1 / 33
1
しおりを挟む
何が起きたのか分からなかった。
「おぉ!本当に成功したぞ」
「しかし、二人ともいる。歴史では聖女は一人のはず。一体どっちが聖女なのだ?」
「歴史が語る聖女の容姿に最も近いのは彼女だ。彼女が聖女なのでは?」
「だが、万が一ということもある。必ずしも100年前の聖女と同じ色彩を持つ方が聖女であるという確証はない」
私は冷たい床の上に座っている。
私を囲んでいるのは白いローブを着た男たち。彼らは座り込んだままの私を見下ろしながら何やら訳の分からないことを言っている。
しかも彼らは髪や目の色が日本人とはかけ離れている。唯一、日本人に見えるのは私の隣に座り、きょとんとした顔をしている私と同じぐらいの年齢の彼女だけだ。
一体何が起こったのだろう?落ち着いてよく思い出してみよう。
私はいつものように朝、目を覚まして学校へ行くための準備をしていた。私は朝が弱いため食事は摂らない。だからいつものように少し早めに起きて本を読み、携帯のアラーム音を確認してから両親に挨拶をして家を出た。
玄関のドアを開けて外に出た瞬間に視界が反転した。
気が付いたら私はどこかの部屋の床に座り込み、なぜか見たこともない男たちに見下ろされていた。
「あなた、名前は?私はカナエ・ミズキ」
「あ、あの、、えっと、ハヤカワ・ヒナコです」
日本人形みたいな彼女は今にも消え入りそうな声でそう名乗った。
彼女も私と同じでこの状況を理解できていないようだ。
「ここに来るまでのことを覚えている?私は学校に行くために家を出た。そう思っていたら視界が反転してここにいたわ」
「私は、その、あの」と言ってヒナコは言葉を閉ざした。
「?」
言いたくないのだろうか?
目を泳がせ、必死に言葉を探している感じだ。
「別に無理に言う必要はないわ」
多分、どうやって来たかなんて大した問題じゃない。お互いただの日本人学生だ。おかしな術を使ってここへ来たわけではないだろう。
私たちがここにいる理由を知っているのは私と彼女どっちが『聖女』かなど未だに訳の分からないことを言い合っているこの男たちが知っているはずだ。ただ、言葉や態度には気を付けよう。
彼らがどういうつもりで私たちをここに連れていたのか、害ある者なのか、その気質すら知らないのだから。
私は立ち上がった、男たちの視線が一気に私に向けられた。それだけで体が震えた。以外にこのわけの分からない状況に怖がっているようだ。でも、怖がっていても何も始まらない。私は震える体をごまかす様に口を開いた。
「ここはどこでしょう?そしてあなた達は誰ですか?どうして私たちはここへ居るのですか?」
「これは大変失礼しました」
直ぐに床につきそうなぐらい長いひげを生やした男が一歩前に出た。どうやら彼がこの白いローブを着た男の中で一番偉い人のようだ。彼はとても穏やかな笑みを浮かべている。それが彼の本性かどうかは分からない。
私はただの学生だから小説の主人公のように人を見抜く力はない。
「私の名前はアガサ・ルザ・コーデリア。神官長を務めております。よければお二人の名前を教えていただいても?」
「名前も知らない人間を招待したのですか?」
私の皮肉にも彼は穏やかな笑みを崩さない。
「私の名前はミズキ・カナエ。名前がミズキ。カナエは家名」
「・・・・・」
緊張からか、恐怖からか、不安からか、その全部のせいかは分からないけれど、ヒナコは名乗らない。黙ったまま周りを見つめている。
「彼女の名前はハヤカワ・ヒナコ」
仕方がないので私が彼女の名前を教えた。
「ミズキ様、ヒナコ様。まずはこのようなところへお連れしたことをお詫びいたします。申し訳ありません。説明をさせていただきますが、ここはあなた方の住む世界ではありません」
隣で座ったままのヒナコから悲痛な声が漏れた。なんとなくそんな感じがしていた私は頭を抱えたくなった。
「ここはアルガシュル王国。わが国では100年前、あなた方のように異世界から召喚された聖女によって魔王を封印し、この国を救ってくださいました。しかし、その魔法が再び封印から復活する兆しがあり、我々は聖女様を異世界から召喚させていただいたのです」
それってファンタジー要素でいろいろと隠されているけど、要は誘拐じゃないか。それを自分たちの都合のいいように遠回しに言っているだけじゃない。
私は湧き上がる怒りを抑えて、目の前の神官長を睨みつけた。私の視線に神官長はたじろぐ。
「それで?その聖女様は最後はどうなったの?」
「当時の王太子殿下に望まれて結婚されました。国民からも祝福され、とても良き王妃となりました」
何それ?それでハッピーエンドでも気取ってんの?めでたし、めでたしって?バッカじゃないのっ!
「誤魔化さないでよ。要はそれ以外に道がなかっただけでしょう。聖女様だもの。それはさぞかし凄い力を持っていたのでしょうね。それこそ、他国には渡したくないでしょうし、下手な貴族に嫁がれては利用されるだけ。だからって平民にもできない。対処に困って王太子殿下に嫁がせた。他国への牽制にもなりますしね」
神官長は目を逸らした。どうやら正解だったようだ。
大人しくしているつもりだったけれどどうやら直ぐに殺されるわけではないようだ。なら大丈夫だろう。
「召喚はできても帰すことはできないんじゃないですか?だって、国が救われた後、救ってくれたものの末路なんて正直、どうでもいいでしょう」
我ながら性格が悪いとは思ったけれど私は皮肉的な笑みを浮かべて言った。しかしそんな私の言葉に真っ先に反応したのは神官長ではなく、ヒナコだった。
「えっ!帰れないんですか」
驚き、不安そうにヒナコは周囲を見渡した。神官長はじめ、周りに居た男たちは自分たちが私たちを勝手に召喚したことを棚上げして痛ましそうにヒナコを見る。
そして神官長は肯定の代わりに「申し訳ありません」と謝罪した。
「そ、そんなぁ」
「聖女様!?」
「えっ?」
私を含めた人間が驚き。ヒナコを見た。ヒナコはよほどショックだったのだろうか。倒れてしまった。
彼女のことはよく知らない。今日が初対面だから。でも少し話しただけでも気の弱さだけは分かった。
倒れてしまった彼女を見てこれから前途多難だなと私はため息をついた。
「おぉ!本当に成功したぞ」
「しかし、二人ともいる。歴史では聖女は一人のはず。一体どっちが聖女なのだ?」
「歴史が語る聖女の容姿に最も近いのは彼女だ。彼女が聖女なのでは?」
「だが、万が一ということもある。必ずしも100年前の聖女と同じ色彩を持つ方が聖女であるという確証はない」
私は冷たい床の上に座っている。
私を囲んでいるのは白いローブを着た男たち。彼らは座り込んだままの私を見下ろしながら何やら訳の分からないことを言っている。
しかも彼らは髪や目の色が日本人とはかけ離れている。唯一、日本人に見えるのは私の隣に座り、きょとんとした顔をしている私と同じぐらいの年齢の彼女だけだ。
一体何が起こったのだろう?落ち着いてよく思い出してみよう。
私はいつものように朝、目を覚まして学校へ行くための準備をしていた。私は朝が弱いため食事は摂らない。だからいつものように少し早めに起きて本を読み、携帯のアラーム音を確認してから両親に挨拶をして家を出た。
玄関のドアを開けて外に出た瞬間に視界が反転した。
気が付いたら私はどこかの部屋の床に座り込み、なぜか見たこともない男たちに見下ろされていた。
「あなた、名前は?私はカナエ・ミズキ」
「あ、あの、、えっと、ハヤカワ・ヒナコです」
日本人形みたいな彼女は今にも消え入りそうな声でそう名乗った。
彼女も私と同じでこの状況を理解できていないようだ。
「ここに来るまでのことを覚えている?私は学校に行くために家を出た。そう思っていたら視界が反転してここにいたわ」
「私は、その、あの」と言ってヒナコは言葉を閉ざした。
「?」
言いたくないのだろうか?
目を泳がせ、必死に言葉を探している感じだ。
「別に無理に言う必要はないわ」
多分、どうやって来たかなんて大した問題じゃない。お互いただの日本人学生だ。おかしな術を使ってここへ来たわけではないだろう。
私たちがここにいる理由を知っているのは私と彼女どっちが『聖女』かなど未だに訳の分からないことを言い合っているこの男たちが知っているはずだ。ただ、言葉や態度には気を付けよう。
彼らがどういうつもりで私たちをここに連れていたのか、害ある者なのか、その気質すら知らないのだから。
私は立ち上がった、男たちの視線が一気に私に向けられた。それだけで体が震えた。以外にこのわけの分からない状況に怖がっているようだ。でも、怖がっていても何も始まらない。私は震える体をごまかす様に口を開いた。
「ここはどこでしょう?そしてあなた達は誰ですか?どうして私たちはここへ居るのですか?」
「これは大変失礼しました」
直ぐに床につきそうなぐらい長いひげを生やした男が一歩前に出た。どうやら彼がこの白いローブを着た男の中で一番偉い人のようだ。彼はとても穏やかな笑みを浮かべている。それが彼の本性かどうかは分からない。
私はただの学生だから小説の主人公のように人を見抜く力はない。
「私の名前はアガサ・ルザ・コーデリア。神官長を務めております。よければお二人の名前を教えていただいても?」
「名前も知らない人間を招待したのですか?」
私の皮肉にも彼は穏やかな笑みを崩さない。
「私の名前はミズキ・カナエ。名前がミズキ。カナエは家名」
「・・・・・」
緊張からか、恐怖からか、不安からか、その全部のせいかは分からないけれど、ヒナコは名乗らない。黙ったまま周りを見つめている。
「彼女の名前はハヤカワ・ヒナコ」
仕方がないので私が彼女の名前を教えた。
「ミズキ様、ヒナコ様。まずはこのようなところへお連れしたことをお詫びいたします。申し訳ありません。説明をさせていただきますが、ここはあなた方の住む世界ではありません」
隣で座ったままのヒナコから悲痛な声が漏れた。なんとなくそんな感じがしていた私は頭を抱えたくなった。
「ここはアルガシュル王国。わが国では100年前、あなた方のように異世界から召喚された聖女によって魔王を封印し、この国を救ってくださいました。しかし、その魔法が再び封印から復活する兆しがあり、我々は聖女様を異世界から召喚させていただいたのです」
それってファンタジー要素でいろいろと隠されているけど、要は誘拐じゃないか。それを自分たちの都合のいいように遠回しに言っているだけじゃない。
私は湧き上がる怒りを抑えて、目の前の神官長を睨みつけた。私の視線に神官長はたじろぐ。
「それで?その聖女様は最後はどうなったの?」
「当時の王太子殿下に望まれて結婚されました。国民からも祝福され、とても良き王妃となりました」
何それ?それでハッピーエンドでも気取ってんの?めでたし、めでたしって?バッカじゃないのっ!
「誤魔化さないでよ。要はそれ以外に道がなかっただけでしょう。聖女様だもの。それはさぞかし凄い力を持っていたのでしょうね。それこそ、他国には渡したくないでしょうし、下手な貴族に嫁がれては利用されるだけ。だからって平民にもできない。対処に困って王太子殿下に嫁がせた。他国への牽制にもなりますしね」
神官長は目を逸らした。どうやら正解だったようだ。
大人しくしているつもりだったけれどどうやら直ぐに殺されるわけではないようだ。なら大丈夫だろう。
「召喚はできても帰すことはできないんじゃないですか?だって、国が救われた後、救ってくれたものの末路なんて正直、どうでもいいでしょう」
我ながら性格が悪いとは思ったけれど私は皮肉的な笑みを浮かべて言った。しかしそんな私の言葉に真っ先に反応したのは神官長ではなく、ヒナコだった。
「えっ!帰れないんですか」
驚き、不安そうにヒナコは周囲を見渡した。神官長はじめ、周りに居た男たちは自分たちが私たちを勝手に召喚したことを棚上げして痛ましそうにヒナコを見る。
そして神官長は肯定の代わりに「申し訳ありません」と謝罪した。
「そ、そんなぁ」
「聖女様!?」
「えっ?」
私を含めた人間が驚き。ヒナコを見た。ヒナコはよほどショックだったのだろうか。倒れてしまった。
彼女のことはよく知らない。今日が初対面だから。でも少し話しただけでも気の弱さだけは分かった。
倒れてしまった彼女を見てこれから前途多難だなと私はため息をついた。
57
あなたにおすすめの小説
きっと幸せな異世界生活
スノウ
ファンタジー
神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。
そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。
時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。
女神の導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?
毎日12時頃に投稿します。
─────────────────
いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
現実的な異世界召喚聖女
章槻雅希
ファンタジー
高天原の神々は怒っていた。理不尽な異世界召喚に日ノ本の民が巻き込まれることに。そこで神々は怒りの鉄槌を異世界に下すことにした。
神々に選ばれた広瀬美琴54歳は17歳に若返り、異世界に召喚される。そして彼女は現代日本の職業倫理と雇用契約に基づき、王家と神殿への要求を突きつけるのだった。
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
異世界召喚された巫女は異世界と引き換えに日本に帰還する
白雪の雫
ファンタジー
何となく思い付いた話なので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合展開です。
聖女として召喚された巫女にして退魔師なヒロインが、今回の召喚に関わった人間を除いた命を使って元の世界へと戻る話です。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる