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第十八章 夏休み編
第百五十四話 避暑地最終日
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買い物を終えて施設へ戻るころには、空はすっかり夕焼け色に染まっていた。
屋敷の中からは、どこか懐かしく食欲をそそる香りが漂ってくる。
バアミルたちはすでに夕食の支度に取りかかっており、キッチンは慌ただしくも穏やかな空気に包まれていた。
ティア、ミミィ、アーシャの三人はソファに並んで腰を下ろす。
「ミミィもアーシャも、誕生日を祝ってくれてありがとう」
ティアは少し照れたように微笑みながら言った。
「今度は私が、二人の誕生日をちゃんとお祝いするからね」
「親友の誕生日を祝うのは当たり前でしょ」
ミミィは胸を張って笑う。
「その代わり、ティアからのプレゼントには期待してるよ~?」
「私はね、ティアの誕生日を一緒に過ごせただけで幸せよ」
アーシャも柔らかな笑みを浮かべる。
「だから、私の時も……三人で祝えたら嬉しいな」
「任せて!」
ティアはぐっと拳を握った。
「盛大にやるから覚悟してて!」
そして、ふと思い出したように話題を変える。
「そういえばね、今日占いをしてもらったの」
少し得意げに胸を張るティア。
「二人は行かなかったの?」
「占い?」
ミミィは首を傾げる。
「気づかなかったなぁ。
ね、アーシャ?」
「うん……私も見逃してたかも」
アーシャは少し残念そうに言った。
「そうなんだ」
ティアは少し考えてから、ぱっと立ち上がる。
「じゃあ、今から行ってみる?
まだやってるかもしれないよ」
「行く!」
ミミィは即答だった。
「占い大好き!」
アーシャも頷き、三人は揃って立ち上がる。
「バアミル!
ちょっと出かけてくるね!」
ティアはそう声をかけると、二人と一緒に屋敷を飛び出した。
街に着き、ティアの記憶を頼りに占いの館があった場所まで来る。
だが、そこにあったはずの店は、影も形もなかった。
「あれ……?」
ティアは足を止める。
「ここ、占いの店だったのに……」
そこにあったのは、ごく普通の雑貨屋だった。
念のため中へ入り、ティアは店主の女性に声をかける。
「すみません。
ここって、占いのお店じゃないですよね?」
「占い?」
店主はきょとんとした顔で答える。
「見ての通り、雑貨屋だよ」
店を出ると、ミミィとアーシャが不思議そうにティアを見る。
「占いの店だったの?」
ミミィが首を傾げる。
「うん……確かに、占ってもらったの」
ティアは胸の奥がざわつくのを感じていた。
「他も探してみる?」
アーシャがティアの肩にそっと手を置く。
「場所を間違えてるかもしれないし」
「うん、とりあえず探してみよう」
それから三人で街を歩き回ったが、占いの館はどこにも見つからなかった。
「ええ~!
嘘でしょ……」
ティアは思わず声を上げる。
「不思議なこともあるもんだね」
ミミィは腕を組み、少し考え込むような表情を浮かべる。
「もしかして、ティアだけに何かを伝えに来た占いだったとか?」
「それ、ありそう!」
アーシャは目を輝かせた。
「ええ~……そうかなぁ」
ティアは苦笑しながら肩を落とす。
「二人にも占ってもらいたかったのに」
「まあまあ、仕方ないよ!」
ミミィはいつもの調子で笑顔を取り戻す。
「帰ろう!
ご飯も待ってるし」
「そうね。
こんな世界だもの、不思議なことの一つや二つあってもおかしくないわ」
アーシャも優しく微笑む。
「……そうだね」
ティアも気持ちを切り替えるように笑った。
「残念だけど、帰ろう!」
夕暮れの街を背に、三人は並んで施設への帰路についた。
その胸の奥に、小さな違和感を残したまま。
夕食を終えて食器が片付くと、ミミィがソファの上でぴょこんと姿勢を正した。
「ねぇ、ティア、アーシャ。
この夏休み、本格的にアイドル活動したいんだけど、どうかな?」
「私もそれ、考えてた!」
アーシャがすぐに頷き、目を輝かせる。
「そうね……。
そろそろ動き出さないと、ミミィのファンにも申し訳ない気がするわ。」
「えぇ!? ティアのファンでしょ!」
ミミィは慌てて手を振る。
「私のファンなんて、まだまだだし!」
その様子に、ティアとアーシャは顔を見合わせてクスッと笑った。
「じゃあ、具体的に何をするの?」
アーシャが腕を組み、少し真面目な表情になる。
「それでね、ティアにお願いがあるの!」
ミミィが身を乗り出してぐっと顔を近づける。
「ティアのバイト先のクレスン店長、テレビ局のプロデューサーと知り合いだったよね?
一度、話を聞けないか聞いてほしいの!」
「え?」
ティアは少し驚きつつも考える。
「聞くのはいいけど、少し前の話よ?
うまく繋がるかは分からないわ。」
「いいのいいの!
話ができるだけでも大進歩だよ!」
ミミィは両手を合わせて期待の眼差し。
「……わかった。
店長に聞いてみる。」
「やったぁ!助かる~!」
ミミィはガッツポーズを決めた。
「でも、その前に目標を決めた方がいいと思う。」
アーシャが冷静に切り出す。
「闇雲にやっても、疲れるだけだし。」
「確かに。」
ティアも頷く。
「じゃあ、オーディション探そう!」
ミミィが即答した。
「現実的ね。」
ティアがスマホを取り出す。
「情報収集から始めましょう。」
3人はソファに並んで座り、それぞれスマホを操作し始めた。
画面には次々と情報が流れていく。
・新人アイドル発掘オーディション
・アイドル育成専門スクール
・テレビ局・芸能プロダクション主催の公開オーディション
「……いっぱいあるね。」
ティアは少し真剣な表情になる。
「全部応募しよ!」
ミミィは迷いなく宣言した。
「全部!?」
ティアは思わず声を上げる。
「体力も気力も大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!」
ミミィは親指を立てて笑う。
「やらない後悔より、やって反省だよ!」
アーシャはその様子を見て、くすっと微笑んだ。
「まあ、ミミィらしいね。」
「空回りしないといいけど……」
ティアは心配そうにしつつも、その瞳には期待が宿っていた。
「大丈夫だよ。」
ミミィは自信満々に言う。
「3人一緒なんだから!」
そうして、夏休みのアイドル活動に向けた第一歩は、にぎやかで少し無謀な話し合いと共に幕を開けたのだった。
その夜、三人は避暑地で過ごす最後の夏休みを惜しむように楽しむことにした。
バアミルたちが用意してくれた花火を手に、庭へと出る。
火をつけた瞬間、ぱちぱちと音を立てて光が弾けた。
夜空に小さな花が咲くたび、ミミィとアーシャは声を上げてはしゃぎ回る。
「きれい!」
「見て見て、次はこれ!」
無邪気に笑う二人の姿を眺めながら、ティアは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
この時間が、ずっと続けばいいのに。
弾けては消える花火の光を見つめながら、ティアは静かにそう願った。
避暑地から戻った後、ティアは屋敷で穏やかな日々を過ごしていた。
夏の余韻に包まれながら、静かな時間の中で瞑想に入る。
意識を深く沈めると、世界が俯瞰される。
それは神の目。
人の視座を超えた視界。
アルマたちの活動は落ち着き、冒険者や勇者ミンデの活躍によって世界の均衡は保たれていた。
人の営みは、今のところ平穏だ。
ただ一つを除いて。
魔王の存在。
大きな闇の本体は眠りについたが、闇そのものが消えたわけではない。
力は形を変え、やがて魔王という器を得て顕現する。
それは世界の理。
神であっても、完全にねじ曲げることはできない法則だった。
瞑想を終えると、空間がわずかに揺らぎ、セリアが姿を現す。
「魔王の存在が、気になりますか?」
「んー……まだ大丈夫ね」
ティアは穏やかに答えた。
「今のところ、大きな力にはなっていないわ。
ミンデには後で伝えておいて」
「かしこまりました」
一拍置いて、セリアは続ける。
「それと、導きの神アステカーナ様より、主様へ転生者割り当てのご相談が届いております」
「わかったわ。
何人くらい?」
「はい。
使徒トラマス殿の見立てでは、三人になるとのことです」
「三人!?」
ティアは思わず声を上げた。
「多すぎるわ……一度、私から直接話す。
調整が必要ね」
「承知しました。
では、使徒トラマス殿には私からその旨を」
「お願い」
そう告げると、セリアは静かに姿を消した。
転生者の割り当ては、この世界だけの問題ではない。
導きの神アステカーナによって、無数の世界へと振り分けられている。
世界の歪み。
神の誕生。
交差する運命線。
それらが矛盾を生み、転生者という“例外”を発生させる。
神々はそれを管理することで、世界が破綻するのを防いでいるのだ。
だが、三人は多い。
ティアは静かに息を吐いた。
少女としての時間と、神としての責務。
その両方を抱えながら、彼女は再び歩き出す。
夏の思い出を胸に抱いたまま。
屋敷の中からは、どこか懐かしく食欲をそそる香りが漂ってくる。
バアミルたちはすでに夕食の支度に取りかかっており、キッチンは慌ただしくも穏やかな空気に包まれていた。
ティア、ミミィ、アーシャの三人はソファに並んで腰を下ろす。
「ミミィもアーシャも、誕生日を祝ってくれてありがとう」
ティアは少し照れたように微笑みながら言った。
「今度は私が、二人の誕生日をちゃんとお祝いするからね」
「親友の誕生日を祝うのは当たり前でしょ」
ミミィは胸を張って笑う。
「その代わり、ティアからのプレゼントには期待してるよ~?」
「私はね、ティアの誕生日を一緒に過ごせただけで幸せよ」
アーシャも柔らかな笑みを浮かべる。
「だから、私の時も……三人で祝えたら嬉しいな」
「任せて!」
ティアはぐっと拳を握った。
「盛大にやるから覚悟してて!」
そして、ふと思い出したように話題を変える。
「そういえばね、今日占いをしてもらったの」
少し得意げに胸を張るティア。
「二人は行かなかったの?」
「占い?」
ミミィは首を傾げる。
「気づかなかったなぁ。
ね、アーシャ?」
「うん……私も見逃してたかも」
アーシャは少し残念そうに言った。
「そうなんだ」
ティアは少し考えてから、ぱっと立ち上がる。
「じゃあ、今から行ってみる?
まだやってるかもしれないよ」
「行く!」
ミミィは即答だった。
「占い大好き!」
アーシャも頷き、三人は揃って立ち上がる。
「バアミル!
ちょっと出かけてくるね!」
ティアはそう声をかけると、二人と一緒に屋敷を飛び出した。
街に着き、ティアの記憶を頼りに占いの館があった場所まで来る。
だが、そこにあったはずの店は、影も形もなかった。
「あれ……?」
ティアは足を止める。
「ここ、占いの店だったのに……」
そこにあったのは、ごく普通の雑貨屋だった。
念のため中へ入り、ティアは店主の女性に声をかける。
「すみません。
ここって、占いのお店じゃないですよね?」
「占い?」
店主はきょとんとした顔で答える。
「見ての通り、雑貨屋だよ」
店を出ると、ミミィとアーシャが不思議そうにティアを見る。
「占いの店だったの?」
ミミィが首を傾げる。
「うん……確かに、占ってもらったの」
ティアは胸の奥がざわつくのを感じていた。
「他も探してみる?」
アーシャがティアの肩にそっと手を置く。
「場所を間違えてるかもしれないし」
「うん、とりあえず探してみよう」
それから三人で街を歩き回ったが、占いの館はどこにも見つからなかった。
「ええ~!
嘘でしょ……」
ティアは思わず声を上げる。
「不思議なこともあるもんだね」
ミミィは腕を組み、少し考え込むような表情を浮かべる。
「もしかして、ティアだけに何かを伝えに来た占いだったとか?」
「それ、ありそう!」
アーシャは目を輝かせた。
「ええ~……そうかなぁ」
ティアは苦笑しながら肩を落とす。
「二人にも占ってもらいたかったのに」
「まあまあ、仕方ないよ!」
ミミィはいつもの調子で笑顔を取り戻す。
「帰ろう!
ご飯も待ってるし」
「そうね。
こんな世界だもの、不思議なことの一つや二つあってもおかしくないわ」
アーシャも優しく微笑む。
「……そうだね」
ティアも気持ちを切り替えるように笑った。
「残念だけど、帰ろう!」
夕暮れの街を背に、三人は並んで施設への帰路についた。
その胸の奥に、小さな違和感を残したまま。
夕食を終えて食器が片付くと、ミミィがソファの上でぴょこんと姿勢を正した。
「ねぇ、ティア、アーシャ。
この夏休み、本格的にアイドル活動したいんだけど、どうかな?」
「私もそれ、考えてた!」
アーシャがすぐに頷き、目を輝かせる。
「そうね……。
そろそろ動き出さないと、ミミィのファンにも申し訳ない気がするわ。」
「えぇ!? ティアのファンでしょ!」
ミミィは慌てて手を振る。
「私のファンなんて、まだまだだし!」
その様子に、ティアとアーシャは顔を見合わせてクスッと笑った。
「じゃあ、具体的に何をするの?」
アーシャが腕を組み、少し真面目な表情になる。
「それでね、ティアにお願いがあるの!」
ミミィが身を乗り出してぐっと顔を近づける。
「ティアのバイト先のクレスン店長、テレビ局のプロデューサーと知り合いだったよね?
一度、話を聞けないか聞いてほしいの!」
「え?」
ティアは少し驚きつつも考える。
「聞くのはいいけど、少し前の話よ?
うまく繋がるかは分からないわ。」
「いいのいいの!
話ができるだけでも大進歩だよ!」
ミミィは両手を合わせて期待の眼差し。
「……わかった。
店長に聞いてみる。」
「やったぁ!助かる~!」
ミミィはガッツポーズを決めた。
「でも、その前に目標を決めた方がいいと思う。」
アーシャが冷静に切り出す。
「闇雲にやっても、疲れるだけだし。」
「確かに。」
ティアも頷く。
「じゃあ、オーディション探そう!」
ミミィが即答した。
「現実的ね。」
ティアがスマホを取り出す。
「情報収集から始めましょう。」
3人はソファに並んで座り、それぞれスマホを操作し始めた。
画面には次々と情報が流れていく。
・新人アイドル発掘オーディション
・アイドル育成専門スクール
・テレビ局・芸能プロダクション主催の公開オーディション
「……いっぱいあるね。」
ティアは少し真剣な表情になる。
「全部応募しよ!」
ミミィは迷いなく宣言した。
「全部!?」
ティアは思わず声を上げる。
「体力も気力も大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!」
ミミィは親指を立てて笑う。
「やらない後悔より、やって反省だよ!」
アーシャはその様子を見て、くすっと微笑んだ。
「まあ、ミミィらしいね。」
「空回りしないといいけど……」
ティアは心配そうにしつつも、その瞳には期待が宿っていた。
「大丈夫だよ。」
ミミィは自信満々に言う。
「3人一緒なんだから!」
そうして、夏休みのアイドル活動に向けた第一歩は、にぎやかで少し無謀な話し合いと共に幕を開けたのだった。
その夜、三人は避暑地で過ごす最後の夏休みを惜しむように楽しむことにした。
バアミルたちが用意してくれた花火を手に、庭へと出る。
火をつけた瞬間、ぱちぱちと音を立てて光が弾けた。
夜空に小さな花が咲くたび、ミミィとアーシャは声を上げてはしゃぎ回る。
「きれい!」
「見て見て、次はこれ!」
無邪気に笑う二人の姿を眺めながら、ティアは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
この時間が、ずっと続けばいいのに。
弾けては消える花火の光を見つめながら、ティアは静かにそう願った。
避暑地から戻った後、ティアは屋敷で穏やかな日々を過ごしていた。
夏の余韻に包まれながら、静かな時間の中で瞑想に入る。
意識を深く沈めると、世界が俯瞰される。
それは神の目。
人の視座を超えた視界。
アルマたちの活動は落ち着き、冒険者や勇者ミンデの活躍によって世界の均衡は保たれていた。
人の営みは、今のところ平穏だ。
ただ一つを除いて。
魔王の存在。
大きな闇の本体は眠りについたが、闇そのものが消えたわけではない。
力は形を変え、やがて魔王という器を得て顕現する。
それは世界の理。
神であっても、完全にねじ曲げることはできない法則だった。
瞑想を終えると、空間がわずかに揺らぎ、セリアが姿を現す。
「魔王の存在が、気になりますか?」
「んー……まだ大丈夫ね」
ティアは穏やかに答えた。
「今のところ、大きな力にはなっていないわ。
ミンデには後で伝えておいて」
「かしこまりました」
一拍置いて、セリアは続ける。
「それと、導きの神アステカーナ様より、主様へ転生者割り当てのご相談が届いております」
「わかったわ。
何人くらい?」
「はい。
使徒トラマス殿の見立てでは、三人になるとのことです」
「三人!?」
ティアは思わず声を上げた。
「多すぎるわ……一度、私から直接話す。
調整が必要ね」
「承知しました。
では、使徒トラマス殿には私からその旨を」
「お願い」
そう告げると、セリアは静かに姿を消した。
転生者の割り当ては、この世界だけの問題ではない。
導きの神アステカーナによって、無数の世界へと振り分けられている。
世界の歪み。
神の誕生。
交差する運命線。
それらが矛盾を生み、転生者という“例外”を発生させる。
神々はそれを管理することで、世界が破綻するのを防いでいるのだ。
だが、三人は多い。
ティアは静かに息を吐いた。
少女としての時間と、神としての責務。
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