テメェを離すのは死ぬ時だってわかってるよな?~美貌の恋人は捕まらない~

ちろる

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   呼吸が乱れるように浅くなって、急速に下腹に熱が集まるのがわかって、(これはあきらかに酒のせいじゃねぇ……)と確信する。

 気付けば小鳥遊たかなしが隣にいて「風早かざはや先輩、途中まで一緒に帰りましょ?」と笑顔で声を掛けてくるが、このままじゃあ小鳥遊を襲いかねない興奮を覚えていて。

 なんとか気力を振り絞って「悪い……小鳥遊。ちょっと気分悪いから夜風に当たってから帰る」と脇を擦り抜けようとしたが、小鳥遊が俺の腕に絡みついてくる。

「気分が悪いなら尚更心配ですよ! 一緒にタクシーに乗って帰りましょ? それに――」

 そこで小鳥遊がどこか含みのある笑みを向けてくるので、冷や汗をかきながら見つめ返す。

「風早先輩、興奮してません? ちょっと、悪戯いたずらしちゃいました。私、お相手になりますよ?」

 その言葉に、先程小鳥遊に飲まされた水のことを思い出す。

 まさかあの水の中に何か変な薬でも盛られていたんだろうか……否、間違いなく盛られていたんだろう。

 そうじゃなければこんなに身体が熱いのはおかしい。

「小鳥遊……何をした?」

「折角彼女さんと別れたんですから……新しい恋だって言いましたよね? いつまでも引きずってたら駄目だと思いません? 私、身体からの関係もありだと思うんです」

 上目遣いでクリクリした瞳を向けてくる小鳥遊の腕を思い切り振り払って「悪いけど、俺はまだ次に行こうなんて考えてねぇ。帰る」とだけ言って小鳥遊のそばを離れた。

 背後から「風早先輩!」と声がしたけれど振り返らなかった。

 とにかく身体が熱くて、呼吸も荒くなっていて、完全に発情している身体を持て余して店を出る。

 そこで――。

 由貴ゆきの後ろ姿を見つけて。

 駄目なのに、もう駄目なのに。  
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