俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

文字の大きさ
96 / 253
第四章:風の国 エリアランド王国編

第八十九話 本来の目的と現在と未来

しおりを挟む


 「ほら、二枚焼けたぞ」

 「わーい♪」

 俺はホットケーキを二枚差出し、それを頬張るティリア。

 え? ゴブリン? 察してくれ……八つ裂きなんて生ぬるいもんじゃねぇ……さらに恐ろしいものの片鱗を見たぜ……。

 という冗談は置いておき、ゴブリン達はティリアが魔法であっという間に蹴散らしたのだ。というか仮に俺達が戦っていてもゴブリン程度ならかなり余裕である。デブリンくらいの大物が来ない限りはそうそう負けはしない、と思う。

 休憩も終わり、馬達も元気を取り戻し、再び王都へ向けて馬車を走らせる。そういえば、とバウムさんが言っていた言葉を思い出しティリアに聞いてみる。

 「ティリアは魔王を引き継いでからどれくらい経つんだ? バウムさんの話だと完全に覚醒するまで時間がかかる、みたいなことを言っていたけど」

 「……実は、まだ一年経っていません」

 「そうなのか? その割には強いみたいだけど……」

 「もし完全に力が使えたらリファやルルカを連れて行きませんよ。特に腕力には自信がありません!」

 うん、俺を持ち上げるのに一苦労していたからそれは分かる。そこでリファが俺の作ったホットミルクを飲みながらティリアに話しかけていた。

 「とりあえずどれくらいで完全に力を使えるようになるんですか? 私はともかく、ルルカは無理を言ってついてきてもらっていますし、いずれ戻らないと行けないのでは?」

 「力は一年くらいで馴染むようになるので、もう少しですね。そうですね、フエーゴへ向かおうと思いましたが、ここでの一件でバウムさんが協力してくれるようであれば、一度ルルカを送りに帰りましょうか」

 ルルカは本意じゃなかったんだな。となると、フエーゴ行きは俺一人で行くことになるかと思っていた所でルルカが声をあげた。

 「ボクはこのままでも……あ、いや、今後はカケルさんに着いていきたいかも」

 「はあ? どういうつもりだ?」

 「ど、どういうことですか?」

 俺とティリアがハモりながらルルカに聞くと、あっけらかんと答えてくれた。それも良くない形で。

 「んー、カケルさんに興味がある、ってところかな? ほら、ボクは研究するから早く帰りたかったけど、カケルさんのいた世界の話とか聞きたいし? お嬢様の方も気になるけど、ボクはあくまでもリファに頼まれたからついてきたってのもあるしね。カケルさんはどう? ボクと一緒なのは」

 ……正直言うと、その申し出は受けたいと思う。頭がいいので一緒にいて困ることは無さそうだし、何より可愛い。いや、ティリアもリファも可愛いが、興味があると言われて嬉しくならない男はいまい。……だよね?

 「俺は構わないぞ? チェルを無事に送り届けたらまた一人だろうし」

 「え!? 連れて行ってくれないんですか!?」

 驚いたのはチェルだった。

 「え? だって、お母さんと一緒に暮らせたらそれの方がいいだろ?」

 「あ、はい、それはそうですけど……あの、私の気持ちとか……」

 何だかぶつぶついいながら目のハイライトが消えて行くチェル。どうしたというのか? それはともかく、俺はルルカに言う。

 「何にせよこの騒ぎが終わってからだな。とりあえず黒のローブ軍団をなんとかしないと旅に出るのもままならないし」

 「分かったよ。差し当たって何か異世界から来たっていう証拠になりそうな道具とかってない? ボクみたいなぁ~」

 猫なで声で俺に近づいてくると、ティリアが口を開いた。

 「……仕方ありません、私からルルカへ言えることはありませんし、好きにしてもらっていいですよ」

 「お嬢様、いいんですか?」

 リファがティリアに尋ねると、少し寂しそうな顔をして微笑んだ。

 「ええ、束縛するつもりはありませんから」

 「……」

 少しだけバツが悪そうな顔をしたルルカは押し黙り、俺に近づくのを止めてごろりと寝転がった。パンツが見えているがそれどころではないのかもしれない。
 聞けば、ルルカは俺を探す旅のお供として知識が必要だろうと、賢者であるルルカをリファが無理矢理頼み込んで来てもらったらしい。なので、世界を救う旅という部分に関しては後で知らされたことで、そのまま旅に出るつもりは無かったのだそうだ。

 結局、現状はティリアの独り相撲で流されるまま旅を続けているため、ルルカがさっきのように俺について行く、という発言が出るのも分からないではない。

 問題はそこまでして世界を救おうとするティリアだ。言っていることは正しいと思えるが、確証がないまま動くのは危険なんだよなあ……せめて『原因』が分かってから『こうしたいです!』なら俺も手伝わないことは無い。 だが、今は手探りの状態で何をしようとするのか明確でないのに着いて来て欲しいというのはやはり無理がある。

 何となく気まずい雰囲気の中、馬車はガラガラと進み、野営を経てさらに数時間。そしてようやく王都へと辿り着いた。


 「よっと……ここが?」

 中へ入るための荷物検査があるため、俺は御者台に移動してクリューゲルに話しかける。チェルは身元が割れると問題になりそうなので御者台の下にある空間に寝そべってもらい、やり過ごす作戦だ。

 「ああ、王都オルカンだ」

 空にはワイバーンが飛びかっており、レリクスのいた城と違い、町と隣接しているのが特徴的だな。町の入り口に差し掛かると、クリューゲルが言うように荷物検査をする兵士が俺達を止めた。

 「ヘイ! ストップだ! 町へ入るには身分と荷物を検査させてもらうぞ? 異種族がいたら税金をいただくZE? まあこのご時世、この国に異種族を連れているなんざ自殺行為だからそんなことはないと思うが」

 胡散臭い喋りをする兵士が、町に入る人へ何度も言ったであろうセリフを吐く。俺とクリューゲルはユニオンのカードを。ティリア達は貴族用の身分証明書を持っているらしく、それを出していた。

 「……腰抜けのクリューゲルさんか……こっちは冴えない冒険者っと……で、このチンチクリンは……こ、光翼の魔王様……!?」

 「ちんちくりんで申し訳ありませんね? ……通らせていただいてもよろしいかしら?」

 凄い威圧感を出し、兵士に言葉を投げかけるティリア。兵士はガタガタと震えながら直立で姿勢を正した。

 「は、はいいいいいい!? も、申し訳ありません! 命ばかりはお助けを!」

 「では参りましょう、お嬢様」

 リファが馬車を引き、ルルカも後を追う。やっぱり魔王ってのは恐ろしいものなんだな。何か威圧するスキルとかあるのかね? 後でティリアに聞いてみるか。ナルレアも知ってそうだけど。

 <ふあ……出番ですか?>

 「(違う。なんだ出番って? 今は移動中だから後で聞くよ)」

 <左様でしたか……それではおやすみなさい……>

 あ、寝るんだ。

 というか俺のスキルの一部のくせに随分と人間臭いよな、こいつ? そんなことを思いながら、俺達は無事町へ入ることが出来たのだった。



 ◆ ◇ ◆


 「おい、大丈夫か?」

 「ああ、心配ないZE……あの威圧感、あのちびっ子は本物の魔王だった。しかしクリューゲルがどうして魔王と一緒に?」

 「もしかしたらあれか、異種族狩りの関門である風斬の魔王対策で連れてきたのかもしれんな。手土産で隊長に復帰するつもりかも」

 「今の竜の騎士隊はなあ……それにクリューゲルさんから王を見限ったって話だ、むしろ止めようとして帰ってきたんじゃないか?」

 「……あるかもしれんな。念のため城へ伝達しよう、頼めるか?」

 「任せとけYO。折角IKUSAが始まろうってのに止められてたまるかっての」

 「できれば戦争など起きて欲しくは無いがな……」

 「ま、俺達は従うしかないさ。じゃないとクリューゲルみたいになっちまう」

 竜も身分も剥奪されちゃたまらないと身震いしながら、兵士たちは次に町へ入る商人の相手に戻るのだった。

 そして魔王が来訪してきたことを知った城内は騒然となる。
しおりを挟む
感想 586

あなたにおすすめの小説

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。 異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。 宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。 セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

処理中です...