毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

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第十六章 神ティアとアルマ

第百三十七話 平穏な学園生活

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リシェア・ルシェア・カイルは、ティアの命により各地へ出撃し、侵攻してきたアルマの殲滅作戦を開始していた。
三人の指揮はセリアが担当しており、世界のあちこちで華々しい戦果を挙げている。


その一方で、肝心のティア本人はといえば。

平穏すぎるほど平穏な学園生活を満喫していた。

文化祭でメイド喫茶の看板娘となり、可愛すぎる接客で一躍学園中の人気者となってからというもの、
毎週のように男子生徒から告白ラッシュの嵐が吹き荒れている。

この日も、ティアは教室でミミィとアーシャと三人、キャッキャと休み時間を楽しんでいた。

そこへ。
「ティア!
また来たぞー!」
とクラスの男子が、半ば伝令兵のように知らせに来る。

「……ティア、うん、今日も平常運転だね。」
ミミィはもう見慣れた景色に、逆に感心している。

「ちょ、ちょっと!
面白がってるでしょミミィ!」
ティアは顔を赤くしながら両手をパタパタ。

「ティアは可愛いから仕方ない。」
アーシャは真顔で断言。

「アーシャまで!? 
もう!」
そう言いつつ、結局ティアは男子生徒について中庭へ。


そこにいたのは、金髪が陽にきらめく好青年。
一組の成績上位者、ディアス・クライスだった。

彼は緊張しているのか、耳まで真っ赤に染めながら言う。

「ティアさん。
俺は一組のディアス・クライス。
将来、王国魔法士団に入るために毎日鍛えてる。
どうか……俺と、お付き合いしてください!」

丁寧なお辞儀。
真面目さが全身から滲み出ていた。

ティアは少し驚きつつも、丁寧に微笑む。

「ありがとう。
でも……今は誰ともお付き合いするつもりはないの。
ごめんね。」

だが。

「そっか……。でも!」
ディアスは顔を上げ、まっすぐな瞳でティアを見つめた。
「友達から、仲良くしてもらえないか?」

「えっ……と、友達……?」
あまりにも素直な迫力に、ティアはふっと優しく笑った。
「うん。
友達なら、いいよ。」

「よし!!」
ディアスは思わずガッツポーズ。
青春そのものが炸裂した。

ティアはその姿に微笑む。
「ディアスくん、すごいね。
誠実って感じがするわ。」

「俺、本気だから。
魔法も、勉強も、全部頑張ってる。
いつか国を守れる男になりたいから……ティアさんにも、誠実でいたいんだ。」

「……ふふ、応援してるね。
頑張って。」


教室に戻ると。

「どうだったどうだった!?」
ミミィが机に乗り出してくる。

「な、なにその顔は……ミミィには関係ないでしょ」
ティアは席につきながら、ほんのり頬を緩ませた。

「え、まさか付き合うの?」
アーシャが驚き気味に覗き込む。

「付き合わないわよ。
ただ……友達から、仲良くしたいって言われたの。」

「な、なんと……!」
ミミィが目をひん剥く。
「学園一の美少女ティアの、鉄壁のハートをこじ開けた男が現れたぁぁ!」

「言い過ぎ!
私より可愛い子なんてたくさんいるのに!」

「いや、いない。」
アーシャが即答。

「全くいない!」
ミミィが同じポーズで腕を組む。

「二人とも大げさなんだから……もうっ。」
ティアは呆れながらも、親友の過大評価にちょっとだけ嬉しそうだった。

この時。
ティアとディアスのささやかな“友達宣言”が、今後の学園生活にどんな波紋を広げていくのか。
三人はまだ知るよしもなかった。

青春の風が、ほんの少しだけ強く吹いた瞬間だった。


昼休み、教室。

バァンッ!!
勢いよく扉が開き、ミミィがティアの机に突っ伏す。

「ねぇぇぇ~!
どうしようティアぁぁ!!」

「え、え?
ミミィ!?な、何が!?」
ティアは本気でビクッとした。

「魔法士試験三級……
落ちたぁぁぁ!!」

「……あ、落ちたんだ。」
(ちなみにティアは二級合格済みである)

「うわぁぁん!!
二級なんて絶対ムリだよぉ!」

すると横からアーシャが、さらりと手を上げる。

「私は三級受かったわよ。」

「裏切り者ーー!!」
ミミィ、床に這いつくばってわめく。

「ちょ、ミミィ!落ち着いて!
 アーシャも煽らないでよ!」
ティアが慌ててミミィを抱えるが、アーシャはニコニコ顔。

ミミィは涙目でティアの制服を掴む。
「どうしよ~!
ほんとに進学出来ないよ~!」

「大丈夫。
練習すれば出来るわ。
放課後、手伝うから。」

「ティアぁ~!
天使ぃ~!!」


放課後:魔法競技場(地下)

ティアが付き合って、ミミィの魔法訓練が始まっていた。

「違う違うミミィ!詠唱が逆よ~!
 “炎よ灯れ”じゃなくて“灯れ炎よ~!”」

「え!?順番で威力変わるの!?」

「基礎だから変わるよ。」

「うそだぁ~!!」

そんなドタバタの最中──

「あ、ティアさん!」

明るい声と共に現れたのはディアスだった。

「あ、ディアスくん。
どうしたの?」

「一級試験の練習だよ。
ティアさんは?」

「親友のミミィの特訓中。」
ティアが振り返ると、ミミィが柱の影からソワソワ顔で覗いていた。

「こ、この子がミミィね。」
ティアが紹介すると、ミミィは急に姿勢を正して

「み、ミミィです……」

「僕はディアス・クライスです。」
とても丁寧にお辞儀。

しかし次の瞬間、ミミィの目がキラーン!

「聞いてますよ。
ティアに告ったんだよね?
振られても友達になれてよかったね~?」

「えへへ……あっさり振られました。」
ディアスは苦笑しつつも胸に拳を当て、

「でも、まだあきらめてません!
友達から仲良くなれば、チャンスはありますから!」

ミミィ「おお~!誠実~!」

ティア「ちょ、ちょっと!ふたりとも!」
顔真っ赤で慌てるティア。

「ミミィは練習するの!
ディアスくん、またね!」

「あ、ああ。
また。」

ディアスは去り際、振り返ってティアをじっと見つめた。
ティアも思わず目をそらす。

そんな青春っぽい空気の横で──

ミミィは爆発魔法を誤射して壁を焦がした。

ある日の昼休み。
中庭では、一組のディアスと五組の男子3人が、なぜか睨み合っていた。

「お前、三組のティアに告白したらしいな?」
五組の一人が眉を釣り上げる。

「したけど。
それが何か?」
ディアスは動じず淡々。

「振られたクセに、まだ付きまとってるって噂だぜ?」

「付きまとってない。
友達になっただけだ。」

「言い訳すんな!
ティアに近づくのは迷惑なんだよ!」

「好きなら告白すればいい。
俺は別に止めない。」

「その余裕ぶった態度が気に食わねえんだよ!
どうせお前だって、ティアの身体狙いの連中と同じだろ!」

「……俺はティアさんと仲良くなりたい。
それだけだ。」

「へっ、誠実ぶりやがって!」
悪態をつくと、3人は去っていった。

ディアスはひとり、ため息をつく。
(……ティアさんに嫌な思いをさせないといいが)



放課後:衛生委員の清掃タイム

この日、一年三組の当番はティア。
講堂には、偶然にもディアスの姿があった。

「あら、ディアスくん。
衛生委員なのね?」

「そうなんだ。
ティアさんと一緒で嬉しいな。」

ティアは笑顔で頷き、皆んなで作業を分担して進める。

男子は片付け、女子は拭き掃除。
思ったよりあっさり終わり、最後は道具の収納をすることに。

「ディアスくん、道具はまとめて私に渡して。
しまうから。」

「了解。」

二人が道具入れの前でしゃがみ、
ティアが収納奥に手を伸ばしていると――

ドンッ!

「うわっ!?」
突然、後ろから誰かに押され、ディアスが前へ倒れ込む。

そのままティアと一緒に道具入れの中へ。

ガチャッ! ガッ!
外から鍵のような音がして、扉が動かなくなった。

「ちょ、ちょっと!?」
ティアは唖然。

「誰だよ、押したのは!悪ふざけにもほどがある!」
ディアスが扉を押すが、ビクともしない。

そして次の瞬間――

距離ゼロ。
いや、距離どころか完全にぴったり密着。

ティアの背が奥の壁に、ディアスの胸がティアの胸に当たる。
もう逃げ場はどこにもない。

「……ご、ごめん。
避けようとしても避けられない。」
ディアスは必死に腕を奥側につき、ティアに触れないようにしている。

「い、いいのよ。
仕方ないわ。変なところ触らないでよ?」

「触らない!
絶対!」

ティアはポケットからスマホを取り出す。
狭い空間が一気に光り、さらに二人の顔が近いことに気づく。

「ち、近い……」
「ごめん、でも限界なんだ……」

2人は真っ赤になりながら、お互い目線を合わせられず固まる。

ティアはようやくミミィに電話を入れた。

「ミミィ、助けて。
講堂の用具入れに閉じ込められたの……」

「……は?ちょっと待ってすぐ行く!」

スマホを閉じると、2人は気まずいまま静寂。

ディアスがぽつり。
「ティアさん……すごく良い匂いがする……」

「そ、そう?……ありがと……」

そして、5分後。

ガチャッ!

「ええ~!
ティア、なんでディアスくんと閉じ込められてるの?」

「ミミィ。
わからないわ。」
ティアはまだ密着の余韻が残っていて少し顔が赤い。

「いやー、閉じ込められイベントとか、マンガの中だけだと思ってたわ!」

「ティアさん。
俺が悪い。
揶揄われたみたいだ。」
申し訳なさそうにディアスは俯く。

「ディアスくんは悪く無いわ。
こんな子供じみた事するなんて。
後で先生に報告しておくから気にしないで。」

ティアはミミィに揶揄われながら教室に戻って行った。
残されたディアスは行き場のない怒りに心中穏やかではなかった。
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