間隙のヒポクライシス

ぼを

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5章:ある少女に花束を

第14話

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「そうですか…。ぼくも、あと3ヶ月くらいで…」
「一応、今、話した内容で、上小田井くんのスキルに関する知識レベルは、僕たちと同じ水準になった筈だ。驚いたよね、きっと…」
「え…ええ。驚きました。でも、…なんとなく、みなさんのお話から、そうなのかな…って思っていた内容と、それほど大きくは違いませんでした。国府さんの時から、先日の鳴海さんの時まで、すべての情報がつながった気がします」
「そうか…。そこまで理解しているなら、上小田井くんは、戦力になるかもしれないな…」
「えへ。ぼくがお役に立てるかわかりませんけれどね。でも、伊奈さんの事を考えると、時間はありませんよね…。神宮前さんのお力を借りるとしても…。とすると、誰かが崩壊する前に、こちらから防衛省の人たちに接触して、情報をとる方法を考えた方がいいんじゃないでしょうか? 来週末の同人イベントはぼくたち小学生組がそろいませんし、人が多いところを襲撃してくるとは思えないですから、接触してこない可能性があります。とすると、防衛省の人たちは、積極的にぼくたちを殺そうとするよりも、このままぼくたち全員が、時間切れで崩壊して死ぬのを待っているんじゃないでしょうか? だとしたら…」
「そうだね…。この前の学校襲撃以降、やつらの気配がないのは確かだ。でも、僕たちが崩壊して死ぬのを待っている、という事はないと思う。僕や豊橋も、前に同じことを考えたんだけれど…国府の時に、無関係なバスの乗客を巻き添えにしてでも僕たちを消そうとしていたり、除染車まで出してきたんだ。僕たちが人の多いところで爆発するのを良しとしていないと思う。だから、僕たちが崩壊するギリギリのところを狙って、なんらかのアクションを仕掛けてくるんじゃないかと思うんだ」
「だとしたら…伊奈さんの残りの寿命を考えたら、やっぱり同人イベントで接触してくる…でしょうか?」
「やつらが伊奈の寿命について情報を持っているかどうか次第だな…。本星崎が今も継続的に防衛省と連絡をとっていたら、わからないけれど…」
「本星崎さんが…。それはあまり、疑いたくないですね」
「ああ、同感だよ」
「ぼくたちが知らないだけで、防衛省側にも、鳴海さんみたいに人の寿命を確認したり、常滑さんみたいに人の心を読んだりできるスキル者がいるのかもしれないですね」
「うん。それは常に警戒しなきゃいけない。こうしている間にも、どこかで僕たちの心を読んでいるスキル者がいるかもしれないからな…」
「だとしたら、同人イベントの機会を逆手に取るのはどうでしょう?」
「逆手に取る…? どういうことかな」
「防衛省がぼくたちを諜報していて、すべての情報を知っている、という前提で行動するんです」
「あ…ああ、上小田井くんの言いたいことがわかった。同人イベントの日に、やつらを誘導しよう、っていうんだな」
「はい。僕たち小学生組も参加して、全員そろうようにするんです。それから、イベント終了後に人気のないところに移動すれば…」
「たしかに、それで接触を図る事は可能かもしれないな…。問題は、接触したところで、やつらは否応なしに僕たちを殺しにかかるだろう、という事だけど…」
「あ…そうでしたね…。えへ、そこをなんとかしないと、おびき出しても意味がなかったですね…」
「前回、学校を襲撃された時は、伊奈の力で被害を最小限にできた…って言ったら神宮前がかわいそうだけど…まあ最小限にできたんだ。だから、やつらも対策をしてくるはず」
「対策…ですか?」
「考えられる対策は2つだな…。1つは、伊奈を事前に殺すこと。誘拐の方が筋がいいかな。伊奈は孤児だから、事件にせずに成し遂げられるだろう。もう1つは、物理的な火器ではなく、スキル者を使って僕たちを殺しにくること」
「そ…そうでしたね…。向こうには、どんなスキル者がいるか、わからないんですもんね…」
「とは言え、人工発現のスキル者は、スキルが弱い、という情報もあるから…そこまで強力な攻撃はできないんじゃないかと思う」
「本星崎さんに、向こうのスキル者のスキルを鑑定してもらうのはどうですか?」
「それは難しいな…。本星崎のスキル範囲は、せいぜい10mくらいしかないんだ。目前で対峙でもしない限り無理だろうな。呼続ちゃんならもしかすると、もっと広い範囲を鑑定できるのかもしれないけれど、あいにく現在は敵の手中だしな…」

 ピンポーン

「ん? 上小田井くん、お客さんみたいだけど」

 ピンポーン
  ピンポーン
 ピンポーン
  ピンポーン

「だいぶ焦ってるみたいだぞ…」
「あ、ちょっと確認してきますね。今、両親が留守なので」
「僕も一緒に行くよ。嫌な予感がする」

 ピンポーン
  ピンポーン
 ピンポーン
  ピンポーン

「す、すごい連続で鳴らしていますね…」
「上小田井くん、インターフォンに応答したり、玄関を開けたりするのを少し待って欲しい。外にいる人間の年齢、性別を確認する」
「あ…そんな事まで数値化して確認できるんですね…。すごい…」
「男女の区別をどうやって数値化しているかは…きかないで欲しい…。で…。えっと…。11歳の…女の子? 誰だ? とこちゃんか?」
「ぼくの友達である事には違いなさそうですね。ドアの覗き穴から覗いてみますね」
「ああ…お願いするよ」
「…あれ? 呼続さん…。まさか…鳴海さん、呼続さんです!」
「呼続ちゃんだって!? どういう事だ…? 本星崎と入れ替わりで、防衛省に召し抱えられたんじゃなかったのか…。逃げてきたのか…?」
「でも、呼続さんに間違いないです」
「やばい…。罠の可能性があるぞ。僕のスキルの範囲を周辺直径100mくらいに広げて、敵がいないか確認する…」
「鳴海さん、あまりスキルを使い過ぎないでくださいね…」
「……どうやら、100m周囲には怪しい人物はいなさそうだな…。でも、なぜ呼続ちゃんがひとりで、上小田井くんの家を訪ねて来たんだろう」

 ピンポーン
  ピンポーン
 ピンポーン
  ピンポーン

「ねえねえ! 上小田井くん、いないの? 電気ついてるのにぃ…そんなぁ…。くすん…くすん…」
「鳴海さん、ぼく、呼続さんを放っておけないです」
「う…うん。いいよ。開けて、中に入れてあげよう」

 ガチャ

「呼続さん、どうしたの? ぼく、いるよ」
「あぁぁん、上小田井くん、怖かったよぉ…えぇえええん」
「とりあえず、中に入りなよ、呼続ちゃん」
「あ、鳴海おにいちゃんもいたんだ…。よかったぁ…」
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