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「お互い、毛嫌いしているし。どう見てもミズキ様が殿下に惚れているわけがない。それに二人はお似合いでもなんでもない」
畳みかけるようにエイルが言う。よほど、彼女の誤解が癇に障ったようだ。
「・・・・聖女じゃなかった」
べディーは衝撃が凄すぎてその場に座り込んでしまった。エイルの言葉は何も入っていないようだ。
「おい、それは俺達には関係がねぇよな」
さっきまで成り行きを見守っていた男たちが睨みつけるようにエイルを見る。エイルはまるでゴミでも見るような目で男たちを睨みつける。
「悪いが、この女が聖女だろうがなかろうが、好きにさせてもらうぜ。こんな上玉。滅多にお目にかかれないんでね」
私を一瞥した男はにやりと嫌な笑みを浮かべる。ぞくりと嫌悪感が私を支配する。それと同時に手首にまかれていた縄が解けた。後は足だけだ。
「は?何言ってるの?そんなこと許すわけないだろ」
「!?」
「っ」
エイルは使命感の強い男のようだ。たとえ聖女ではなくとも私は護衛対象。その私がこんな目に合わされているのが気に入らないのだろう。彼は目に留まらない速さで男たちを次々と倒していく。
おそらくは荒事に慣れ、金さえ払ってもらえばどんな下種なことでも平気で、むしろ楽しみながらやっていたような男たちは持っていた剣を抜く暇もなく地面にひれ伏す。
「ミズキ様、大丈夫ですか?」
「え、あ、うん。平気」
砂埃一つつけずに近づいてくるエイルは私の赤く擦れた手首を痛ましそうに見つめる。
「申し訳ありません。私のミスです」
「夜間の警備はエイルの担当じゃないじゃん」
だからエイルのミスではないと言ったつもりなのだが。エイルの顔色は優れない」
「っ!?エ、エイル!?」
彼は私の手を取り、手首に何度もキスをする。まるで私の傷を癒すように。顔を真っ赤にしている私に気づきもせずに彼は足の縄をほどき、同じようにキスをする。
「エ、エイル、もういいから。大丈夫だから」
「いいえ。大丈夫ではありません。あなたを怖い目に合わせました。不快な目にも。あんな男たち、本来なら殺してしまいたいぐらいですが、あなたの美しい目にそのような穢れを映すわけにはいかないので自制しています」
いつもの、無表情で淡々として、何を考えているか分からない彼はどこにいったのだろうか。
地面に座り込んだままのべディーも唖然とエイルを見ていた。
「私が不甲斐ないかならあなたは一人で王宮を辞しようと考えられたのでしょう」
「知ってたの?」
「はい。あなたのことで私の知らないことはありません」
真面目な顔で怖いことをさらりと言うエイルに私の顔が引きつる。
「エイルのことは頼りにはしているよ。でも、王宮を出ていくのは私の勝手だし、それに聖女ではない私をあなたが守る義理はないでしょう」
「いいえ。あなただからこそ、私は守りたいと思ったのです」
まるでプロポーズみたいだと思った。そしてそんな彼の気持ちが嫌ではないと思っている自分に驚く。住む世界の違う人なのに。
「どうか、傍にいることを許しては戴けませんか?私はずっとあなたの傍に居たいのです。あなたを守っていきたいのです」
一人でいる不安が全くなかったわけではない。むしろ、不安の方が大きかった。それでも王宮に居続けることもできなかった。だから傍に居てくれる人がいるのは嬉しい。それがこんなにも私のことを大事にしてくれる彼なら尚更だ。
「・・・・・私で良いのなら」
そう答えた私にエイルは今まで見たことがないぐらい嬉しそうに笑った。
「っ」
イケメンの笑顔は卑怯だと思う。
◇◇◇
あの後、いったん王宮に戻った私はあらかじめま求めていた荷物を持ち、一応王宮を出ていく書置きをしてエイルと一緒に王宮を出た。エイルも辞表を親友に託してきたと言っていた。彼も荷物をまとめて、私たちは二人で王宮を出た。
べディーの件はエイルが親友のバートランドに引き渡し、彼女の所業が明らかとなった。彼女は婚約を解消された。国を救う為に召喚された聖女に危害を加えようとした(実際に加えられたのは私だけど。でも、彼女は私を聖女だと認識したうえで行ったので罪の重さは変わらないと判断された)罪に問われ、家は取り潰し。
殿下にも非はあるので処刑はされなかった。ただ一族国外追放となった。
その殿下だが、勝手な婚約破棄や今までの行いから王に相応しくはないと判断され、王位継承権を剥奪された。公爵家に降嫁したそうだ。王位には彼の弟がつくことになった。
ヒナコは王宮の離宮を与えられ、そこに住んでいると聞いている。
ただ、ヒナコの願いで暫く私の行方は探されていたみたい。でもそれも想定済みなので私とエイルはすでに隣国に渡っていた。
王にはあらかじめ、私の意思を尊重してもらうように頼んでいたので探すのはあくまで聖女の願いを受けたからということで表向きそのように動いてはいた。実際は探されていなかったのだ。まぁ、私が聖女ではないことも上手く働いたみたいだ。
王宮を出て思ったけれど私にはやはり王宮の暮らしは合わなかったようだ。今はエイルと一緒に小さな小屋でつつましやかではあるけれど、とても平穏な日々を送っている。
畳みかけるようにエイルが言う。よほど、彼女の誤解が癇に障ったようだ。
「・・・・聖女じゃなかった」
べディーは衝撃が凄すぎてその場に座り込んでしまった。エイルの言葉は何も入っていないようだ。
「おい、それは俺達には関係がねぇよな」
さっきまで成り行きを見守っていた男たちが睨みつけるようにエイルを見る。エイルはまるでゴミでも見るような目で男たちを睨みつける。
「悪いが、この女が聖女だろうがなかろうが、好きにさせてもらうぜ。こんな上玉。滅多にお目にかかれないんでね」
私を一瞥した男はにやりと嫌な笑みを浮かべる。ぞくりと嫌悪感が私を支配する。それと同時に手首にまかれていた縄が解けた。後は足だけだ。
「は?何言ってるの?そんなこと許すわけないだろ」
「!?」
「っ」
エイルは使命感の強い男のようだ。たとえ聖女ではなくとも私は護衛対象。その私がこんな目に合わされているのが気に入らないのだろう。彼は目に留まらない速さで男たちを次々と倒していく。
おそらくは荒事に慣れ、金さえ払ってもらえばどんな下種なことでも平気で、むしろ楽しみながらやっていたような男たちは持っていた剣を抜く暇もなく地面にひれ伏す。
「ミズキ様、大丈夫ですか?」
「え、あ、うん。平気」
砂埃一つつけずに近づいてくるエイルは私の赤く擦れた手首を痛ましそうに見つめる。
「申し訳ありません。私のミスです」
「夜間の警備はエイルの担当じゃないじゃん」
だからエイルのミスではないと言ったつもりなのだが。エイルの顔色は優れない」
「っ!?エ、エイル!?」
彼は私の手を取り、手首に何度もキスをする。まるで私の傷を癒すように。顔を真っ赤にしている私に気づきもせずに彼は足の縄をほどき、同じようにキスをする。
「エ、エイル、もういいから。大丈夫だから」
「いいえ。大丈夫ではありません。あなたを怖い目に合わせました。不快な目にも。あんな男たち、本来なら殺してしまいたいぐらいですが、あなたの美しい目にそのような穢れを映すわけにはいかないので自制しています」
いつもの、無表情で淡々として、何を考えているか分からない彼はどこにいったのだろうか。
地面に座り込んだままのべディーも唖然とエイルを見ていた。
「私が不甲斐ないかならあなたは一人で王宮を辞しようと考えられたのでしょう」
「知ってたの?」
「はい。あなたのことで私の知らないことはありません」
真面目な顔で怖いことをさらりと言うエイルに私の顔が引きつる。
「エイルのことは頼りにはしているよ。でも、王宮を出ていくのは私の勝手だし、それに聖女ではない私をあなたが守る義理はないでしょう」
「いいえ。あなただからこそ、私は守りたいと思ったのです」
まるでプロポーズみたいだと思った。そしてそんな彼の気持ちが嫌ではないと思っている自分に驚く。住む世界の違う人なのに。
「どうか、傍にいることを許しては戴けませんか?私はずっとあなたの傍に居たいのです。あなたを守っていきたいのです」
一人でいる不安が全くなかったわけではない。むしろ、不安の方が大きかった。それでも王宮に居続けることもできなかった。だから傍に居てくれる人がいるのは嬉しい。それがこんなにも私のことを大事にしてくれる彼なら尚更だ。
「・・・・・私で良いのなら」
そう答えた私にエイルは今まで見たことがないぐらい嬉しそうに笑った。
「っ」
イケメンの笑顔は卑怯だと思う。
◇◇◇
あの後、いったん王宮に戻った私はあらかじめま求めていた荷物を持ち、一応王宮を出ていく書置きをしてエイルと一緒に王宮を出た。エイルも辞表を親友に託してきたと言っていた。彼も荷物をまとめて、私たちは二人で王宮を出た。
べディーの件はエイルが親友のバートランドに引き渡し、彼女の所業が明らかとなった。彼女は婚約を解消された。国を救う為に召喚された聖女に危害を加えようとした(実際に加えられたのは私だけど。でも、彼女は私を聖女だと認識したうえで行ったので罪の重さは変わらないと判断された)罪に問われ、家は取り潰し。
殿下にも非はあるので処刑はされなかった。ただ一族国外追放となった。
その殿下だが、勝手な婚約破棄や今までの行いから王に相応しくはないと判断され、王位継承権を剥奪された。公爵家に降嫁したそうだ。王位には彼の弟がつくことになった。
ヒナコは王宮の離宮を与えられ、そこに住んでいると聞いている。
ただ、ヒナコの願いで暫く私の行方は探されていたみたい。でもそれも想定済みなので私とエイルはすでに隣国に渡っていた。
王にはあらかじめ、私の意思を尊重してもらうように頼んでいたので探すのはあくまで聖女の願いを受けたからということで表向きそのように動いてはいた。実際は探されていなかったのだ。まぁ、私が聖女ではないことも上手く働いたみたいだ。
王宮を出て思ったけれど私にはやはり王宮の暮らしは合わなかったようだ。今はエイルと一緒に小さな小屋でつつましやかではあるけれど、とても平穏な日々を送っている。
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