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2話 推しです
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チリンとサンキャッチャーが軽い音を立てながら、入口の引き戸が開けられた。
「こんにちは」
店内に入って来たのは知臣だった。
「いらっしゃいませ知臣さん」
にこりと迎え入れ、グラスに水を注ぐ。
コートを脱いでカウンター席に腰を下ろした知臣の前にグラスとメニューを置いた。
ありがとうと笑う顔は、いつも通りの整った美貌だ。
(すっかり常連になったな)
常連になると宣言されたとおり、彼は初日以降は店休日を除いてほぼ毎日来ている。
最初は夕方に来ていたけれど、あまりの整った容姿に知臣目当ての大学生を中心に店に押しかけ騒がれることが続いた。
それに辟易したらしく、今では朝一番で来店するようになっている。
お客が増えた方が嬉しいかもしれないけれど、煩わしいからと謝られた。
烈の店は静かに過ごす常連さんが中心で、騒がれるのは本意ではないから大丈夫と言ったらほっとした顔をされた。
はっきり煩わしいと言ったから騒がれるのは好きじゃないらしい。
美形故の被害や苦労があるのだろう。
「ほうじ茶ラテと……今日はチョコケーキを」
知臣の注文に烈の眉がピクリと動いた。
むむ、と思わずわずかに眉を寄せてしまう。
言おうかどうしようかと迷う烈に、知臣が不思議そうに見上げてくる。
差し出がましいかなとは思ったけれど、いいやこれは大事なことだと己を奮い立たせてから、烈は腹に力を込めた。
「知臣さん」
神妙な顔で名前を呼ぶと、首を小さく傾げられる。
「知臣さんはほぼ毎日、うちに来てますね」
「そうだね。え……もしかして迷惑だった?」
ハッとなった知臣の顔色が変わるのを見て、誤解をさせたと慌てて烈は首を振った。
「違います!来てくれて嬉しいです」
ハッキリ目を見て言えば、あからさまにほっとされる。
そんなにうちの店を気に入ってくれているんだなとほっこりしながらも、本題はこれからだと気を引き締めた。
「そうじゃなくて、うちに来たら必ずおやつ頼んでますよね」
「? そうだね」
あっさり頷かれる。
これは駄目だ。
わかっていない。
烈は腰に手を当てると、ビシリと言い放った。
「駄目ですよ!」
「え?」
「こんな毎日おやつ食べてたら糖尿病一直線ですよ!」
そうなのだ。
血糖値が心配になるくらい毎回しっかり甘いものを食べていく知臣に、烈は彼の体が大丈夫だろうかと気になって仕方がなかった。
けれど知臣はのんびりと笑った。
「そんな大げさな」
「大げさじゃありません。知臣さん何歳ですか?」
「二十八だね。烈君は?」
「二十三です。そうじゃなくて!代謝はどんどん落ちるんですよ。今はよくても将来が心配になります」
知臣はジムで体を動かすこともしているらしく、長身の体は引き締まっているようだけれど、隠れメタボになっていてもおかしくないと烈は思っている。
なので烈はビシリと非情な宣告を口にした。
「今度からうちに来てもおやつは三日に一度にしましょう」
「ええ!?それは待って!今一番の楽しみなんだよ。それに、この店も烈君も僕の推しだからお金落としたいんだ!」
目を剥いた知臣から何だか不思議な単語が聞こえてきた。
「……推し?」
「推し」
反復すると、こくりと真剣に頷かれる。
「え……何ですそれ」
あまり馴染みのない単語だ。
知臣はよく聞いてくれたというように、得意気な顔をした。
「最近よく聞くよね。好きで応援したい対象のことだよ。そしてこの店と烈君は僕の推し。推しには貢ぎたいよね。あと普通におやつ美味しいから食べたい」
つらつらと流暢にされた説明に、烈は驚いた。
そういえば聞いたことがある。
自分の一押しのアイドルや俳優なんかにそんな単語を使うのだと。
「な、なに言ってるんですか!」
まさかそんな扱いを受けているとは予想だにせず、どう反応していいかわからない。
動揺から頬に朱が走った。
「そんな、推しとか」
「真っ赤だ、可愛い」
わたわたとどう反応すればいいのか無意味に手を動かしてしまうと、頬の赤さを知臣に指摘されてますます顔が熱くなった。
何も言えず、目線が下がってしまう。
「だからね、僕の甘味欲と貢ぎ欲をまとめて消化できる機会を奪わないで?」
甘やかに告げられて、いやいやしかしと目線を上げたらじっと青い瞳に見つめられてしまった。
(うっ!顔がいい!)
店の外から見かけた若い女性客が、そわそわしながら入ってくるぐらいの攻撃力だ。
しかしこのまま承諾してしまえば知臣は近い未来糖尿病予備軍になる可能性がある。
ハッと我に返ってぶんぶんと首を振った。
「流されるところだった!駄目ですよ、貢がなくていいんです。充分です。甘味欲も我慢してください」
「流されなかったか」
むうと知臣の唇が尖らせられる。
とても不服そうだ。
「とにかく!売上よりも知臣さんの健康です。今度からおやつは三日に一度!今日はおやつ無しです」
ビシリと言い切ってやった。
ただのカフェの店主が差し出がましいと言われるかもしれないけれど、とそっと知臣をうかがって烈は息を飲んだ。
何故かふんわりと、このうえなく嬉しそうに知臣が微笑んだのだ。
どこにも不満や憤りは見られない。
あれと思ったら、知臣が手をゆるく組んでその上に顎を乗せた。
機嫌が良さそうににこにことしている。
「売上より俺の健康なんだ?」
「え、まあ……常連さんには長く元気に通ってほしいですし」
「ふうん……わかった。今日はおやつは我慢する。ついでにおやつも三日に一度しか頼まない」
これならいいだろうと上目に見てくる知臣にほっと息をついて烈は頷いた。
本来ならただのカフェの店員が言うようなことではないし、知臣も受け入れる必要なんてない。
それでも笑って受け入れてくれた知臣に烈は心がふんわりと温かくなった。
「口出すべきじゃないとは思いますけど、体壊すのは見たくないんです」
すみませんと寂し気に眉尻を下げて謝った。
それを知臣がじっと見つめて、少しの沈黙が店内に落ちる。
「……何かあった?」
「あ、いや、気にしないでください」
慌てて烈がへらりとごまかすように笑って見せる。
それを見つめる知臣が烈君と真剣な顔で名前を呼んだ。
さっきまでの、のんびりとした顔ではないことに烈は少し驚いてしまう。
「僕は君が推しだって言ったね、大切ってことだ。無理に僕に話す必要はないけど、もしも何かあればいつでも頼ってくれると嬉しい」
思いがけない言葉を貰ってしまい、烈はぽかんとしたあと知臣の言葉がじわじわと脳に浸透してからキョロキョロと視線をさまよわせた。
そうして俯いてしまう。
その目尻はほんのりと赤くなってしまっていた。
「ありがとうございます。俺友人とかと疎遠だから、そう言ってもらえるの凄く嬉しいです」
「君は僕に元気でいてほしいって言うけど、僕も烈君には元気に健やかでいてほしいよ」
知臣の柔らかい声音と言葉に、烈は自分の顔がくしゃりと歪むのを自覚した。
お客さんの前なのにと、必死で表情を取り繕おうとするけれど上手くいかなくて、唇が震える。
「そんなこと言ってくれたの……婆ちゃんくらいです」
「お婆さん?」
「一年前に亡くなって……ずっと二人きりで生きてたんですよ。大往生だったけど、やっぱりあちこちガタがきて最期はしんどそうだったから」
「そうか……」
変な空気になってしまった。
「変な話してすみません」
雰囲気を変えるようにパッと口角を上げて、烈はことさら明るい声音を出した。
お茶を楽しみに来ている人を、自分の身の上話で微妙な気持ちにさせている場合ではない。
そんな烈に知臣は組んだ手から顎を上げると、ゆるりと目元を緩めた。
その目はどこか昔を懐かしむように眼差しが優しい。
「いや、俺も可愛がってくれた祖父を三年前に亡くしたから、わかるよ」
「お爺さんですか?」
烈が尋ねると、知臣は自分の青い瞳をちょいと指差した。
「僕の目青いでしょ。祖父譲りなんだ」
「ハーフかと思ってました」
「いや、クォーターだよ……可愛がってくれた人を亡くすのは、寂しいししんどいよね」
「……はい」
こくりと頷いたら、知臣にちょいちょいと手招きされた。
何だろうと不思議に思いながらカウンター側から知臣の方へ身を乗り出すと、知臣が手を伸ばしてポンポンと烈の癖毛の頭を撫でられた。
手が大きくて包むような感触は優しい。
「お婆さんの代わりにはならないけど、元気に通って烈君の傍にいるよ」
ゆったりと喋る知臣の声は陽だまりみたいに温かかった。
一瞬泣きそうになったのをぐっと奥歯を噛みしめてこらえてる。
「……そうしてくれると嬉しいです」
「うん」
頭を撫でる手に何だか恥ずかしくなり、パッと体を引くと烈は空気を変えるように「ほうじ茶ラテ作りますね!」と鍋を出したり忙しなく動き出した。
両親はいなくて、祖母と二人でずっといた。
友人も、祖母を一人にしたくなくて、カフェを後回しにしたくもなくて疎遠になってしまった。
チラリと知臣を盗み見る。
いつも通り柔和な表情で興味深げに烈の手際を眺めていた。
不思議な人だ。
馴れ馴れしいと思ってしまってもおかしくないのに、柔らかい優しい空気にほっとしてそんな気持ちにならない。
頭を撫でられたのは、亡くなる前日に烈を心配した祖母にされて以来だ。
というか、祖母以外から撫でられたことはない。
先ほどの温かい感触を思い出して、耳が熱くなった気がした。
何とかほうじ茶ラテを作るまで顔を上げずにいようと思い、そのあいだにほてりが治まりますようにと願った。
「こんにちは」
店内に入って来たのは知臣だった。
「いらっしゃいませ知臣さん」
にこりと迎え入れ、グラスに水を注ぐ。
コートを脱いでカウンター席に腰を下ろした知臣の前にグラスとメニューを置いた。
ありがとうと笑う顔は、いつも通りの整った美貌だ。
(すっかり常連になったな)
常連になると宣言されたとおり、彼は初日以降は店休日を除いてほぼ毎日来ている。
最初は夕方に来ていたけれど、あまりの整った容姿に知臣目当ての大学生を中心に店に押しかけ騒がれることが続いた。
それに辟易したらしく、今では朝一番で来店するようになっている。
お客が増えた方が嬉しいかもしれないけれど、煩わしいからと謝られた。
烈の店は静かに過ごす常連さんが中心で、騒がれるのは本意ではないから大丈夫と言ったらほっとした顔をされた。
はっきり煩わしいと言ったから騒がれるのは好きじゃないらしい。
美形故の被害や苦労があるのだろう。
「ほうじ茶ラテと……今日はチョコケーキを」
知臣の注文に烈の眉がピクリと動いた。
むむ、と思わずわずかに眉を寄せてしまう。
言おうかどうしようかと迷う烈に、知臣が不思議そうに見上げてくる。
差し出がましいかなとは思ったけれど、いいやこれは大事なことだと己を奮い立たせてから、烈は腹に力を込めた。
「知臣さん」
神妙な顔で名前を呼ぶと、首を小さく傾げられる。
「知臣さんはほぼ毎日、うちに来てますね」
「そうだね。え……もしかして迷惑だった?」
ハッとなった知臣の顔色が変わるのを見て、誤解をさせたと慌てて烈は首を振った。
「違います!来てくれて嬉しいです」
ハッキリ目を見て言えば、あからさまにほっとされる。
そんなにうちの店を気に入ってくれているんだなとほっこりしながらも、本題はこれからだと気を引き締めた。
「そうじゃなくて、うちに来たら必ずおやつ頼んでますよね」
「? そうだね」
あっさり頷かれる。
これは駄目だ。
わかっていない。
烈は腰に手を当てると、ビシリと言い放った。
「駄目ですよ!」
「え?」
「こんな毎日おやつ食べてたら糖尿病一直線ですよ!」
そうなのだ。
血糖値が心配になるくらい毎回しっかり甘いものを食べていく知臣に、烈は彼の体が大丈夫だろうかと気になって仕方がなかった。
けれど知臣はのんびりと笑った。
「そんな大げさな」
「大げさじゃありません。知臣さん何歳ですか?」
「二十八だね。烈君は?」
「二十三です。そうじゃなくて!代謝はどんどん落ちるんですよ。今はよくても将来が心配になります」
知臣はジムで体を動かすこともしているらしく、長身の体は引き締まっているようだけれど、隠れメタボになっていてもおかしくないと烈は思っている。
なので烈はビシリと非情な宣告を口にした。
「今度からうちに来てもおやつは三日に一度にしましょう」
「ええ!?それは待って!今一番の楽しみなんだよ。それに、この店も烈君も僕の推しだからお金落としたいんだ!」
目を剥いた知臣から何だか不思議な単語が聞こえてきた。
「……推し?」
「推し」
反復すると、こくりと真剣に頷かれる。
「え……何ですそれ」
あまり馴染みのない単語だ。
知臣はよく聞いてくれたというように、得意気な顔をした。
「最近よく聞くよね。好きで応援したい対象のことだよ。そしてこの店と烈君は僕の推し。推しには貢ぎたいよね。あと普通におやつ美味しいから食べたい」
つらつらと流暢にされた説明に、烈は驚いた。
そういえば聞いたことがある。
自分の一押しのアイドルや俳優なんかにそんな単語を使うのだと。
「な、なに言ってるんですか!」
まさかそんな扱いを受けているとは予想だにせず、どう反応していいかわからない。
動揺から頬に朱が走った。
「そんな、推しとか」
「真っ赤だ、可愛い」
わたわたとどう反応すればいいのか無意味に手を動かしてしまうと、頬の赤さを知臣に指摘されてますます顔が熱くなった。
何も言えず、目線が下がってしまう。
「だからね、僕の甘味欲と貢ぎ欲をまとめて消化できる機会を奪わないで?」
甘やかに告げられて、いやいやしかしと目線を上げたらじっと青い瞳に見つめられてしまった。
(うっ!顔がいい!)
店の外から見かけた若い女性客が、そわそわしながら入ってくるぐらいの攻撃力だ。
しかしこのまま承諾してしまえば知臣は近い未来糖尿病予備軍になる可能性がある。
ハッと我に返ってぶんぶんと首を振った。
「流されるところだった!駄目ですよ、貢がなくていいんです。充分です。甘味欲も我慢してください」
「流されなかったか」
むうと知臣の唇が尖らせられる。
とても不服そうだ。
「とにかく!売上よりも知臣さんの健康です。今度からおやつは三日に一度!今日はおやつ無しです」
ビシリと言い切ってやった。
ただのカフェの店主が差し出がましいと言われるかもしれないけれど、とそっと知臣をうかがって烈は息を飲んだ。
何故かふんわりと、このうえなく嬉しそうに知臣が微笑んだのだ。
どこにも不満や憤りは見られない。
あれと思ったら、知臣が手をゆるく組んでその上に顎を乗せた。
機嫌が良さそうににこにことしている。
「売上より俺の健康なんだ?」
「え、まあ……常連さんには長く元気に通ってほしいですし」
「ふうん……わかった。今日はおやつは我慢する。ついでにおやつも三日に一度しか頼まない」
これならいいだろうと上目に見てくる知臣にほっと息をついて烈は頷いた。
本来ならただのカフェの店員が言うようなことではないし、知臣も受け入れる必要なんてない。
それでも笑って受け入れてくれた知臣に烈は心がふんわりと温かくなった。
「口出すべきじゃないとは思いますけど、体壊すのは見たくないんです」
すみませんと寂し気に眉尻を下げて謝った。
それを知臣がじっと見つめて、少しの沈黙が店内に落ちる。
「……何かあった?」
「あ、いや、気にしないでください」
慌てて烈がへらりとごまかすように笑って見せる。
それを見つめる知臣が烈君と真剣な顔で名前を呼んだ。
さっきまでの、のんびりとした顔ではないことに烈は少し驚いてしまう。
「僕は君が推しだって言ったね、大切ってことだ。無理に僕に話す必要はないけど、もしも何かあればいつでも頼ってくれると嬉しい」
思いがけない言葉を貰ってしまい、烈はぽかんとしたあと知臣の言葉がじわじわと脳に浸透してからキョロキョロと視線をさまよわせた。
そうして俯いてしまう。
その目尻はほんのりと赤くなってしまっていた。
「ありがとうございます。俺友人とかと疎遠だから、そう言ってもらえるの凄く嬉しいです」
「君は僕に元気でいてほしいって言うけど、僕も烈君には元気に健やかでいてほしいよ」
知臣の柔らかい声音と言葉に、烈は自分の顔がくしゃりと歪むのを自覚した。
お客さんの前なのにと、必死で表情を取り繕おうとするけれど上手くいかなくて、唇が震える。
「そんなこと言ってくれたの……婆ちゃんくらいです」
「お婆さん?」
「一年前に亡くなって……ずっと二人きりで生きてたんですよ。大往生だったけど、やっぱりあちこちガタがきて最期はしんどそうだったから」
「そうか……」
変な空気になってしまった。
「変な話してすみません」
雰囲気を変えるようにパッと口角を上げて、烈はことさら明るい声音を出した。
お茶を楽しみに来ている人を、自分の身の上話で微妙な気持ちにさせている場合ではない。
そんな烈に知臣は組んだ手から顎を上げると、ゆるりと目元を緩めた。
その目はどこか昔を懐かしむように眼差しが優しい。
「いや、俺も可愛がってくれた祖父を三年前に亡くしたから、わかるよ」
「お爺さんですか?」
烈が尋ねると、知臣は自分の青い瞳をちょいと指差した。
「僕の目青いでしょ。祖父譲りなんだ」
「ハーフかと思ってました」
「いや、クォーターだよ……可愛がってくれた人を亡くすのは、寂しいししんどいよね」
「……はい」
こくりと頷いたら、知臣にちょいちょいと手招きされた。
何だろうと不思議に思いながらカウンター側から知臣の方へ身を乗り出すと、知臣が手を伸ばしてポンポンと烈の癖毛の頭を撫でられた。
手が大きくて包むような感触は優しい。
「お婆さんの代わりにはならないけど、元気に通って烈君の傍にいるよ」
ゆったりと喋る知臣の声は陽だまりみたいに温かかった。
一瞬泣きそうになったのをぐっと奥歯を噛みしめてこらえてる。
「……そうしてくれると嬉しいです」
「うん」
頭を撫でる手に何だか恥ずかしくなり、パッと体を引くと烈は空気を変えるように「ほうじ茶ラテ作りますね!」と鍋を出したり忙しなく動き出した。
両親はいなくて、祖母と二人でずっといた。
友人も、祖母を一人にしたくなくて、カフェを後回しにしたくもなくて疎遠になってしまった。
チラリと知臣を盗み見る。
いつも通り柔和な表情で興味深げに烈の手際を眺めていた。
不思議な人だ。
馴れ馴れしいと思ってしまってもおかしくないのに、柔らかい優しい空気にほっとしてそんな気持ちにならない。
頭を撫でられたのは、亡くなる前日に烈を心配した祖母にされて以来だ。
というか、祖母以外から撫でられたことはない。
先ほどの温かい感触を思い出して、耳が熱くなった気がした。
何とかほうじ茶ラテを作るまで顔を上げずにいようと思い、そのあいだにほてりが治まりますようにと願った。
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