猫と人間

黒子猫

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「寂しさは埋まらなくても、退屈は埋まった」

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職なし、彼女なし、友達なし。
当然、独身。
これと言って趣味もなし。
したいこともなし。
金も貯金もない。
ないものだらけで嫌になる。

こんな俺は、寂しさを埋めるために公園に向かった。
公園には野良猫がいる。
以前、動画で猫が人にすり寄っているのを見た。
そんな風になったら、俺もこの寂しさを軽減させることが出来るのではないかと思った。
なけなしのお金でちゅーるを持参した。
これさえあれば、猫は俺にすり寄ってくれるだろう。

早速猫がいた。
ちゅーるの封を切り、猫の方に向けてみる。
……猫は警戒して逃げて行く。

……猫っていうのは、警戒心の強い生き物だからな……。
めげないで、もう一回だ。

俺はまた猫を見付け、ちゅーるを差し出す。

逃げた。

……なんだよ!全然近寄っても来ねーじゃねーかよ!
俺はキレそうになった。

いや、諦めるのは、まだ早い。
俺の寂しさを猫で癒したい!
俺はまた猫を探す。
探したが、なかなか見つからない。
疲れてベンチで休む。

やっぱり、猫に癒しなんて求めない方がいいんかなぁ。
そう思って、ボーッとしていた。
ふと、前の方を見る。
猫がこちらを見ている。
おっと思い、口で音を鳴らし呼び寄せようとする。
猫がゆっくり近付いてくる。
ちゅーるの封を開け、差し向ける。
猫は、ちゅーるの先をくんくんした。
そして、ペロペロと舐め始めた。
俺は、すごく浮かれた。
やっと、俺のちゅーるを食う猫が現れたのだ。
俺はちゅーるを少しずつ押出し、食べやすいようにした。
猫は、夢中になって舐める。
俺は猫の様子をじっと見つめた。
幸せそうな顔。
猫はちゅーるを1本完食した。
口の周りを一舐めする。
そして満足そうな顔でどこかに歩いて行った。

「……おい、俺の癒しはどこへ行った……?」

寂しさは埋まらなくても、退屈は埋まった。
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