お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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66話 VS金の魔王 4/4

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「【黄金の魔眼ゴルド・メドゥーサ】!!」

 刹那、不思議なことが起きた。

「俺の脚が……黄金・・になっているだと?」

 俺の脚が黄金に変化している。
 しかも、どうやら身体を浸食している様子で、黄金に変化している箇所が増えてきている。

 最初は足首だけだったのだが、ほんの僅かな時間で既に膝まで浸食。
 このまま進めば、全身が黄金に変わってしまうだろう。

「どんな気分かお聞かせ願えますか? お姉様から授かった、奇跡の奥義のお味は?」

「なるほど、認識しただけで相手を黄金に変える魔術か」

「お姉様が授けてくださいましたわ!! 脳内で、音が響きましたもの!!」

「大した魔術だ。表面皮膚を黄金に変えるだけなら力づくで解除できたのだが、皮膚下の筋肉や血管、骨までもが黄金に変わっているなんてな」

「いくら奪盗術師あなたでも、完全に肉体が黄金に変わってしまえば!! 脱出は困難ですわよね!!」

「その通りだ」

「なら!! ワタクシの勝ちですわ!! そのまま全身を黄金にして、砕いて砂金にして市場で売りさばいてやりますわ!!」

 金の魔王は再度、指メガネを構成した。

「さぁ────終劇フィナーレの時間ですわ!!」

 俺の黄金が、その範囲を広げる。
 既に下半身は全て黄金に染まり、上半身も時間の問題だ。

「あはは!! ワタクシが!! 奪盗術師あなたを倒せるなんて!! 夢のようですわ!!」

 金の魔王が興奮することで、浸食速度が増す。

「アルカ……負けないで……!!」

「お、黄金像になんて……ならないでください……!! お願いします……勝ってください……!!」

「さぁ!! 奪盗術師あなたはどれだけ耐えることができるのでしょうね!!」

「……そろそろか」

 黄金が首まで浸食してきた時、急に浸食が止まった。

「ぐふッ……!」

 金の魔王は唐突に、吐血をする。
 目からも血の涙を流し、苦しそうにもだえだした。

「これは……く、苦しいですわ……」

「知らなかったのか。《虚妄聖域》の弱点のことを」

「じゃ、弱点……?」

 キョトンとした表情の、金の魔王。

「《虚妄聖域》を発動中、術者は《虚妄聖域》維持のために”代償”を払い続ける必要がある」

「だ、代償……ですって?」

「術者の”寿命”だ」

「じゅ、寿命……。ですけれど、ワタクシは魔王! 数百万年の時を生きる完全生命体!! いくら寿命が減っても、問題ないですわ!」

「いくら数百万年の時を生きようが『1秒につき1万年』の寿命が減れば、下等生物の魔王でもダメージは大きいだろ?」

「1秒につき……1000年ですって!?」

「今も刻一刻と寿命が減っている。お前はあと何百万年生きることが出来るだろうな?」

 《虚妄聖域》を作動してから、既に10分。
 金の魔王の寿命がどれだけあろうと、既に600万年以上の寿命が減っている。

「そんな……ワタクシは……お姉様の分まで生きると決めたのに……」

「《虚妄聖域》を解除すれば、数万年程度は生きることができるだろう。だが、俺に勝つことは不可能になる」

「……ッ!」

「《虚妄聖域》を解除しなければ、お前に残された人生は僅かなモノとなる。だが、俺に勝てるかもしれない」

「……ッ!」

「賢い選択を期待しているぞ」

 金の魔王が導き出した結論は────

「……ワタクシはここで、奪盗術師あなたと絶えますわ」

 ────相打ちの未来だった。

「いいのか? 姉もその選択を願ったのか?」

「ワタクシが死んでも、大魔王様が復活すれば……それが本望ですわ」

「大魔王の復活した未来に、自分は必要ないと?」

魔王ワタクシ達が最終的に笑える未来であれば、ここで潰えるのも……悪くないですからね」

「そうか、残念だ」

 金の魔王は再び、指メガネを構築する。

奪盗術師あなたには、ここで死んでもらいます。ワタクシ達が描く未来に、奪盗術師あなたは邪魔なのです!!」

「そうか、残念だ」

 そして俺は──


「【黄金の魔眼ゴルド・メドゥーサ】」


 ────黄金像になった。


 ◆


「そんな……アルカが……」

「あ、アルカさんが……黄金像に……そんなことって……」

「でも、すごい……意外とたくましいのね」

「た、確かに……細いのは確かですけれど、少しだけ筋肉が付いていますね……」

 ベルとクロは黄金像になった俺の身体にペタペタ触れながら、各々勝手な感想を述べている。

「男の人ってみんなこうなのかしら」

「だ、男性と接点が皆無なのでわかりませんけれど……。でも、か、かっこいいですね!」

「入学してから二ヶ月と少しだけど、努力したのね。ふふ、私は嬉しいわ」

「だ、誰目線ですか……。って、そんなことを話している場合ではないですよ」

「そうだぞ2人とも、緊張感がないぞ」

「そ、そうですよ。アルカさんの言うとおり……ってえぇええ!!」

「アルカ……生きていたの?」

「俺がこの程度で死ぬ訳ないだろう」

 黄金像から脱出した俺は、身体に付いた金粉を払いながら金の魔王を睨む。

「ば、バカな! どうやって、黄金像から抜け出したのかしら!?」

「筋肉で解決できないことはない」

 俺が黄金像から脱出した方法は、至って簡単シンプル
 黄金と化した筋肉や骨などに《筋肉の唄マッスル・ソング》を何重にも施し、筋肉が発する熱で黄金を溶かして元の肉体を取り戻した。
 元の肉体を取り戻した俺は、皮膚を覆う黄金から脱皮するかのようにベリッと脱出した。

「そんな……バカな……。わ、ワタクシと……お姉様の……奥義が……」

「終わりだ金の魔王」

 膝から崩れる金の魔王の肩に触れ────

「《奪盗術クリアネス》」

【魔術スキル:奇跡の黄金矢ゴルド・アローを習得しました】
【魔術スキル:絆の黄金剣ゴルド・ソードを習得しました】
【魔術スキル:運命の宝金剣ゴルド・カリバーを習得しました】
【魔術スキル:絢爛豪華な超黄金砲ゴルド・マキシマム・ブレイクを習得しました】

「《虚妄聖域》は奪えなかったか」

「……ワタクシの才能を奪いましたわね」

「有効活用させてもらおう」

「……気分悪いですわね」

 金の魔王はドサッと倒れた。

「お姉様……今、向かいますわ」

 《虚妄聖域》は消え、元の質素な屋上に帰ってきた。
 金の魔王の寿命が尽き、その命を終えたのだ。
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