俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

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第一章:厳しい現実編

第十三話 嫉妬とスキルと祝いと寿命

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 「どうしました? 私の顔をじっと見て? もしもーし!」

 「ハッ!?」

 目の前に手をかざされ、俺は我に返る。だが、ミルコットさんの頭上にある寿命:580年はそのままだった。俺は恐る恐る尋ねてみる。

 「……失礼を承知で聞くけど、ミルコットさんって長生きしたり……します?」

 するとキョトンとした顔をした後、ぷっと噴き出して俺に答えてくれた。

 「急にどうしたんですか? んーそうですね、長生きすると言えばそうですね、私はエルフですから」

 長い髪を耳からたくし上げて俺に耳を見せてきた。確かにエルフ耳……! でも、ラノベ等と違いそこまで長くはないので髪から少しはみ出るくらいのものだった。

 「でもよくわかりましたね? 偏見とかはないですけど、わざわざ言うほどのものでもないので黙っていたんですけど。あ、やっぱりこの魅力が……」

 「いや、全然違う」

 「全然違うってなんですか!? 魅力がないって言いたいんですか」

 「ああ!? そういうわけじゃないんだ! スキルでちょっとな? ミルコットさんは可愛いと思うよ」

 「ふえ!? きゅ、急に言うのは反則じゃないですかね!? ……こほん、まあいいです。とりあえず、フォレストボアを解体した金額になります!」

 「ありがとう、えーっと……」

 紙幣をもらい数えると……

 「お、おお? 一万二千セラもある……!? ま、間違いじゃないのか?」

 「いいえ、正当報酬ですよ? 流石に命がけで倒しにいくんですから当然です! 状態も良かったですしね、皮が二千セラ、肉が六千セラで、牙が三千セラに他の細かい素材が残りってところですね」

 なるほど、依頼料が安いと思ったけど素材を売って上乗せするのか。これなら頑張れば暮らしていけるかもしれないな。

 「一番安い宿の値段って分かるかな?」

 「ご飯が無くていいなら五日で六千セラってとこですね。ユニオンの簡易ベッドなら一日五百セラでお貸ししてます! まあ雑魚寝ですから落ち着けないデメリットがありますが……」

 ふむ、女性には不向きだろうけど俺みたいなヤツには丁度いいかもしれないな。アンリエッタの家でご飯を頂いたら考えてみるか。
 
 「サンキュー、とりあえずお金に余裕がなくなったら考えてみるよ。別の依頼も見ておきたいし」

 「そうですね、明日も養成所がありますので、是非いらしてください」

 「そうさせてもらうよ、それじゃまた!」

 俺は手を振ってユニオンを出ていく。さて、アンリエッタのお祝いとやらは昼なのか夜なのか分からないが一度行ってみるかな。時間がありそうならスキルのチェックをしたいし。

 外に出ると太陽の光で眩しくなり瞼が重くなる。さて、と、歩き出そうとしたところで俺は重大な事実に気づいた。

 「……色んな人の寿命が見える……!」

 行きかう人の頭の上に数字が出ており、とても見苦しい……! 例えばゲームのキャラの頭上に表示されているような感じと言えば分かるだろうか。

 「消せるのかな……『生命の終焉』」

 そっと呟いたら、フッと綺麗に数字が消えた。なるほど、オンオフが可能ということなら問題ないな! ……しかし、寿命を見て何の意味があるというのか……名前がかっこいいだけにガッカリ感もすごい。

 「あ、そうだTIPSを使ってみようかな」

 そもそもTIPS単体がスキルというのも意味が分からないが、使ってみて損はないだろう。何気に回復魔法はMPを使うのにスキルはMPを使わないんだよな。俺がTIPSを使おうとしたとき、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

 「あ! カケルー! 終わったみたいね!」

 広場の屋台が並ぶ一角にアンリエッタが敷物を広げてリンゴを売っていた。誰かと話しているようだが、呼ばれたのなら無視するわけにもいくまい。

 「おう、何だリンゴを売ってるのか? 言ってくれれば朝一緒に運んだのに」

 「朝はフォレストボアがいたから一回帰って持ってきたのよ。お店に卸す分もあったし。あ、そうそう、この子は私の幼馴染のビーンよ!」

 アンリエッタに言われた目の前にいた人がすっごい不機嫌そうな顔で振り向いた。ああ、間違いなくビーンだ。すると俺を見ながら口を開く。

 「ハジメマシテ……」

 「え? お前さっき……」

 「あー! あー!」

 俺が口を開こうとすると、慌てて俺の口を塞ぎ、小声で話しかけてきた。

 「(くっ……あんたに頼むのはしゃくだが、アンリには俺が養成所に通っている事は内緒にしてくれ……)」

 「(何か事情があるのか? まあいいけど)ハジメマシテ……」

 「(……助かる)」

 「ビーンは町で村を出て暮らしているから、こうしてリンゴを売りに来たときに話すの。さて、それじゃ家へ戻りましょうか」

 「ん? 話すなら待ってるからいいぞ? 腹は減ったけど、リンゴでもかじってるし」

 ビーンが輝く笑顔でうんうんと頷く。あー、アンリエッタに惚れているんだなこいつ。どこで見てたんだかわからんけど一緒にいる俺を妬んでの事だろう。しかしアンリエッタは無情にも……。

 「ううん、お母さんも待ってるし、露店も今日はそれほどお客さんが来ないからいいわ。それじゃビーン、またね!」

 「あ、ああ……」

 いそいそと片付け始めるアンリエッタをよそに、酷くがっかりした表情でビーンが立ち尽くす。不憫になったので俺は耳打ちしてやることにした。

 「(俺は別にアンリエッタの事が好きとかそういうことはないから安心しろ。アンリエッタに助けられたのは事実だけど、たまたま一緒にいるだけだよ)」

 「……ふん!」

 俺がそういうと、目を細め、口をへの字にして鼻をならし、すたすたと歩いて行った。が、いったん立ち止まって首だけ振り返って俺に言う。

 「フォレストボアに困っていたのを助けてくれたみたいだな……その点については感謝している」

 それだけ小さくつぶやくと、再び歩いて立ち去って行った。うーむ、不器用なやつなのだろうか?

 「お待たせ! ビーンは?」

 「ん? 帰ったみたいだぞ?」

 「そうなんだ、折角だから久しぶりに呼ぼうと思ったのに。ま、いいか今度で。行きましょう」

 哀れ、ビーン!


 ◆ ◇ ◆

 
 程なくして俺たちはアンリエッタの家へと到着する。

 「ただいまー」

 「おかえりなさい、それじゃ料理を温めなおしましょうか」

 中へ入ると、ニルアナさんがニコニコしながら席を立ち、入れ替わりに俺が座らせられる。親子二人で台所でわいわいやっているようだった。

 「はい、お昼だけど今日は奮発してみましたー」

 ドン! と、500gはありそうなステーキが俺の目の前に置かれた! じゅうじゅうとガーリックの匂いがすきっ腹に刺さる……! で、朝食べたコーンスープに白いパン、サラダにほのかにリンゴの匂いがする飲み物がずらりと並ぶ。さらに大きな……オムレツだろうか? 綺麗に焼きあがった楕円の卵が置かれた。

 「これ、ウチのリンゴで作ったお酒なの! ……お酒、大丈夫だった?」

 「ああ、好き嫌いはないから大丈夫だ。しかしすごいな……」

 するとニルアナさんが席につきながら話しかけてくる。

 「カケルさんがフォレストボアを倒してくれたから、またリンゴがたくさん採れるようになりますからね。ここ三か月は本当に荒らされて売り物にならないリンゴばかりで……」

 三か月も前から居たのか……!?

 「何でもっと早く依頼しなかったんだ?」

 「村長がいつか居なくなるからって渋っていたのよ……。結局、果樹園が滅茶苦茶になる一方だから昨日、依頼を出しに言ったってわけ。でも、その日に解決するとは思わなかったからほんっっとにうれしいのよ!」

 引きちぎらんばかりでステーキを切るアンリエッタは本当に嬉しそうだった。そう言ってもらえると俺も寿命を減らしたかいがあったというものだ。
 俺もオニオンソースと焦がしガーリックの味がうまいステーキにかぶり付いた。うん、うまい!

 「この酒もうまいな……」

 「でしょ? 町の酒場で作って売ってるのよ!」


 そんな他愛ない話で盛り上がりながら、食事も終わろうとしていたころ、アンリエッタがスープをすすりながら俺に聞いてくる。

 「そういえばフォレストボアを倒したんだからレベル上がったんじゃないの?」

 「おお、そうそう。レベルが4になったんだ! スキルも覚えたぞ」

 「いいじゃない、どんなスキルなの?」

 「聞いて驚け……その人の寿命を見ることができる……!」

 ミルコットさんとの会話を説明し、俺はドヤ顔で鼻を鳴らす。すると、アンリエッタとニルアナさんが俺の顔をじっと見て、すぐに噴き出した。

 「ぷ……あははは! 何それ! 人の寿命を見れるようになって、それでどうするのよ!」

 「ふ、ふふ……そうね、聞いたことがないスキルだわ……ふふ……」

 くそう! やっぱりそうなりますよね! 俺も他人が覚えたって言ったらたぶん冷やかす……しかしニルアナさんは笑いながら少し寂しそうに口を開く。

 「でも、寿命が分かればもしかしたら寂しい思いをしなくて済むのかも……死ぬときは……突然だから」

 「お母さん……」

 「……それは、旦那さんの?」

 「ええ、二年ほど前に村の男の人達で動物を狩りに行ったときに崖から落ちて……亡骸はとても拾えるところじゃないらしくて死に目にも会えなかったんです」

 そうだったのか……どおりで親父さんを見ないはずだ。そこでアンリエッタが明るい声で俺に話しかけてくる。

 「ほら、お祝いの席なんだからしんみりしちゃうから駄目よ! なら、カケル、私の寿命を見てよ! どうせ私は長生きするんでしょうけどね!」

 「もう、アンリったら……ちょっと怖いけど、見てもらおうかしら?」

 フフ、と笑うニルアナさん。ならば、と俺はスキルを発動させる。

 「『生命の終焉』」

 「なあにそれ? スキルの名前? ちょっとかっこ良すぎない、寿命を見るだけなのに。あれ? カケル、目が赤いわよ? 疲れてる?」

 「言うな、俺もそう思う……いや、疲れてはいないけど……お、出たぞ! どれど……れ……」

 「?」

 「わくわく……」

 確かにスキルは発動した。ミルコットさんや町の人と同じく、名前と寿命の数字も。

 だが、そこに現れたのは……。


 『アンリエッタ

 寿命残:36時間』

 『ニルアナ

 寿命残:36時間』


 二人の頭上に赤い文字が浮かんでいた。

 
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