キング・オブ・アウト ~半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す!!

NEOki

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第15話 ディーノの行く末

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 幹部達との会議を終えたルチアーノは、次の目的地へ向かって廊下を歩いていく。

 彼の顔は戦場での子供の様に無邪気で迷いのない表情では無く、迷いと苦悩に満ちて覇気など微塵も感じさせない表情で埋まっていた。



 ルチアーノの歩みはとある木目で飾り気の無い部屋の前で止まり、三回軽く扉をノックする。



「どうぞー!!」



 扉の中から入室の許可を出す声がした。

 其れを確認したルチアーノはそっと扉を開き、室内に入る。



「・・・ボス、何故このような場所に? ディーノの所へはもう行かれたのですか?」



 室内にいたのはディーノの教育訳を務めているトムハットであった。

 トムハットはまさかルチアーノが訪ねてくるとは考えていなかった様で、彼の姿を見た瞬間口をポカーンと開けて固まる。



「突然訪れて悪かったな。ん? もしかして作業の邪魔をしてしまったか?」



 ルチアーノはトムハットが向き合っていた、作りかけで半分が空白になっている書類を見て彼が作業の最中である事を悟る。



「いえ、これは後回しで別に問題無いです。此れはディーノの勉強の為に作っているプリントなのですが、あの子はどんな問題でもスラスラ解いてしまうのでプリントを幾ら作っても足りませんよ。特に数学に関しては天部の才がありまね」



 トムハットは大変うれしそうにディーノの話をする。

 ルチアーノはこのトムハットが自分と同等、またはそれ以上にディーノの事を思い、息子の様に接してくれている事を再認識した。



「フフッ、昔は想像した事も無かったな、自分の息子が褒められるとこれ程嬉しいだなんて、、、ディーノの元にはこの後行く。その前にお前に言っておきたい事があって此処に足を運んだんだ」



「言っておきたい、事ですか?」



 その言葉から何か深刻なモノを感じたトムハットは表情を硬くし、ルチアーノは迷いを感じさせる複雑な表情を見せる。

 しかし直ぐに覚悟を決めて力強い表情に変化し、ルチアーノはようやく言葉をした。



「決めたんだ、ディーノを表社会に逃がす。其れもあと一週間後、誕生日の翌日に此処を出る事が決定した」



「はッ、、、!?」



 想像の数倍上を行くカミングアウトを受けたトムハットは、どんな話が来ても受け止められる準備をしていたつもりであったが衝撃で思考停止してしまった。



「表社会に逃がす、、、それも一週間後って何故そんな急に!? 其れでは碌に準備も出来ませんし、どうやって表社会でディーノを守るのですか? まさか幹部クラスを同行させるおつもりですか!!」



 トムハットは何とかボスが言おうとしている事を理解したが、現実的に考えてこんな短期間で逃がす事は不可能であった。

 表社会といえども裏社会との繋がりが無い訳では無く、金を払えば簡単にマフィアは境界線を越える事ができる。子供一人を誘拐する事など造作も無い。

 加えて表社会の勢力にもルチアーノに恨みを覚えている人々は大勢いて、表社会はディーノにとって敵だらけなのだ。



「いや、俺達はディーノを表社会に送り届けた後は一切干渉しない、、、ディーノは、VCFに預けるつもりだ。嘗ての友人に頼んで、全く新しい戸籍と名前を与えられて生きる事に成る」



 まさかの方法にトムハットは息を吞む。



 確かに表社会の最高戦力であるVCFに預ければ如何なる裏社会の勢力も手出しする事は不可能に近いだろう。

 しかしVCFはマフィアとの戦闘の為に存在している組織だ、そしてその最大の標的は自分達レヴィアスファミリーである。

 つまり、ディーノがVCFに入った場合は本当の父と子が殺し合う可能性が高いのだ。



「貴方はそれでッ、、、それで良いのですか? 確かにディーノは胸を張れる身分を手に生きられるでしょうがッ、あの子は優しい子です、確実にVCFで出来た仲間や恩人と父子の絆で板挟みに遭いますよ!!」



「其れでもアイツはアイツの正義に従って俺達と戦ってくれる筈だ。そして、本当に心から愛している人間に殺されるのなら、俺という重罪人の最後として百点満点だと思うしな、、、」



 トムハットとルチアーノの関係は特殊だ、一般兵士の様にボスと部下という訳でも無く、幹部連中の様に師匠と弟子という関係でも無い。

 互いに口に出す事は無いが、友人に近い不思議な関係なのだ。



 その友人であるトムハットだけが気付いていた、ルチアーノが数年前から死に場所を探している事を。

 ディーノの母親を守ることができず、復讐の為に行った表社会への大規模侵攻では嘗ての仲間達によって野望を砕かれ、彼の中の何かが壊れたのだ。



「分かりましたよ貴方の目的が、貴方は死人を最小限に抑えてレヴィアスファミリーを潰すつもりですね? 恐らくVCFにもやがて来る自分の死でもって幕引きとしてくれる様に頼んでいるのでしょう」



「はは、流石だな。お前をディーノの教育係に任命した自分の人選を誇りたいね」



 トムハットの発言をルチアーノは遠回しに肯定する。



「そしてディーノがレヴィアスとVCFの懸け橋と成り、貴方の死後平和的に二つの勢力が手を取り合う様に仕向けるつもりですか、、、」



 ルチアーノは力なく笑う。

 どうやら彼が嘗て描いていた野望や夢は既に崩れ去っていて、若い頃の残り香である威風を削りながらビッグファミリーのボスとしての姿を保っている様だ。

 目の前にいる男は幽霊の様に熱を感じない。



「俺にはもう全世界を自分の手で変える力は無い、いやッ初めから俺にそんな力は与えられていなかったんだよ。この小さな男が出来る事は、自分を信じてくれる人間が少しでも幸せに成れる様に自らの魂を削る事だけ。その考えを突き詰めると、俺はどうしても死ななきゃいけないみたいだ、、、」



 トムハットはその発言を否定したくて仕方が無かったが、一人の男が仲間全員が少しでも幸せに成れば良いと考えて出した答えを否定する事など出来なかった。

 ルチアーノは表社会にとって破帝以上のインパクトを持って記憶されている大悪人であり、彼が生きている以上レヴィアスファミリーと表社会が手を取り合う事は無いのだ。



「このレヴィアスファミリーの行く末を一人の構成員として考えたのなら、その考えに賛成です。ですが私は貴方の友人として、そしてディーノの教育係として全力で反対します」



 その言葉を聞いたルチアーノは予想していた様に、弱々しく影が下りた顔で何度か頷いた。

 正に生きた屍だ、この男は生きながら死んでいるのである。



「ですが私は所詮大した肩書が無い、貴方の考えを辞めさせる権利も力もないただの人間です。貴方はボスとして一番正しいと思う行動を取れば良い」



 トムハットはもうルチアーノの顔を見る事が出来なかった。

 しかし自分の側方から灯が消えて弱々しい視線を感じて、訳の分からない涙が溢れて止まらなかった。

 トムハットは悲しみで声が裏返るのを必死に堪えながら言葉を紡ぐ。



「ですが、これだけは覚えておいてください、、、貴方の望む未来で一番苦しむのはッ貴方では無くディーノだという事を。貴方はあの子に親殺しの十字架を背負わせようとしているという事をッ」



「・・・ああ、すままない」



「私にッ、、、言わないでくださいッ!!」



 トムハットもこの選択が最善であり、これ以外の選択肢は存在しない事も理解していた。

 しかし最善最高の答えが必ず全員を幸せにするとは限らない、現実世界の正解とは最も不幸に成る人数が少ない選択という意味だ。

 例えどんな人間が犠牲を被ろうとも、最大多数が幸福であれば其れは正解と成る。

 その事実が無性に腹が立つ。



 ルチアーノは何か言葉を探す様に突っ立ていたが、数秒後自分が掛ける事を許された言葉など存在しないと悟り部屋を後にした。



 そしてルチアーノとディーノに与えられた余りに残酷すぎる未来を受け止める事になったトムハットは、彼らの代わりを果たす事が出来ない無力な自分を呪い続ける。

 気持ちだけでは駄目なのだ、たとえ彼がその身全てを捧げたとしても未来は変わらない。



「私に出来ること、、、何か無いのかッ!! 自分に生きる意味を与えてくれた恩人にッ、必ず守り抜くと誓った息子同然の少年に悲劇が待ち受けていると知っておきながら、指を咥えて見ている事しか出来ないのかよッ!!」



 彼はルチアーノから人格と頭脳を認められてディーノの教育係に就任した。

 しかし現実はどうだ、世界最強の男に頭脳を認められておきながら彼の脳味噌は幾ら思考に時間を掛けようとも何一つ名案を叩き出す事は無い。



「考えればディーノは奪われてばかりだ、、、大人の勝手な争いで母を奪われ、自由に外を出歩く自由を奪われ、生家を追われて父殺しを強要される。済まないディーノ、、、奪う事しか出来ない愚かな大人たちを許してくれッ」



 気が付けばもう外は夜闇に包まれ、トムハットの嘆きは虚しく吸い込まれていく。

 彼は責めてディーノがこの屋敷に滞在できる残り十数日の間に少しでも多く知識を与え、彼が愛されているという唯一の救いを与えてやろうと心に誓った。



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