俺が悪役令嬢になって汚名を返上するまで (旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

南野海風

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176.心ばかりの……

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「これでよし、と」

 ――オカロ村でメタ○ギアしてきた翌日である。

 監視者メイトの魔法もあってか、無事一人で未発覚でミッションを達成し、早々に引き上げた。たぶん滞在時間は1時間もなかっただろう。
 俺にしては鮮やかかつミスの少ない悪事だったと思う。……まあメイトのおかげってのがデカいと思うが。

 さっさと現場から引き上げて大叔母の家に戻り、何事もなかったかのように就寝し、今朝早く学校に戻ってきた。

 そして朝の訓練を終え風呂に入り、昼食の直前である。
 昨日はなんやかんや忙しかったので、手紙をしたためる時間が取れなかったのだ。昨日は天使活動の準備に追われたからな……あと今思えば海賊船のフィギュア眺めてる時間が長かったな。これからは自重しよう。

 書いた手紙は四通だ。

 一通目はフロントフロン家宛て……まあパパ宛てだな。宝探しの顛末と、パパが注文した「記念の宝」を一緒に送るつもりだ。
 送る宝はペアリング……「業深き指輪 (番)」というのが俗称らしい。
 海賊の乗組員が港に待たせている女に贈るものなのだそうだ。いろんな事情で海賊が帰ってこないことが多く、無責任に女を待たせる業の深さから、そう呼ばれるようになったとか。
 まあパパは海賊じゃないから別に問題ないだろう。

 二通目は、弟とメイドのハイネ宛てだ。
 まあぶっちゃけこいつらには手紙はどうでもいいのだ。おねえちゃんとして宝を一点ずつ選んだので、それを送るだけだからな。

 選んだのは、弟には「ルービン海賊団のカフスボタン」。
 堅牢のルービン、または紳士的ジェントルマンルービンと言われた特殊な海賊で、キャプテン・ルービンはどっかの国の上位貴族から海賊になったという特殊な経歴の持ち主だ。
 無益な殺生はしない、海賊相手でも無駄に殺さない、はっきり言って海賊とは名ばかりで海のモンスターを率先して狩り、航路を守ることに尽力したとか。

 そんなルービンの海賊旗は、「盾にドクロ」。
 相手の死を意味すると言われるドクロマークに守備・守護を意味する盾を組み合わせた、矛盾しているが誇りを感じるマークだ。それを模した金細工のカフスボタンである。
 そこまで奇抜じゃないから普段使いできそうなデザインだが……まあ、宝探しの記念だからな。その辺は弟の好きにすればいい。

 メイドのハイネには、あまり高い物を贈っても困らせるかもしれないから、「海翡翠のブレスレット」だ。
 海翡翠ってのは、この世界にあるそういう種類の珊瑚のことだ。元々綺麗だが、磨くともっと綺麗に……ってのは、まあ宝石の原石と一緒だが。深い緑の奥に海を思わせる深い青が見える。すごく綺麗だと思う。そして普段着けててもメイド仕事の邪魔にならず、濡れても安心なアイテムだ。ミサンガ張りに細身だからそんなに目立たないしな。
 ……まあでも宝石の一種らしいから、メイドの身では普段は着けられないかもな。その辺は自己責任に任せよう。売ってもいいしな!

 三通目は、弟の婚約者であるリナティスだ。義理の妹だからな。身内だからな。たぶん弟が何か贈るとは思うが、まあいいだろう。超かわいいからな!
 贈る物は「空水晶のブローチ」。
 青みがかった水晶っぽい石がはめ込まれた金のブローチだ。楕円形で、形だけ見ればすごくシンプルだ。それゆえに、これは使いやすさ重視で決めた。品があると思う。
 ちなみに「空水晶」は、かなり強いクラゲモンスターのレアドロップアイテムだ。そのままでも相当な価値があるのに、贅沢に加工したものである。
 なお、手紙には「弟の目の色っすわー」と一言添えた。このブローチを見るたびに弟を思い出すがいい! ……「どう思うこの気遣い?」ってレンに聞いたら「掃除していいですか?」って無視されたけど。心おきなくするがいい。

 そして四通目は、第二王子ウルフィテリアだ。宝探しのことももう耳に入ってるだろうからな。
 あいつには、夏休みの時の諸々の礼を込めて「海竜のペン」を贈ることにした。
「海の覇者」とも呼ばれるベラボーに強い海竜の骨を加工して作られた、めちゃくちゃ綺麗な真っ白なペンだ。骨に刻まれた細工は細かく、ペン先は金で、専用ケースも金細工である。これはペンケースも含めた宝だ。ラインラックもちょっと欲しそうだったが譲ってもらった。
 ちなみにこれ、「大海賊ギャットの愛用品だったかもしれない」という説があるそうだ。真実はわからん。

 あとクレーク大叔母には、ドクロの眼帯をネタで上げたが、本命は「千年亀の盃」というマジで千年生きた亀の甲羅で作ったコップを送った。
 細工も見事だし、落とした程度では割れもしないし欠けることもなく頑丈だ。そして何よりこの世界でも長寿の縁起物で通っている。
 要するに「ババア長生きしろよ」って意味を込めて、だ。

 ――手紙と贈る物をざっとチェックして、封をして一度木箱に納めた。あとはこれを購買部に持って行って梱包してそろぞれに送ってもらうだけである。見せびらかすわけにはいかないから箱詰めで運ぶのだ。

 …………

 これ全部合わせて、なんだかんだで一千万近く掛かっている。
 特にリナティスの空水晶と、ウルフィテリアのペンが超高い。贈る相手が王族だけに、知らず気合が入ってしまったのだろう。

 ……つか金銭感覚がやべーわ。
 現ナマを目の前で動かしてないから、金使ってる実感が湧かないんだろう。ただの高校生感覚に戻しとかないと。




 客の少ない購買部には、すでにレンが来ていた。メイド仕事を終えたらここで待ち合わせ、ということにして別行動していたのだ。
 八年生以外はまだ授業中だし、肝心の八年生にしてもこの時間はここに来ることは少ない。冒険に行くなら朝からだし、午後から行くなら食堂で昼食を取ってからになるからな。……それでもいつも何人かはいるんだよなぁ。あいつらは何をしてるんだろうな。

「注文お願い」

 テーブルにいたレンに昼食を頼むよう指示し、俺は受付へ。郵送の手続きをするのである。
 で、だ。
 今日はここで昼メシを食って、ちょっと街に出ることになる。

「ふおおっ!?」

 小箱の中身を見て、受付嬢が意味不明の声を上げた。おい目立つだろ。やめろよ。……気持ちはわかるけど。ガチな金目の物が入ってるからな。

 そんなこんなで、手続きを済ませてメシを食い、街に出た。




 実は今朝、メイトと別れる時に、言われたのだ。

「――今回は融通が効いたけど、いくら指名されたからっていつも同行できるわけじゃないから。あとあたしにも守秘義務があるから、お嬢様の質問には答えたくても答えられないわけ。あたし平民でお嬢様はお嬢様でしょ? 立場上断るのもしんどいわけよー。
 というわけで、いっそあたしたちの上司と会って、直接色々聞いてみれば? 会う気があるなら、今日の昼ぐらいに段取りつけとくけど?」と。

 本来なら収穫が乏しい図書館での闇関係探しになるのだが、収穫が望めないだけに今後は違うルートから攻めようと思っている。
 でもそうすると、またちょっと待たなきゃいけないんだよな。
 その間にできること――今で言うなら、メイトの紹介で密偵の上司とやらに会って情報収集し、できれば隠密行動のスキルアップを目指したい。そういう感じで交渉して、可能ならば少し鍛えてもらおうと思っている。

「あの話の流れからして、その上司もヨウさんに会いたがっているのでしょうね」

 俺はメイトの提案を聞いて考えるまでもなく即決したが、レンは冷静にそう分析したそうだ。
 言われて見ればその通りだ。平の密偵が約束できることじゃない。

 更に言うなら、今回メイトが付き合ってくれたことも鑑みれば、自ずと何が目的か見えてくるわけだ。突き詰めれば、あいつが来たのはウルフィテリアの指示だろうしな。

「『天龍の息吹エンジェルブレス』目当てよね。きっと」

 向こうが欲しがるものであり、俺の首を絞めるものであり、また俺の身を守るものでもある。
 俺が平民だったらまだしも、辺境伯令嬢だからな。そこまで強引に事を進めることは思えないし、無理強いすることもないだろう。

 ……まあ、結局、何事も会ってみてからって話になるか。




 ――運命の日まで、あと2日。


 


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