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第三十三話 今日の話題をもっていくというようなもの
しおりを挟む「ばうわう!」
「わ」
僕が動物達を見て考え事をしているとシルヴァが足元に寄って来て尻尾を振る。
「急に元気になったなあ。まだ骨が浮いているからなんか怖いね」
「たくさん食べさせたらダメなのー?」
「今は少しずつじゃないと食べたら食べたで具合が悪くなると思いますよ」
アニーがまだ水浸しのシルヴァを撫でながら食事をもっとあげようと言う。しかしウオルターさんがやんわりと理由を説明する。
「そっかあ、じゃあまた後でだね」
「うぉふ」
「でも眷属って後はどうすればいいの?」
元気になった以外、特になにか変わった様子もないので母さんに尋ねてみる。するとこんな答えが返って来た。
「見た目はそんなに変わらないわ。ただ、ウルカちゃんが虐待とかしていないのに反逆しようとしたら罰が下ったりするかしら。それと魔力を与えてあげることができるから一時的に凄く強化させて戦わせることもできるわね」
なるほど、外観ではなく内面がアップデートされた感じなのか。例えば身体強化をして背中に乗ることも可能と思っていいだろう。
「よし……練習にひとつやってみよう。強化できるかな」
「おうん?」
「お、今度はなにをするんだ?」
僕はシルヴァの背中に手を乗せる。
するとフォルドが興味津々といった感じで僕の隣に立ち、母さんがにこにこしながら僕の肩に手を置いて口を開く。
「この子がどう強くなるのかをイメージするのよ」
「……魔法と一緒なんだ。うん」
目を閉じて……僕を乗せて歩けるくらいの足腰を強化するイメージで――
「どうだ……!!」
「わふ!?」
「おおおー」
「こけー!?」
アニーが手を叩いて感動し、ジェニファー達がざわめく。目を開けてみるとそこには足が太くなったバランスの悪いシルヴァが困惑していた。
「あっている……けど……」
「くぅーん」
「体がガリガリだから怖いな。ま、まあいいや、ちょっと背中に乗せて」
僕がそう言うとシルヴァは大人しく伏せてくれたので背にまたがる。
背中を優しく叩いて立つよう命じると太い足を力強く踏みしめて立ち上がった!
「わん!」
「お、やるなシルヴァ!! 俺も乗せてくれよ!」
「フォルド無理したら――」
「わおおおおん!?」
と、僕が言った瞬間、ぐしゃりとシルヴァが潰れた。強化されたけど体力までは強化できないのか二人乗りは無理だったようだ。
「戻れ。ほら、フォルドのせいでシルヴァがぺちゃんこだよ」
「兄ちゃんさいてー!!」
「わ、悪かったよ! ごめんな」
「わ、わふ……」
シルヴァは倒れたまま不敵に笑い伸びきってしまった。母さんが思ったより弱っているかもと口にしていたので今日はもうダメそうだ。
「にゃー」
「こけー」
先ほどまで敵対していたジェニファーとタイガがシルヴァの毛づくろいを始め、仲間として認められたような感じがする。
そこでアニーが首を傾げながら僕の袖を引く。
「ジェニファーとタイガはけんぞくにしないの?」
「ええ? シルヴァは狼だし、それっぽいけどニワトリと猫は違う気がしない? え、ハリヤー?」
ハリヤーが僕の顔に頬ずりをしてきて『お願いします』と言う感じで鼻を鳴らす。
そこで視線を感じて首を動かすと、毛づくろいをしながら一羽と一匹も期待を込めた目でこちらを見ている。
「やらないからな……?」
「こ!?」
「にゃー……」
「いいじゃん、強そうなのに」
「タイガは野良だしハリヤーはウチのだけど、ジェニファーはお前んちのじゃないか。それにシルヴァは死にそうだったのと魔物だから制約をつけただけ。強くならなくてもいいだろ?」
フォルドがそういやウチのニワトリだったなと冷や汗をかいていた。忘れてたの!?
「……親父もあんまり気にしてないからなあ。もうウルカのでいいんじゃないか?」
「飼ってたなら家族みたいなもんじゃないのか?」
「すぐ脱走するから手がかかって困るって親父が言ってた。俺も捕まえるのに苦労してたし、居場所がわかるだけいいかなって」
「ジェニファーは頭いいもんねー」
「こけー♪」
まあ餌には困っていないし今さらだから別にいいか。
「それじゃ、ママはお部屋に戻りますからね。危ないことをしたらダメよ? バスレ、少し手伝ってちょうだい」
「ウルカ様と遊びたかったですが大丈夫です」
「ではわたくしめもお屋敷のお仕事に戻りますね」
「うん。ありがとう母さん!」
欲望駄々洩れのバスレさんと丁寧なウオルターさんがそれぞれ母さんの後についていき庭から去って行った。
残った僕達はどうしようか考えていると、ギル兄ちゃんが残念そうにつぶやく。
「ウルカの成長が見られたのは良かったがシルヴァと遊べないのは残念だな」
「ギル兄ちゃんは犬好きだもんね。でも今日は勘弁してやって……っていつのまにボールを」
「さっき急いで取って来た。が、俺達で遊ぶか」
この世界のボールはなめした動物の皮で綿を包むというシンプルなもので跳ねない。けど蹴って遊ぶくらいはできるので、秘密基地を作る前はロイド兄ちゃん達と庭で投げたりすることもあった。
「じゃあ今日はボール遊びをしようか?」
「いいな! ボールって高いから買ってもらえないんだよな」
「よーしそれじゃ……」
【おーいウルカ!】
と、提案したところでずっと大人しかったゼオラに背後から声をかけられた。返事できないだろと思いつつ無視しているとフォルドが大声を上げた。
「うおおおおお!? あ、あれってまさか!!」
「なんだ? うわ!?」
【見てくれ、こんなにカブトムシが居たぞー!!】
「おお、たくさん飛んできたな!?」
黒い塊をたくさん手にしたゼオラが笑顔で飛んできた!? ギル兄ちゃんたちからみたらカブトムシがこっちに向かって飛んできているように見えるようだ。
【ふう、満足だぜ……】
「こんなに採って来てどうするんだよ……」
「ウルカの手に吸い込まれた……! お、お前、カブトムシも眷属に……」
「ち、違うよ!? 別に僕のってわけじゃない」
「マジか! ちょ、ちょっと見ていい?」
フォルドがお宝を前にした目で迫って来たので、手渡されたカブトムシを地面に置いた。
「これでけえ! かっけぇ!!」
「あははは、ぎちぎちー!」
アニーは虫が平気らしい。田舎の子は強い。
【ほら! やっぱこうだよ子供はこうでなきゃだぞウルカ!】
いや、僕は中身十七歳だしと胸中で返事をしてため息を吐く。
「こいつは力が強いぞ。ほらウルカも」
「あ、こらジェニファーにタイガ! 食い物じゃねえぞ!?」
「だめなのー!」
まあ、みんな楽しそうだしいいか。
【ふむ、ノリが悪いなウルカは。ならお前にはこれをやろう】
「え? なにかくれるのかい?」
【手を出せ】
そう言われて水をすくうような形にして差し出すとゼオラがそっと僕の手にそれを置いた。
「これは……!」
大きなクワガタだった。
「ウルカすっげー! それスイ・ギュウクワガタっていういいやつじゃん! 見せてくれよ!」
「ああ、うん。欲しかったらあげるよ」
「マジ!?」
フォルドの好感度が爆上がりした。
結局その日はカブトムシと遊び、クワガタとカブトムシを一匹だけ連れてフォルドは帰って行った。ジェニファー達がずっと狙っていたので止めるのが大変だった。
「それじゃそろそろ夕食だな、屋敷へ戻るか」
「そうだね。ってなんか忘れているような……」
「くぅーん……」
今日のヒーローだったはずなのに全部カブトムシに持って行かれたシルヴァがか細く鳴いていた。不憫である。
この後、帰って来たロイド兄ちゃんにしこたま可愛がられて事なきを得たけどね。
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