お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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10話 気付 1/2【イリカ視点】

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【side.イリカ】


「少しは楽しませろよ! 《下級の雷矢サンダー・アロー》!!」

 最初に放ったのは、下級魔術の下級の雷矢サンダー・アロー
 雷の矢の一閃が、アルカの右眼義眼に迫る。

「フハッハッハハ!! いつも通り、一撃で終わったか? 情けない男だ!!」

「──誰が終わったって?」

 巻き起こる砂埃を払い、アルカは中指を立てる。

「な、何ッ……!? ふッ、ワタシの魔術を耐えるとは、気合い十分と言ったところか……!!」

「早く次に移れ。残り9発だぞ」

「ワタシに命令するな!! 《中級の氷槍アイス・ランス》」

「……くだらない」

 巨大な氷の槍が、アルカに降り注ぐ。
 肉程度、容易く貫くであろう氷の槍だが……。

「……その程度か。実力は、大体わかった」

 アルカはふいに、指を鳴らした・・・・・・
 すると、瞬時に氷槍は砕け散った。

「なッ! 貴様! ワタシの魔術を砕くとは、一体何をした!?」

「『共振周波数』を利用したまでだ」

「きょうしん……? わかるように説明しろ!!」

「全ての物質は、一定の周波数を浴びせると自然に振動する。これを『共振周波数』と呼び、これを利用するとことで自ら手を下さずとも、物質の崩壊を促すことが可能だ」

「何を言っている……?」

 「俺は指を鳴らしたことで、氷が崩壊する周波数を氷槍にぶつけた。結果、氷槍は俺に直撃する直前に、砕け散ったと言うわけだ」

「意味のわからんことを、ゴチャゴチャと述べるな!!」

 劣等生如きが、ワタシの魔術を打ち破っただと?
 そんなことは断じてあり得ない。
 あり得てはいけないのだ。

 魔術の才もなく、身体も病弱。
 オマケに容姿も不吉で醜悪。
 そんな我が家の恥に、ワタシが押されるハズがない。

 これはきっと……間違いだ。
 そうだ、偶然に違いない。
 天才であるワタシが、劣等生如きに押されるハズがないのだから。

「残り8発。この通り、俺はまだ無傷だ」

「ウルサイウルサイ!! こうなれば、多連詠唱シークェルで殺してやる!!」

「複数の魔術を同時に発動する技法か。おもしろい、やってみろ」

「《下級の水矢アクア・アロー》《中級の水槍アクア・ランス》《下級の雷矢サンダー・アロー》」

 ワタシの魔術の連撃。
 落ちこぼれ如き、軽く薙いでみせる。

多連詠唱シークェルは複数の魔術を発動する故に、1つの魔術にかける集中力が下がり、結果的に魔術の質が下がってしまう。現代で天才と謳われるお前でも、多連詠唱シークェルを扱うと下級魔術の連発になってしまうのだな」

 アルカ指を鳴らし、降り注ぐ魔術を掻き消す。

「え、えぇえええ!! あの劣等生、イリカ様の魔術を全て掻き消したわよ!!」

「どうなってるの!? 劣等生如きが、天才のイリカ様の魔術を消すなんて……あり得ないわ!!」

「しかも、イリカ様に残された攻撃回数は……残り1回よ!!」

「みんな何を心配しているの!! あんなのはマグレよ!! 絶対にアタシのイリカが勝つんだから!!」

 クソッ、ワタシを応援するな! 
 アルカに押されていることを、より鮮烈に理解してしまうだろう!
 惨めに感じてしまうだろう!!

 ……違う! ワタシは押されてなどいない!
 ワタシは天才だ! アルカ劣等生とは違う!!
 クソックソックソッ!!

「どうする? 残り1回で、俺に主導権が移るぞ」

「あり得ない……。こんなことは、あり得ない!!」

「現実に目を背けるな。最後の攻撃を、試してみたらどうだ?」

「……この魔術を、貴様如きに発動するとは。屈辱だ……!」

 ワタシは手を上部に掲げる。
 瞬間、イリカの手の先に巨大な魔術陣が出現した。
 
 それは禍々しくも、美しく。
 古代文字の術式で構成されておりながら、矛盾に満ちていて。
 一言で表すならば────殺意に満ちていた。

 ……これだけは、使いたくなかった。

極大滅却魔術ロスト・ノヴァ。生意気な劣等生虫けらを一撃で粉砕する魔術だ」
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