毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

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第十八章 夏休み編

第百五十話 ティアの誕生日会

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海から戻り、シャワーでさっぱりしたティアたちは、
ふわふわソファに沈み込みながらリビングでのんびりしていた。

そこへ。
バアミル、颯爽と乱入。

「お嬢様。
この後のご予定は如何なさいますか?」
いつもの紳士スマイルで登場すると、

「もちろん!
ティアの誕生日会ですっ‼︎」
ミミィがロケットのごとく飛び上がり、両手を広げて宣言した。

「え、えっ? 
私、主役なのに何も聞いてないんだけど!?」
驚くティアの腕を、ミミィとアーシャが左右から取って、
そのままダイニングテーブルの椅子へ連行する。

「さ、主役席はこちらで~す♡」

「きゃ!
なにこれ絶対楽しいやつ!
どんなサプライズがあるのかしら!?」
ティアは胸をときめかせて目を輝かせた。

「ティア!
ちょっと待っててね!」
ミミィとアーシャはリビングを出て行った。


「では、お嬢様。
誕生日おめでとうございます。
私とメイド達もささやかではございますが、贈り物がございます。」

バアミルは、まるで宝物でも扱うように
小さなラッピングされた箱を取り出した。

「えっ、バアミル達から?嬉しい……! 
開けてもいい?」
ティアが箱を受け取ると、
バアミルは恭しく頷いた。

箱を開けると――
さらに中から、上質な小箱。
そしてその中には……
繊細な花の髪飾りが収まっていた。

「わ……可愛い……!」
ティアは息をのんで、目を丸くする。

「メイド達とも相談しまして、
私の古くからの知人の職人に特注で作らせました。
お気に召していただけますでしょうか……?」

普段は落ち着いたバアミルが、
珍しくソワソワしている。

「もちろん! 
すごく素敵!
ありがとう、バアミル!
マーガレットやミク、ユリにもお礼を言わなくちゃ!」

その言葉を聞いた瞬間、
バアミルの顔が父親のそれになった。
「お嬢様……お気に召されたなら、これほどの光栄はございませぬ……。
メイド達にもお礼をお伝えください。
喜びます。」

「ねぇ、つけてくれる?」
照れ笑いしながら髪飾りを手渡すと、

「わ、私でよろしいのですか!?」
若干パニック気味。

「バアミルに付けてほしいの。」
ティアは微笑む。

「……心得ました。」
バアミルは震えるほど慎重に、ティアの髪へそっと飾りを差して止めた。

「ど、どうかしら?
似合ってる?」

「……ッ! たいへん、お美しいです……!
ただでさえ光輝いておられるのに……さらに……!」

完全に proud papa(誇らしげな父親)の顔だ。


そこへ、ばたばたと足音が聞こえる。

「ティア~! 
あら!可愛い髪飾りじゃない!」
「ほんと似合ってる!」

ミミィとアーシャが戻ってきて、
ティアの姿を見るなり目を輝かせた。

「ふふ、いいでしょ?
バアミル達からのプレゼントなの。」
頬を赤らめてティアが微笑む。

「じゃ、次は私たちの番ね!」
ミミィとアーシャが2人で持って大きめの箱を差し出す。
リボンがきゅっと結ばれた可愛い包装。

「ありがとう……開けていい?」

「ど、どうぞっ!」
ミミィがやけにソワソワしている。

箱を開けると。

「きゃ……! 
コスメボックス!?
これ、私が欲しがってたやつ!!」

ティアは立ち上がる勢いで叫んだ。

「そ、そう! 
バイトしてね!
今回はアーシャと2人で買ったんだよ!」
ミミィがドヤ顔だが、耳まで赤い。

「私も短期バイト頑張ったの。
ティアがメイクに興味あるって言ってたから、
これはもう“これしかない”って思って。」
アーシャも照れながら微笑む。

中には――
ブラシ、パフ、パレット、リップ……
すでに二人が厳選したメイク道具がギッシリ。

「学園アイドル活動もあるしね。
これでいろいろ試せるでしょ♪」
「私たちのお気に入りも入ってるからね!」

「ありがとう……!!」
ティアは二人を思いきり抱きしめた。

三人の笑い声がリビングに響き、
青春がそのまま形になったような時間が流れた。


メイク道具を広げて、ティア・ミミィ・アーシャの三人がテレビ前のソファーで「きゃー」「可愛い!」「このラメすご!」と盛り上がっている頃。

キッチンでは、バアミルとマーガレットが静かに、しかし戦場のような手際の良さで準備を進めていた。

「マーガレットさん。
私はお嬢様方のお食事に専念いたしますので……誕生日ケーキをお任せしてよろしいでしょうかな?」

「ふふふ……任せてください、バアミルさん。」
マーガレットはエプロンを少し直して、どこか誇らしげに胸を張った。

「こう見えて王国認定 国家資格菓子職人技師一級 なんですよ!
今日は驚かせてみせます!」

「おお……!」
バアミルは心底からの感嘆の声を上げ、まるで勇者を見つめるような目でマーガレットを見る。

その間にも、二人は同時進行で料理やケーキを組み立てていく。
バアミルの包丁が滑らかにリズムを刻めば、マーガレットの泡立て器は魔導エンジンのような音を立て、キッチンは一気に「プロの厨房」へと変貌していくのだった。


「さあ、お嬢様方。
そろそろ席にお着きください。」

バアミルが声をかけると、ソファーでキャッキャしていた三人が振り向いた。

「バアミル!
ねぇ見て、メイクしてみたの!」
ティアがくるりと回って見せる。
ミミィとアーシャも「どう?」「どうよ?」と、なぜか一緒にアピールしてくる。

ティアの顔はほんのり赤みが差し、目元は少しきらめき、唇には淡い桜色。

しかもこの世界のメイク道具は魔法効果付きで、
光を当てると「ほんのり髪先が揺れる演出」などが自動で付くというチート仕様。

「おお……!」
バアミルは思わず目を丸くした。

「とてもお綺麗でございます、お嬢様。
肌の透明感、目元の華やかさ、そして……その、こう……恋が始まりそうな乙女の輝きとでも申しましょうか。」

「えっ⁉︎
バアミルさん、今なんか恥ずかしいこと言ったよね!?」
ミミィが茶化す。

「言ったよね!?」アーシャが追撃する。

「むっ……!? 
いえっ、私はただ事実を述べたまででございます!」
バアミルは真っ赤になって大慌て。

ティアはそれを見て頬を押さえながら、嬉しそうに笑った。


テーブルに並んだのは、まさに誕生日フルコース。

席についた瞬間、三人は「わあ……!」と目を輝かせた。

テーブルには、バアミルの作った豪華なイタリアンと、色鮮やかな肉料理、アーシャのための魚料理が絶妙に並んでいた。

そして奥では、マーガレットが仕上げに魔法陣をパッと弾かせると。
三段の巨大ケーキがきらめく花火のように光った。

「どうですか?
私の本気ケーキです!」
マーガレットは腰に手を当て、誇らしげ。

「すごい!
ホテルのやつよりすごい!」
「ケーキが発光してるって何!?」
ミミィとアーシャが感動とツッコミを同時に飛ばす。

ティアは少し目を潤ませながら、そっと微笑んだ。

「ありがとう……二人とも。
バアミルも、マーガレットも。
今日、ほんとに最高の誕生日だよ。」

「もちろんです、お嬢様。」
「全力で祝わせていただきます!」
バアミルとマーガレットは胸に手を当てて深く礼をした。

その後、三人は料理を頬張り、笑い、ふざけ、時々照れながら、とても賑やかで温かい誕生日の夜が過ぎていく。

夏休みの、忘れられない思い出の夜が始まろうとしていた。
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