お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

文字の大きさ
9 / 74

9話 恥晒【イリカ視点】

しおりを挟む
【side.イリカ】


「痴れ者!! よく来たな!!」

「その勇気だけは称えてあげるわ!!」

「……どうしてこうなった」

 ワタシ達は実家裏の円形闘技場コロッセオにいた。
 観客は満員で、全員が落ちこぼれの凄惨な姿を望んでいる。

 隣には愛しのユウカ。
 今日も今日とてかわいらしく、そして美しい。
 こんな美女が元々はアルカの婚約者だったなど、信じられないな。

「よく、こんな人数を用意できたな」

「貴様の公開処刑をするって学校中にバラまいたら、思ったよりも大勢のヤツらが集まっただけだ」

「……中等部とはいえ、所詮は貴族連中。性格が終わっているな」

「ふッ、むしろ貴族としては正しい判断である。”始まっている”と言ってくれないか?」

「そうよ!! 始まっているのよ!! ……何がかはわからないけれど」

 何が始まっているのか、自分でもイマイチわからないが。

「ふふふ。それでは、早速パフォーマンスをしようか」

 ワタシは両手を広げ、観客達にアピールを始める。

「みなさん! これより、この愚弟……いえ、このゴミを! ワタシの手で排除します!!」

 仰々しく、わざとらしく。
 観客にわかりやすく、必死にアピールする。

「イリカ様!! さすがだぜ!!」

「俺たちにはできない劣等生の公開処刑!!」

「そこに痺れる憧れるゥー!!」

「その卑賤ひせんな劣等生に、お灸を据えてくださいまし!!」

「兄に勝る弟など存在しないことを、わからせてあげてください!!」

 観客たちは、こぞってワタシに声援をかける。
 
「……イリカ、確かお前……『王立ルノール魔術学院』に合格したんだって?」

「ふッ、何だ嫉妬か? その通り、ワタシはかの名門校、ルノール魔術学院に合格したのさ! 合格率1パーセントを切り、超難関校に! 歴史に名を残す多くの英傑を産出してきた、魔術学院に!!」

「ちなみにアタシも受かったわよ!! 羨ましいでしょ!!」

「そこまで聞いていないし、ユウカの話はもっと聞いていない」

「羨ましいだろう!! 魔力の少ない貴様は、受験することさえ叶わなかったのだからな!! それに、今日はルノール魔術学院の先生方も見に来てくださっている!!」

「いいや、別に」

 なんだ、その態度は。
 昔から、そういう斜に構えた態度が……実に腹立たしいのだ!!

 だが、そんな態度を取れるのも今のうちだ。
 今回の公開処刑は、ワタシの強さを観客に見せつける為のモノ。
 ルノール魔術学院の先生方からの評価を上げるために、用意したモノだ。
 より凄惨により残虐に、ワタシの力でアルカを虐げてやる。

「御託は良いから、そろそろ始めないか?」

 アルカは腕を大きく広げ、構える。

「劣等生の貧弱な筋力では、武具も装備できないか」

「嫌味はいいから、さっさと構えろよ」

「ならば、ワタシも得物は使用しない。その方がフェアであり、おもしろいからな」

「まぁ!! なんて漢らしいのかしら!! アンタも見習いなさい!!」

かしましいぞ。それに……後悔しても知らないぞ?」

 ナマイキにも、アルカはワタシを睨みつけてきた。

「そうだ、アルカよ。『10回勝負』は覚えているか?」

「お互いに10回ずつ魔術や体術を放って、先に倒れた方の敗北っていうゲームだろ?」

「普通に戦っても、この勝負はつまらない。だからこそ、10回勝負のルールで戦わないか?」

「いいぞ。その誘い、乗った」

「ハッハハ! 貴様は矮小な愚弟だと思っていたが、ノリはいいな!」

 愚かな男だ。
 10回勝負において、アルカはワタシに勝利したことがない。
 才能に秀でたワタシに、勝てるハズもないのだがな。

「それじゃあ、イリカがんばってね」

「その声援はアルカに送ってやれ。ワタシが勝つことなど、確定事項なのだからな」

「ふふ、そうね」

 愛しい人からの応援。
 うむ、悪くはないな。

「最初はイリカに譲ってやる」

「ふッ……愚かな男だ」

 かくして、公開処刑が始まった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」  長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。  だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。  困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。  長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。  それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。  その活躍は、まさに万能!  死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。  一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。  大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。  その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。  かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。 目次 連載中 全21話 2021年2月17日 23:39 更新

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

処理中です...