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第三十九話 祭りのごたごたというもの
しおりを挟む「だからよ、もうちょっと強度を上げてな……」
「それだと高くなっちゃいますよ? 材料を変えて――」
「ふぐおお……!」
「あらあら、パパったらお酒弱いんだからぁ♪」
「いや、母さんもテーブルに突っ伏しているし」
宴会が始まってから数時間ほど経ち、お酒も程よく回りあちこちで今日の反省やゲーミングチェアの今後についての話など色々な話で盛り上がっていた。
父さんはザトゥさんの付き合いで飲みまくっていたら潰れた。さらに母さんは強そうに見えたけど父さんの横でぐったりしながら笑っていた。
「やれやれ、急に強い酒を飲むからだ。……ヴァンパイアってお酒に強そうなのにな……」
「まあ母ちゃんだし」
「ちょっと出てくるね」
「おう。あいつらか」
ギル兄ちゃんが母さんに上着をかけ、ロイド兄ちゃんが苦笑しているのを横目に僕はシルヴァ達にご飯をあげるため外に出る。
「アニーも行くー」
「わたしも」
「おう、シルヴァに肉やろうぜ肉」
「うん、行こうか!」
いつもの子供メンバーが追いかけてきたのでお皿を分け合って一緒に外へ。
「ふう、今日は疲れたな」
すっかり暗くなったけど外は青い月が灯りを照らしてくれる。なので少し歩くくらいなら日本の裏路地より明るいかもしれない。
ま、散歩なんてしないけどね。
「うぉふ!」
「こけー!」
「にゃあ!」
酒場の入口にいつもの鳴き声が聞こえ頬が緩む。大人しく待てるこいつらは賢いよね。
「ほらシルヴァ、肉だぞー。屋敷で食うヤツよりちょっと劣るかもしれねえけどな」
「いや、十分だよ。というかこいつ魔物なのにみんな驚かないな」
「わふ?」
ジェニファーに野菜を与えながらシルヴァに目を向けると、ステラがドヤ顔で口を開く。
「パパが眷属だから平気だって町の人に言ってるから大丈夫なの」
「そうなんだ。それなら今度お礼を言っておかないと」
「うん。ママも会いたいって言ってた」
「リンダさんか……」
どういう人か結局知らないので会えるなら会ってみたい。豪快な人っぽいということしかわからないからね。
母さんと仲が悪そうだけど、僕と会いたいならそうでもないのかも?
「ジェニファー、いっぱい食べるんだよー」
「こけー!」
「にゃーん」
動物達も晩餐を始め夜風に当たっていると、不意にゼオラが浮かび上がり、神妙な顔で口を開く。
【……ウルカ、ゲーミングチェアは?】
「え? 酒場に来る前、工房に置いてきたはずだけど」
【そうか。どうもキナ臭い気がする。空気がそんな雰囲気だ】
「盗みがある、ってこと?」
「どうしたのウルカ君?」
不思議そうな顔をするステラよりも今はゼオラの話だと続ける。
「盗みがある……イコール工房が危ない。ってことは……奥さんがまずいんじゃないか!?」
【そういや来てないのか? ……チッ、確証はないが確認はした方がいいだろうな】
「僕が行くよ。ステラ、アニー、フォルド」
「ど、どうした?」
僕が振り返って名前を呼ぶとフォルドがびっくりした顔で返事をする。
「中に居る父さんたちに僕がザトゥさんの工房へ行くことを伝えてくれ。嫌な予感がする」
「な、なんだよ嫌な予感って」
「いいから! 頼むよ!」
「あ、ウルカ君!」
「わわふ!?」
「こけー!?」
僕はそれだけ言うと大通りを駆け出す。目指すはザトゥさんの工房だ!
「椅子なんて盗まれてもいいけど、人が死ぬのはダメだからね」
【いいや、椅子もダメだ。お前が作ったものだというものが世に出る前に誰かが売りに出すのは価値が下がる】
「そ、そういうもんかい?」
【ああ。なにも無いことを祈りたいけどね。魔法を教えてやるよ<アクセラレーション>】
おっと、唐突に師匠スタイルを出してくるなあ。ま、どっちにしても確認には行かないとね。……手遅れにならないうちに。
◆ ◇ ◆
「行っちゃった……」
「わたしたちも行こう」
「だ、ダメだ! 大人を呼んで一緒に行くんだ」
フォルドはウルカの様子にただならぬ気配を感じたフォルドは走ろうとしたステラの肩を掴んでそう叫ぶ。アニーはすぐに店の扉を開けて大声を出した。
「父ちゃん! ウルカ君がザトゥさんの工房に行くって走ってった!!」
「なに? ウルカが?」
「工房にだと?」
「あ、お兄ちゃん! うん、盗みが入るかもって」
「なんだとぅ? ウチの工房にってか?」
「ウルカちゅわんが!? い、いかないと」
アニーの言葉に立ち上がったのはギルバードとロイド、そしてザトゥだった。ロドリオは眠っていて、クラウディアは目がすわっていた。
「ああ、母ちゃんはいいから。後はオレ達がやっとくからよ」
これはダメだとロイドがなだめて椅子に座らせると、フォルドが口を開く。
「ウ、ウルカの兄ちゃん、ジェニファー達も走っていったんだ! 嫌な予感がするよ!」
「あいつらもか!? まあ、フォレストウルフのシルヴァなら何とかなるかもしれんが他はニワトリと猫だし危ないな……」
「ええー!? ジェニファー死んじゃう!?」
「安心しな。ウチの可愛い弟とペットはオレが助けるからな」
「それは俺の役目だ」
「なら二人でやればいいじゃねえか」
「急ごう、妻も心配だ」
ロイドがそう言うとギルバードがにやりと笑いザトゥが二人の肩を叩いて外へ。
追って兄弟も外へ出ると――
◆ ◇ ◆
――魔法で足が速くなった僕は一気に工房まで到着し外から様子を伺う。
「工房が暗い。灯りはつけて出たはずなのに」
【……ビンゴってところか。見な】
「おおう、便利」
ゼオラがするりと壁を抜け、中を覗き僕もそっと扉を開けてみると覆面の男達が椅子を運び出そうとしているところだった。
「貴族たちが集まってなにをしているのかと思ったらこれよ。こりゃあ売りものになるぜ」
「だけど足がつくんじゃ?」
「大丈夫。遠いところで売ればいいんだ」
「あんた達、そんなことをしてもすぐ捕まるよ。それは貴族の坊ちゃんが作ったものだ。見つかったらタダじゃすまないよ」
二人組が椅子を転がしているその時、ザトゥさんの奥さんが怒声を浴びせていた。
縛られているのか……助けないとね。
「うるせえババア! 死にたくなかったら黙ってろ!」
「ははは、兄貴は血を見るのが怖いから人は殺せないでしょ……いてぇ!?」
「余計なこと言うんじゃねえ!」
なるほど、だから棍棒を持っているんだな。
【大したことなさそうだけど油断は禁物か?】
「だね。あれで頭を殴られたら死んじゃうし、さっさと追い払おう」
【よし、任せろ】
ゼオラがあいつらのところへ飛んで行った瞬間、僕は扉をあけ放ち大声を上げる。
「お前達、そこまでだ! その椅子は僕が考えてここの人が一生懸命作ったもの。それをもっていかせるわけにはいかない!」
「な、なんだと、酒場で飲んで……ってガキじゃねえか」
「あ、兄貴、こいつ貴族の息子ですぜ」
「……なるほど。これは好都合だな。持ち運びの悪い椅子を持っていくより、生み出せるこいつを攫った方が金になりそうだ。いくぞ!」
「へい!」
おっと、そういうところは頭が回るんだな。
すぐに切り替えられるのは素晴らしいと思うけど、別のところに使って欲しいね!
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