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Ⅳ.悪役令嬢よりも悪役が似合うヒロイン
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「デューク」
花の乙女の祭りが終わるまでは私達は邸へは帰れない。
教会での共同生活となっているが家族ならば訪ねて来ても問題はないので、衣装などを相談しに家族がよく来ているし、その為の部屋もある。
勿論、針子を呼んでいろいろ手直ししたり、花の乙女をきっかけに仲良くなった令嬢に衣装のことで意見を貰ったりもする。
私の家族は明日来ることになっている。
今は祈りの舞の練習が終了し、気分転換に護衛のデュークと一緒に滅多に入ることのない教会の中を散策していた。
その際にデュークを呼び止めた者が居た。
デュークの同期であり友人であるディランを護衛に引き連れたメアリーだ。
メアリーは喜色を浮かべてデュークに近づいた。
その後ろを護衛らしく辺りを警戒しながらついて行くディランの顏は呆れと、メアリーに呼び止められたことを憐れんでいるような表情をしていた。
彼女の護衛はなかなか大変のようだ。
メアリーは同じ花の乙女であり公爵令嬢である私を完全に無視してデュークの前に立った。
そんな貴族なら有り得ない態度に驚いて固まったデュークにメアリーは言う。
「私、あなたのことを探していたのよ」
「何か御用でしょうか?」
「ええ。あなたと一緒にお茶でもしようかと思って」
断られるとは一切思っていないメアリーにデュークは眉間に皺を寄せきっぱりと言った。
「申し訳ありませんが、今は任務中ですので」
「あら。そんなのいいじゃない。私が許すわ」
「そういうわけにはいきません」
「随分、お堅いのね」
『はい』と言わないデュークにメアリーの苛立ちが募る。
「私にはカーティス公爵令嬢の護衛があります。
それを放置するわけにはいきません。
たとえ教会の中とは言え何が起こるかは分からないのですから」
「あら、お優しいのね」
にっこりと笑ったメアリーは縦ロールにしている金色の髪を指に絡めて遊びながら初めて私の方を見た。
彼女は私を小ばかにするように鼻で笑った。
「仮に不埒ものが侵入して、この女を害そうとしたとしても何も問題ないじゃない。
死んだところで誰も困らないわよ。寧ろみんな大喜びするんじゃないの?
だって、レイラ・カーティスは私と違ってこの世界の邪魔者じゃない」
私はあまりにも身勝手な物言いに唖然とし、ディランは男爵家の令嬢が公爵家の令嬢に堂々と喧嘩を売っている状況に驚き、口を開けたまま固まっている。
デュークは怒りをその目に宿していた。
「あなたは何を言っている?」
「何よ、本当のことじゃない」
「これ以上、あなたと話していたくなどない。
不愉快だ。失礼する。
行こう、レイラ」
「え、ええ」
私の手を引いてデュークは歩き出した。
その姿に今度はメアリーが唖然とした。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!
何で私ではなくその女を選ぶのよ。
そんな性格が悪くて、性根の曲がった人間」
アンタに言われたくない!
と、私は令嬢らしくない怒鳴り声を上げそうになったのをグッと堪えた。
デュークもディランもこの女は何を言っているんだという表情をしている。
「行こう、デューク」
今度は私がデュークの手を引いて歩き出した。
光星は昔から人の話を聞く人ではなかった。
聞かなくても問題はなかったのだ。
全てが自分の思う通りに行くから。
その傾向がメアリー・ブロウにも表れている。
「デューク、私がお茶に誘っているのだから言うことを聞きなさい。
アンタみたいな平民に声をかける貴族なんて私ぐらいなのよ。
光栄に思うべきじゃないの?」
ぎゃんぎゃん後ろの方で叫んでいるが私は無視をしてデュークを引っ張って行った。
「ちょっと」
あとを追おうとしたメアリーの前に出てディランが邪魔をした。
「どきなさい」
「それはできない」
「私の進行を妨げて良いと思っているの?」
「これはあんたの為でもあると思うぞ」
「何ですって」
目くじらを立てて怒るメアリーにディランは溜息をつきたいのをグッと堪えた。
「男爵家の令嬢が公爵家の令嬢に対する態度じゃないな、あれは。
公爵家なら男爵家を潰すの何て訳ないと思うぞ」
まぁ、わざわざそんなことをしなくても潰れるだろうというのは黙っておいた。
「何でヒロインの私が悪役令嬢なんかに潰されないといけないのよ。
家の断絶なら私じゃなくてあっちでしょ」
世間知らずでは通じない。
夢見がちな少女では通らない発言
それらに絶句するディランを見たメアリーは何を勘違いしたのか「アンタもようやく現実が分かったのね」なんて
おかしな発言をしてきた。
「もう一つ言っておくけどデュークはモテるし、カーティス公爵令嬢のお気に入りだ。
次期殿とも仲が良いし、騎士団長のお気に入り。
わざわざ男爵令嬢のアンタが声をかけなくても将来の展望が明るいアイツには様々な人間から縁談が舞い込んでいるよ。
それこそ、上流貴族からだってたくさんな。
アイツは見た目も良いしな」
早く花の乙女、終わらないかな。
こんな女の護衛なんてもう二度と御免だ。
花の乙女の祭りが終わるまでは私達は邸へは帰れない。
教会での共同生活となっているが家族ならば訪ねて来ても問題はないので、衣装などを相談しに家族がよく来ているし、その為の部屋もある。
勿論、針子を呼んでいろいろ手直ししたり、花の乙女をきっかけに仲良くなった令嬢に衣装のことで意見を貰ったりもする。
私の家族は明日来ることになっている。
今は祈りの舞の練習が終了し、気分転換に護衛のデュークと一緒に滅多に入ることのない教会の中を散策していた。
その際にデュークを呼び止めた者が居た。
デュークの同期であり友人であるディランを護衛に引き連れたメアリーだ。
メアリーは喜色を浮かべてデュークに近づいた。
その後ろを護衛らしく辺りを警戒しながらついて行くディランの顏は呆れと、メアリーに呼び止められたことを憐れんでいるような表情をしていた。
彼女の護衛はなかなか大変のようだ。
メアリーは同じ花の乙女であり公爵令嬢である私を完全に無視してデュークの前に立った。
そんな貴族なら有り得ない態度に驚いて固まったデュークにメアリーは言う。
「私、あなたのことを探していたのよ」
「何か御用でしょうか?」
「ええ。あなたと一緒にお茶でもしようかと思って」
断られるとは一切思っていないメアリーにデュークは眉間に皺を寄せきっぱりと言った。
「申し訳ありませんが、今は任務中ですので」
「あら。そんなのいいじゃない。私が許すわ」
「そういうわけにはいきません」
「随分、お堅いのね」
『はい』と言わないデュークにメアリーの苛立ちが募る。
「私にはカーティス公爵令嬢の護衛があります。
それを放置するわけにはいきません。
たとえ教会の中とは言え何が起こるかは分からないのですから」
「あら、お優しいのね」
にっこりと笑ったメアリーは縦ロールにしている金色の髪を指に絡めて遊びながら初めて私の方を見た。
彼女は私を小ばかにするように鼻で笑った。
「仮に不埒ものが侵入して、この女を害そうとしたとしても何も問題ないじゃない。
死んだところで誰も困らないわよ。寧ろみんな大喜びするんじゃないの?
だって、レイラ・カーティスは私と違ってこの世界の邪魔者じゃない」
私はあまりにも身勝手な物言いに唖然とし、ディランは男爵家の令嬢が公爵家の令嬢に堂々と喧嘩を売っている状況に驚き、口を開けたまま固まっている。
デュークは怒りをその目に宿していた。
「あなたは何を言っている?」
「何よ、本当のことじゃない」
「これ以上、あなたと話していたくなどない。
不愉快だ。失礼する。
行こう、レイラ」
「え、ええ」
私の手を引いてデュークは歩き出した。
その姿に今度はメアリーが唖然とした。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!
何で私ではなくその女を選ぶのよ。
そんな性格が悪くて、性根の曲がった人間」
アンタに言われたくない!
と、私は令嬢らしくない怒鳴り声を上げそうになったのをグッと堪えた。
デュークもディランもこの女は何を言っているんだという表情をしている。
「行こう、デューク」
今度は私がデュークの手を引いて歩き出した。
光星は昔から人の話を聞く人ではなかった。
聞かなくても問題はなかったのだ。
全てが自分の思う通りに行くから。
その傾向がメアリー・ブロウにも表れている。
「デューク、私がお茶に誘っているのだから言うことを聞きなさい。
アンタみたいな平民に声をかける貴族なんて私ぐらいなのよ。
光栄に思うべきじゃないの?」
ぎゃんぎゃん後ろの方で叫んでいるが私は無視をしてデュークを引っ張って行った。
「ちょっと」
あとを追おうとしたメアリーの前に出てディランが邪魔をした。
「どきなさい」
「それはできない」
「私の進行を妨げて良いと思っているの?」
「これはあんたの為でもあると思うぞ」
「何ですって」
目くじらを立てて怒るメアリーにディランは溜息をつきたいのをグッと堪えた。
「男爵家の令嬢が公爵家の令嬢に対する態度じゃないな、あれは。
公爵家なら男爵家を潰すの何て訳ないと思うぞ」
まぁ、わざわざそんなことをしなくても潰れるだろうというのは黙っておいた。
「何でヒロインの私が悪役令嬢なんかに潰されないといけないのよ。
家の断絶なら私じゃなくてあっちでしょ」
世間知らずでは通じない。
夢見がちな少女では通らない発言
それらに絶句するディランを見たメアリーは何を勘違いしたのか「アンタもようやく現実が分かったのね」なんて
おかしな発言をしてきた。
「もう一つ言っておくけどデュークはモテるし、カーティス公爵令嬢のお気に入りだ。
次期殿とも仲が良いし、騎士団長のお気に入り。
わざわざ男爵令嬢のアンタが声をかけなくても将来の展望が明るいアイツには様々な人間から縁談が舞い込んでいるよ。
それこそ、上流貴族からだってたくさんな。
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こんな女の護衛なんてもう二度と御免だ。
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