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第四十三話 王様の耳は地獄耳というもの
しおりを挟む目的はゲーミングチェアだというフレデリック王。
キールソン侯爵から話を聞いたのならあれが良いものだと分かってもらえると思う。
けど、どうしてわざわざこんなところまで?
「あの、もしかしてゲーミングチェアが欲しいということでしたら予約を受け付けております。納品は順番になりますのでひと月ほどかかります。いくつ入用でしょうか?」
父さんが申し訳ないと頭を下げつつ、受注書とペンを取り出し構える。いつも持ってるのそれ!?
そう思っていると横に立っていた執事みたいな人が口を開く。
「ひと月だと? 陛下がこ・ん・な! 田舎町まで来たのは注文しにきたのではないに決まっているだろ! すぐに用意するのだ! 陛下の御前であるぞ! さあ! さあさあさあさあさあ! ぐあ!?」
憤慨しながら怒声を浴びせてくる男。しかし、その勢いは国王様の拳骨によって遮られた。
「うるさいぞザイード。話が出来ん」
「も、申し訳ありませんっ! しかし生意気ではありませんかぁぁぁ!?」
ザイードと呼ばれた男は再度頭に拳骨を受けて蹲るのを見て、僕はポツリと零す。
「国王様のお付きの人よりギル兄ちゃんの方が向いている気がするなあ……。落ち着いているし学校の成績も一番だもんね」
「ま、まあ、そうだけど……失礼だぞ。申し訳ありません陛下、私の弟が」
と、僕の素直な感想に顔を赤くして照れているギル兄ちゃんが頭を下げる。
すると国王様は気にしていない風な感じで話を続けた。
「よい。ザイードは私の弟の息子なのだが、どうにも落ち着きが無くてな」
「コネなんだ」
「コネだな」
「コネね」
「う、うるさいぞ……!!」
国王様の心中をお察しすると同時に、コネはずるいなと僕、ロイド兄ちゃん、母さんの三人がザイードさんを見て呟く。
「にゃーん♪」
「それはネコだよ!? アニー、あっちに行っててね」
「つまんなーい! いこ、タイガ」
「にゃーん……」
アニーがタイガを頭に乗せて可愛らしく登場したけど、なにかあってはまずいのでまた向こうへ行ってもらう。珍しくむくれているけど後でお菓子でもあげればいいだろう。
「ふむ、コネはともかく……成績は一番か、確かに学生の割に落ち着きがあるな。考えておこう」
「あ、はい! ありがとうございます!」
予期せずしてギル兄ちゃんが覚えられた。これでいい仕事に就けたらラッキーだ。
「さて、話が逸れた。というわけで私専用のゲーミングチェアを一つ作ってはくれまいか? 職人の手ではなく三男の子による魔法でな。それなら順番待ちをしなくていいだろう?」
「え、僕?」
「そういうことでしたか。ウルカ、どうだい?」
作るのは吝かではないけど……と考えていると、ゼオラが興味深げに国王様の目の前で口を開く。
【なるほど、それで自ら足を運んだのか。王自らが来れば断りにくいからな。多分、少し割高でも金を出せる態勢も整えているはずさ】
ああ、確かに王様に断りを入れるのは勇気が居るよな。打算的な理由ではあるけど、僕はこの王様が傲慢でこんなことをしたとは思えない部分を評価したい。
そもそも、なにかしら書状でも持って作らせた方がいい。なのに危険もあるのにわざわざここに来ているのだから。よほど欲しいと思うんだ。
でもこれは商売なので僕は父さんの問いに答える。
「ここまで来てくれたし僕は作ってもいいよ。だけど、材料は必要だし魔力は使うからいつもより高く無いとダメかな」
「お、おお」
五歳児らしい無邪気な言い方で現実を口にする僕。そりゃあありがたいけど順番飛ばしをした上に魔法で作るわけだからイレギュラー対応になるよね。
父さんがオロオロしていると国王様はフッと笑い口を開いた。
「フッ、なかなか言うではないか。いくつかな?」
「五歳!」
「ご……!? 凄いな……いや、いい倅を持ったな」
「ありがたいことに」
「なんで私を見るんですか陛下っ!?」
ザイードさんが不満げな声を上げるが、国王様が指を鳴らしたことでハッとし、馬車へと戻っていく。
「材料は用意してある。<クリエイト>のことはロドリオ殿から話を聞いていたキールソンから伝えられている。金もあるぞ」
「これだ」
そしてザイードさんが持って来た宝箱を開けると――
「え!? へ、陛下、この金属はアダマント鉱石では……? それに魔石も……というか金貨何枚持って来たんですか!?」
「マジかよ……うわあアレで剣作りてえ……」
「ロッドを作ったらいくらになるんだ……」
兄ちゃんズがごくりと喉を鳴らしアダマント鉱石に目を輝かせている中、僕はキレイな魔石に目を奪われていた。
「え!? 魔石! そんなのもあるの!」
【こりゃいいな、純度が高いやつだぞ。加工すりゃ色々遊べる】
「どうだ? 全てやるわけにはいかんがどれも高価なもの。ひとつ作ってはもらえないか?」
「ぜひやらせてください!」
「ふふ、ウルカちゃん無理はしないでね? 嫌なら断ってもいいんだから」
母さんが笑いながら僕に頬ずりしながらそういうと、またザイードが絡んでくる。
「陛下のお願いが聞けないというのか? ふん、そしたらお前達がどうなるか分かっているんだろうな?」
「そうねえ……。ステラちゃん、こっちへいらっしゃい」
「なあに? ウルカのママ」
「?」
なぜかステラを呼ぶ母さん。
そして彼女を抱っこしてから国王様へ告げる。
「この子の母親はリンダですわ陛下」
「ほう」
「で、この子はウルカちゃんをとても気に入っていますの。だからウルカちゃんになにかあったら悲しむでしょうね。好きみたいですし」
「そうだな」
「そしてウルカちゃんは私の大事な息子。どうなると思いますか?」
「ええい、もったいぶらずに言え!」
ザイードが声を荒げると母さんの目がギラリと光り、にたりと笑う。
「……私とリンダがこの国の敵に回ります」
「……!!」
母さんがそう告げた瞬間、国王様の頬に汗が流れ、漫画なら集中線と『どーん!』という効果音が入りそうなくらい目を見開いた。
「……」
「あ!? 痛!? 陛下、なぜ!?」
「なぜではないわ! ヴァンパイアロードのクラウディアとリンダを敵に回すということは国の死を意味するのだ! 一個師団で叶う相手ではないぞ」
「そ、そんなにですか!?」
「まあ、ママなら……」
「うん」
父さんとステラがうんうんと頷いていた。え、ヴァンパイアロードは分かるけどリンダさんはホントになんなの? 人間?
と、とりあえずザイードさんの首を絞めている国王様を止めないと……!!
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