4 / 27
4
しおりを挟む
とにもかくにも朝食は終わりだ。
チョコレートでとどめをさされて、本当に満腹だ。
容量小さいのに頑張りすぎたかもしれない。
ヘルヴィルは椅子からよじよじと下りると、食堂を出た。
横幅も長さもある廊下に出て、とりあえず記憶にある道をなんとなく歩き出す。
ぽてぽてと歩きながら、きょろりとヘルヴィルは周りを見回していた。
記憶にはあるけれど、実感がないという何とも不思議な感覚だ。
ヘルヴィル・フォクライーストには現在二人分の人生の記憶がある。
二歳のヘルヴィルと日本人の十七歳男性の記憶だ。
つい先ほど転んだ時に鼻血が垂れたのと同時に思い出した。
なんともまぬけだなあと思う。
奔流のように流れ込んできた記憶は自分の記憶というか映画を見ているようだったのであまり混乱しなかったのは幸いだった。
ヘルヴィル自身は知らないが、生前の自分。
死んだとかは思いたくないけれど、一応生前としておこう。
そんな自分は、繊細な性格ではあまりなかったのでそのせいかもしれない。
生前のヘルヴィルは家族がいなくて施設育ちだった。
しかも結構ドライな施設だったので家族、とか兄弟、とかそんな雰囲気は欠片もなかった。
学校も施設の子共だということで遠巻きにされていたので、なかなかに寂しいものだったかもと思う。
「にしても、これげーむのせかいだよね」
うむむとヘルヴィルは両腕を組んで立ち止まった。
そうなのだ。
家族の姿を見て、名前を思い出したときにピンときた。
働いていたコンビニでバイトの女子高生が攻略本片手に熱く語ってくれたものと同じだと。
ゲームのタイトルは忘れたけれど。確か乙女ゲームと言っていた気がする。
ヒロインなどのことはあまり覚えていないけれど、悪役兄弟のことは覚えていたのだ。
そう、悪役兄弟。
確か正確の悪い姉のルードレットが悪役令嬢でヒロインを苛め抜き、能無しの兄リスタースがヒロインを手籠めにしようとするのだ。
そしてヘルヴィルはといえば、ルードレットのいじめの実行犯だ。
そして相手役とヒロインがくっついて悪行を暴かれて断罪される。
リスタースが死刑。
ルードレットは国外追放。
ヘルヴィルは奴隷落ちだった気がする。
「へびーだ……」
ゲームでは冷え切った家族で仲が最悪だという設定だった。
だから悪役になるのだろうか。
そこまで考えてヘルヴィルはハッとした。
「なかよしだったら、だいじょうぶなのでは」
ピシャーンと天啓が降りてきたようだった。
仲良し兄弟になれば、悪いことしてもお互いに気をつけあえるのではないだろうか。
「しょれだ!」
なんといういい考えなのだろう。
何より家族とか友達とか人間関係に飢えていたヘルヴィルにとっては、それが叶えばいいことずくめだ。
ほのぼの平和な生活。
素晴らしい未来だ。
「んふふ、もくひょーはきまった」
とりあえず乙女ゲームとやらの詳細はあまり知らないけれど、恋愛ゲームなのだから年頃になるまでは関係ないだろう。
それまではのんびり家族と仲良くしていこう。
詳細が決まったところで、ヘルヴィルは満足気に鼻息を吐いた。
チョコレートでとどめをさされて、本当に満腹だ。
容量小さいのに頑張りすぎたかもしれない。
ヘルヴィルは椅子からよじよじと下りると、食堂を出た。
横幅も長さもある廊下に出て、とりあえず記憶にある道をなんとなく歩き出す。
ぽてぽてと歩きながら、きょろりとヘルヴィルは周りを見回していた。
記憶にはあるけれど、実感がないという何とも不思議な感覚だ。
ヘルヴィル・フォクライーストには現在二人分の人生の記憶がある。
二歳のヘルヴィルと日本人の十七歳男性の記憶だ。
つい先ほど転んだ時に鼻血が垂れたのと同時に思い出した。
なんともまぬけだなあと思う。
奔流のように流れ込んできた記憶は自分の記憶というか映画を見ているようだったのであまり混乱しなかったのは幸いだった。
ヘルヴィル自身は知らないが、生前の自分。
死んだとかは思いたくないけれど、一応生前としておこう。
そんな自分は、繊細な性格ではあまりなかったのでそのせいかもしれない。
生前のヘルヴィルは家族がいなくて施設育ちだった。
しかも結構ドライな施設だったので家族、とか兄弟、とかそんな雰囲気は欠片もなかった。
学校も施設の子共だということで遠巻きにされていたので、なかなかに寂しいものだったかもと思う。
「にしても、これげーむのせかいだよね」
うむむとヘルヴィルは両腕を組んで立ち止まった。
そうなのだ。
家族の姿を見て、名前を思い出したときにピンときた。
働いていたコンビニでバイトの女子高生が攻略本片手に熱く語ってくれたものと同じだと。
ゲームのタイトルは忘れたけれど。確か乙女ゲームと言っていた気がする。
ヒロインなどのことはあまり覚えていないけれど、悪役兄弟のことは覚えていたのだ。
そう、悪役兄弟。
確か正確の悪い姉のルードレットが悪役令嬢でヒロインを苛め抜き、能無しの兄リスタースがヒロインを手籠めにしようとするのだ。
そしてヘルヴィルはといえば、ルードレットのいじめの実行犯だ。
そして相手役とヒロインがくっついて悪行を暴かれて断罪される。
リスタースが死刑。
ルードレットは国外追放。
ヘルヴィルは奴隷落ちだった気がする。
「へびーだ……」
ゲームでは冷え切った家族で仲が最悪だという設定だった。
だから悪役になるのだろうか。
そこまで考えてヘルヴィルはハッとした。
「なかよしだったら、だいじょうぶなのでは」
ピシャーンと天啓が降りてきたようだった。
仲良し兄弟になれば、悪いことしてもお互いに気をつけあえるのではないだろうか。
「しょれだ!」
なんといういい考えなのだろう。
何より家族とか友達とか人間関係に飢えていたヘルヴィルにとっては、それが叶えばいいことずくめだ。
ほのぼの平和な生活。
素晴らしい未来だ。
「んふふ、もくひょーはきまった」
とりあえず乙女ゲームとやらの詳細はあまり知らないけれど、恋愛ゲームなのだから年頃になるまでは関係ないだろう。
それまではのんびり家族と仲良くしていこう。
詳細が決まったところで、ヘルヴィルは満足気に鼻息を吐いた。
191
あなたにおすすめの小説
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる