をかけた、神秘と理のぶつかり合い――。
審判の号令が響いた瞬間、
ティアとミラ――二人の姿が同時に掻き消えた。
最初に動いたのはティア。
彼女は一瞬で間合いを詰めると、右手をかざして魔力を解放した。
「《ライトニング・フレア》!」
雷光と炎が交錯し、咆哮のような轟音と共に爆裂する。
雷属性と炎属性を併せ持つ、彼女の得意とする複合魔法。
直撃すれば、通常の防御では焼き焦げるしかない――はずだった。
だが。
「……え?」
炎と雷の閃光が一瞬にして霧散した。
まるで、最初から存在していなかったかのように。
ティアの瞳が細められる。
魔力の残滓が空気中に一切残っていない。
『……魔法を吸収した?
スキルか、それとも種族特性……?
魔力吸収系統ね。』
分析が終わるより早く、ミラの周囲に分身が現れた。
どれも本体と見分けがつかないほど淡く、儚い。
そして、白い霧が闘技場全体に広がっていく。
「視界が……っ!」
霧はただの幻惑ではない。肌に触れた瞬間、
ティアの身体に痺れるような感覚が走った。
「ティアさん。
私からも、行きますね。」
穏やかな声と共に、ミラの分身たちが一斉に動く。
霧の中から放たれる無数の刃のような光がティアを襲う。
「ふふ……容赦ないわね!」
ティアは軽く笑うと、腰に手を添え、
空間を裂いて紅蓮の剣を呼び出した。
「来なさい、《神魔の剣レーヴァテイン》!」
赤黒い炎が渦を巻き、ティアの足元から世界を焼く焔が立ち上がる。
その炎は“存在する霧”そのものを喰らい、消し去っていく。
「《殲滅の業火(ラグナ・インフェルノ)》!」
轟音が闘技場を揺らした。
白い霧が次々と燃え上がり、逃げ場を失ったミラの姿が露わになる。
「うっ……!」
炎の衝撃波を受け、ミラが膝をついた。
その身体が淡く揺らぎ、霞のように崩れそうになっている。
「終わりよ――」
ティアの姿が瞬時に掻き消える。
神速をも超える一閃。
紅蓮の軌跡が走り抜けた瞬間、ミラの身体から光と共に鮮血が舞う。
そのまま地に倒れた。
審判が即座に手を上げる。
「――勝者、ティア・リブン!」
轟く歓声の中、ティアはレーヴァテインを消し去り、
息を整えながらミラの元へ駆け寄った。
「ごめんなさい。
少しやりすぎたわね……。」
膝をつき、両手をかざす。
ティアの掌から淡い光があふれ、ミラの傷口がみるみる再生していく。
裂かれた衣服も、白い肌も、痕ひとつ残らない。
やがて、ミラの表情が穏やかに戻る。
だが意識はまだ戻らず、医務室へと静かに運ばれていった。
ティアは立ち上がり、息を吐く。
「ふぅ……良い戦いだったわ。」
燃え残る焔の中、ティアの青い瞳が静かに光を宿した。
それから数週間にわたる激闘の末。
ティアは全ての決闘で勝利を収め、誰一人として彼女に膝をつかせることはできなかった。
圧倒的な力と技、そして神魔としての存在感。
そのすべてがクラスメイトたちに畏怖と憧れを刻みつけていた。
同じ神魔族であるユサリス・ロードとの戦いもあったが、ティアが期待していたほどの実力はなく、彼を倒すのにも時間はかからなかった。
そしてついに、長き決闘期間の幕が下ろされ、
学園では「序列発表」の日が訪れた――。
その朝、教室の空気はいつになく張り詰めていた。
担任のダクトスがモニターを起動し、壁一面に順位表が映し出される。
「それでは、発表します。」
彼はゆっくりと名を読み上げた。
「首席。
神魔族 ティア・リブン。
全勝。
実に見事な結果です。」
パチ、パチ――
ダクトスの拍手を皮切りに、教室中が一斉に拍手に包まれた。
その音の中、ティアは静かに微笑む。
「ありがとうございます。
皆さんも強かったですよ。」
だが、その笑顔に余裕を感じた者は少なくない。
彼女が本気をどこまで出していたのか――
誰も確信を持てないままだったからだ。
ダクトスは続けて読み上げる。
「二席、龍神族。
ソウ・クラウ・ドュスロ。」
「三席、幽玄族。
ミラ・トナマ。」
教室のあちこちから小さな歓声や溜め息が漏れる。
モニターにはさらに続く名簿が映され、皆が自分の順位を確かめ合っていた。
「それ以降の順位は各自で確認してください。
次の『序列決闘』は半年後に行われます。
それまで、決闘場の使用は自由ですが、審判への申請は必ず行うように。」
そう言ってダクトスは一呼吸置き、表情を少し和らげる。
「さて――次の行事について話しましょう。
来月には学園全体での団体戦を予定しています。
各クラス、4人で1チーム。合計5チームを編成してもらいます。」
教室が一斉にざわめいた。
「団体戦はクラス対抗戦です。
つまり、クラス全体の勝率が順位に影響します。
チーム分けは自由に決めて構いませんが……
首席、二席、三席が同じチームになるのは避けた方がいいでしょう。」
「私、ティアさんとは組みたい!」
女子生徒たちが口々に声を上げる。
ティアは苦笑しながら肩をすくめた。
「ありがとう。
でも他の人とも組んで、経験を積むのもいいと思うわよ。」
ダクトスは咳払いを一つして、手を打ち鳴らした。
「はい、そこまで。
チーム分けは放課後までに提出してください。
では、授業を始めます。」
そう言うと、彼はいつものように淡々と黒板の文字を映し出した。
だが、生徒たちの胸はもう、次なる戦いへの高揚でいっぱいだった。
神の加護を受けし者たちの学園生活は、まだ始まったばかりである――。
一時間目は神域の理論講義。
ティアはノートを取りながら、時折隣の席のアリーシアに質問を投げかけるほど真面目に取り組んでいた。
そして次の時間――学園の名物とも言える「決闘実習」が始まる。
ティアも初日は観察重視かと思われたが、すでに幾つもの決闘をこなしながら、戦闘と学問の両立を見事にやり遂げていた。
――そして、その日の最後の決闘が始まる。
相手の名は、幽玄族(ゆうげんぞく)のミラ・トナマ。
「ミラさん。
あなたと決闘ね。」
ティアが声をかけると、対面した少女は静かに一礼した。
闘技場に静かでありながら、緊迫した空気感が満ちる。
「ティアさん。
こちらこそ、よろしくお願いします。」
その声音はまるで風鈴のように澄んでいて、どこか現実感が薄い。
ミラの姿はこの世のものとは思えなかった。
瞳には黒目がなく、全体が淡いピンク色に光を帯びている。
肌は雪のように白く、透けるように儚い。
長い白髪がふわりと揺れるたび、彼女の輪郭が一瞬、霞のようにぼやける。
――まるで、そこに存在しているのに、触れられない幻。
ティアは無意識に彼女のステータスを読み取ろうとした。
だが、魔力視を向けた瞬間、視界がノイズに包まれる。
「……見えない?」
薄く眉をひそめるティア。
ぼやけた光の中に、数字も文字も浮かばない。
まるでステータス自体が霧の結界に覆われているようだった。
『防御結界……か、この私の腐食絶滅眼でも見通せないとは、流石は何処かの世界の英雄ね。』
内心でそう呟きながら、ティアは相手を正面から見据えた。
ミラは微笑んだ。
その笑みは無垢で、どこか哀しげでもある。
「私たち、似ている気がしますね。
……どちらも“人ならざる者”。」
「そうかしら?
あなたはとても神秘的よ。」
ミラの瞳がふわりと光を帯びる。
その瞬間、ティアの肌をかすめるような冷気が走った。
まるで空気ごと彼女が死の静寂に変えていくかのようだった。
「……面白い。
手加減は、要らないわね。」
ティアは微かに微笑むと、蒼い魔力をゆらりと解き放った。
――幽玄と神魔。
二人の存在が対峙した瞬間、闘技場の空気が震え、
審判も息を呑むほどの緊張感が漂う。
ここから始まるのは、ただの決闘ではない。
“存在そのもの”をかけた、神秘と理のぶつかり合い――。
審判の号令が響いた瞬間、
ティアとミラ――二人の姿が同時に掻き消えた。
最初に動いたのはティア。
彼女は一瞬で間合いを詰めると、右手をかざして魔力を解放した。
「《ライトニング・フレア》!」
雷光と炎が交錯し、咆哮のような轟音と共に爆裂する。
雷属性と炎属性を併せ持つ、彼女の得意とする複合魔法。
直撃すれば、通常の防御では焼き焦げるしかない――はずだった。
だが。
「……え?」
炎と雷の閃光が一瞬にして霧散した。
まるで、最初から存在していなかったかのように。
ティアの瞳が細められる。
魔力の残滓が空気中に一切残っていない。
『……魔法を吸収した?
スキルか、それとも種族特性……?
魔力吸収系統ね。』
分析が終わるより早く、ミラの周囲に分身が現れた。
どれも本体と見分けがつかないほど淡く、儚い。
そして、白い霧が闘技場全体に広がっていく。
「視界が……っ!」
霧はただの幻惑ではない。肌に触れた瞬間、
ティアの身体に痺れるような感覚が走った。
「ティアさん。
私からも、行きますね。」
穏やかな声と共に、ミラの分身たちが一斉に動く。
霧の中から放たれる無数の刃のような光がティアを襲う。
「ふふ……容赦ないわね!」
ティアは軽く笑うと、腰に手を添え、
空間を裂いて紅蓮の剣を呼び出した。
「来なさい、《神魔の剣レーヴァテイン》!」
赤黒い炎が渦を巻き、ティアの足元から世界を焼く焔が立ち上がる。
その炎は“存在する霧”そのものを喰らい、消し去っていく。
「《殲滅の業火(ラグナ・インフェルノ)》!」
轟音が闘技場を揺らした。
白い霧が次々と燃え上がり、逃げ場を失ったミラの姿が露わになる。
「うっ……!」
炎の衝撃波を受け、ミラが膝をついた。
その身体が淡く揺らぎ、霞のように崩れそうになっている。
「終わりよ――」
ティアの姿が瞬時に掻き消える。
神速をも超える一閃。
紅蓮の軌跡が走り抜けた瞬間、ミラの身体から光と共に鮮血が舞う。
そのまま地に倒れた。
審判が即座に手を上げる。
「――勝者、ティア・リブン!」
轟く歓声の中、ティアはレーヴァテインを消し去り、
息を整えながらミラの元へ駆け寄った。
「ごめんなさい。
少しやりすぎたわね……。」
膝をつき、両手をかざす。
ティアの掌から淡い光があふれ、ミラの傷口がみるみる再生していく。
裂かれた衣服も、白い肌も、痕ひとつ残らない。
やがて、ミラの表情が穏やかに戻る。
だが意識はまだ戻らず、医務室へと静かに運ばれていった。
ティアは立ち上がり、息を吐く。
「ふぅ……良い戦いだったわ。」
燃え残る焔の中、ティアの青い瞳が静かに光を宿した。
それから数週間にわたる激闘の末。
ティアは全ての決闘で勝利を収め、誰一人として彼女に膝をつかせることはできなかった。
圧倒的な力と技、そして神魔としての存在感。
そのすべてがクラスメイトたちに畏怖と憧れを刻みつけていた。
同じ神魔族であるユサリス・ロードとの戦いもあったが、ティアが期待していたほどの実力はなく、彼を倒すのにも時間はかからなかった。
そしてついに、長き決闘期間の幕が下ろされ、
学園では「序列発表」の日が訪れた――。
その朝、教室の空気はいつになく張り詰めていた。
担任のダクトスがモニターを起動し、壁一面に順位表が映し出される。
「それでは、発表します。」
彼はゆっくりと名を読み上げた。
「首席。
神魔族 ティア・リブン。
全勝。
実に見事な結果です。」
パチ、パチ――
ダクトスの拍手を皮切りに、教室中が一斉に拍手に包まれた。
その音の中、ティアは静かに微笑む。
「ありがとうございます。
皆さんも強かったですよ。」
だが、その笑顔に余裕を感じた者は少なくない。
彼女が本気をどこまで出していたのか――
誰も確信を持てないままだったからだ。
ダクトスは続けて読み上げる。
「二席、龍神族。
ソウ・クラウ・ドュスロ。」
「三席、幽玄族。
ミラ・トナマ。」
教室のあちこちから小さな歓声や溜め息が漏れる。
モニターにはさらに続く名簿が映され、皆が自分の順位を確かめ合っていた。
「それ以降の順位は各自で確認してください。
次の『序列決闘』は半年後に行われます。
それまで、決闘場の使用は自由ですが、審判への申請は必ず行うように。」
そう言ってダクトスは一呼吸置き、表情を少し和らげる。
「さて――次の行事について話しましょう。
来月には学園全体での団体戦を予定しています。
各クラス、4人で1チーム。合計5チームを編成してもらいます。」
教室が一斉にざわめいた。
「団体戦はクラス対抗戦です。
つまり、クラス全体の勝率が順位に影響します。
チーム分けは自由に決めて構いませんが……
首席、二席、三席が同じチームになるのは避けた方がいいでしょう。」
「私、ティアさんとは組みたい!」
女子生徒たちが口々に声を上げる。
ティアは苦笑しながら肩をすくめた。
「ありがとう。
でも他の人とも組んで、経験を積むのもいいと思うわよ。」
ダクトスは咳払いを一つして、手を打ち鳴らした。
「はい、そこまで。
チーム分けは放課後までに提出してください。
では、授業を始めます。」
そう言うと、彼はいつものように淡々と黒板の文字を映し出した。
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