俺が悪役令嬢になって汚名を返上するまで (旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

南野海風

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81.早朝より来る……

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「おはようございます、アクロ様」

 朝一で三馬鹿がやってきた。
 昨日あんだけ話したのに、愚痴もいっぱい聞いてやったのに、飽きもせずに、こんなに朝早くに……

「今からお風呂行きたいんだけど」

 若干素が出ちゃった気もするが、俺の不機嫌も察してほしい。

 なんせ今、朝の運動中である。
 超汗だくで息切れして訓練用に買った大剣 (鉄アレイなどの代わりである)で素振りしている。しかも最初から風呂に行くことを想定して下着姿である。

 今レンがいないせいで対応が甘かったのだろう。ノックに「誰だ?」と返事したら、三人は返事するどころか入ってきちゃったのだ。……あれ? うわ天使だ! 天使がいるぞ! ……なんだマリエルか。

「……」
「……」
「……」

 三人は、運動しているアクロ様を見て呆然としていた。うん、わかる。貴族っぽくはないだろうね。でもやめねーぞ。きっちりノルマはこなすぞ! じゃないと身体がなまるからな! 相変わらず雨だしな!

「もうすぐ終わるから待ってなさい」

 いつだったか、ちょうどアニキが運動中に部屋を訪ねた時、同じようなこと言ってたっけ。ちなみにこの大剣もアニキの影響を受けて購入したものですけどね!

「あの……朝食をご一緒に、と思ったのですが……」

 アティーの言葉に「少し待たせるわよ」と返し――ノルマを終わらせる。

「……はあ……はあ……」

 やべえ、きっつい……そして暑い。キルフェコルトのケバブ型バーベルの半分以下の重量しかないはずなのに、こっちでさえもうバテバテだ。きっと単純に筋力不足なんだろうな。……あんまりやりすぎると筋肉付きすぎて、唯一の自慢である美貌を損なう危険があるからな。程々にしとかないと。

「汗を流してくるから」

 大剣を置き、椅子に掛けておいたバスローブ的なものを羽織り、俺は部屋を出た。




 追いかけてきたレンと合流し、風呂に入って部屋に戻ると、三馬鹿はお茶していた。各々の使用人に淹れさせたのだろう。……三馬鹿と、その三人の使用人か。さすがにこれだけの人数がいると、部屋が少し狭く感じるな。

 俺もさっさとテーブルに着くと、えーと……ミーアの使用人がすすっと動いて朝食の用意を始めた。レンさん以外の給仕か。何度か食べに行った校外のレストラン的なところではあたりまえだったが、この部屋では珍しい光景だな。

「いつもあんな運動を?」

 アティーの問いに「ええ」と頷く。

「このプロポーションを保つためには必要なのよ」

 わかってる。強引なこじつけだってことはわかっている。我ながら無理があると思っている。でもまさか「実家が没落する可能性があるから自立するための準備してまーす」とは言えないだろ。
 
「ステキでしたわ。アクロ様」

 ミーアの視線は、なんだか妙に熱っぽい。今日も色気ありますねミーアさん!

「……」

 そして天使は我関せずという態度である。あ、天使じゃなくてマリエルだった。いやならば天使か。

「それで、何か用でもあったの?」

 朝食を取りつつ問えば、「用というほどでも」という前置きをして、アティーが話し出した。

「アクロ様、今年のパーティーは出席なさるの?」

 あ、一言目でわかった。目的はただの女子トークだな。特に話すことはないけどだらだらお話しましょうってことだな。
 ……暇と言えば暇だけど、暇じゃないと言えば暇じゃないんだぞ。帰郷の準備とか、しばらくお別れすることになるレンさんとの貴重な二人きりの時間とか、俺の求める時間の使い方くらいあるんだぞ。

 でも、そうだな。
 こいつらには事前に話しておかないと、後々面倒なことになるんだろうな。ちょうどいいし話しておくか。

「ラインラック殿下と参加することにしたわ」
「「えっ!?」」

 アクロディリアの片思いを知っているだけに、三人の反応は激しかった。……いや、マリエルは除いて。

「どういうことですの!? 昨日は仲が良いとか良くないとかはっきりしないことを言っていたのに、どうしてそんなことに!?」
「もしかして婚約なさるの!? もしかして婚約なの!?」

 アティー、ミーア、落ち着け。朝食中に騒ぐのは貴族としても庶民としても問題あるぞ。あとマリエルは逆に少しは気にしろ。ガン無視はないだろ。ミニトマトを食べるな。

「昨日言った通りよ。ラインラック殿下のことは諦めたの。今回のことは殿下の都合でこうなっただけで、他意はないわ」

 浮つく女子たちに、俺はしっかりと言っておいた。

「いい? くれぐれも不用意に噂を広めないでね?」

 こうしてちゃんと釘を刺しておかないと、「ラインラック殿下とアクロディリア様が恋人同士になったのよ」的な、外堀を埋めかねない噂を振りまきそうだからな。そんな噂流すのアクロディリアに好意的な連中だけだろうから、やはりこいつらの口だけは封じておかねば。

「殿下の都合ってなんですの?」
「知らないわ。王族だもの、あの方にも色々あるんでしょ」

 自国で暗殺されかけたから留学しているとか、この国の貴族女子の顔を立てるために誘われたとか、それ以外にも俺が知らない事情があるのかもしれないしな。

「……」

 アティーが目を丸くしていた。あ? 何?

「……昨日も思ったけれど、なんだかアクロ様、落ち着いたというか……大人っぽくなりましたわね……」

 へ? 落ち着いた? 

「そうね。うまく言えないけれど、そう、落ち着いたって言うのが正しいのかも……」

 ミーアもそんな感想を漏らした。熱っぽく俺を見ながら。……その色っぽい視線やめてくれませんかね? そんな目で見られたら男とかすぐその気になるぞ。……うーん、こりゃミーアは確かにモテそうだな。

「そう? 変わってないと思うわよ?」

 まあ、その感想はわからんでもないが。
 でも俺が落ち着いてるんじゃなくてアクロディリアが激しかっただけだぞ。あと大人げなかっただけだぞ。シャレにならないくらいにな。

 だいたい、俺から言わせりゃおまえらが子供すぎるんだよ。悪口とか嫌がらせとか。十七、八にもなって何してんだよ。他にやることあんだろ。









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天井の高さとか考えないでくださいね!
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