間隙のヒポクライシス

ぼを

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4章:仮死451

第6話

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「…へえ…。それで、本星崎もコスプレをすることになったのね?」
「そ、そう、そうみたいです…。ふふ…」
「…面白そうじゃない。で? 本星崎は、何のコスプレをするの?」
「ダ、ダ、ダークエルフの、よて、よ、予定です」
「…ダークエルフ…。コメントが難しいチョイスね」
「ど、どう、どうやら、あ、悪魔とか、モ、モ、モンスター系のコスプレを、み、みん、みんなでするみたいです。ほ、ほ、ほら。ゴブ、ゴブ、ゴブリンさんがいるから…」
「…そういう事なのね。ゴブリンに引っ張られたのか…。ふふ。露出が過ぎないように、気をつけてね」
「は、は、はい。あ、あり、ありがとうございます」
「…じゃあ…始めましょう。本星崎は、もう環境設定は終わった?」
「は、は、はい。は、はじめ、ヘ、ヘ、ヘッドフォンから音が出なくて、す、すご、凄く手間取りましたけど…」
「…そこは乗り越えたのね。良かったわね。まあ、みんな通る道だから」
「あ…さ、さ、左京山さんのヘッドフォン…い、いつ、いつも学校でしているのと、ち、ちが、違いますね…。そ、それ、それって、ぎょ、業務用でよくつかわれている、モニ、モ、モニターヘッドフォンですよね…いいな…」
「…よく気付いたじゃない。さすがに、学校でホワイトノイズを聴くために、このヘッドフォンは持っていかないわよ」
「わ、わ、私のヘッドフォンの、な、なん、何倍もの値段ですよね…それ」
「…まあ、そうね。でも、本星崎のモニターヘッドフォンは、価格の割に高品質で評価が高いのよ。全国の音楽教室とかで使われていたりするしね」
「お、おん、音楽教室…。そ、そうだったんだ…」
「…今日は、ヘッドフォンじゃなくて、こっちのモニタースピーカーを使うけどね。…まずは、ソフトを起動するわね。例えば…今、途中まで作っている曲は…これ」
「す、す、凄い…。な、な、何トラックくらい、つか、つ、使っているんですか?」
「…そうね…私の場合は、曲にもよるけれど、多いと50トラックくらいは使うわね」
「そ、そ、そうなんですか…。わ、わた、私も少し、つ、つ、作ってみたんですが、せ、せい、せいぜい10トラックくらいです」
「…トラック数が多ければいい、ってもんじゃないわ。ちなみに、本星崎はどんな曲調の曲を作ろうとしているの?」
「え、え、えっと…フィ、フィドルとか、ギターとか、ティ、ティ、ティンホイッスルとか、ア、ア、アコーディオンを中心とした…」
「…へえ…面白いわね。本星崎はアンプラグド音源が中心なんだ。もしかして、ケルト系とか好きだったりするのかしら?」
「あ…そ、そ、そうですね。ま、まさに、そうです」
「…いいわね。ファンタジーの世界って感じ」
「さ、さ、左京山さんは、ど、どんな音を使うんですか?」
「…そうね。私の場合はEDMが多いから、シンセパッド、シンセリードが中心かしら。あとはアルペジエーターを多用するわね。楽だから」
「ア、ア、アルペジエーター…ですか」
「…例えばね…これなんか…。どう? わかるかしら。で、パラメータを調整するだけで…ね? コード進行にあわせるのも簡単」
「お、おお~…。じ、自動で伴奏の、パ、パ、パターンを、つ、つ、作ってくれるんですね」
「…言ってみれば、そんな感じかしら。あと、プリセットのループ音源も好きよ。例えばね…」
「あ、ああ…い、いいですね。そ、そうか…。ド、ド、ドラムはループ音源でも、い、いいのか…」
「…本星崎も同じソフトなんだから、プリセットでループ音源が入っている筈よ。試してみるといいわね」
「は、はい。あ、あ、ありがとうございます」
「…それからね…」

「い、い、色々教えていただいて…あ、あ、ありがとうございました」
「…よかったわね。またいつでも教えてあげるわよ」
「さ、さ、さっきの曲、完成したら、ぜ、ぜ、是非聴かせてくださいね」
「…いいわ。でも、本星崎の曲も聴きたいから、交換条件ね」
「わ、わ、私の曲…。は、は、恥ずかしいな…」
「…ふふ。恥ずかしい事なんかないわ。こんなの、やったもの勝ちだもの」
「そ、そ、そういえば、さきょ、さきょ、左京山さん…」
「…なに? どうしたの?」
「え、え…と…。メ、メ、メッセンジャーのIDを、おし、教えて貰えませんか? も、もっと気軽に連絡できたらな…って思って。も、も、もうすぐ夏休みだし…」
「…あ…そうね。交換してなかったかしら。いいわ。教えてあげる」
「あ、あり、ありがとうございます」
「…いいのよ。どうせ私、家族くらいしか連絡する人がいないから」
「か、か、家族…ですか。そ、そ、そう言えば、さ、さ、左京山さんには、きょ、兄弟や姉妹はいるんですか?」
「…私はひとりっ子だから…私と両親だけ」
「そ、そ、そうですか…」
「…本星崎はいるの? お兄さんとかお姉さんとか」
「…は、は、はい…。あ、あ、姉が…ひ、ひと、ひとり…」
「…へえ…お姉さんがいるのね…。確かに、本星崎って、ちょっと妹っぽいかもね」

「お、お、おね、お姉ちゃん、だ、ダメだよ…。わ、わた、私から、あの、あ、あの人達に、た、た、対象から、は、はず、外して貰う様に言っておくから…」
「ありがとう。でも、あたしか、あんたかだったら、あんたが生き残ったほうがいい。彼らが判断した通りね…」
「そ、そん、そんな…いや、嫌だよ…。お、おね、お姉ちゃんの命を使って生き延びるくらいなら、わ、わ、私、自分で…」
「バカなこと言わないで。あたしのスキルは彼らの役には立たない。要らない人間なの。でも、あんたは必要な人間。あんたが死んでも、私はどのみち死ぬことになるんだから。だったら、あんたが生き延びた方がいい」
「で、で、でも、でも…な、な、なんで、お姉ちゃんなの…」
「ね? あんたはそんな喋り方だから、小さい時から内気で大人しかったし、友達を作るのにも苦労したでしょ? それでも、あんたは強く生きてきた」
「だ、だ、だって…だって…そ、そ、それは、お、お、お姉ちゃんがいつも、た、たす、助けてくれたから…」
「あんたは強い子だし、これからも強く生きていける。だから、あたしの分も生きて、生きて、恋人を作って、結婚して、子供を産んで…は、あんたの自由だけど、とにかくおばあちゃんになるまで生き伸びて欲しいの。それが、今のあたしが唯一叶えられる、あたしの最大の願いなんだから」
「わ、わ、私…私…ぐすっ…えっぐ…ふわぁあああん」
「…ほら、抱きしめてあげるから…。ね? 落ち着いて…落ち着いてね。あんた…気付いてなかったかもしれないけれど、あたしが崩壊フェイズに入るまで、どのみち、あと何日もないのよ…。どちらにしろ、あたしは死ぬの。何日か後に崩壊して、何の役にも立たずにひとりで死ぬのか、明日あんたのために崩壊して、あんたを生き延びさせて死ぬのか…。どっちがあたしにとって幸福な事か、わかるでしょ?」
「…う…うん…。だ、だ、だけど、さ、さび、寂しいよぉ…」

「…お~い、本星崎。あんた、どうしたの? ぼ~としちゃって。ほら、帰っておいで~」
「あ…え、えっと…。ご、ごめ、ごめんなさい。ちょ、ちょ、ちょっと、考え事をしてました」
「…面白いわね…。人と話をしながら白昼夢を見られるなんて。でも、まあ、私も経験あるか…」
「そ、それ、それじゃあ、あ、あ、IDを、おし、教えて貰っても、い、い、いいでしょうか」
「…もちろんよ。でもね、最近、ちょっと調子が悪いのよね、私のメッセンジャー」
「ちょ、調子が…ですか?」
「…なんかね…。送ったと思ったのに、ちゃんと送れてなかったりするのよね」
「おく、お、送れない…ですか…。ど、ど、どんな感じですか?」
「…例えばね、こうやって文字をメッセンジャーの画面で打つじゃない。で、送信ボタンを押す。まあ、今はちゃんと送れたわね。でも、何回かに1回は、送信ボタンを押した瞬間に文字が消えてしまって、まるでもとから私が何も打っていなかったみたいな状態になるのよね。スマホ変えた方がいいのかしら…」
「も、も、文字が…消える…」
(も、もし、もしかして…さ、さきょ、左京山さん…。や…やっぱり…。ス、スキ、スキルが発現している…。よ、よ、ようやく、発現したのね…。こ、こ、これで、次の任務に、と、と、取り掛かれる…)
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