57 / 74
52話 対人実技試験 2/2
しおりを挟む
「《筋肉の唄》《飛燕の唄》《鋼鉄の唄》」
「(なッ、多連詠唱ですって!?)」
「その反応も飽きたな」
3つの魔術を、オレンジ髪に唱えた。
「(ぐッ……舌の上の唾液が……沸騰している!!)」
「唾液の沸騰なんて、貴重な体験だな」
「(い、一体……私に何をしたんですか!!)」
「仕方ない、そろそろ教えてやるか」
地面に座り、笑いながら答える。
「お前の周りを、真空にした」
◆
空気がなくなると、当然真空状態になる。
そして真空状態は、人体に甚大な被害を及ぼすのだ。
「真空に晒された水分は、瞬時に沸騰する。だから、お前の口内では、唾液の沸騰が起こっているんだ」
「(ぐッ……苦しい……!!)」
「空気が無いから、話すこともできないな。当然、呼吸もできないだろう」
「(た、助けて……)」
「通常であれば、真空状態では15秒程度で人間は気絶する。だが幸運なことに、お前は支援術を唱えられて、肉体が強化されている」
「(く、苦しい……)」
「このままだと、15年程度は生き続けるだろうな」
「(ぐ、ぐぅ……)」
「と言っても、空気がないから俺の声も届いていないんだろうが」
「(ぐッ……)」
以前、ミミズ野郎に行った酸素操作。
今オレンジ髪に行っているのは、それの応用だ。
俺が手に入れたスキルは、スキル名こそ【酸素操作】だったが、実態は空気を操作する魔術だった。
そのため、俺は今オレンジ髪の周りの空気を排除し、真空状態を作りだしている。
「とりあえず、スキルだけでも奪盗っておくか」
オレンジ頭の元へ駆け、肩に手を触れる。
「(奪盗術)」
【魔術スキル:上級の光輝を習得しました】
【魔術スキル:上級の光刃を習得しました】
【魔術スキル:上級の光線を習得しました】
【固有スキル:矮小な卑怯者を習得しました】
オレンジ髪の周りには空気が無いため、一瞬でその場を離れた。
「ふぅ……有用なスキルが3つと……なんだこのスキル」
手に入れたスキルを、確認してみる。
【魔術スキル:上級の光輝】
上級魔術の一種。
強力な光を放射し、周りを灼く。
消費魔力:40
【魔術スキル:上級の光刃】
上級の魔術の一種。
強力な光刃で、敵を裂く。
消費魔力:21
【魔術スキル:上級の光線】
上級魔術の一種。
強力な光線で、敵を灼く。
消費魔力:30
【固有スキル:矮小な卑怯者】
固体名:カラマリ・イ・クラーケンが有するスキル。
不意打ち攻撃の威力が、2倍に上昇する。
敵から逃げる際、走力が2倍に上昇する。
「有用なスキルではあるが……何とも情けないな」
使えないこともないため、一応手に入れておくか。
「(な、何をした……!!)」
「このまま1時間放っておくのもアリだが……それでは映えないな」
地味な戦いも嫌いではないが、派手な方が性に合う。
『最強不良物語』の主人公であるシュンも、派手に敵を倒していた。
彼に憧れたからこそ、俺も派手な戦いが好きなのだ。
「シュンも俺と同じく、敵から数々の能力を吸収していた。もちろん、奪盗術とは違って、格闘術などの単純な技術の習得のみだが」
「(あ、アナタの声が……聞こえません!!)」
「だから俺も、彼を見習って……敵の技で制してやる」
指を鳴らし、魔術を唱える。
「《上級の光刃》」
放たれるは、光の刃。
半月型をした光のカッターは、光速でオレンジ髪目掛けて進んでいく。
「(そ、それは……私の魔術────)」
一刀両断。
オレンジ髪はロクに感想も伝えられずに、真っ二つに引き裂かれてしまった。
「……先生、終わりましたよ」
久寿玉のように臓物が飛び散り、酸素を失ったせいで黄色く変色した血液が滴る。
如何に強化された肉体とはいえ、光速の刃には敵わなかったようだ。
「えっと……勝者! アルカ受験生!!」
レモネード先生の、かわいらしい声がコロッセオに響き渡った。
「ふぅ、疲れた」
「アルカ受験生、ちょっと良い?」
「最強不良物語について語りますか?」
「ううん、それは後で良いんだけど……ちょっと、学院長が呼んでいるみたいなの」
「え?」
「だから……ちょっと学院長室に向かってくれる?」
「あ、はい」
何だろう、コロッセオを破壊したことの請求をされるのだろうか。
仮にそうだとすれば、非常にマズい。
公爵家を追放された俺は、カネに余裕がないのだ。
「わ、わかりました」
ビクビク震えながら、学院長室へと向かった。
「(なッ、多連詠唱ですって!?)」
「その反応も飽きたな」
3つの魔術を、オレンジ髪に唱えた。
「(ぐッ……舌の上の唾液が……沸騰している!!)」
「唾液の沸騰なんて、貴重な体験だな」
「(い、一体……私に何をしたんですか!!)」
「仕方ない、そろそろ教えてやるか」
地面に座り、笑いながら答える。
「お前の周りを、真空にした」
◆
空気がなくなると、当然真空状態になる。
そして真空状態は、人体に甚大な被害を及ぼすのだ。
「真空に晒された水分は、瞬時に沸騰する。だから、お前の口内では、唾液の沸騰が起こっているんだ」
「(ぐッ……苦しい……!!)」
「空気が無いから、話すこともできないな。当然、呼吸もできないだろう」
「(た、助けて……)」
「通常であれば、真空状態では15秒程度で人間は気絶する。だが幸運なことに、お前は支援術を唱えられて、肉体が強化されている」
「(く、苦しい……)」
「このままだと、15年程度は生き続けるだろうな」
「(ぐ、ぐぅ……)」
「と言っても、空気がないから俺の声も届いていないんだろうが」
「(ぐッ……)」
以前、ミミズ野郎に行った酸素操作。
今オレンジ髪に行っているのは、それの応用だ。
俺が手に入れたスキルは、スキル名こそ【酸素操作】だったが、実態は空気を操作する魔術だった。
そのため、俺は今オレンジ髪の周りの空気を排除し、真空状態を作りだしている。
「とりあえず、スキルだけでも奪盗っておくか」
オレンジ頭の元へ駆け、肩に手を触れる。
「(奪盗術)」
【魔術スキル:上級の光輝を習得しました】
【魔術スキル:上級の光刃を習得しました】
【魔術スキル:上級の光線を習得しました】
【固有スキル:矮小な卑怯者を習得しました】
オレンジ髪の周りには空気が無いため、一瞬でその場を離れた。
「ふぅ……有用なスキルが3つと……なんだこのスキル」
手に入れたスキルを、確認してみる。
【魔術スキル:上級の光輝】
上級魔術の一種。
強力な光を放射し、周りを灼く。
消費魔力:40
【魔術スキル:上級の光刃】
上級の魔術の一種。
強力な光刃で、敵を裂く。
消費魔力:21
【魔術スキル:上級の光線】
上級魔術の一種。
強力な光線で、敵を灼く。
消費魔力:30
【固有スキル:矮小な卑怯者】
固体名:カラマリ・イ・クラーケンが有するスキル。
不意打ち攻撃の威力が、2倍に上昇する。
敵から逃げる際、走力が2倍に上昇する。
「有用なスキルではあるが……何とも情けないな」
使えないこともないため、一応手に入れておくか。
「(な、何をした……!!)」
「このまま1時間放っておくのもアリだが……それでは映えないな」
地味な戦いも嫌いではないが、派手な方が性に合う。
『最強不良物語』の主人公であるシュンも、派手に敵を倒していた。
彼に憧れたからこそ、俺も派手な戦いが好きなのだ。
「シュンも俺と同じく、敵から数々の能力を吸収していた。もちろん、奪盗術とは違って、格闘術などの単純な技術の習得のみだが」
「(あ、アナタの声が……聞こえません!!)」
「だから俺も、彼を見習って……敵の技で制してやる」
指を鳴らし、魔術を唱える。
「《上級の光刃》」
放たれるは、光の刃。
半月型をした光のカッターは、光速でオレンジ髪目掛けて進んでいく。
「(そ、それは……私の魔術────)」
一刀両断。
オレンジ髪はロクに感想も伝えられずに、真っ二つに引き裂かれてしまった。
「……先生、終わりましたよ」
久寿玉のように臓物が飛び散り、酸素を失ったせいで黄色く変色した血液が滴る。
如何に強化された肉体とはいえ、光速の刃には敵わなかったようだ。
「えっと……勝者! アルカ受験生!!」
レモネード先生の、かわいらしい声がコロッセオに響き渡った。
「ふぅ、疲れた」
「アルカ受験生、ちょっと良い?」
「最強不良物語について語りますか?」
「ううん、それは後で良いんだけど……ちょっと、学院長が呼んでいるみたいなの」
「え?」
「だから……ちょっと学院長室に向かってくれる?」
「あ、はい」
何だろう、コロッセオを破壊したことの請求をされるのだろうか。
仮にそうだとすれば、非常にマズい。
公爵家を追放された俺は、カネに余裕がないのだ。
「わ、わかりました」
ビクビク震えながら、学院長室へと向かった。
74
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」
そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる