「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です

涙乃(るの)

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フィオナは一息つくと部屋の中をみて回ることにした。

至る所に様々な箱や布がかけられている物が置かれており、物置部屋のようだった。

壁際にかけられている大きな布をパサリとめくる。

「わぁ、大きな鏡」

フィオナは大きな鏡を見て、幼い頃のことを思い出していた。

あれはライアンが生まれる前のこと。私とフィオ姉様は、子供用のウイッグを被りよく入れ替わっていた。大人達がいつ気づくだろうか、と軽い悪戯のつもりだった。

常に二人セットでみられることの多かった私達は、髪色ではなく自分自身を見てほしかったから。

不思議な男の子と出会った日も、私達は入れ替わっていた。

移動式のサーカスが街にやって来たので、お父様と乳母のサリーと数名の護衛と共に連れて行ってもらったのだ。
サーカスには、ミラーラビリンスという鏡の迷路もあった。嬉しくてはしゃぎすぎて、私は一人迷子になってしまった。進もうとしてもゴツンと鏡にぶつかって、出口が分らなくて、泣きそうになっていた。
そんな時、自分と同じく一人でいる男の子に出会った。

「あなたも迷ったの?」

「誰⁉︎ 君どこから来たの」

座りこんでいた男の子は立ち上がりフィオナに近づいてきた

「私はクリスティナ、あなたは?」


「僕は迷った訳じゃない。君は迷ったの?」

「そうみたい、あはは。ちょっと、気持ち悪いから髪取るね」

「ええ!君、髪が!大丈夫なの?」

男の子はフィオナの髪がスポッと外れたことに驚きを隠せない。

「あぁ、これはねウイッグなの。あ、でもこのことは秘密だからね。ねぇ、一緒に出口まで行こう」

フィオナは男の子に手を伸ばしたけれど、鏡に触れただけだった。

「あれ、鏡に映っているけど、目の前にいないのね。ほんと、鏡の迷路って難しいわね。」

「あぁ、まぁ、そうだね。クリスティナ、僕、出口が分かると思うから、僕の姿を追いかけてきて。」

「出口わかるの?すごい!助かるわ、一緒に行きましょう。」

フィオナは男の子の姿を追いかけるように進んだ。隣に見えているのに、姿には触れない。なんとも不思議な距離感だった。

「ほら、あそこが出口。もう大丈夫だね。」

「ありがとう‼︎ あれ?君は行かないの?」

「僕は、まだ出ることができないんだ。」

「どうして?」

「別に、僕は、君と一緒の場所にいる訳じゃないから。どうだっていいだろ、早く行ってよ。僕のことなんか放っておいて。」

「そんな言い方されたら気になるじゃない。それに、あんまり自分のことを卑下しないで。だって、あなたは私を助けてくれた恩人だもの」

満面の笑みでフィオナは男の子に笑いかける。その笑顔を見て、男の子の瞳が曇る。

「買い被りだよ、僕なんて、誰も探しにきてもくれない、いらない子なんだ。みんな、こうなるのは仕方がないことだって!だからっ!」

フィオナは鏡ごしに男の子の頭を撫でる仕草をした。

「なんだよ」

「大丈夫よ、そういう気分になる時あるよね。私もね、自分を見てくれる人がいないいんじゃないかって思ってばかりよ。いつも金髪じゃないほうとか、ブラウンの子とか、言われてね。私には双子がいるの。でも姉様のことは大好きよ。ただね、うまく言えないけど……といけない、ウイッグかぶらなきゃ。
 
ねぇ、私にはあなたが必要よ。ここまで案内してくれたこともそうだし、こんな風に双子の片割れでなく、私自身と会話してくれて、とってもたのしかった。だから、いらない子だなんて思わないで。少なくとも私にとってはヒーローなんだから。」


「僕が君のヒーロー……?本当に?いつか、直接君と会いたい。鏡越しではなく。ありがとう!なんか元気がでた。ちょうど僕も戻れる時みたい。必ずまた会おうクリスティナ!」

「良かった。ねぇ、あなたの名前は?あれ、どこに行ったの?」

目の前にいた男の子は、いつの間にかいなくなっていた。





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