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7章:ラプラスの悪魔はシュレーディンガーの猫の夢を見るか
第2話
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「ニュースで取り上げられているのか、ぼくは知らないですけれど…おじさんの話によると、国際情勢は、あまり良くないそうです」
「国際情勢って、日本の置かれている立場が、って事? 外交がうまくいっていないのか」
「ええ、鳴海さん。そうだと思います。結局、生物兵器…つまり、ぼくたちの事ですが…について、日本はまだ正式な回答をしていないですからね」
「回答をしていない、って事は、近隣国家も次の手を打てないってことじゃないのかな」
「それが…どうやら、北方領土で不思議な病気が流行っていて、既に死者が出ている、という話が入ってきているようなんです」
「北方領土だって? まさか、衛星が漂着した地域って、北方領土だったのか…?」
「ぼくも、詳しくは知りません。だから、その病気の原因がオングストロームマシンなのかもわかりません。ただ、ロシアは、日本が北方領土を奪回するために、生物兵器を使ったと主張しているみたいです。正確な死者の数や、本当に病気が蔓延しているのかは不明です…。おじさんは、ロシアの偽旗作戦だと言っていましたが…」
「そうか…。なんだか、あり得そうといえば、あり得そうな話だな…。アメリカの動きは? 米軍基地撤退みたいな報道もされていた気がするけれど、その後の事で何か知っている事はある?」
「これも、本当かどうかはわかりませんが、アメリカは説得できたみたいです。とはいえ、衛星を偽装して新技術の開発を行っていた事と、オングストロームオーダーでのマシン製造技術に、かなり警戒しているみたいです」
「まあ、そうだろうな。アメリカとしては、もしこれが兵器だとわかれば、重要な武器輸出国を失う事になるからな。だけど、ロシアと中国を牽制する役割として日本国内の米軍基地は手放せないはずだ」
「鳴海さん…。戦争になるんでしょうか…」
「どうだろうね。現時点の情報だけで、ロシアが日本に攻めてくる事はないと思うな。大義名分が弱いし、アメリカとの衝突のリスクがある。世界大戦になりかねないよ。だから、その前に、お得意のスパイを送り込んでくるだろうな」
「スパイ…ですか? 何のためにでしょう」
「アメリカが一瞬でも日本に対して反発をした今、ロシアは日本から米軍を遠ざけたいのは間違いない。オングストロームマシンが兵器であるを公にして、正式に日本が生物兵器を秘密裏に作っていた事と、それを使ってロシアに攻撃を仕掛けた既成事実を作りたいだろうね。こうなると、アメリカは手を出しづらくなる」
「な、なるほど…。確かに、それが明確になってしまえば、太平洋の地政学は変わるかもしれませんね…」
「ゴブさんも上小田井くんも、元気そうでよかったね」
「うん。とりあえずは、安心したかな。とは言っても、一番最後にスキルを発現したゴブリンでも、残りの寿命は2ヶ月ちょっとだ」
「そっか。なんだかんだで、みんな、残り1ヶ月くらいになっちゃったんだね」
「正確な時間は、みんなには伝えていない。スキルを使うことで簡単にずれるって事もあるけれど、正確な日数を知っても、あんまりいいことはないからな」
「ねえ、鳴海くん、あと1ヶ月で、何する?」
「何する…って。高校生活だよ」
「それはそうだけど…。何か、思い残す事とかないの?」
「思い残しかあ…。思い残すほど、人生をまだ生きていないしな…。あえて望むとしたら…どうせ死ぬなら、皆より先に死にたい、ってことかな…」
「あ~、それってなんかずるい」
「ずるい…のかなあ」
「誰だって、悲しむ回数は少ない方がいいもんね。それは、あたしもおんなじ。でも神宮ちゃんは? 遠い未来かもしれないけれど、これから神宮ちゃんが親しくなる人は、全員、神宮ちゃんよりも先に死んでいくんだよ?」
「そうか…。その考え方だと、長生きなんてしない方がいいことになるんだな。豊橋のセリフじゃないけど、人生とは度し難いな…」
「そうそう。だから、もう少し楽しげな話をしようよ! 例えば、将来の夢が何だったか、とかさ」
「将来の夢かあ…。そう言われると、小学生の頃は、探検家になりたかったかな」
「探検家? へえ、知らなかったな。いいじゃない。でも、なんで探検家なの?」
「う~ん。多分、小学生の頃に読んだ本かなにかの影響だったんじゃないかな。結構調べた記憶があるよ。古代遺跡とかさ」
「じゃあ、残りの時間で、古代遺跡の探検に行く!? きっと楽しいと思うな~」
「ははは。今は、もう、地球上には探検すべき未開の場所なんて残っていないよ。強いて言えば、深海くらいだ。あとは、宇宙か、ミクロの世界かなあ…」
「でも、行ってみたい場所はあるでしょ?」
「まあ…。確かにね。う~ん…。ピラミッドとか、アンコールワットとかを見ておけば、死ぬ時に後悔しないんだろうか…。それよりも、みんなと最後まで、少しでも長く一緒にいられた方が後悔しない気もするな…」
「えへへ。鳴海くんがそれなら、それでいいと思うよ」
「そうだな…。あまり考える時間は残されてはいないけれどね。そういう桜は?」
「あたし? あたしはね~。鳴海くんと違って、色々とやりたい事があるよ」
「桜はまだスキルが発現していないんだから、まだ、死ぬことをあまり意識しなくていいんじゃないかな。文藝部の部員を積極的に集める事でも考えたらいいんじゃない? 僕も豊橋も本星崎もゴブリンも、近い未来に部員から抜けるんだからさ。また廃部の危機だぜ」
「が~ん。そうでした。こんなに都合のいい人たち、もう集まらないよね」
「…確かに、都合のいい人たちだったよね…僕たち」
「うふふ。でも、そうじゃなくって、みんなと一緒にいられるうちに、やっておきたい事が沢山ある、って、そういうこと」
「はいはい。なるほどね…。で? 例えば?」
「例えばね~。あたし、鳴海くんと花火大会に行きたいな」
「きゅ、急に話のスケールが小さくなったな…」
「もう、スケールの問題じゃないでしょ? 相変わらず鈍感だなぁ、鳴海くんは」
「お、怒られた…」
「まあいいけどさ。えへへ」
「でも、もう9月だぜ? 9月に花火大会なんて…。あ、意外とやってるんだな。スマホで調べてみると、近隣でも沢山でてきた」
「ほらほら、ね? 残暑の夜を、みんな楽しみたいんだよね」
「最近は9月も残暑というか…酷暑が続いているけどね」
「あたし、まだ一度も着たことがないんだよね」
「着たことがない? 何を?」
「浴衣だよ。ゆ、か、た」
「ああ、浴衣かあ…。いいね」
「実は、この夏休みに準備はしておいたんだよね。いつでも行けるように」
「なんだ。なおさら行かなくちゃ。じゃあ、今週末、ここの夏祭りに行ってみようか」
「うん。やったぁ! 楽しみだなあ…鳴海くんとお祭り。えへへ~」
(ん? なんだ? 左京山さんからメッセージ…? 「花火大会に来てはいけない。桜ちゃんに誘われても、断って」だと…。どういう状況なんだ…一体? あれ…もう1通来てるぞ…)
「国際情勢って、日本の置かれている立場が、って事? 外交がうまくいっていないのか」
「ええ、鳴海さん。そうだと思います。結局、生物兵器…つまり、ぼくたちの事ですが…について、日本はまだ正式な回答をしていないですからね」
「回答をしていない、って事は、近隣国家も次の手を打てないってことじゃないのかな」
「それが…どうやら、北方領土で不思議な病気が流行っていて、既に死者が出ている、という話が入ってきているようなんです」
「北方領土だって? まさか、衛星が漂着した地域って、北方領土だったのか…?」
「ぼくも、詳しくは知りません。だから、その病気の原因がオングストロームマシンなのかもわかりません。ただ、ロシアは、日本が北方領土を奪回するために、生物兵器を使ったと主張しているみたいです。正確な死者の数や、本当に病気が蔓延しているのかは不明です…。おじさんは、ロシアの偽旗作戦だと言っていましたが…」
「そうか…。なんだか、あり得そうといえば、あり得そうな話だな…。アメリカの動きは? 米軍基地撤退みたいな報道もされていた気がするけれど、その後の事で何か知っている事はある?」
「これも、本当かどうかはわかりませんが、アメリカは説得できたみたいです。とはいえ、衛星を偽装して新技術の開発を行っていた事と、オングストロームオーダーでのマシン製造技術に、かなり警戒しているみたいです」
「まあ、そうだろうな。アメリカとしては、もしこれが兵器だとわかれば、重要な武器輸出国を失う事になるからな。だけど、ロシアと中国を牽制する役割として日本国内の米軍基地は手放せないはずだ」
「鳴海さん…。戦争になるんでしょうか…」
「どうだろうね。現時点の情報だけで、ロシアが日本に攻めてくる事はないと思うな。大義名分が弱いし、アメリカとの衝突のリスクがある。世界大戦になりかねないよ。だから、その前に、お得意のスパイを送り込んでくるだろうな」
「スパイ…ですか? 何のためにでしょう」
「アメリカが一瞬でも日本に対して反発をした今、ロシアは日本から米軍を遠ざけたいのは間違いない。オングストロームマシンが兵器であるを公にして、正式に日本が生物兵器を秘密裏に作っていた事と、それを使ってロシアに攻撃を仕掛けた既成事実を作りたいだろうね。こうなると、アメリカは手を出しづらくなる」
「な、なるほど…。確かに、それが明確になってしまえば、太平洋の地政学は変わるかもしれませんね…」
「ゴブさんも上小田井くんも、元気そうでよかったね」
「うん。とりあえずは、安心したかな。とは言っても、一番最後にスキルを発現したゴブリンでも、残りの寿命は2ヶ月ちょっとだ」
「そっか。なんだかんだで、みんな、残り1ヶ月くらいになっちゃったんだね」
「正確な時間は、みんなには伝えていない。スキルを使うことで簡単にずれるって事もあるけれど、正確な日数を知っても、あんまりいいことはないからな」
「ねえ、鳴海くん、あと1ヶ月で、何する?」
「何する…って。高校生活だよ」
「それはそうだけど…。何か、思い残す事とかないの?」
「思い残しかあ…。思い残すほど、人生をまだ生きていないしな…。あえて望むとしたら…どうせ死ぬなら、皆より先に死にたい、ってことかな…」
「あ~、それってなんかずるい」
「ずるい…のかなあ」
「誰だって、悲しむ回数は少ない方がいいもんね。それは、あたしもおんなじ。でも神宮ちゃんは? 遠い未来かもしれないけれど、これから神宮ちゃんが親しくなる人は、全員、神宮ちゃんよりも先に死んでいくんだよ?」
「そうか…。その考え方だと、長生きなんてしない方がいいことになるんだな。豊橋のセリフじゃないけど、人生とは度し難いな…」
「そうそう。だから、もう少し楽しげな話をしようよ! 例えば、将来の夢が何だったか、とかさ」
「将来の夢かあ…。そう言われると、小学生の頃は、探検家になりたかったかな」
「探検家? へえ、知らなかったな。いいじゃない。でも、なんで探検家なの?」
「う~ん。多分、小学生の頃に読んだ本かなにかの影響だったんじゃないかな。結構調べた記憶があるよ。古代遺跡とかさ」
「じゃあ、残りの時間で、古代遺跡の探検に行く!? きっと楽しいと思うな~」
「ははは。今は、もう、地球上には探検すべき未開の場所なんて残っていないよ。強いて言えば、深海くらいだ。あとは、宇宙か、ミクロの世界かなあ…」
「でも、行ってみたい場所はあるでしょ?」
「まあ…。確かにね。う~ん…。ピラミッドとか、アンコールワットとかを見ておけば、死ぬ時に後悔しないんだろうか…。それよりも、みんなと最後まで、少しでも長く一緒にいられた方が後悔しない気もするな…」
「えへへ。鳴海くんがそれなら、それでいいと思うよ」
「そうだな…。あまり考える時間は残されてはいないけれどね。そういう桜は?」
「あたし? あたしはね~。鳴海くんと違って、色々とやりたい事があるよ」
「桜はまだスキルが発現していないんだから、まだ、死ぬことをあまり意識しなくていいんじゃないかな。文藝部の部員を積極的に集める事でも考えたらいいんじゃない? 僕も豊橋も本星崎もゴブリンも、近い未来に部員から抜けるんだからさ。また廃部の危機だぜ」
「が~ん。そうでした。こんなに都合のいい人たち、もう集まらないよね」
「…確かに、都合のいい人たちだったよね…僕たち」
「うふふ。でも、そうじゃなくって、みんなと一緒にいられるうちに、やっておきたい事が沢山ある、って、そういうこと」
「はいはい。なるほどね…。で? 例えば?」
「例えばね~。あたし、鳴海くんと花火大会に行きたいな」
「きゅ、急に話のスケールが小さくなったな…」
「もう、スケールの問題じゃないでしょ? 相変わらず鈍感だなぁ、鳴海くんは」
「お、怒られた…」
「まあいいけどさ。えへへ」
「でも、もう9月だぜ? 9月に花火大会なんて…。あ、意外とやってるんだな。スマホで調べてみると、近隣でも沢山でてきた」
「ほらほら、ね? 残暑の夜を、みんな楽しみたいんだよね」
「最近は9月も残暑というか…酷暑が続いているけどね」
「あたし、まだ一度も着たことがないんだよね」
「着たことがない? 何を?」
「浴衣だよ。ゆ、か、た」
「ああ、浴衣かあ…。いいね」
「実は、この夏休みに準備はしておいたんだよね。いつでも行けるように」
「なんだ。なおさら行かなくちゃ。じゃあ、今週末、ここの夏祭りに行ってみようか」
「うん。やったぁ! 楽しみだなあ…鳴海くんとお祭り。えへへ~」
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