ハーレムキング

チドリ正明@不労所得発売中!!

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1章 ハーレムキングの目覚め 編

幕間サラ視点 ハーレムキングを知った日

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 その人は、突然現れた。

 全裸で。いや、腰には小さい葉っぱを三枚だけつけていた。三枚だけ、三枚だけ……それも遠慮がちに。

 最初に見たとき、あまりの衝撃に思考が停止した。変質者だ。通報ものだ。

 だけど、その人は笑っていた。

 まるで世界の中心に自分がいると信じて疑わない王様のように。

 口調はふざけていて、発言は失礼で、常識は欠如していて、意味不明で……だけど、それでもどこか、目を引く存在だった。

 正体も素性も分からないくせに「王」だの「ハーレム」だのと口走りながら、当然のように私の前に立った。

 最初は、とにかく排除するつもりだった。

 でも——あの森で、私は初めて知った。

 彼がただの変な人ではないことを。

 神聖魔法でも払えなかった悪霊。何度祈っても、浄化の光が届かなかった存在。

 それを、彼は。

「……殴った」

 いまだに信じられない。私の中の常識が、彼という存在に一撃で壊されたようだった。

 拳一つで森の空気ごと断ち切ったあの姿は……

「本当に、“王様”みたいだった」

 思わず口にして、私は慌てて頭を振った。

 違う違う! そんなはずはない! 
 あんな人、変人で、女好きで、調子に乗ってて、王様なわけない。……ないのに。

「……でも、かっこよかった、かも……」

 ああもう!何を考えてるんだ、私は!

 神官として、セイクリールで日々の祈りを大切にして、人々の平穏を守ってきたはずなのに……!

 なのに、どうして。

「……鼓動、うるさい」

 胸が、うるさい。さっきからずっと。

 あの人の姿を思い出すたびに、言葉を思い返すたびに、体の奥が熱くなるような感覚が押し寄せてくる。

 何度も深呼吸して落ち着こうとしているのに、それでも、どうしようもないくらい抑えられない。

 私はそんな自分をごまかすように、前を歩く“王様”に声をかけた。

「……ちゃんとついてきてくださいよ、王様!」

 振り向きもしないまま言ったその言葉に、彼がまた、笑う気配がした。

 だから私は、ほんの少しだけ顔を赤らめながら、彼の背中を追いかける。
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