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第十九章 転生者編
第百五十五話 異世界からの転生者
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この世界における転生者の理は、
あらゆる世界線に走る運命線の歪みが波紋となり、やがて人に不自然な死をもたらすところから始まる。
しかしそれは、自然の循環に則った死ではない。
魂は新たな命の種となることができず、現世の形を保ったまま世界から弾き出されてしまう。
そのまま放置すれば、矛盾は膨張し、さらなる歪みを生む。
ゆえに神々は、その矛盾を解消するため、
転生という形で魂を次の世界へと繋ぎ留めるのだ。
ティアは神界へと赴いた。
神界は、不可侵の空間に存在する神々の都
オリペストロフと呼ばれる巨大都市である。
導きの神アステカーナは、その一角に居を構えていた。
「導きの神アステカーナ。
転生者の割り当てについて聞きました」
ティアは静かに切り出す。
「三人は多すぎるわ。
せめて二人に減らしてもらえないかしら?」
「神ティア。
初めてお目にかかります」
アステカーナは穏やかな声で応じた。
背中まで流れる銀髪、白磁のような肌、銀色の瞳。
華奢でありながら、揺るぎない神格を宿した存在だった。
「残念ですが、割り当ては変更できません。
あなたの誕生が引き金となり、三人の転生が不可避となったのです」
「……私の責任、ということ?」
「ええ。
そうなりますね」
アステカーナは淡々と告げる。
「ですが、それは責めるためではありません。
世界の歪みを受け止め、調律する役目があなたに託された、ということです」
「それでも三人は多いわ。
今の私の世界は、とても平穏なのに……」
「こちらが転生者の情報です」
アステカーナは小さな光の板――ポードを差し出した。
「重大な事故により、三人同時に命を落とします。
転生まで、あと二日」
ティアがポードに視線を落とす。
二人は二十代の男性。
同じ会社に勤めていた従業員。
もう一人は、高校生の少女。
いずれも、あまりにも若い命だった。
「納得はしていないけど……
あと二日なら、受け入れるしかないわね」
「神ティア。
譲渡できるスキルは二つまでにしてください」
アステカーナは念を押す。
「それ以上は、世界への負荷が大きくなります。
どうか、ご理解を」
「わかりました」
ティアは神界を後にし、自らの屋敷へと戻った。
その瞬間、部屋の空間がわずかに揺らぎ、
セリアとダクトスが姿を現す。
「神ティア。
転生者の割り当てがあったのですね?」
「ええ……三人も」
「主様。
転生者の割り当ては、数百年に一度の出来事です」
セリアは静かに続ける。
「どのように対処されるおつもりでしょうか?」
ティアは小さく息を吐いた。
「私が原因で生まれた歪みなら、受け入れるしかないわね。
できれば……静かに、この世界で生きてくれるといいけれど」
彼女の胸にあるのは責任と、そしてわずかな不安。
どんな人間が、この世界へとやって来るのか。
それだけが、今のティアの心を静かに揺らしていた。
あっという間に二日が過ぎ、転生者を迎える時が来た。
屋敷の自室で静かに過ごしていたティアの前に、音もなくダクトスが現れる。
「神ティア。
そろそろのようです。
転生者は、常に非常にアンバランスな存在となります。
災いとなるか、救いとなるか。
すべては神の御心のままに」
そう告げると、ダクトスは影のように消え去った。
「……さて。
仕事をしましょうか」
ティアは小さく息を整えると、神域を展開した。
その身を神装が包み込み、蒼炎を纏う神。
蒼炎神ティアとして、果てしなく白い世界へと降り立つ。
そこには、彼女のためだけに用意された神座があった。
ティアはゆっくりと腰を下ろす。
次の瞬間、空間が揺らぎ、三つの光の玉が現れる。
淡く脈動するその光は、次第に輪郭を持ち、人の形へと変わっていった。
「……ん?」
「ここは……?」
「え、なに……どうして……?」
突然の出来事に、三人は混乱した様子で周囲を見回す。
「おい、杉山……どうなってるんだ、これ」
「牧田、俺に聞くなよ……俺だってわからない」
二人の男性が顔を見合わせる。
一方、少女は胸を押さえ、青ざめた顔でうずくまっていた。
「……うぅ。
確か……車が……」
その様子を、ティアは静かに見つめていた。
「戸惑うのは当然ね。
でも、少し落ち着いて。
今から説明するわ」
柔らかく、しかし確かな威厳を帯びた声。
三人はようやく、目の前に座す存在へと視線を向ける。
「……誰だ?」
「もしかして……神様?」
「ここは……天国、ですか……?」
「天国ではないわ」
ティアは穏やかに首を振る。
「あなたたちはすでに亡くなっている。
今ここにいるのは、肉体を失った精神体よ。
そして私はこの世界を管理する神。
蒼炎神ティアです」
「やっぱり神様だ……!」
「死んだって……どういう意味だよ……」
「天国じゃ……ないんだ……」
動揺と恐怖が、その場を満たす。
「どうしてここにいるのか。
順を追って説明するわ」
ティアは淡々と、しかし丁寧に語り始める。
「この世には、無数の世界が存在している。
そして、その中の一つが、私の管理する世界よ。
数百年に一度、どこかの世界で巨大な衝撃が発生する。
その衝撃は波となり、あらゆる世界線を巡って、人の運命線に影響を与えるの」
三人は息を呑んで耳を傾ける。
「その影響を受けた人間は、例外なく死を迎える。
けれどそれは、自然の理に沿った死ではない。
そのため、魂は新たな命へと還元されず、世界線に歪みを残してしまう」
ティアの蒼い瞳が、静かに三人を見据える。
「神は、その歪みを放置しない。
衝撃によって失われた魂を精神体として救い上げ、
転生という形で命を繋ぐ。
それが、あなたたち三人よ」
言葉を失い、三人は呆然と立ち尽くす。
「ここで、あなたたちには選択肢があるわ」
ティアは一拍置いて続けた。
「私の世界で、転生者として新たな人生を歩むか。
それとも、永遠の眠りにつくか。
つまり、本当の意味での死を選ぶか」
静寂。
「……俺は、転生する!」
真っ先に声を上げたのは杉山だった。
「牧田も、そうだろ?」
「……ああ。
正直、訳が分からないけど……
もう一度生きられるなら、俺はそうしたい」
「……わ、私も……転生します……」
少女は震える声で、しかし確かにそう答えた。
「そう。
なら決まりね」
ティアは小さく頷く。
「これから、あなたたちが生きる世界の説明をするわ」
ティアは掌を上に向け、蒼い炎を静かに灯してみせる。
「私の世界には、複数の種族が存在し、魔法があり、魔物もいる。
文明水準は、あなたたちの世界と大きくは変わらないと思っていい」
揺らめく炎に、三人の目が釘付けになる。
「……魔法……」
「本当に……異世界なんだ……」
「質問があれば、今のうちに聞きなさい」
蒼炎が静かに消える中、
三人の新たな運命が、確かに動き始めていた。
真っ先に、女の子がおずおずと、しかし勢いよく手を挙げた。
「あ、あのう!
転生って……今の姿のまま生まれ変わる感じなんですか?」
「いい質問ね」
ティアは微笑み、指を二本立てた。
「転生の方法は二つあるわ。
一つは、新しい命として0歳から生まれ直す方法。
もう一つは、15歳からのスタート。
こちらは、私が用意した肉体に魂を移す形になるの」
「じゃ、じゃあ!」
女の子は一歩前に出て、目を輝かせる。
「私は15歳からがいいです!
できれば……女神様みたいな、可愛い女の子にしてほしいです!」
「あ……」
一瞬きょとんとした後、ティアは小さく咳払いをした。
「そ、そう。
褒めてくれてありがとう」
ほんのり頬を染めつつ、照れ隠しに視線を逸らす。
「さすがに完全に同じにはできないけど、制限の範囲内で可愛らしくはできると思うわ」
そう言ってから、男性二人へと視線を向けた。
「それで、あなた達はどうする?」
「俺は0歳からがいい!」
即答したのは杉山だった。
「最初からやり直す方が、なんかワクワクするし!」
「俺は15歳スタートで」
牧田は少し考えてから言い、真顔で続ける。
「……できれば、イケメンで」
「欲望に正直ね」
ティアはくすっと笑った。
「じゃあ確認するわね。
杉山、あなたは0歳スタート」
「はい!」
「わかったわ」
ティアは指先を軽く振ると、杉山の前に半透明のスキル表を展開した。
「この中から二つ選んで。
スキルは誰にでも適合するわけじゃないから、あなたに付与できるものだけを表示しているわ」
「じゃあ……これとこれで!」
迷いなく指差す。
「【瞬足】と【剣士】ね」
「はい!
冒険者として活躍したいんです!」
「いい心意気ね」
ティアは満足そうに頷いた。
「では、とある町に暮らす母親の子として命を宿してもらうわ」
そう告げて手をかざすと、杉山の精神体は柔らかな光に包まれ、やがて光の球となって地上へと流れ落ちていった。
「……さて、次は牧田ね」
ティアは再びスキル表を展開する。
「イケメン希望。
スキルは?」
「【早熟】と【魔法耐性】で」
「堅実ね。
悪くないわ」
ティアは静かに頷く。
「用意した肉体に魂を移して、15歳として地上に送るわ。
新しい人生、楽しみなさい」
光が牧田を包み込み、その姿もまた空へと消えていった。
「さて、最後はあなたね」
ティアは女の子へと視線を戻す。
「名前を聞いていなかったわ」
「あ、はい!
北田舞って言います」
少し緊張した様子で続ける。
「名前は……そのままなんですか?」
「名前には力があるの。存在そのものとも言えるわ」
ティアは穏やかに答えた。
「でも、転生後に自分で変えてもいい。
気に入った名前で生きなさい」
そう言って、舞の前にもスキル表を浮かべる。
「スキルはどうする?」
「ええと……」
しばらく悩んだ後、にっこり笑って指を差す。
「これと、これ!」
「【火魔法】と【物理耐性】ね」
「はい!
魔法に憧れてて……あと、痛いのは嫌なので!」
「正直でよろしい」
ティアはくすりと笑った。
「じゃあ、可能な限り可愛らしく整えて、地上へ送るわ」
舞の体が光に包まれ、ふわりと浮かび上がって消えていく。
すべてが終わり、白い神域には静寂だけが残った。
「……ふう」
ティアは小さく息を吐く。
「無事に終わったわね」
神装を解き、神域を閉じると、ティアは再び自らの屋敷へと戻っていった。
三つの新たな運命が、静かに動き始めていることを感じながら。
あらゆる世界線に走る運命線の歪みが波紋となり、やがて人に不自然な死をもたらすところから始まる。
しかしそれは、自然の循環に則った死ではない。
魂は新たな命の種となることができず、現世の形を保ったまま世界から弾き出されてしまう。
そのまま放置すれば、矛盾は膨張し、さらなる歪みを生む。
ゆえに神々は、その矛盾を解消するため、
転生という形で魂を次の世界へと繋ぎ留めるのだ。
ティアは神界へと赴いた。
神界は、不可侵の空間に存在する神々の都
オリペストロフと呼ばれる巨大都市である。
導きの神アステカーナは、その一角に居を構えていた。
「導きの神アステカーナ。
転生者の割り当てについて聞きました」
ティアは静かに切り出す。
「三人は多すぎるわ。
せめて二人に減らしてもらえないかしら?」
「神ティア。
初めてお目にかかります」
アステカーナは穏やかな声で応じた。
背中まで流れる銀髪、白磁のような肌、銀色の瞳。
華奢でありながら、揺るぎない神格を宿した存在だった。
「残念ですが、割り当ては変更できません。
あなたの誕生が引き金となり、三人の転生が不可避となったのです」
「……私の責任、ということ?」
「ええ。
そうなりますね」
アステカーナは淡々と告げる。
「ですが、それは責めるためではありません。
世界の歪みを受け止め、調律する役目があなたに託された、ということです」
「それでも三人は多いわ。
今の私の世界は、とても平穏なのに……」
「こちらが転生者の情報です」
アステカーナは小さな光の板――ポードを差し出した。
「重大な事故により、三人同時に命を落とします。
転生まで、あと二日」
ティアがポードに視線を落とす。
二人は二十代の男性。
同じ会社に勤めていた従業員。
もう一人は、高校生の少女。
いずれも、あまりにも若い命だった。
「納得はしていないけど……
あと二日なら、受け入れるしかないわね」
「神ティア。
譲渡できるスキルは二つまでにしてください」
アステカーナは念を押す。
「それ以上は、世界への負荷が大きくなります。
どうか、ご理解を」
「わかりました」
ティアは神界を後にし、自らの屋敷へと戻った。
その瞬間、部屋の空間がわずかに揺らぎ、
セリアとダクトスが姿を現す。
「神ティア。
転生者の割り当てがあったのですね?」
「ええ……三人も」
「主様。
転生者の割り当ては、数百年に一度の出来事です」
セリアは静かに続ける。
「どのように対処されるおつもりでしょうか?」
ティアは小さく息を吐いた。
「私が原因で生まれた歪みなら、受け入れるしかないわね。
できれば……静かに、この世界で生きてくれるといいけれど」
彼女の胸にあるのは責任と、そしてわずかな不安。
どんな人間が、この世界へとやって来るのか。
それだけが、今のティアの心を静かに揺らしていた。
あっという間に二日が過ぎ、転生者を迎える時が来た。
屋敷の自室で静かに過ごしていたティアの前に、音もなくダクトスが現れる。
「神ティア。
そろそろのようです。
転生者は、常に非常にアンバランスな存在となります。
災いとなるか、救いとなるか。
すべては神の御心のままに」
そう告げると、ダクトスは影のように消え去った。
「……さて。
仕事をしましょうか」
ティアは小さく息を整えると、神域を展開した。
その身を神装が包み込み、蒼炎を纏う神。
蒼炎神ティアとして、果てしなく白い世界へと降り立つ。
そこには、彼女のためだけに用意された神座があった。
ティアはゆっくりと腰を下ろす。
次の瞬間、空間が揺らぎ、三つの光の玉が現れる。
淡く脈動するその光は、次第に輪郭を持ち、人の形へと変わっていった。
「……ん?」
「ここは……?」
「え、なに……どうして……?」
突然の出来事に、三人は混乱した様子で周囲を見回す。
「おい、杉山……どうなってるんだ、これ」
「牧田、俺に聞くなよ……俺だってわからない」
二人の男性が顔を見合わせる。
一方、少女は胸を押さえ、青ざめた顔でうずくまっていた。
「……うぅ。
確か……車が……」
その様子を、ティアは静かに見つめていた。
「戸惑うのは当然ね。
でも、少し落ち着いて。
今から説明するわ」
柔らかく、しかし確かな威厳を帯びた声。
三人はようやく、目の前に座す存在へと視線を向ける。
「……誰だ?」
「もしかして……神様?」
「ここは……天国、ですか……?」
「天国ではないわ」
ティアは穏やかに首を振る。
「あなたたちはすでに亡くなっている。
今ここにいるのは、肉体を失った精神体よ。
そして私はこの世界を管理する神。
蒼炎神ティアです」
「やっぱり神様だ……!」
「死んだって……どういう意味だよ……」
「天国じゃ……ないんだ……」
動揺と恐怖が、その場を満たす。
「どうしてここにいるのか。
順を追って説明するわ」
ティアは淡々と、しかし丁寧に語り始める。
「この世には、無数の世界が存在している。
そして、その中の一つが、私の管理する世界よ。
数百年に一度、どこかの世界で巨大な衝撃が発生する。
その衝撃は波となり、あらゆる世界線を巡って、人の運命線に影響を与えるの」
三人は息を呑んで耳を傾ける。
「その影響を受けた人間は、例外なく死を迎える。
けれどそれは、自然の理に沿った死ではない。
そのため、魂は新たな命へと還元されず、世界線に歪みを残してしまう」
ティアの蒼い瞳が、静かに三人を見据える。
「神は、その歪みを放置しない。
衝撃によって失われた魂を精神体として救い上げ、
転生という形で命を繋ぐ。
それが、あなたたち三人よ」
言葉を失い、三人は呆然と立ち尽くす。
「ここで、あなたたちには選択肢があるわ」
ティアは一拍置いて続けた。
「私の世界で、転生者として新たな人生を歩むか。
それとも、永遠の眠りにつくか。
つまり、本当の意味での死を選ぶか」
静寂。
「……俺は、転生する!」
真っ先に声を上げたのは杉山だった。
「牧田も、そうだろ?」
「……ああ。
正直、訳が分からないけど……
もう一度生きられるなら、俺はそうしたい」
「……わ、私も……転生します……」
少女は震える声で、しかし確かにそう答えた。
「そう。
なら決まりね」
ティアは小さく頷く。
「これから、あなたたちが生きる世界の説明をするわ」
ティアは掌を上に向け、蒼い炎を静かに灯してみせる。
「私の世界には、複数の種族が存在し、魔法があり、魔物もいる。
文明水準は、あなたたちの世界と大きくは変わらないと思っていい」
揺らめく炎に、三人の目が釘付けになる。
「……魔法……」
「本当に……異世界なんだ……」
「質問があれば、今のうちに聞きなさい」
蒼炎が静かに消える中、
三人の新たな運命が、確かに動き始めていた。
真っ先に、女の子がおずおずと、しかし勢いよく手を挙げた。
「あ、あのう!
転生って……今の姿のまま生まれ変わる感じなんですか?」
「いい質問ね」
ティアは微笑み、指を二本立てた。
「転生の方法は二つあるわ。
一つは、新しい命として0歳から生まれ直す方法。
もう一つは、15歳からのスタート。
こちらは、私が用意した肉体に魂を移す形になるの」
「じゃ、じゃあ!」
女の子は一歩前に出て、目を輝かせる。
「私は15歳からがいいです!
できれば……女神様みたいな、可愛い女の子にしてほしいです!」
「あ……」
一瞬きょとんとした後、ティアは小さく咳払いをした。
「そ、そう。
褒めてくれてありがとう」
ほんのり頬を染めつつ、照れ隠しに視線を逸らす。
「さすがに完全に同じにはできないけど、制限の範囲内で可愛らしくはできると思うわ」
そう言ってから、男性二人へと視線を向けた。
「それで、あなた達はどうする?」
「俺は0歳からがいい!」
即答したのは杉山だった。
「最初からやり直す方が、なんかワクワクするし!」
「俺は15歳スタートで」
牧田は少し考えてから言い、真顔で続ける。
「……できれば、イケメンで」
「欲望に正直ね」
ティアはくすっと笑った。
「じゃあ確認するわね。
杉山、あなたは0歳スタート」
「はい!」
「わかったわ」
ティアは指先を軽く振ると、杉山の前に半透明のスキル表を展開した。
「この中から二つ選んで。
スキルは誰にでも適合するわけじゃないから、あなたに付与できるものだけを表示しているわ」
「じゃあ……これとこれで!」
迷いなく指差す。
「【瞬足】と【剣士】ね」
「はい!
冒険者として活躍したいんです!」
「いい心意気ね」
ティアは満足そうに頷いた。
「では、とある町に暮らす母親の子として命を宿してもらうわ」
そう告げて手をかざすと、杉山の精神体は柔らかな光に包まれ、やがて光の球となって地上へと流れ落ちていった。
「……さて、次は牧田ね」
ティアは再びスキル表を展開する。
「イケメン希望。
スキルは?」
「【早熟】と【魔法耐性】で」
「堅実ね。
悪くないわ」
ティアは静かに頷く。
「用意した肉体に魂を移して、15歳として地上に送るわ。
新しい人生、楽しみなさい」
光が牧田を包み込み、その姿もまた空へと消えていった。
「さて、最後はあなたね」
ティアは女の子へと視線を戻す。
「名前を聞いていなかったわ」
「あ、はい!
北田舞って言います」
少し緊張した様子で続ける。
「名前は……そのままなんですか?」
「名前には力があるの。存在そのものとも言えるわ」
ティアは穏やかに答えた。
「でも、転生後に自分で変えてもいい。
気に入った名前で生きなさい」
そう言って、舞の前にもスキル表を浮かべる。
「スキルはどうする?」
「ええと……」
しばらく悩んだ後、にっこり笑って指を差す。
「これと、これ!」
「【火魔法】と【物理耐性】ね」
「はい!
魔法に憧れてて……あと、痛いのは嫌なので!」
「正直でよろしい」
ティアはくすりと笑った。
「じゃあ、可能な限り可愛らしく整えて、地上へ送るわ」
舞の体が光に包まれ、ふわりと浮かび上がって消えていく。
すべてが終わり、白い神域には静寂だけが残った。
「……ふう」
ティアは小さく息を吐く。
「無事に終わったわね」
神装を解き、神域を閉じると、ティアは再び自らの屋敷へと戻っていった。
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