【ダン信王】#Aランク第1位の探索者が、ダンジョン配信を始める話

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第十三話 #ギルド:フロントライン

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「もぐもぐ……うむ、やはりジャパンのカツ丼は美味いな」
「そ、そうですね……美味しいようで何よりですよ」

 
 俺とマジノコが全力をだして半分しか食べれなかったカツ丼の残りを、俺にスカウトに来たアメリカ人探索者のヴァルグに押し付けた。

 そしたらコイツ、難なく食ってやがる。
 一度も箸を休めてなくて怖いんだけど、ちゃんと噛んでないだろ。
 口に入れた側から飲み込んでる。
 つか外人なのに箸の使いかた上手だな。

 なんかあっさり頼み事聞いてくれて申し訳ないんだが、コイツスカウトに来たんだよなあ。
 俺、アメリカに来いとか言われても行く気ねえし、なんなら日本から出ていく気がない。

 それでも残飯押し付けた形になっているが、どうお断りしようかな……


「ご馳走さん。探索者なんだからこれくらい食べれなきゃ力がでねえぞ」
「うす」
「それで本題だ。ウチのアメリカにあるギルドに来る気はないか? フロントラインつー名前なんだが、アメリカではNo.1ギルドだって加入するだけで英雄ヒーロー扱いされるんだ。加入をする、たったそれだけで金や女、なんでも好きな物が手に入るぜ。どうだ、お前にも悪い話じゃないだろ? 一緒にアメリカ行ってヒーローになろうぜ」

 
 ギルド。
 簡単に言えば大人数の探索者グループのことだ。
 武器防具の貸し借り、ダンジョン探索のアイテムの補充やら、探索者が便利にダンジョン探索を行えるサービスが充実している。

 さらには有名なギルドに加入できたら、大きな後ろ盾を得ることができる。
 パーティだけだったら引き抜きが簡単に行われるが、ギルドに加入していたらそうもいかねえ。
 
 まあギルドに入るのにはメリットがいっぱいって訳だな。

 もちろんデメリットというか制約もあるが、例えばノルマを定められるとかだな。
 月に魔石をこのぐらい納品しろみたいな。
 まあそこら辺はギルドによって変わるが。

 そしてコイツはそんなギルドの、そしてアメリカNo.1のギルドに俺を勧誘しようとしているらしい。
 
 フロントラインというギルドは、俺でも聞いたことがあるほど知名度があるギルドだ。

 ヴァルグはアメリカNo.1だなんて言っているが、実際はもっと上の世界三大ギルドと呼ばれるほどの力を持っている。

 精鋭の探索者で固められているので軍事力がある。
 あとは、ショッピングモールやら三つ星ホテルやら色々経営していて、財力もある。

 さらにはギルド専用のビルを建てて、中にはジムやら訓練場やら色々あって、探索者が寝泊まりできる部屋も与えられるらしい。
 でっけえプールや映画館もあるんだとか。

 ギルドのオーナーが探索者育成に特に力を入れていて、探索者からの待遇がとてもいいってのは、よく聞く話だ。

 探索者からしたら最高のギルドだな。

 そんなギルドからスカウトをされる。
 うん、普通の探索者なら誰しもが喜んで引き受けるだろうな。

 それでも俺はお断りをいれるんだ。
 海外になんて行きたくないから。


「なんと、それはとっても有難いお話ですね!」
「そうだろう!」

 
 俺の言葉を聞いて自慢気になるヴァルグ。
 ごめんね、いい気になってるところ悪いけど俺入る気ないの。


「とっても有難いんですけど、スカウトには応じない、そうギルドにはお伝えください」
「はぁ? そりゃなんでだ? 俺がいうのもなんだがこんな最高のギルドからスカウトなんて滅多に、いや金輪際もうねえぞ!」

 
 あれー、丁寧に断ったつもりだがそんなにキレることあるー?
 ハゲなのに顔真っ赤で茹でダコみたいだな!


「それは……俺には愛する姉がいます。姉は(配信者としては)非常に生真面目で、常に熱意を持って仕事(配信業)に取り組んでいました」


 語り口調に話始めると、ヴァルグは落ち着きを取り戻し俺の話に耳を傾け始めた。

 べ、別に嘘は言ってねえし……
 ただちょっと言葉が足りないだけだし……


「しかしそんな姉があんな酷い目(事務所に住居から追い出される)なんてッ……姉は俺や妹にとにかく優しい人でしたッ……そんな姉がッ、まさかあんな病気(拗らせた風邪)に掛かって寝たきりだなんてッ……くっ、姉は俺たちにとっては親みたいな存在かもしれませんでしたッ……」


 ここで敢えて語尾を上げることによって、涙を堪えている風にみせる高等テクニックを見せる。

 なんか両親が死んだみたいな雰囲気になっているが、両親はちゃんとご存命である。
 姉ももちろん生きている。
 今頃家で風邪拗らせて寝ている頃だと思う。

 ちなみに嘘はついていないぞ!
 両親死んだなんて一言もいってないし!
 姉が親代わりとは言っていないし!
 みたいな存在だった”かも”しれないだけだから!
 
 ちょっと誇張しすぎだし、今のところ結論ないからただ姉が動けないほどの病気に蝕まれているのをただ言ったみたいになっているから、嘘がバレないか心配だ。
 しかし何故かコイツは涙を堪えている。
 多分バレはしないだろう。


「…………きひぃw」

  
 すると、後ろの方から笑い声が聞こえてきた。
 後ろのテーブルに移動させたマジノコが発したんだと思う。

 身体をみると小刻みに震えているのがわかる。
 多分、いやぜってぇこいつ笑いを堪えている。

 やめろ、俺まで笑いそうになるだろ。
 俺自身何言ってるか分かんなくて笑いそうになってるのを堪えているってのに……wwww


「…………姉は今日本から動かすわけにはいかず、肉親である俺が側にいないといけない(目を話すと何しでかすかわからない)状態です。だから、折角の有難い話なんですけど……断らさせてください」
「ああ、狂犬のクロ。そうだとは知らず怒鳴ってすまなかった……ギルドにはちゃんと全てを伝えておくよ……」


 その言葉と共にヴァルグは名刺を俺に差し出して言った。


「もし、こっちに来れる手立てができたら連絡をくれ。お姉さん、元気になることを願っているよ。急に来て悪かったな。じゃあな」


 その言葉と共にヴァルグは消えた。
 思わず溢れた涙を拭きながら。

 それを俺は彼が見えなくなるまで頭を下げて見送った。
 ここに笑いなど必要はないさ。


「…………まじでアホで助かったわ」 
「急にこっちにあの人向かって来たときはどうしようかと思ったけどよかったね。もう海外に生きたくないもんねクロは」
「同情誘ったのは悪いとは思っているけど、ああでもしないと殴りかかって来そうな勢いだったからな」
 
 
 悪気は全くない訳ではないが、本当に俺は海外行って暮らしたくないから仕方ない。
 面白そうという理由でコユキの姉、ユキさんに連れてかれた初の海外が思った以上にキツかったんだ。
 もうあんな衛生的にヤバいとこで寝泊まりなんかしたくねえ。
 虫も食べたくない。

 あれは日本が素晴らしい国だと再確認できた旅だったなあれは。
 あの経験で一気に愛国心に目覚めたわ。

 まあこれで、フロントラインから俺にスカウトに来ることはもう無いだろう多分。

 ってか海外で思いだしたが、ロシアのイーニアは元気してっかな。
 今度連絡とってみよ。
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