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建国~黎明~編
134 アルスィル皇帝
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陽射しが降り注ぐ長い回廊。いくつものアーチを支える細い列柱が、床に長い影を伸ばす。回廊に囲まれた中庭の中央には、大きな噴水があり、キマイラの口から噴き上がる水がキラキラと陽光を反射している。
ここは、グィネヴィア宮殿。モルゲンから山岳地帯を越えた遥か西に位置する大国アルスィルの帝都にある壮麗な皇帝の住まいだ。
本来、モルゲンからここまでは来るには、船で同じ入り江にあるメドラウドの港へ行き、そこからさらに馬車で内陸にある帝都まで、順調に進めてもひと月もの時間をかけての旅となる。不毛の山岳地帯に道がなく、大きく迂回するためにこれほどの時間を要するのだ。それに、さすが文明が中世レベルというべきか、道は平坦な地を選んで通っており、山があれば迂回し、川に橋が架かっているとも限らない。雨が降って増水すれば、ちゃちな橋は簡単に流されるし、渡し船だって使えなくなる。道のりが距離の倍以上という話も珍しくなく、また、思わぬ理由で足止めを食うこともしばしば。それがこの世界の『旅』事情だ。
「飛竜に乗ったらたった五日で着くなんて…」
「距離はさほどでもないからな」
拍子抜けする私に苦笑しつつ、アルが言った。こうして、私たちは初めて帝国の土を踏んだのである。
王都にあるメドラウド公の屋敷で身支度を整え、宮殿を訪れたのは午後のこと。通された謁見の間は、昔ヨーロッパ旅行で訪れた宮殿を軽く越える広さと、煌びやかさだった。
ペレアス王宮の大広間ほどもある長方形の部屋。部屋の半分だけで百人くらい余裕で入りそうだ。左右の壁には、磨き抜かれた甲冑を纏い、朱の房飾りのついた長槍を持った近衛兵がずらりと並び、天井から下がる巨大なシャンデリアは、ペレアスで見たものが霞んで見えるほど。床の真ん中には金糸で縁取った赤絨毯が敷かれ、それは部屋の奥にある獅子を刺繍した豪奢な緞帳の向こうに――こちらからは見通せない玉座へと続いていた。
「あの緞帳は幻惑魔法だ。結界でもある」
とは、アルが小声で教えてくれたこと。
国力が、全然違う…。
ペレアスが酷くちっぽけな存在に思えてくる。ならば、私たちを頭とする新参国家など――
「国のトップになるってことはね、政略結婚をリアルに考えなきゃいけないの」
格上の家と結婚――『どっちの』家が主導権を握るかなんて、わかりきってるでしょ?
「主導権を握った方がどうとでもしてしまえる」
この国を獅子とするなら、私たちは虫けらなのだ。気まぐれな咆哮で吹き飛ばされ、何気ない一歩に踏み潰される――それほどの差が。
受け答え一つ間違えば、簡単に潰される。
事前にアルから教わった帝国式の礼の姿勢に、妙な力がこもる。それは隣に立つオフィーリアも同じようだった。緊張からか顔色も僅かに青白い。
「遠方より、よく来られた。畏まる必要などない。楽にされよ」
と、緞帳の向こうから皇帝が口火を切った。オフィーリアと目配せして、礼の姿勢を解く。
「モルゲン・ウィリス王国が女王、オフィーリア・フォン・モルゲンでございます。以後お見知りおきを」
重いドレスの裾をつまみ、優雅に腰を折るオフィーリア。さすが生粋の貴族令嬢だ。緊張でいっぱいいっぱいでも、とても綺麗なカーテシーだ。
「ほう…。女王とは珍しいな。では、横にいる夫は王配か。爵位は何になる」
「ッ?!」
……そんなの決めてない。
まま…まさかっ!そんなところを突っ込まれるなんてっ!冷や汗がダラダラと背中を流れる。
「侯爵ですわ」
咄嗟に答えたオフィーリアに拍手したい。ホッと胸をなでおろしたのもつかの間。
「ほう…ならば歴代当主の名は?」
ンなもん言えるかよっ!!
私、爺ちゃんの名前も知らないのにっ!
……困った。さすがのオフィーリアも目が泳いでいる。
「よもや、庶民のように歴代が存在しないということはあるまい。余はただそなたらのことが知りたいのだ」
緞帳の向こうから聞こえる皇帝陛下の声が優しいが。おい…もしかして、わかった上で揶揄ってないか。
そうだ。思い出して見れば妙なのだ。戦争が終わった後、アルが言っていたではないか。ウィリスに食糧を援助していたのは、ノーマンさんではないと。ノーマンさんは戦に対しては、不干渉の立場を貫いていた。メドラウド公爵という大物をすっ飛ばして、大量の食糧を贈れる人物――
つまり。皇帝陛下は知っているのだ。ウィリスの事情を。サイラス・ウィリスが庶民だと。
エヴァの教えてくれたアルスィル皇帝像を思い出す。ぱっと見は名君だけど、嗜虐趣味があって冷酷――なるほど。
私は、スッと背筋を伸ばしてまっすぐ緞帳の向こうを見つめた。アンタの振り、打ち返してやるよ。
「我が家門は、代々初代当主の名を襲名してございます。初代当主の名は…
ルイ・ジョルジュ・モーリス・アドルフ・ロシュ・アルベール・アベル・アントーニオ・アレクサンドル・ノエル・ジャン・ルシアン・ダニエル・ユージン・ジョゼフ・ル・ブリュン・ジョゼフ・バレーム・トマ・トマ・トマ・トマ・ピエール・アルボン・ピエール・マウレル・バルテルミ・アルテュ・アルフォンス・ベルトラン・デュドネ・エマニュエル・ジョズエ・ヴァンサン・リュ・ミシェル・ジュール・ドゥ・ラ・プラン・ジュール・バザン・ジュリオ・セザール・ジュリアン
でございます」
しれっとそう答えてやった。いやぁ~。会社の新年会のネタに覚えた実在する長~~~い名前。こんなところで日の目をみるなんて、ね。
「…もう一度言ってみよ」
言えないと思ってるだろ!言えないと思ってるよな?よぉ~く聞けよ?
「ルイ・ジョルジュ・モーリス・アドルフ・ロシュ・アルベール・アベル・アントーニオ・アレクサンドル・ノエル・ジャン・ルシアン・ダニエル・ユージン・ジョゼフ・ル・ブリュン・ジョゼフ・バレーム・トマ・トマ・トマ・トマ・ピエール・アルボン・ピエール・マウレル・バルテルミ・アルテュ・アルフォンス・ベルトラン・デュドネ・エマニュエル・ジョズエ・ヴァンサン・リュ・ミシェル・ジュール・ドゥ・ラ・プラン・ジュール・バザン・ジュリオ・セザール・ジュリアン、でございます」
いつでも何度でも言ってやるぜ!
……。
……。
「以後お見知りおきを。長くて使いづらい名前ですゆえ、サイラス・ウィリスとお呼び下さい」
五回くらい同じやり取りを繰り返した後でにっこり笑ってそう言えば、緞帳の奥からはつまらなそうな声が是と言ってきた。ドS皇帝め。後半、噛ませるのが目的だったよな、絶対。
◆◆◆
「もう…ヒヤヒヤしたわよ」
謁見を無事に終え、宮殿の回廊を歩きながらオフィーリアが嘆息した。
「…ああ言う方だ。後でその名前と初代当主やらの作り話、公文書を作っておけよ」
と、アル。ちなみに、あの激長な名前は大昔の指揮者さんの名前らしいよ。
「今夜は歓迎の夜会だ。サイラスはともかく…オフィーリア嬢は支度が必要だろう。案内する」
と、アルがオフィーリアのエスコートを代わる。本当、異国の地でメドラウド公爵家……主にアルにおんぶに抱っこだ。頭が上がらないよ。回廊の途中でオフィーリアたちと別れ、私はいったん皇宮内に用意された客室に戻ることにした。緊張から解放され、回廊の風景を愉しみながら歩いていた私の進行方向から、背の高い人物がゆっくりと歩いてくる。
(え~っと?すれ違う時は…相手の身分が上だったら略式の礼をするってアルが言ってたな)
逆に格下の相手なら無視してオーケーらしい。けどさ…
身分の上下以前に、相手が誰だかわからないんだけど。
アルフレッド先生っ!相手の素性がわからない時ってどうすればいいんですかーっ!
内心で叫べども、アルはここにいない。う…うあ~…どうしよう?!
敵との距離、約五メートル。今から中庭の植栽に擬態するとかはナシだ。既に捕捉されている。おおいっ!誰かぁ!ヘルプ!
…願い虚しく。
背の高い誰かさんは、私のパーソナルスペースに侵入した。
……。
……。
「……。」
どーしてこうなったかな。
現在位置、変わらず。宮殿の回廊。私は今……謎の黒髪の美丈夫に、壁ドンされていた。誰?これ?
アルフレッド先生ーッ!マジでどうしたらイイですかぁーっ!
私は今、混乱している。
「ほう…なかなか綺麗な顔だ」
艶のるバリトンボイスで褒められた。顎クイされて。どっかで聞いたことあるような声だけど………誰ですか?あと、どうして男を壁ドン・顎クイするんだよ。
「実に惜しいことだ。既に人のモノとはな。花嫁にはもうできぬのか」
………は?
いや、意味がわかんないんですが??
つーか、アンタ誰???
見たところ癖のある豊かな黒髪は肩ほどの長さで、結いもせず流している。肌は浅黒く、瞳は翡翠色。年齢不詳。う~む…知らん わ、こんな人。ただ、服装だけ見るにかなりご身分が高そう。艶が違う、艶が。キラーシルクワームの絹フルコーデじゃない?ウウッ…こっちの世界のパワハラ(セクハラか?)って、どうしたら穏便に解決できるんだ?!
「そう…警戒するな」
いや、そう言う奴って間違いなくヤベェ人だっ!野生の勘が警鐘を鳴らしているっ!ふわぁ!指でほっぺをスリスリするなぁ!
(ハッ…!)
ももも…もしかして、この人…
真性の男色家?!
全身に鳥肌がたった。聞いたことがある……やんごとなきご身分の方って、たまに男女の好みが明後日の方向に振り切れていることがある、と。
そそそ…そうだっ!どっかのスルタンは男女両刀イケる人だったし、貴族出身の騎士様も妻がありながら後輩の騎士を狙っちゃう……
…ちなみに、全部恋愛小説で読んだネタである。史実ではない。サイラスは混乱していた。
「何を怯えている?余が怖いか?」
怖いですぅ!
吐息が顔にィッ!ギャアアッ!わっ…私はアナタの望むカラダの持ち主ではありませんーッ!
アルフレッド先生ーッ!身分の高い真性の男色家に迫られてます!どうしたらイイですかぁーっ!お尻をガードすればいいんですかーっ?!
ここは、グィネヴィア宮殿。モルゲンから山岳地帯を越えた遥か西に位置する大国アルスィルの帝都にある壮麗な皇帝の住まいだ。
本来、モルゲンからここまでは来るには、船で同じ入り江にあるメドラウドの港へ行き、そこからさらに馬車で内陸にある帝都まで、順調に進めてもひと月もの時間をかけての旅となる。不毛の山岳地帯に道がなく、大きく迂回するためにこれほどの時間を要するのだ。それに、さすが文明が中世レベルというべきか、道は平坦な地を選んで通っており、山があれば迂回し、川に橋が架かっているとも限らない。雨が降って増水すれば、ちゃちな橋は簡単に流されるし、渡し船だって使えなくなる。道のりが距離の倍以上という話も珍しくなく、また、思わぬ理由で足止めを食うこともしばしば。それがこの世界の『旅』事情だ。
「飛竜に乗ったらたった五日で着くなんて…」
「距離はさほどでもないからな」
拍子抜けする私に苦笑しつつ、アルが言った。こうして、私たちは初めて帝国の土を踏んだのである。
王都にあるメドラウド公の屋敷で身支度を整え、宮殿を訪れたのは午後のこと。通された謁見の間は、昔ヨーロッパ旅行で訪れた宮殿を軽く越える広さと、煌びやかさだった。
ペレアス王宮の大広間ほどもある長方形の部屋。部屋の半分だけで百人くらい余裕で入りそうだ。左右の壁には、磨き抜かれた甲冑を纏い、朱の房飾りのついた長槍を持った近衛兵がずらりと並び、天井から下がる巨大なシャンデリアは、ペレアスで見たものが霞んで見えるほど。床の真ん中には金糸で縁取った赤絨毯が敷かれ、それは部屋の奥にある獅子を刺繍した豪奢な緞帳の向こうに――こちらからは見通せない玉座へと続いていた。
「あの緞帳は幻惑魔法だ。結界でもある」
とは、アルが小声で教えてくれたこと。
国力が、全然違う…。
ペレアスが酷くちっぽけな存在に思えてくる。ならば、私たちを頭とする新参国家など――
「国のトップになるってことはね、政略結婚をリアルに考えなきゃいけないの」
格上の家と結婚――『どっちの』家が主導権を握るかなんて、わかりきってるでしょ?
「主導権を握った方がどうとでもしてしまえる」
この国を獅子とするなら、私たちは虫けらなのだ。気まぐれな咆哮で吹き飛ばされ、何気ない一歩に踏み潰される――それほどの差が。
受け答え一つ間違えば、簡単に潰される。
事前にアルから教わった帝国式の礼の姿勢に、妙な力がこもる。それは隣に立つオフィーリアも同じようだった。緊張からか顔色も僅かに青白い。
「遠方より、よく来られた。畏まる必要などない。楽にされよ」
と、緞帳の向こうから皇帝が口火を切った。オフィーリアと目配せして、礼の姿勢を解く。
「モルゲン・ウィリス王国が女王、オフィーリア・フォン・モルゲンでございます。以後お見知りおきを」
重いドレスの裾をつまみ、優雅に腰を折るオフィーリア。さすが生粋の貴族令嬢だ。緊張でいっぱいいっぱいでも、とても綺麗なカーテシーだ。
「ほう…。女王とは珍しいな。では、横にいる夫は王配か。爵位は何になる」
「ッ?!」
……そんなの決めてない。
まま…まさかっ!そんなところを突っ込まれるなんてっ!冷や汗がダラダラと背中を流れる。
「侯爵ですわ」
咄嗟に答えたオフィーリアに拍手したい。ホッと胸をなでおろしたのもつかの間。
「ほう…ならば歴代当主の名は?」
ンなもん言えるかよっ!!
私、爺ちゃんの名前も知らないのにっ!
……困った。さすがのオフィーリアも目が泳いでいる。
「よもや、庶民のように歴代が存在しないということはあるまい。余はただそなたらのことが知りたいのだ」
緞帳の向こうから聞こえる皇帝陛下の声が優しいが。おい…もしかして、わかった上で揶揄ってないか。
そうだ。思い出して見れば妙なのだ。戦争が終わった後、アルが言っていたではないか。ウィリスに食糧を援助していたのは、ノーマンさんではないと。ノーマンさんは戦に対しては、不干渉の立場を貫いていた。メドラウド公爵という大物をすっ飛ばして、大量の食糧を贈れる人物――
つまり。皇帝陛下は知っているのだ。ウィリスの事情を。サイラス・ウィリスが庶民だと。
エヴァの教えてくれたアルスィル皇帝像を思い出す。ぱっと見は名君だけど、嗜虐趣味があって冷酷――なるほど。
私は、スッと背筋を伸ばしてまっすぐ緞帳の向こうを見つめた。アンタの振り、打ち返してやるよ。
「我が家門は、代々初代当主の名を襲名してございます。初代当主の名は…
ルイ・ジョルジュ・モーリス・アドルフ・ロシュ・アルベール・アベル・アントーニオ・アレクサンドル・ノエル・ジャン・ルシアン・ダニエル・ユージン・ジョゼフ・ル・ブリュン・ジョゼフ・バレーム・トマ・トマ・トマ・トマ・ピエール・アルボン・ピエール・マウレル・バルテルミ・アルテュ・アルフォンス・ベルトラン・デュドネ・エマニュエル・ジョズエ・ヴァンサン・リュ・ミシェル・ジュール・ドゥ・ラ・プラン・ジュール・バザン・ジュリオ・セザール・ジュリアン
でございます」
しれっとそう答えてやった。いやぁ~。会社の新年会のネタに覚えた実在する長~~~い名前。こんなところで日の目をみるなんて、ね。
「…もう一度言ってみよ」
言えないと思ってるだろ!言えないと思ってるよな?よぉ~く聞けよ?
「ルイ・ジョルジュ・モーリス・アドルフ・ロシュ・アルベール・アベル・アントーニオ・アレクサンドル・ノエル・ジャン・ルシアン・ダニエル・ユージン・ジョゼフ・ル・ブリュン・ジョゼフ・バレーム・トマ・トマ・トマ・トマ・ピエール・アルボン・ピエール・マウレル・バルテルミ・アルテュ・アルフォンス・ベルトラン・デュドネ・エマニュエル・ジョズエ・ヴァンサン・リュ・ミシェル・ジュール・ドゥ・ラ・プラン・ジュール・バザン・ジュリオ・セザール・ジュリアン、でございます」
いつでも何度でも言ってやるぜ!
……。
……。
「以後お見知りおきを。長くて使いづらい名前ですゆえ、サイラス・ウィリスとお呼び下さい」
五回くらい同じやり取りを繰り返した後でにっこり笑ってそう言えば、緞帳の奥からはつまらなそうな声が是と言ってきた。ドS皇帝め。後半、噛ませるのが目的だったよな、絶対。
◆◆◆
「もう…ヒヤヒヤしたわよ」
謁見を無事に終え、宮殿の回廊を歩きながらオフィーリアが嘆息した。
「…ああ言う方だ。後でその名前と初代当主やらの作り話、公文書を作っておけよ」
と、アル。ちなみに、あの激長な名前は大昔の指揮者さんの名前らしいよ。
「今夜は歓迎の夜会だ。サイラスはともかく…オフィーリア嬢は支度が必要だろう。案内する」
と、アルがオフィーリアのエスコートを代わる。本当、異国の地でメドラウド公爵家……主にアルにおんぶに抱っこだ。頭が上がらないよ。回廊の途中でオフィーリアたちと別れ、私はいったん皇宮内に用意された客室に戻ることにした。緊張から解放され、回廊の風景を愉しみながら歩いていた私の進行方向から、背の高い人物がゆっくりと歩いてくる。
(え~っと?すれ違う時は…相手の身分が上だったら略式の礼をするってアルが言ってたな)
逆に格下の相手なら無視してオーケーらしい。けどさ…
身分の上下以前に、相手が誰だかわからないんだけど。
アルフレッド先生っ!相手の素性がわからない時ってどうすればいいんですかーっ!
内心で叫べども、アルはここにいない。う…うあ~…どうしよう?!
敵との距離、約五メートル。今から中庭の植栽に擬態するとかはナシだ。既に捕捉されている。おおいっ!誰かぁ!ヘルプ!
…願い虚しく。
背の高い誰かさんは、私のパーソナルスペースに侵入した。
……。
……。
「……。」
どーしてこうなったかな。
現在位置、変わらず。宮殿の回廊。私は今……謎の黒髪の美丈夫に、壁ドンされていた。誰?これ?
アルフレッド先生ーッ!マジでどうしたらイイですかぁーっ!
私は今、混乱している。
「ほう…なかなか綺麗な顔だ」
艶のるバリトンボイスで褒められた。顎クイされて。どっかで聞いたことあるような声だけど………誰ですか?あと、どうして男を壁ドン・顎クイするんだよ。
「実に惜しいことだ。既に人のモノとはな。花嫁にはもうできぬのか」
………は?
いや、意味がわかんないんですが??
つーか、アンタ誰???
見たところ癖のある豊かな黒髪は肩ほどの長さで、結いもせず流している。肌は浅黒く、瞳は翡翠色。年齢不詳。う~む…知らん わ、こんな人。ただ、服装だけ見るにかなりご身分が高そう。艶が違う、艶が。キラーシルクワームの絹フルコーデじゃない?ウウッ…こっちの世界のパワハラ(セクハラか?)って、どうしたら穏便に解決できるんだ?!
「そう…警戒するな」
いや、そう言う奴って間違いなくヤベェ人だっ!野生の勘が警鐘を鳴らしているっ!ふわぁ!指でほっぺをスリスリするなぁ!
(ハッ…!)
ももも…もしかして、この人…
真性の男色家?!
全身に鳥肌がたった。聞いたことがある……やんごとなきご身分の方って、たまに男女の好みが明後日の方向に振り切れていることがある、と。
そそそ…そうだっ!どっかのスルタンは男女両刀イケる人だったし、貴族出身の騎士様も妻がありながら後輩の騎士を狙っちゃう……
…ちなみに、全部恋愛小説で読んだネタである。史実ではない。サイラスは混乱していた。
「何を怯えている?余が怖いか?」
怖いですぅ!
吐息が顔にィッ!ギャアアッ!わっ…私はアナタの望むカラダの持ち主ではありませんーッ!
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