37 / 53
37
しおりを挟む
「風間先輩、この間はすみませんでした」
お昼休憩、オープンスペースで待ち合わせた南波ちゃんが、開口一番そう謝罪してきた。どう返事をしたらいいものかわからず「いや、俺こそごめん……」とだけ返した。
すると南波ちゃんが真っ直ぐ俺と視線を絡めた。
「風間先輩の好きな人って誰ですか?」
適当に誤魔化すことも出来た。
出来たけれど、今の俺は確かに真白のことが好きで、真白のことだけを考えているから、噓は吐けなかった。
「南波ちゃんにだから言うけれど、佐伯先輩なんだ。俺たち、付き合ってた。でも、俺の一時的な気の迷いで、佐伯先輩に別れを告げて……追い込んだ。だから、今度こそちゃんと佐伯先輩と向き合いたいと思ってる。ごめん、引いたよね」
南波ちゃんの瞳にうっすら涙の膜が張っていた。
無理もないだろう。好意を寄せていた男が、男を好きだなんて。
「そう、だったんですね……佐伯先輩がお休みしているのは何かあったからなんですか?」
「うん……ちょっと。今、入院中なんだ。まだ意識が戻らなくて、俺は佐伯先輩が目覚めるのを待ってる。もう一度やり直したいんだ。ごめんね、南波ちゃん……俺なんかのこと、好きだって言ってくれたのに」
すると南波ちゃんが少しだけ険しい表情を俺に向けた。
今にも涙がこぼれ落ちそうに瞳を潤ませて上目遣いで見つめてくる。
「……でも、それって佐伯先輩にも私にも失礼じゃありません? 風間先輩、私の家にあがりましたよね? キスしようとしましたよね? そんなフラフラした気持ちで佐伯先輩が好きなんですか?」
言葉に詰まった。
南波ちゃんの言うとおりだから。俺は真白にも南波ちゃんにも不誠実な行動を取ってしまって、結果、真白も南波ちゃんも苦しめた。
全部、全部、俺が悪い。
「ごめん……こんなこと言ったら南波ちゃんを傷つけるってわかってるけど、あの時は佐伯先輩と離れたくて、南波ちゃんを見ていけたらって思ってた……結果、二人共を傷つけた。最低だよね。本当にごめん」
でも、俺はやっぱりどうしようもなく真白が好きで──。
全部、全部、俺が悪い。
だけど、真白が好きで。
この気持ちだけはどうしても偽れなくて。
目の前の、瞳を滲ませた南波ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
真白を忘れるために“利用”してしまったことに。
真白を再確認するために“利用”してしまったことに。
こんな愚かな俺の前に、また真白は帰ってきてくれるだろうか。
目を覚ましてくれないのは、戻ってきてくれないのは、こんな最低な俺に怒っているからなのかもしれない。
罰なのかもしれない──。
お昼休憩、オープンスペースで待ち合わせた南波ちゃんが、開口一番そう謝罪してきた。どう返事をしたらいいものかわからず「いや、俺こそごめん……」とだけ返した。
すると南波ちゃんが真っ直ぐ俺と視線を絡めた。
「風間先輩の好きな人って誰ですか?」
適当に誤魔化すことも出来た。
出来たけれど、今の俺は確かに真白のことが好きで、真白のことだけを考えているから、噓は吐けなかった。
「南波ちゃんにだから言うけれど、佐伯先輩なんだ。俺たち、付き合ってた。でも、俺の一時的な気の迷いで、佐伯先輩に別れを告げて……追い込んだ。だから、今度こそちゃんと佐伯先輩と向き合いたいと思ってる。ごめん、引いたよね」
南波ちゃんの瞳にうっすら涙の膜が張っていた。
無理もないだろう。好意を寄せていた男が、男を好きだなんて。
「そう、だったんですね……佐伯先輩がお休みしているのは何かあったからなんですか?」
「うん……ちょっと。今、入院中なんだ。まだ意識が戻らなくて、俺は佐伯先輩が目覚めるのを待ってる。もう一度やり直したいんだ。ごめんね、南波ちゃん……俺なんかのこと、好きだって言ってくれたのに」
すると南波ちゃんが少しだけ険しい表情を俺に向けた。
今にも涙がこぼれ落ちそうに瞳を潤ませて上目遣いで見つめてくる。
「……でも、それって佐伯先輩にも私にも失礼じゃありません? 風間先輩、私の家にあがりましたよね? キスしようとしましたよね? そんなフラフラした気持ちで佐伯先輩が好きなんですか?」
言葉に詰まった。
南波ちゃんの言うとおりだから。俺は真白にも南波ちゃんにも不誠実な行動を取ってしまって、結果、真白も南波ちゃんも苦しめた。
全部、全部、俺が悪い。
「ごめん……こんなこと言ったら南波ちゃんを傷つけるってわかってるけど、あの時は佐伯先輩と離れたくて、南波ちゃんを見ていけたらって思ってた……結果、二人共を傷つけた。最低だよね。本当にごめん」
でも、俺はやっぱりどうしようもなく真白が好きで──。
全部、全部、俺が悪い。
だけど、真白が好きで。
この気持ちだけはどうしても偽れなくて。
目の前の、瞳を滲ませた南波ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
真白を忘れるために“利用”してしまったことに。
真白を再確認するために“利用”してしまったことに。
こんな愚かな俺の前に、また真白は帰ってきてくれるだろうか。
目を覚ましてくれないのは、戻ってきてくれないのは、こんな最低な俺に怒っているからなのかもしれない。
罰なのかもしれない──。
24
あなたにおすすめの小説
トップアイドルα様は平凡βを運命にする【完】
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
愛しいアルファが擬態をやめたら。
フジミサヤ
BL
「樹を傷物にしたの俺だし。責任とらせて」
「その言い方ヤメロ」
黒川樹の幼馴染みである九條蓮は、『運命の番』に憧れるハイスペック完璧人間のアルファである。蓮の元恋人が原因の事故で、樹は蓮に項を噛まれてしまう。樹は「番になっていないので責任をとる必要はない」と告げるが蓮は納得しない。しかし、樹は蓮に伝えていない秘密を抱えていた。
◇同級生の幼馴染みがお互いの本性曝すまでの話です。小学生→中学生→高校生→大学生までサクサク進みます。ハッピーエンド。
◇オメガバースの設定を一応借りてますが、あまりそれっぽい描写はありません。ムーンライトノベルズにも投稿しています。
伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き
メグエム
BL
伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。
ぼくが風になるまえに――
まめ
BL
「フロル、君との婚約を解消したいっ! 俺が真に愛する人は、たったひとりなんだっ!」
学園祭の夜、愛する婚約者ダレンに、突然別れを告げられた少年フロル。
――ああ、来るべき時が来た。講堂での婚約解消宣言!異世界テンプレ来ちゃったよ。
精霊の血をひく一族に生まれ、やがては故郷の風と消える宿命を抱えたフロルの前世は、ラノベ好きのおとなしい青年だった。
「ダレンが急に変わったのは、魅了魔法ってやつのせいじゃないかな?」
異世界チートはできないけど、好きだった人の目を覚ますくらいはできたらいいな。
切なさと希望が交錯する、ただフロルがかわいそかわいいだけのお話。ハピエンです。
ダレン×フロル
どうぞよろしくお願いいたします。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【完結】それでも僕は貴方だけを愛してる 〜大手企業副社長秘書α×不憫訳あり美人子持ちΩの純愛ー
葉月
BL
オメガバース。
成瀬瑞稀《みずき》は、他の人とは違う容姿に、幼い頃からいじめられていた。
そんな瑞稀を助けてくれたのは、瑞稀の母親が住み込みで働いていたお屋敷の息子、晴人《はると》
瑞稀と晴人との出会いは、瑞稀が5歳、晴人が13歳の頃。
瑞稀は晴人に憧れと恋心をいただいていたが、女手一人、瑞稀を育てていた母親の再婚で晴人と離れ離れになってしまう。
そんな二人は運命のように再会を果たすも、再び別れが訪れ…。
お互いがお互いを想い、すれ違う二人。
二人の気持ちは一つになるのか…。一緒にいられる時間を大切にしていたが、晴人との別れの時が訪れ…。
運命の出会いと別れ、愛する人の幸せを願うがあまりにすれ違いを繰り返し、お互いを愛する気持ちが大きくなっていく。
瑞稀と晴人の出会いから、二人が愛を育み、すれ違いながらもお互いを想い合い…。
イケメン副社長秘書α×健気美人訳あり子連れ清掃派遣社員Ω
20年越しの愛を貫く、一途な純愛です。
二人の幸せを見守っていただけますと、嬉しいです。
そして皆様人気、あの人のスピンオフも書きました😊
よければあの人の幸せも見守ってやってくだい🥹❤️
また、こちらの作品は第11回BL小説大賞コンテストに応募しております。
もし少しでも興味を持っていただけましたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる