お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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閑話 5人揃って四天王 1/2

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 スルマがにアルカに敗れてから10日後。
 とある廃墟の一室に、4人の男女が揃っていた。

 1人は茶色の髪をした、美少年。
 1人は赤い髪をなびかせる、絶世の美女。
 2人は金色の髪、翠色の瞳をした、双子の少女。

「ククク……」

「ククク……」

「ククク……ですわよ」

「ククク……ですわ」

 4人の男女は、笑っていたが沈んでいた。
 茶髪の美少年が、重い空気を払うために、口を開く。

「水の魔王、スルマがやられたようだな」

「ククク……奴は”四天王魔王”の中でも最弱……」

「人間如きに敗れるなど、魔王の面汚しですわよ……」

「でも、その人間は奪盗術師だって噂ですわ」

「ククク……ならば、敗れても仕方あるまい……」

「奴は人間の中でも最強。人類の希望だからな……」

 茶色の髪をした魔王は、髪を掻き乱す。

「実際、どうすればいいんだ? ”大魔王”様でさえ、敗れたんだろ?」

 赤い髪の魔王は、重いため息を吐く。

「どうしようもないわよ。大魔王様が全盛期の時に敗れた相手に、アタシ達が勝てるわけ無いもの」

 金色の髪の魔王達は、絶望の眼差しで語る。

「水の魔王、スルマは観客に手を出したことと財政難に陥ったことが原因で、爵位は剥奪されて今では奴隷堕ちしましたわね」

「本来であれば奪盗術師に敗北しても、公爵家という立場は残るから、彼から奪盗術師を倒す為に資金援助を集ろうと画策していたというのに……本当に、無能な男ですわ」

「もっとも、奪盗術師がいなければ、たった十数日で領地を財政難に貶めるような男だからね。仮に爵位を剥奪されていなくても、資金援助は難しかったと思うわ」

「でも、本当にどうするんだよ。アイツがいなきゃ『5人揃って、四天王魔王!』って言えねえじゃん。4人揃って四天王魔王じゃん」

「本来はそれが普通ですわ」

 4人の魔王は、再び沈む。
 
「奪盗術師は大会で優勝し、無事に魔術学院入学への切符を手に入れたらしいな」

「奪盗術師の1人勝ちね。私達は大事な魔王を1人失って、資金まで失ったというのに……」

「絶望しかないですわ」

「こうやって不敵な笑いをして、強者を演出する活動も……自粛した方がいいかもしれませんわね」

「それは無いぜ! だって、俺たちは魔王なんだ! しかも四天王なんだぜ!!」

「そ、そうよ! 魔王や四天王は不敵な笑いをするもの。古文書にも記載されているわ!」

「でも……この活動自体が、経費を圧迫しているのは理解できてまして?」

「お姉様の言うとおりですわ。わざわざ廃墟の一室を借りて、不敵な笑いを行うだけの活動。1ヶ月に1度の活動でも、大家には1ヶ月分の賃料を取られるのですわ!!」

 お気づきの通り、彼らはアホなのだ。

「俺たちにもっと力があれば、賃貸の廃墟を借りる必要も無いのにな」

「1ヶ月の賃料は……確か金貨2枚よね?」

「ボロボロの廃墟でも、王都にあるから無駄に賃料を取られるのですわ」

「都会の弊害ですわね」

 貧困の波は、魔王にまで迫ってくる。
 何とも、世知辛い。

「魔王活動が上手くいかなかったときのために、俺と”金の魔王”達は魔術学院に通ってるけれど……。このままじゃ、学院に通うカネも捻出できねェぞ」

「アタシもギルドで受付嬢の仕事をしているけれど、あの仕事は安月給なのよね。転職したいけれど、学歴も資格も経験も無いアタシには難しい話だわ」

「ワタクシ達も夜はギルドでバイトをしていますけれど、全然お金になりませんものね」

「成績上位者で無ければ、冒険者業ができないって……苦学生にはツラいですわね」

 魔王達は学力も低かった。

「……やはり、チャンスはアレしかないわね」

「アレって何だ?」

「前にも言いましたわよ、”腐の魔王”様」

「えっと、何だっけ?」

「やれやれ、脳まで腐ってらっしゃるのかしら?」

「腐ってるのはお前達の方だろ。この前、本屋で男同士がイチャイチャする春画を呼んでいたくせに」

「あ、アレは……!!」

「だ、男性の研究ですわ!!」

「そ、そうですわ! 絵から男性の弱点を探ろうと、し、していただけですわ!!」

 当然、ウソである。
 ”金の魔王”達はBLが大好きな、いわゆる『腐女子』なのだ。
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