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「!?ヒナコっ!」
「え?」
眼前の戦いに気を取られ過ぎて私は自分に迫りくる危険に気づくのが遅れた。いつの間に後ろにいた魔物がヒナコに襲い掛かる。
「やぁぁぁっ!!く、来るなぁ!あ、あっちに行けぇぇっ!」
馬乗りになる魔物から身を守ろうとヒナコは手足をバタつかせる。狼だろうか?四つ足の獣は長い舌を出し、そこからだらしなく涎を垂れ流している。
ぼたぼたとヒナコの上に魔物の涎が落ちる。それが余計にヒナコを恐怖させた。
「っ、ヒナコ」
私は足を前に突き出し、魔物の腹部を蹴り飛ばした。でも、あまり感触がなかった。多分、とっさに躱された。
「はぁはぁはぁ」
ヒナコは過呼吸手前のような呼吸を繰り返しながら腹ばいになって木陰の近くまでいく。完全に私の後ろに隠れたヒナコを確認しながら私は牙をむき、睨みつけてくる獣を見つめる。
邪魔をされたのが気に障ったのだろう。魔物のターゲットがヒナコから私に移ったのが魔物の目を見て分かってしまった。
「っ」
魔物が襲い掛かる。私は態勢を崩して地面に倒れる。けれど、魔物の牙が私の首に届くことはなかった。旅の前にエイルに護身用にと渡されていたナイフでとっさに防いだのだ。
「くっ。っ」
「グゥゥ」
ナイフを噛み砕こうとしているのか魔物は下顎に力を籠める。ただのナイフだ。そう長くはもたない。現に、ナイフには僅かにひびが入っている。
「あ、あ、あ、あ」と近くでヒナコの声が聞こえる。視線を少し向ければ、木に背を預けたまま震えながら私のことを見ていた。
「ヒ、ナコ。何でもいいから、武器になるようなものを」
「な、何でもって、何」
震えながらヒナコは私に問う。
「木の棒でも、何でもいい」
「む、無理だよ。そんなのどこにもないし」
確かにヒナコの周りにはない。探しにいかないとないだろう。私はヒナコを見る。彼女は震えてている。顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃに汚している。あれでは視界もよく見えないのだろう。彼女に探しに行けというのは酷か。
「そ、それに、あったとしても、ま、魔物がいるのに、どうやってミズキに渡すの」
「手渡しなんて言ってない。投げて寄こしてくれたらそれでいい。棒じゃなくても、石でもいいから」
もうナイフが持たない。
「っ」
地面に置いていた魔物の手が私の肩に乗った。ぐっと魔物がその手に力を籠める。私の肩の肉を突き破って魔物の爪が侵入してきた。
今までに感じたことのない痛みに一瞬、意識が飛びそうになる。でも、ここで気絶したら死ぬという本能が私の意識を繋ぎとめていた。
コロコロと何かが転がってきて肩にぶつかった。
「ご、ごめん、これしか、ない」
地面に座り込んだまま、ヒナコが視線だけを巡らせて見つけてくれた武器
「・・・・・小石」
こんな小粒の石じゃダメだ。何か、何かないか。私はナイフから片手を離した。そのせいでぐっと魔物の牙が私の首に近づいた。
「ミズキっ!」
ヒナコの悲鳴が聞こえた。でも、今はそんなの気にしている場合じゃない。私は空いた手で地面を探った。私の腕が届く範囲には何もなかった。どこぞのアニメみたいに腕が伸びたらいいのに。
諦めかけていた私は無意識に地面に爪を立てた。するとそこにわずかに握りこめられた土。私はそれを見る。次に魔物を見る。目くらまし程度にはなる。でも、その隙に逃げられるかは分からない。だけど。
ナイフを見ると横一線にひびが入っていた。
「やるしかない」
私は片手で持てるだけの土を握り締めた。そして、それを魔物の顔面に投げつけた。
「ギャゥっ」
僅かに怯んだ魔物を押しのけることに成功した。逃げないといけない。でも、足が上手く動いてくれなかった。さっきの攻防は私が思っている以上に精神に恐怖を与えたのかもしれない。足がもつれて転ぶ。
「ミズキ」
ヒナコの悲鳴で、再び魔物が襲い掛かってきているのが分かった。もう、駄目だ。そう思ったとき目の前まで迫っていた魔物の体が真っ二つに割れた。
「ミズキ様っ!」
「・・・・・エ、エイル」
真っ二つに割れた魔物の隙間から見えたのは真っ青な顔をしたエイルだった。彼は魔物を倒した後急いで駆け付け、私を抱きしめた。その体は震えている。密着した肌から直接感じる彼の鼓動はとても速かった。
「良かった。間に合って、良かった」
そう言った彼の声も震えていた。
少し視線を移すとヒナコの傍にはバートランドがいた。
ああ。私もヒナコも助かったんだ。そう思ったら安心して、体から力が抜けた。
「ミズキ様っ!?」
エイルの声が聞こえたけど私の意識は闇に落ちて行った。ダメなのは分かっていたけど、意識を浮上する力が私にはもう残ってはいなかった。
「え?」
眼前の戦いに気を取られ過ぎて私は自分に迫りくる危険に気づくのが遅れた。いつの間に後ろにいた魔物がヒナコに襲い掛かる。
「やぁぁぁっ!!く、来るなぁ!あ、あっちに行けぇぇっ!」
馬乗りになる魔物から身を守ろうとヒナコは手足をバタつかせる。狼だろうか?四つ足の獣は長い舌を出し、そこからだらしなく涎を垂れ流している。
ぼたぼたとヒナコの上に魔物の涎が落ちる。それが余計にヒナコを恐怖させた。
「っ、ヒナコ」
私は足を前に突き出し、魔物の腹部を蹴り飛ばした。でも、あまり感触がなかった。多分、とっさに躱された。
「はぁはぁはぁ」
ヒナコは過呼吸手前のような呼吸を繰り返しながら腹ばいになって木陰の近くまでいく。完全に私の後ろに隠れたヒナコを確認しながら私は牙をむき、睨みつけてくる獣を見つめる。
邪魔をされたのが気に障ったのだろう。魔物のターゲットがヒナコから私に移ったのが魔物の目を見て分かってしまった。
「っ」
魔物が襲い掛かる。私は態勢を崩して地面に倒れる。けれど、魔物の牙が私の首に届くことはなかった。旅の前にエイルに護身用にと渡されていたナイフでとっさに防いだのだ。
「くっ。っ」
「グゥゥ」
ナイフを噛み砕こうとしているのか魔物は下顎に力を籠める。ただのナイフだ。そう長くはもたない。現に、ナイフには僅かにひびが入っている。
「あ、あ、あ、あ」と近くでヒナコの声が聞こえる。視線を少し向ければ、木に背を預けたまま震えながら私のことを見ていた。
「ヒ、ナコ。何でもいいから、武器になるようなものを」
「な、何でもって、何」
震えながらヒナコは私に問う。
「木の棒でも、何でもいい」
「む、無理だよ。そんなのどこにもないし」
確かにヒナコの周りにはない。探しにいかないとないだろう。私はヒナコを見る。彼女は震えてている。顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃに汚している。あれでは視界もよく見えないのだろう。彼女に探しに行けというのは酷か。
「そ、それに、あったとしても、ま、魔物がいるのに、どうやってミズキに渡すの」
「手渡しなんて言ってない。投げて寄こしてくれたらそれでいい。棒じゃなくても、石でもいいから」
もうナイフが持たない。
「っ」
地面に置いていた魔物の手が私の肩に乗った。ぐっと魔物がその手に力を籠める。私の肩の肉を突き破って魔物の爪が侵入してきた。
今までに感じたことのない痛みに一瞬、意識が飛びそうになる。でも、ここで気絶したら死ぬという本能が私の意識を繋ぎとめていた。
コロコロと何かが転がってきて肩にぶつかった。
「ご、ごめん、これしか、ない」
地面に座り込んだまま、ヒナコが視線だけを巡らせて見つけてくれた武器
「・・・・・小石」
こんな小粒の石じゃダメだ。何か、何かないか。私はナイフから片手を離した。そのせいでぐっと魔物の牙が私の首に近づいた。
「ミズキっ!」
ヒナコの悲鳴が聞こえた。でも、今はそんなの気にしている場合じゃない。私は空いた手で地面を探った。私の腕が届く範囲には何もなかった。どこぞのアニメみたいに腕が伸びたらいいのに。
諦めかけていた私は無意識に地面に爪を立てた。するとそこにわずかに握りこめられた土。私はそれを見る。次に魔物を見る。目くらまし程度にはなる。でも、その隙に逃げられるかは分からない。だけど。
ナイフを見ると横一線にひびが入っていた。
「やるしかない」
私は片手で持てるだけの土を握り締めた。そして、それを魔物の顔面に投げつけた。
「ギャゥっ」
僅かに怯んだ魔物を押しのけることに成功した。逃げないといけない。でも、足が上手く動いてくれなかった。さっきの攻防は私が思っている以上に精神に恐怖を与えたのかもしれない。足がもつれて転ぶ。
「ミズキ」
ヒナコの悲鳴で、再び魔物が襲い掛かってきているのが分かった。もう、駄目だ。そう思ったとき目の前まで迫っていた魔物の体が真っ二つに割れた。
「ミズキ様っ!」
「・・・・・エ、エイル」
真っ二つに割れた魔物の隙間から見えたのは真っ青な顔をしたエイルだった。彼は魔物を倒した後急いで駆け付け、私を抱きしめた。その体は震えている。密着した肌から直接感じる彼の鼓動はとても速かった。
「良かった。間に合って、良かった」
そう言った彼の声も震えていた。
少し視線を移すとヒナコの傍にはバートランドがいた。
ああ。私もヒナコも助かったんだ。そう思ったら安心して、体から力が抜けた。
「ミズキ様っ!?」
エイルの声が聞こえたけど私の意識は闇に落ちて行った。ダメなのは分かっていたけど、意識を浮上する力が私にはもう残ってはいなかった。
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