私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月

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関わりたくないと思って避けていたから私はべディーに自分が聖女でないことを言う機会を逃していた。でも、私は直ぐに王宮からとんずらするつもりだから大した問題ではないと思っていた。もう二度と会うことはないと思っていたのだ。
べディーとも、ヒナコとも。
私は日本という平和な国で暮らしていた。だから身にかかる危険に、自分が思っている以上に疎いことに私はまだ気づかなかった。

◇◇◇

「おやすみなさい、ミズキ様」
「おやすみ、エイル」
面倒な夜会が終わった。エイルとは部屋の前で別れた。侍女に手伝ってもらい、コルセットを外す。目の前に豪華かな食事がいくつも並んでいたのに、コルセットの締め付けがきつすぎて何も食べられなかった。
「ありがとう」
「いいえ。それでは失礼します」
「うん。おやすみ」
侍女は一礼して退室した。完全に侍女の足音が遠ざかるのを確認すると私はカバンに荷物を積める。明け方には王宮から出るつもりだ。荷物はそんなにないのですぐに詰め終わることができた。私はそれをベッドの近くにおいた。
「よし。準備完璧。少し寝よう」
ベッドの上に寝転がり、明け方前まで休もう。そう思って目を閉じた。慣れない夜会。慣れない貴族のような暮らし。目を覚ましたら王宮から出ていく予定なのでそれも全て終わる。だから少し気が楽になっていた。それも影響してかいつもより寝付きは良かった。

ゆらゆらと揺れている。何だろう。身じろぎしようといたけど体が動かない。
「    」
「    」
何だろう?誰かの話声が聞こえる。何を話しているのか分からない。
地面も硬くて、冷たい。寝ている間に何が起きたのだろうか?
「・・・・!?」
「あら。起きたの?」
フードを目深にかぶった女がクスクスと楽しそうに笑いながら言った。彼女の声には聞き覚えがあった。
「・・・・・ベディー・ミルドレット公爵令嬢」
私の呟きに彼女はにんまりと笑う。フードで顔を隠しているので口元までしか見えないが、それでも彼女の顔が醜く歪んでいることは分かった。
そしてそんな彼女の周りには体格のいい男が数人いる。
私は少しでも彼らから離れようと体を起こそうとするが上手くいかない。周囲に気を取られて気づくのが遅れたが私は今、両手両足を縛られ、硬い地面に転がされていた。
「あなたが悪いのよ。私から殿下を取るから」
「あんな男、私の趣味じゃないわ」
「ふざけないで。殿下に色目を使っておいて」
低く唸るような声でべディーは言った。状況的にまずいけれど、彼女の怒りは私に対して恐怖を抱くには及ばなかった。所詮は、争いごととは無縁の女の怒りだ。
聖女の旅で命の危機にさらされ続けた私にはどうてことない。でも、どうしよう。
ちらりと視線をずらして男たちを見る。ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら私のことを舐めるように見てくる。気持ち悪い。
「あんたなんか、二度と殿下の前に現れられないようにぐちゃぐちゃにしてやるんだから」
わざわざそんなことをしなくても私は明け方前には王宮を出ていく予定だったから殿下の前に二度と現れることはなかったと思うけど。
「殿下が『汚い』って言って、捨てられたらいいんだわ」
それが合図の様に男たちが私に近づいてくる。
「本当に良いんだな」
一番、体格の良い。多分男たちの中でリーダ格だと思われる男がべディーに確認する。
「ええ。好きにして頂戴。好きに遊んだ後はどこかに売り飛ばして頂戴。そのお金も全部、あなた達にあげるわ」
何でもないことの様に彼女は同じ女とは思えない非道なことを言ってのける。
「じゃあ、そうさせてもらうわ」
「それは困るな」
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