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第十四章 セイントスター世界学園へ
第百十九話 ティアに拒まれる神ウル
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来月に迫った決闘団体戦のチーム分けを話し合う日がやってきた。
ティアはクラスの中央、壇上に立ち、まるで担任のような手際で進行を始めた。
「さて、来月の決闘団体戦のチームを決めるわよ。
20人を4人ずつで、合計5チームね。
まずは――上位の5人をそれぞれのチームに振り分けましょう。」
タッチモニターを操作しながら、ティアは序列の表を映し出す。
「上位五名は、私、ソウさん、ミラさん、ザフラさん、アリーシアさん。ここまでは固定でいいわね。」
「いい考えだと思うわ。」
精霊族のミカーニャが頷く。
「そんで、残りは得意不得意のバランスを見ながら振り分けだな。」
隣で腕を組むサブリーダーのザフラが豪快に言う。
「そうね。攻撃型と補助型をバランスよく……っと。」
ティアがタッチモニターに指を滑らせると、種族や属性のバランスが取れた表が浮かび上がった。
「こんな感じでどうかしら?」
教室が一斉にざわついた。
「いいんじゃない?
バランス取れてる!」
「ティアさん流石!」
「これなら勝てそうだ!」
教室は和やかに盛り上がり、ティアも満足そうに頷いた。
授業が終わり、ティアはアリーシアと談笑していた。
窓際の柔らかな光が差し込み、穏やかな空気が流れていた――その時。
「やあ、ティア!」
にこやかな笑顔を浮かべて、ユサリス(=神ウル)が軽い足取りで近づいてくる。
だが次の瞬間。
「――そこまで!
それ以上近づかないで!!」
ティアの鋭い声が教室に響いた。
ビシッと伸びた右手。
放たれる圧。
「う、うわっ!」
ユサリスは顔を引きつらせ、反射的に三歩下がった。
空気がビリッと震えるほどの威圧感。
(……おお、怒ってる……昨日のこと、まだ根に持ってるなぁ……)
ウルは内心で小さく反省した。
「え、えっと……また今度にしようか……」
乾いた笑いを浮かべながら、そそくさと退散していくユサリス。
「ティア、どうしたの?」
アリーシアが目を丸くする。
「ユサリスくん、しょんぼりして出ていっちゃったよ?」
「う、うん、何でもないよ!
ちょっと……いろいろあってね。」
ティアは慌てて手を振り、誤魔化すように笑った。
しかし――それ以降も、ユサリス(神ウル)は隙あらばティアのもとへ現れる。
授業中の休み時間、廊下、食堂……。
そしてそのたびに――
「私の三メートル以内に、近づかないで!」
ピシャリと放たれる冷たい拒絶。
「えぇ~、距離、そんなに!?
三メートルって!?」
「ダメです!」
ウルは額を押さえながら肩を落とす。
「……僕、神なのに……泣きそう。」
教室の片隅で見ていたアリーシアは、ティアの後ろ姿を見つめながら小声でつぶやいた。
「……あれは……何かあったわね。」
ティアは寮の自室でソファーに沈み込んでいた。
ふかふかのクッションに埋もれながら、天井を見上げてぼやく。
「まったく……神ウルは何を考えてるんだか。」
その呆れ声には、半分疲労、半分あきらめが混じっていた。
「主様、お疲れのようですね。」
紅茶を静かに差し出すセリア。
彼女は毎日、神ウルのアプローチ劇場を最前列で観ていた観客である。
「神ウルの相手って、
想像以上に体力使うのよ……。」
ティアはカップを受け取りながら、ぐったりと項垂れた。
「それでしたら、条件付きで許してみては如何でしょう?」
「条件付き?」
「はい。“身体には触れない”という条件をつけて、
それを守る限りは近づいても良いと伝えるのです。」
ティアは眉をひそめて考えた。
「……でも、あの神のことよ?
甘くすると調子に乗るタイプよ?」
「そうですね。
許す代わりに何があっても勝手に主様の身体に触れない事を約束させる他無いと思います。」
セリアはにっこり微笑んだ。
「神が約束を違える事が無いように念を押して様子を見る他無いと思われます。」
「そうね。
それしか無さそうね。」
ティアは小さく笑い、立ち上がった。
「よし、明日……話すわ。」
そして翌朝。
――案の定、神ウル(ユサリス)は懲りていなかった。
「ティア! おはようーっ!」
教室の扉が開くと同時に、朝日よりも明るい笑顔で突撃してくる神。
「……はいはい。
もう分かりました。
許します。」
「えっ!?
本当に!?
やったー!!
ティアーっ!!」
ウルは満面の笑みでティアの両手をガシッと握りしめた。
「その代わり!」
ティアはピシッと指を立てた。
「私の許可なく身体に触らないこと。
いいですね?」
「もちろん!
約束する!」
――と言いつつ、握った手を全く離さない。
「……神ウル?
絶対守ってくださいね?」
「ん? あ、うん。
守ってるよ? 」
それでも手はまだ握っていた。
ティアの額に青筋が浮かんだ。
「……神ウル。
あなた、しかない神ですね。」
「大丈夫!
ちゃんと守るから。」
得意げに胸を張るウル。
だが、手は離さなかった。
「もう、良いです。」
ティアはぐっと力を込めて手を引く――が、神の手はびくとしない。
「わかってるよ~。
でも、こうしてるとティアの手、あったかくて落ち着くんだもん。」
ティアはため息をつきながら、心の中で呟いた。
(……もう。
ほんとに分かってるの?
この神は……。)
後ろで見ていたセリアは、呆れた表情になっていた。
それからというもの――
ユサリスこと神ウルの“愛の猛攻”は止まらなかった。
ただし、ティアとの約束――
「身体に触れないこと」だけは律儀に守っている。
……今のところは。
「困ったわね。」
ティアは寮の部屋で頬杖をつきながら深いため息をつく。
「神ウルに好かれてしまったわ。
でも神って、基本的に“自分が中心”で世界が回ってると思ってるタイプよね。
身体を求めてくるのも……時間の問題かもしれないわ。」
セリアが無言で紅茶を差し出した。
ティアは受け取りながらぼそっと呟く。
「もう、これは相談案件ね。
ダクトスに頼るしかないか……。」
翌日。
ティアは職員室の扉をノックして入った。
書類を整理していたダクトスが顔を上げる。
「何ですか?
また神関係ですか?」
既に察している顔だった。
「使徒ダクトスにお願いがあるんですが、聞いてもらえますか?」
「話だけなら。」
「“だけ”じゃ困るのよ!」
ティアは机に両手を置いて身を乗り出す。
「あなたの主人、あの遊戯神ウルが私に付きまとって困ってるの。
どうにかしてもらえませんか?」
「おやおや、やはり気に入られておりましたか。
とうとう“実行段階”に入りましたか。」
「感心しないでください!
この前なんて、部屋に連れ込まれて無理やりキスされて、もう少しで……っ!
……ほんっとに腹が立つ!」
「なるほど。
ですが、神のやることに私が干渉するのは難しいですね。」
「そこを何とかしてって言ってるの!」
ダクトスは少し顎に手を当てて考え込む。
「……そうですね。
確かあなた、暗黒神エレボスの加護を受けていましたね?」
「ええ、そうだけど?」
「なら、エレボスの力を借りて“神ウルを少し炙る”というのはどうです?」
ティアは思わず目を見開いた。
「ちょっと待って、それを“先生”が言うの!?」
「まぁまぁ、神を燃やしても死にませんから。
しばらく黒コゲになって、何百年か静かにしてるだけですよ。」
「それって、完全に天罰コースじゃないの?」
「ふふ、でもあなたのことを好きすぎて、天罰の方が躊躇するかもしれませんよ。」
「……あの神の思考回路なら、むしろ“燃やされて喜ぶ”かも。」
「それはそれで厄介ですね。」
ダクトスは淡々と返す。
ティアは額を押さえてため息をついた。
「まあいいわ。
神炎が効くってことだけでも収穫ね。」
「もう宜しいですか?
授業が始まりますよ。」
「はいはい。
じゃあ教室に戻りましょう。」
ドアを出ようとするダクトスの背に、ティアがぼそっと呟く。
「……神ウルが燃えて無くなる姿、見たくなったらいつでも言ってくださいね。」
ティアはピタリと足を止め、にっこり笑った。
「その時は、“薪”にあなたを添えるわね。」
「……それはご勘弁を。」
ふたりのやり取りを見ていた近くの教師は、静かにペンを落とした。
(……このクラス、神様より怖いのは生徒の方かもしれない。)
ティアはクラスの中央、壇上に立ち、まるで担任のような手際で進行を始めた。
「さて、来月の決闘団体戦のチームを決めるわよ。
20人を4人ずつで、合計5チームね。
まずは――上位の5人をそれぞれのチームに振り分けましょう。」
タッチモニターを操作しながら、ティアは序列の表を映し出す。
「上位五名は、私、ソウさん、ミラさん、ザフラさん、アリーシアさん。ここまでは固定でいいわね。」
「いい考えだと思うわ。」
精霊族のミカーニャが頷く。
「そんで、残りは得意不得意のバランスを見ながら振り分けだな。」
隣で腕を組むサブリーダーのザフラが豪快に言う。
「そうね。攻撃型と補助型をバランスよく……っと。」
ティアがタッチモニターに指を滑らせると、種族や属性のバランスが取れた表が浮かび上がった。
「こんな感じでどうかしら?」
教室が一斉にざわついた。
「いいんじゃない?
バランス取れてる!」
「ティアさん流石!」
「これなら勝てそうだ!」
教室は和やかに盛り上がり、ティアも満足そうに頷いた。
授業が終わり、ティアはアリーシアと談笑していた。
窓際の柔らかな光が差し込み、穏やかな空気が流れていた――その時。
「やあ、ティア!」
にこやかな笑顔を浮かべて、ユサリス(=神ウル)が軽い足取りで近づいてくる。
だが次の瞬間。
「――そこまで!
それ以上近づかないで!!」
ティアの鋭い声が教室に響いた。
ビシッと伸びた右手。
放たれる圧。
「う、うわっ!」
ユサリスは顔を引きつらせ、反射的に三歩下がった。
空気がビリッと震えるほどの威圧感。
(……おお、怒ってる……昨日のこと、まだ根に持ってるなぁ……)
ウルは内心で小さく反省した。
「え、えっと……また今度にしようか……」
乾いた笑いを浮かべながら、そそくさと退散していくユサリス。
「ティア、どうしたの?」
アリーシアが目を丸くする。
「ユサリスくん、しょんぼりして出ていっちゃったよ?」
「う、うん、何でもないよ!
ちょっと……いろいろあってね。」
ティアは慌てて手を振り、誤魔化すように笑った。
しかし――それ以降も、ユサリス(神ウル)は隙あらばティアのもとへ現れる。
授業中の休み時間、廊下、食堂……。
そしてそのたびに――
「私の三メートル以内に、近づかないで!」
ピシャリと放たれる冷たい拒絶。
「えぇ~、距離、そんなに!?
三メートルって!?」
「ダメです!」
ウルは額を押さえながら肩を落とす。
「……僕、神なのに……泣きそう。」
教室の片隅で見ていたアリーシアは、ティアの後ろ姿を見つめながら小声でつぶやいた。
「……あれは……何かあったわね。」
ティアは寮の自室でソファーに沈み込んでいた。
ふかふかのクッションに埋もれながら、天井を見上げてぼやく。
「まったく……神ウルは何を考えてるんだか。」
その呆れ声には、半分疲労、半分あきらめが混じっていた。
「主様、お疲れのようですね。」
紅茶を静かに差し出すセリア。
彼女は毎日、神ウルのアプローチ劇場を最前列で観ていた観客である。
「神ウルの相手って、
想像以上に体力使うのよ……。」
ティアはカップを受け取りながら、ぐったりと項垂れた。
「それでしたら、条件付きで許してみては如何でしょう?」
「条件付き?」
「はい。“身体には触れない”という条件をつけて、
それを守る限りは近づいても良いと伝えるのです。」
ティアは眉をひそめて考えた。
「……でも、あの神のことよ?
甘くすると調子に乗るタイプよ?」
「そうですね。
許す代わりに何があっても勝手に主様の身体に触れない事を約束させる他無いと思います。」
セリアはにっこり微笑んだ。
「神が約束を違える事が無いように念を押して様子を見る他無いと思われます。」
「そうね。
それしか無さそうね。」
ティアは小さく笑い、立ち上がった。
「よし、明日……話すわ。」
そして翌朝。
――案の定、神ウル(ユサリス)は懲りていなかった。
「ティア! おはようーっ!」
教室の扉が開くと同時に、朝日よりも明るい笑顔で突撃してくる神。
「……はいはい。
もう分かりました。
許します。」
「えっ!?
本当に!?
やったー!!
ティアーっ!!」
ウルは満面の笑みでティアの両手をガシッと握りしめた。
「その代わり!」
ティアはピシッと指を立てた。
「私の許可なく身体に触らないこと。
いいですね?」
「もちろん!
約束する!」
――と言いつつ、握った手を全く離さない。
「……神ウル?
絶対守ってくださいね?」
「ん? あ、うん。
守ってるよ? 」
それでも手はまだ握っていた。
ティアの額に青筋が浮かんだ。
「……神ウル。
あなた、しかない神ですね。」
「大丈夫!
ちゃんと守るから。」
得意げに胸を張るウル。
だが、手は離さなかった。
「もう、良いです。」
ティアはぐっと力を込めて手を引く――が、神の手はびくとしない。
「わかってるよ~。
でも、こうしてるとティアの手、あったかくて落ち着くんだもん。」
ティアはため息をつきながら、心の中で呟いた。
(……もう。
ほんとに分かってるの?
この神は……。)
後ろで見ていたセリアは、呆れた表情になっていた。
それからというもの――
ユサリスこと神ウルの“愛の猛攻”は止まらなかった。
ただし、ティアとの約束――
「身体に触れないこと」だけは律儀に守っている。
……今のところは。
「困ったわね。」
ティアは寮の部屋で頬杖をつきながら深いため息をつく。
「神ウルに好かれてしまったわ。
でも神って、基本的に“自分が中心”で世界が回ってると思ってるタイプよね。
身体を求めてくるのも……時間の問題かもしれないわ。」
セリアが無言で紅茶を差し出した。
ティアは受け取りながらぼそっと呟く。
「もう、これは相談案件ね。
ダクトスに頼るしかないか……。」
翌日。
ティアは職員室の扉をノックして入った。
書類を整理していたダクトスが顔を上げる。
「何ですか?
また神関係ですか?」
既に察している顔だった。
「使徒ダクトスにお願いがあるんですが、聞いてもらえますか?」
「話だけなら。」
「“だけ”じゃ困るのよ!」
ティアは机に両手を置いて身を乗り出す。
「あなたの主人、あの遊戯神ウルが私に付きまとって困ってるの。
どうにかしてもらえませんか?」
「おやおや、やはり気に入られておりましたか。
とうとう“実行段階”に入りましたか。」
「感心しないでください!
この前なんて、部屋に連れ込まれて無理やりキスされて、もう少しで……っ!
……ほんっとに腹が立つ!」
「なるほど。
ですが、神のやることに私が干渉するのは難しいですね。」
「そこを何とかしてって言ってるの!」
ダクトスは少し顎に手を当てて考え込む。
「……そうですね。
確かあなた、暗黒神エレボスの加護を受けていましたね?」
「ええ、そうだけど?」
「なら、エレボスの力を借りて“神ウルを少し炙る”というのはどうです?」
ティアは思わず目を見開いた。
「ちょっと待って、それを“先生”が言うの!?」
「まぁまぁ、神を燃やしても死にませんから。
しばらく黒コゲになって、何百年か静かにしてるだけですよ。」
「それって、完全に天罰コースじゃないの?」
「ふふ、でもあなたのことを好きすぎて、天罰の方が躊躇するかもしれませんよ。」
「……あの神の思考回路なら、むしろ“燃やされて喜ぶ”かも。」
「それはそれで厄介ですね。」
ダクトスは淡々と返す。
ティアは額を押さえてため息をついた。
「まあいいわ。
神炎が効くってことだけでも収穫ね。」
「もう宜しいですか?
授業が始まりますよ。」
「はいはい。
じゃあ教室に戻りましょう。」
ドアを出ようとするダクトスの背に、ティアがぼそっと呟く。
「……神ウルが燃えて無くなる姿、見たくなったらいつでも言ってくださいね。」
ティアはピタリと足を止め、にっこり笑った。
「その時は、“薪”にあなたを添えるわね。」
「……それはご勘弁を。」
ふたりのやり取りを見ていた近くの教師は、静かにペンを落とした。
(……このクラス、神様より怖いのは生徒の方かもしれない。)
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