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170.五つの手紙と四つの手紙……
しおりを挟む「――五通、手紙が届いてます」
え? 五通も?
早朝、今日も薄いスープとパンというお馴染みの朝食を食べている間に、レンが手紙を持ってきた。
確か郵便物は一階に住んでいる管理人が預かるシステム……だったと思うが。全部使用人任せなのでアクロディリアは知らないようだ。
「誰? 辺境伯から?」
「『お父様』でしょう? 場所と状況で違う言い方をしているとボロが出ますよ」
うん、まあ……気をつけます。
「辺境伯からは来てませんね」
スプーンを置いて、レンが差し出す手紙を受け取り、差出人を確認する。
「あ、目録ができたようね」
一通目はジングルからだ。
宝探しから一週間以上経っているので、そろそろ進展があったのだろう。
二通目は、ダリアベリー?
…………天使絡みか?
三通目は、ファベニア・ディル・フロントフロン……アクロママだ。
ママからの手紙ってのは珍しいな。パパからはわりと来るみたいだが。
四通目はクレイオル・ディル・フロントフロン……弟か。
そうだな、宝探し以降からの奴の動向はかなり気になっていた。
果たして俺の説教はどの程度効果を上げているのだろう。こうしてわざわざ手紙が来るくらいだから、たぶんその手の報告だろうしな。
ちなみに弟、あれだけ性格が悪いくせに、姉の誕生日や両親の結婚記念日などなど、いわゆる「大切な日」は決して忘れないマメな男である。女子のポイント高いらしいね、そういう男。俺も記憶力さえ良ければなぁ……
五通目は、ウルフィ? ん? ……あ、ウルフィテリアからか!
夏休みに別れたあの日以来、まったく会ってないし連絡も取ってない。なんの用かは知らんが、予想できないだけに内容が気になるな。
差出人が「ウルフィ」のみで、手紙には封がない。まあ、要するに「大した用じゃない手紙」ってわけだな。王族としてじゃなく友達として送られてきたものかもしれない。あるいは言質を取られないために、か。
とりあえず朝食を片付けて、俺は一通目から手紙を読んでみた。
一通目のジングルの手紙は、やはり目録の完成についてだった。
人数で割った場合のおおよその金額と、その金額からなる「物品受け取り」という形でもOKらしい。ただその際に見せる目録はキルフェコルトに渡すから、見たいなら奴に声を掛けてほしい、と。概ねこのような感じのことが書いてあった。
ただ「物品受け取り」を希望するなら、早めに申し出ないと、オークションに出すから注意、とのことだ。
これは、返事はいらないだろうな。
でもパパに「なんでもいいからママに一点持ってこい」と言われているから、目録を見に行く必要はありそうだ。
「レンはやっぱりモノじゃなくてお金がいい?」
手紙の内容を話して聞いてみれば、「そうですね」と返事があった。
「ヨウさんはあまり考えてないようですが、処分するにも手数料や手間賃といったお金が必要になります。オークションでも出展料が掛かりますから」
そういう手数料だのなんだのを考えると、「全員の報酬から手数料が払われる」という現在の形態が望ましいらしい。いわゆる必要経費が割り勘になるからだな。しっかりしてるなぁ。
とりあえず、今日の夜にでもキルフェコルトに会いに行こう。ママ用の宝を早めに確保せねば。
よし、二通目だ。
二通目はダリアベリーだな。えーと……
「……次に天が染まる夜はいつか?」
これだけである。
うん……これ明らかに天使のことだな。「天が染まる」ってのは、天使活動にピリオドを打ったアレのことだろう。
ダリアベリーが気にするのはちょっと違和感があるから、これたぶんクリフのじーさんの指示だろうな。
うむ……クレーク大叔母のおかげで、フットワーク自体は相当軽くなった。俺もそろそろ天使活動はしたかったし、これを機に再開してみようかな。
ダリアベリーへの返信は「希望の光はどこに降りる?」とでも返しておこう。
クリフのじーさんなら、どこの街に行けばいいのか要望を上げてくれるだろうしな。
もし「は? 意味わかんないんですけどぉー」とか返ってきたらサブミッションでも極めに帰ろう。逆エビやインディアン・デスロックでダリアベリーをギリギリ絞め上げてやろう。場合によっちゃクリフのジジイもな! 老体に容赦なくムチ打ってやるぜ!
三通目は、ママだな。
…………
……うん、一言でまとめると「温泉に行って超楽しみました」と。そのようなことを便箋五枚に渡って長々と綴られてますね。
温泉で有名な街に行けば、温泉もグルメも地酒もかなりよかったらしい。
勧めた身としては、気に入ってもらえてそれなりに嬉しいが……とにかくパパとのノロケがすげぇ。便箋五枚中四枚半がノロケ話だ。
こりゃアレだな、歳の離れた弟妹ができる日も遠くないな。
とりあえず「お酒はほどほどに」と返事を送ろう。
四通目は弟か……どれどれ。
…………
ふむ……思ったより反響があったみたいだな。
あいつには「紳士であれ」「相手に敬意を払え」とSEKKYOしてやったが、早速実践してみたらしい。
結果は…………
「レンさん、弟から手紙が来たんだけど」
レンには、あの時俺は弟にこんなこと言いましたよーということは話してある。
ちなみにレンもあの時、弟のメイド・ハイネに「言うこと聞くばかりじゃダメ、間違ってると思ったら力づくでも止めろ」と言い含めたらしい。
「よその国の王族と友達になったんですって」
「へえ。よかったですね」
まあ、弟の手紙には「どうでもいいことですが」的な感じでそっけなく書いてあるが、書いてある時点で相当嬉しかったんだろうなーというのは察することができる。本当にどうでもいいなら書かないしな。
「あと、微妙に下位の貴族や庶民にナメられてる気がするけどどうしたらいいかって相談が」
アクロディリア(おれ)も経験した現象が、弟の方でも起こっているってことだ。俺の場合はアレだろ、一学期の終業式に遭遇したお嬢様の集団な。ああいうのだろ。
形や男女や身分は違えど、弟が遭遇していることと似ていると思う。
「ヨウさんが教えてあげればいいと思いますよ」
「そう? ちなみにレンならどうする?」
「私なら無視するか、やられる前にやります」
おう、シンプルな答えだな! でも俺もそれでいいと思うわ!
よし、弟の返事には「自分が敬意を払っているにも関わらず相手が敬意を返さない場合は、権力も財力も使っていじめて良し! へりくだってるわけじゃないことを教えてやれ!」と書いておこう! 気に入らない奴は辺境伯パワーでやってやれ!
五通目は、第二王子ウルフィテリアか。
…………
まあ、ご機嫌伺いだな。季節の挨拶とかその辺の……割と普通のお手紙でした。
……あ、こっちが本題か?
入っていた便箋は二通で、二枚目は筆跡が違う。一行目に「お屋敷ではお世話になりました」と書いてあるから……もしかして監視者メイトからの手紙か? 密偵から手紙もらっちゃったよ。
まあ大したことは書いてないけど……あ、いや、本当に言いたいのはこれか。
――次の夜遊びはいつ? 楽しみにしてます。
夜遊びっつーと、これも天使のことだな。そしてメイトも一緒に行きたがってる、のか?
うーん……とりあえずウルフィテリアには当たり障りなく、メイトには「逆にいつがいい?」と返事をしたためようかな。
ジングルを除いて、四通の手紙に返事を書いた。
レンに出しておくよう頼んで、今日も楽しい訓練である。
――運命の日まで、あと11日。
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