90 / 120
第91話 埋まった差
しおりを挟む
(勝負あったな……)
そう思いながらゴンザレスは自分の拳を正面から受け、背骨の限界近くまで上半身を仰け反らせながら吹飛ぶディーノを見ていた。
拳からはしっかりと骨が粉砕する感触が伝わっており、鼻を砕いた時に弾けた血液がベットリと付いている。間違い無くクリティカルヒットだ。
追撃の必要も無い程強烈な一撃が入り、後はこのまま後ろ倒しに倒れるのを確認すれば決着である。
(一日で此れだけの成長、充分過ぎる位だ……)
結果的には一方的にボコボコにされる形となったが、ディーノは確実に飛躍的な成長を遂げている。
昨日は目立っていた頭と身体のズレによる行動のぎこち無さが減り、一度だけとは言え渾身の一撃を紙一重で回避してみせた。
確実に差が埋まっている、次の戦いが非常に楽しみな結果である。
今回はこのままダウンして速く楽にッ……
「グオオオオオオオオオッ!!」
勝利を確信して肩の力を抜き、警戒の糸を解いていたゴンザレスの耳に獣の様な叫び声が飛び込んでくる。
その音の奇っ怪さもさることながら、彼の注意を最も引いたのはその声の発生源であった。
ディーノが叫んでいるのである。
「グゾがァァッ!! ボコスカ殴りやがって、俺はッぜってえ倒れねぇ…からなッ!!」
ゴンザレスは一瞬思い切り頭を殴りすぎて脳に障害が発生し、気が狂ってしまったのかと思った。
しかし直ぐにその考え、いやッ勝利を確信した事自体も目の前に立っている若き戦士に対する冒涜であったと気が付く。
何と、ディーノはゴンザレスの本気のパンチを三連続で受けて持ち堪えたのである。
そして驚く事に仰け反っていた上半身を腹筋の力で持ち直し、闘志が一切衰えていないギラギラした目で睨み返してきたのだ。
アレだけの攻撃を受けてまだ戦うつもりなのである。
「ハハ……ッ!! 凄いや、凄いぞディーノ!! 前はパンチ一発で意識を失っていたのに、今日は三発受け手も意識を保ってる。それも二本足で立ってファイティングポーズを維持している!! 済まなかった、僕はどうやら君を過小評価していたようだッ!!」
ゴンザレスは自分の渾身の一撃を耐えられたにも関わらず満面の笑みを浮かべ、まだ遊べる事が嬉しくて溜まらないといった表情でディーノと向かい合う。
一方のディーノはそれと対象的に満身創痍で肩で息をしている。
膝を突くことだけは何とか堪えたがどうやらダメージは確実に受けている様で、目も死んでは居ないが瞳が細かく揺れていた。
立っているだけでも辛そうであるが、ディーノは気丈に相手から受けた言葉に返答を返す。
「褒めてくれるのは嬉しいが、どうせ褒めるなら……俺がお前を床に叩きおとした時にしてくれ。立っているだけで褒められても複雑だ……」
「凄いな、この状況でまだ勝とうとしているのかッ!!」
「お前多分気付いてないだろうけどな、皮肉にしかッ聞こえねえよォッ!!」
ディーノは痛みや疲労を一時的に麻痺させるために感情を爆発させながら雄叫びを上げ、身体が満身創痍なのが嘘であるかの様に地面を蹴って間合いを詰める。
つい先程凄まじい一撃を浴びたばかりだと言うのに、一切カウンターを受ける事に対して恐怖を抱いていない様だ。
(まさか突っ込んでくるとは……ッ!! 恐怖を感じていない、生物として生まれ持っている筈の生存本能がぶっ壊れている。蛮勇で狂人で負けず嫌い、まさに戦いの為に生まれたかの様な男だ!!)
ゴンザレスは目の前で力強く輝いている才能に感動を覚るが、其れでも一切手を抜かず全力で叩き潰す為に拳を振り上げて待ち構える。
体格も筋肉量も技術も圧倒的にゴンザレスが上で、しかも今はダメージが蓄積されおりディーノが圧倒的に不利な状況である。当然正面から行って勝てる訳が無い。
だが其れでもディーノは真っ直ぐ最短距離で敵目掛けて突っ走り、拳を振り上げる。
既に頭は気絶寸前で体力も殆ど残って居らず、一直線に走って拳を放つ事が今彼の出来る最大限であったのだ。
このまま突っ込んでも拳が届く前に叩き潰される事は理解してる、しかし意識が途切れて無様に倒れ伏すまでは絶対に勝負を投げ出さない。
其れがディーノが掲げる美学であり、確かに感じる拍動に対する責任であった。
「ヅラアアアアアアアアッ!! 勝つのはッ俺だァァ!!」
瞳に一切の恐怖を灯さず重心を力の限り前方に倒して突撃し、文字通り命を削り気持ち一つで山のような大男に迫り拳を撃ち放った。
しかし気持ちだけでは拳は届かない、見る者に感動さえ与えそうな突進は余りにも現実的で夢の無い理由によって打ち砕かれる。
其れはリーチの差、ゴンザレスの方が数センチ腕が長かったのだ。
正面から互いにパンチを打ち合えば、腕の長い方のパンチが先に命中して短い方は拳が届く前に弾き飛ばされる。子供でも分かる当然の節理。
ディーノは既に大きく歪んでいた鼻を更に歪ませ、口と鼻孔から夥しい量の血液を吹き出しながらゴンザレスの拳にもたれ掛ったまま気絶していた。
そしてゆっくりと重力に従ってずり落ち、涎鼻水血液で糸を引きながら地面目掛けて崩れ落ちる。
その時のディーノは完全に肉体から力が消え去っており、糸が切れた操り人形の様であった。
つい先程の件があるとは言え、流石のゴンザレスも勝利を確信する。
一発でひ弱な人間では脳に重大なダメージを受け、下手すれば死ねる様な一撃をディーノは何発も受けているのだ。
この攻撃を耐えるのは物理的に不可能であった。
思い返せば不憫である。
ディーノは誰もが惚れ惚れする程屈強な精神を持ち、激痛にも猛烈な吐き気にも慢性的な目眩すらも耐え凌いで向かって来た。
しかしその様にロマンと感動に溢れた行動が、無骨で淡泊なリーチの長さという要素によって無に帰されてしまったのだ。
ゴンザレスは余りにロマンの無い幕切れに、後味の悪さと現実の無情さを感じとる。
しかし、ゴンザレスは二つの要素の比べ方を致命的に間違っていた。
リーチなどの数字に還元出来る要素は普遍でいかなる時でも変わらず効力を発する。
一方で根性や精神などに数値に還元出来ない要素は気分屋である。自分が圧倒的に有利な時点では
全くの無用であるが、土俵際に追い詰められた瞬間その進化は発揮される。
敗北の寸前という最大の危機を勝利の起点に変えるジョーカーなのだ。
「まだッだ……」
原理不明、勝利への執念としか言い表せない謎の力でディーノの意識が再び肉体と繋がる。
それから地面に向かって一直線に落下する身体を止める為、殆ど反射敵に左足が前に出て右拳を腰の辺りまで引き付ける。
そして何処にそんな力が残っていたのかは分からないが、ピクリとも動かす力が残っていなかった筈の右腕と背筋に消えかけの炎が灯った。
「グゥウウアアーーーッ!!」
ディーノは今にも消えそうな灯を腹から出した雄叫びによって一瞬燃え上がらせ、そのエネルギーを爆発させながら背筋を思いっきり反らし拳を打ち上げた。
その拳は実際のエネルギー以上に『重さ』を纏い、勝利を確信して防御を解いていたゴンザレスの顎に命中して打ち砕く。
初めて拳がゴンザレスに命中したのである。
「ゴフゥ……ッ!?」
その一撃は満身創痍意であったにも関わらず凄まじい衝撃となってゴンザレスの顎から脳天までを突き抜けた。
ディーノの貪欲なまでに勝利を求める意志に、世界が、則が応じたのである。
その威力は体重178キロを誇るゴンザレスの小山の様な肉体を大きく仰け反らせた程でああった。
(どうして? どうしてあそこまでダメージを負って尚これ程のパンチが放てる?? 脳が揺れて立っている事すらままならず……当然拳を握り込む力や上半身を反らせる力なんて残っていなかった筈だ)
ゴンザレスは衝撃で仰け反りながら天を仰ぎ、驚きでまん丸に成った両目で意味も無く天井を眺めた。
このディーノが放った一撃には、言葉で表せない謎の力が含まれていた。
攻撃を受けた相手に怒りでも苦痛でも無く、感動を与える様なそんな何か。
(良いパンチだ、僕が君に打ち込んだ3発のパンチどれと比べても……間違い無く君のパンチが一番だ。とても熱くて、カッコいいパンチだ。でも、まだ少し足りないッ!!)
ゴンザレスの重心は大きく後方に倒れてダウン確実かと思われたが、全身を鎧の様に包む筋力がその有り得ない体勢で身体を静止させた。
しかも其処からゆっくりと上半身を起こし、再び元の体勢に戻ったのである。
命を削り拳に纏わせた渾身の一撃であっても、ゴンザレスの城塞の様な頭蓋骨を貫通して脳機能を断ち切るには至らなかったのだ。
「あ、危なかッ……え?」
しかしゴンザレスは此処で異変を感じ取った。
上半身を完全起こしきったにも関わらず、視界がドンドン前に進んでいくのである。
最初は身体が勝手に暴走して前方に進んでいるのかと思ったどうも違った、前倒しに身体が落下していっているのだ。
ゴンザレスは慌てて体勢を立て直そうとするが、穴の開いた風船の様に入れた力が一瞬で霧散して踏ん張りがきかない。
ディーノのパンチが時間差で脳を揺らし、刈り取ったのだ。
「嘘……だろ??」
ゴンザレスはたった今自分の身体に起こっている衝撃の出来事に唖然としながら地面に向かって落下し、顔から地面に落下した。
痛みも気持ち悪さも一切感じていないにも関わらず、力が入らない。
その感覚はまるで目を開け意識がハッキリとした状態で、身体のみが眠りについた金縛り状態。
そしてゴンザレスが地に伏したのを待っていたかの様に、ずっと白目を剥いたまま拳を打ち上げた状態で固まっていたディーノの身体が崩れ落ちる。
こうしてディーノはたったの二日で、戦いのプロフェショなるであるゴンザレスを先に地面に付けさせるという偉業を達成したのである。
想像を遙かに凌駕する成長スピードと、ゾクゾクする程の勝利に対する執念にゴンザレスはただ驚愕を顔に浮かべて見詰める事しか出来なかった
そう思いながらゴンザレスは自分の拳を正面から受け、背骨の限界近くまで上半身を仰け反らせながら吹飛ぶディーノを見ていた。
拳からはしっかりと骨が粉砕する感触が伝わっており、鼻を砕いた時に弾けた血液がベットリと付いている。間違い無くクリティカルヒットだ。
追撃の必要も無い程強烈な一撃が入り、後はこのまま後ろ倒しに倒れるのを確認すれば決着である。
(一日で此れだけの成長、充分過ぎる位だ……)
結果的には一方的にボコボコにされる形となったが、ディーノは確実に飛躍的な成長を遂げている。
昨日は目立っていた頭と身体のズレによる行動のぎこち無さが減り、一度だけとは言え渾身の一撃を紙一重で回避してみせた。
確実に差が埋まっている、次の戦いが非常に楽しみな結果である。
今回はこのままダウンして速く楽にッ……
「グオオオオオオオオオッ!!」
勝利を確信して肩の力を抜き、警戒の糸を解いていたゴンザレスの耳に獣の様な叫び声が飛び込んでくる。
その音の奇っ怪さもさることながら、彼の注意を最も引いたのはその声の発生源であった。
ディーノが叫んでいるのである。
「グゾがァァッ!! ボコスカ殴りやがって、俺はッぜってえ倒れねぇ…からなッ!!」
ゴンザレスは一瞬思い切り頭を殴りすぎて脳に障害が発生し、気が狂ってしまったのかと思った。
しかし直ぐにその考え、いやッ勝利を確信した事自体も目の前に立っている若き戦士に対する冒涜であったと気が付く。
何と、ディーノはゴンザレスの本気のパンチを三連続で受けて持ち堪えたのである。
そして驚く事に仰け反っていた上半身を腹筋の力で持ち直し、闘志が一切衰えていないギラギラした目で睨み返してきたのだ。
アレだけの攻撃を受けてまだ戦うつもりなのである。
「ハハ……ッ!! 凄いや、凄いぞディーノ!! 前はパンチ一発で意識を失っていたのに、今日は三発受け手も意識を保ってる。それも二本足で立ってファイティングポーズを維持している!! 済まなかった、僕はどうやら君を過小評価していたようだッ!!」
ゴンザレスは自分の渾身の一撃を耐えられたにも関わらず満面の笑みを浮かべ、まだ遊べる事が嬉しくて溜まらないといった表情でディーノと向かい合う。
一方のディーノはそれと対象的に満身創痍で肩で息をしている。
膝を突くことだけは何とか堪えたがどうやらダメージは確実に受けている様で、目も死んでは居ないが瞳が細かく揺れていた。
立っているだけでも辛そうであるが、ディーノは気丈に相手から受けた言葉に返答を返す。
「褒めてくれるのは嬉しいが、どうせ褒めるなら……俺がお前を床に叩きおとした時にしてくれ。立っているだけで褒められても複雑だ……」
「凄いな、この状況でまだ勝とうとしているのかッ!!」
「お前多分気付いてないだろうけどな、皮肉にしかッ聞こえねえよォッ!!」
ディーノは痛みや疲労を一時的に麻痺させるために感情を爆発させながら雄叫びを上げ、身体が満身創痍なのが嘘であるかの様に地面を蹴って間合いを詰める。
つい先程凄まじい一撃を浴びたばかりだと言うのに、一切カウンターを受ける事に対して恐怖を抱いていない様だ。
(まさか突っ込んでくるとは……ッ!! 恐怖を感じていない、生物として生まれ持っている筈の生存本能がぶっ壊れている。蛮勇で狂人で負けず嫌い、まさに戦いの為に生まれたかの様な男だ!!)
ゴンザレスは目の前で力強く輝いている才能に感動を覚るが、其れでも一切手を抜かず全力で叩き潰す為に拳を振り上げて待ち構える。
体格も筋肉量も技術も圧倒的にゴンザレスが上で、しかも今はダメージが蓄積されおりディーノが圧倒的に不利な状況である。当然正面から行って勝てる訳が無い。
だが其れでもディーノは真っ直ぐ最短距離で敵目掛けて突っ走り、拳を振り上げる。
既に頭は気絶寸前で体力も殆ど残って居らず、一直線に走って拳を放つ事が今彼の出来る最大限であったのだ。
このまま突っ込んでも拳が届く前に叩き潰される事は理解してる、しかし意識が途切れて無様に倒れ伏すまでは絶対に勝負を投げ出さない。
其れがディーノが掲げる美学であり、確かに感じる拍動に対する責任であった。
「ヅラアアアアアアアアッ!! 勝つのはッ俺だァァ!!」
瞳に一切の恐怖を灯さず重心を力の限り前方に倒して突撃し、文字通り命を削り気持ち一つで山のような大男に迫り拳を撃ち放った。
しかし気持ちだけでは拳は届かない、見る者に感動さえ与えそうな突進は余りにも現実的で夢の無い理由によって打ち砕かれる。
其れはリーチの差、ゴンザレスの方が数センチ腕が長かったのだ。
正面から互いにパンチを打ち合えば、腕の長い方のパンチが先に命中して短い方は拳が届く前に弾き飛ばされる。子供でも分かる当然の節理。
ディーノは既に大きく歪んでいた鼻を更に歪ませ、口と鼻孔から夥しい量の血液を吹き出しながらゴンザレスの拳にもたれ掛ったまま気絶していた。
そしてゆっくりと重力に従ってずり落ち、涎鼻水血液で糸を引きながら地面目掛けて崩れ落ちる。
その時のディーノは完全に肉体から力が消え去っており、糸が切れた操り人形の様であった。
つい先程の件があるとは言え、流石のゴンザレスも勝利を確信する。
一発でひ弱な人間では脳に重大なダメージを受け、下手すれば死ねる様な一撃をディーノは何発も受けているのだ。
この攻撃を耐えるのは物理的に不可能であった。
思い返せば不憫である。
ディーノは誰もが惚れ惚れする程屈強な精神を持ち、激痛にも猛烈な吐き気にも慢性的な目眩すらも耐え凌いで向かって来た。
しかしその様にロマンと感動に溢れた行動が、無骨で淡泊なリーチの長さという要素によって無に帰されてしまったのだ。
ゴンザレスは余りにロマンの無い幕切れに、後味の悪さと現実の無情さを感じとる。
しかし、ゴンザレスは二つの要素の比べ方を致命的に間違っていた。
リーチなどの数字に還元出来る要素は普遍でいかなる時でも変わらず効力を発する。
一方で根性や精神などに数値に還元出来ない要素は気分屋である。自分が圧倒的に有利な時点では
全くの無用であるが、土俵際に追い詰められた瞬間その進化は発揮される。
敗北の寸前という最大の危機を勝利の起点に変えるジョーカーなのだ。
「まだッだ……」
原理不明、勝利への執念としか言い表せない謎の力でディーノの意識が再び肉体と繋がる。
それから地面に向かって一直線に落下する身体を止める為、殆ど反射敵に左足が前に出て右拳を腰の辺りまで引き付ける。
そして何処にそんな力が残っていたのかは分からないが、ピクリとも動かす力が残っていなかった筈の右腕と背筋に消えかけの炎が灯った。
「グゥウウアアーーーッ!!」
ディーノは今にも消えそうな灯を腹から出した雄叫びによって一瞬燃え上がらせ、そのエネルギーを爆発させながら背筋を思いっきり反らし拳を打ち上げた。
その拳は実際のエネルギー以上に『重さ』を纏い、勝利を確信して防御を解いていたゴンザレスの顎に命中して打ち砕く。
初めて拳がゴンザレスに命中したのである。
「ゴフゥ……ッ!?」
その一撃は満身創痍意であったにも関わらず凄まじい衝撃となってゴンザレスの顎から脳天までを突き抜けた。
ディーノの貪欲なまでに勝利を求める意志に、世界が、則が応じたのである。
その威力は体重178キロを誇るゴンザレスの小山の様な肉体を大きく仰け反らせた程でああった。
(どうして? どうしてあそこまでダメージを負って尚これ程のパンチが放てる?? 脳が揺れて立っている事すらままならず……当然拳を握り込む力や上半身を反らせる力なんて残っていなかった筈だ)
ゴンザレスは衝撃で仰け反りながら天を仰ぎ、驚きでまん丸に成った両目で意味も無く天井を眺めた。
このディーノが放った一撃には、言葉で表せない謎の力が含まれていた。
攻撃を受けた相手に怒りでも苦痛でも無く、感動を与える様なそんな何か。
(良いパンチだ、僕が君に打ち込んだ3発のパンチどれと比べても……間違い無く君のパンチが一番だ。とても熱くて、カッコいいパンチだ。でも、まだ少し足りないッ!!)
ゴンザレスの重心は大きく後方に倒れてダウン確実かと思われたが、全身を鎧の様に包む筋力がその有り得ない体勢で身体を静止させた。
しかも其処からゆっくりと上半身を起こし、再び元の体勢に戻ったのである。
命を削り拳に纏わせた渾身の一撃であっても、ゴンザレスの城塞の様な頭蓋骨を貫通して脳機能を断ち切るには至らなかったのだ。
「あ、危なかッ……え?」
しかしゴンザレスは此処で異変を感じ取った。
上半身を完全起こしきったにも関わらず、視界がドンドン前に進んでいくのである。
最初は身体が勝手に暴走して前方に進んでいるのかと思ったどうも違った、前倒しに身体が落下していっているのだ。
ゴンザレスは慌てて体勢を立て直そうとするが、穴の開いた風船の様に入れた力が一瞬で霧散して踏ん張りがきかない。
ディーノのパンチが時間差で脳を揺らし、刈り取ったのだ。
「嘘……だろ??」
ゴンザレスはたった今自分の身体に起こっている衝撃の出来事に唖然としながら地面に向かって落下し、顔から地面に落下した。
痛みも気持ち悪さも一切感じていないにも関わらず、力が入らない。
その感覚はまるで目を開け意識がハッキリとした状態で、身体のみが眠りについた金縛り状態。
そしてゴンザレスが地に伏したのを待っていたかの様に、ずっと白目を剥いたまま拳を打ち上げた状態で固まっていたディーノの身体が崩れ落ちる。
こうしてディーノはたったの二日で、戦いのプロフェショなるであるゴンザレスを先に地面に付けさせるという偉業を達成したのである。
想像を遙かに凌駕する成長スピードと、ゾクゾクする程の勝利に対する執念にゴンザレスはただ驚愕を顔に浮かべて見詰める事しか出来なかった
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる