俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

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第七章:常闇と魔王の真実編

第百六十八話 クロウ覚醒?

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 「戻られましたか!」

 ティリア達と共に城へ戻ると、犬耳の獣人が出迎えてくれた。この人はドルバッグさんといって、この国の大臣を務めている人だ。
 村へ戻る前にギルドラから奪った『減衰の秘宝』の力を解除し、ここまでの経緯を説明しておいたので、この対応と言う訳だ。城も徐々に活気が戻りつつあるようで、あちこち人が行きかっている。

 「ああ、出迎えは良かったのに」

 「そういう訳には参りません! この国をお助け下さった魔王様に失礼があってはベオグラート様に顔向けできません」

 「そうか、ありがとう。ベオグラートさんの行方は?」

 俺が聞くと、ドルバッグさんが顔を曇らせてから首を振る。

 「今のところは何も情報がありません。ですが、きっと生きておられると思います。諦めずに探しますよ。今の問題はクロウ様ではないでしょうか」

 ドルバッグの言う『問題』とは、クロウがイグニスタから継承した闇の魔王の力である。代々この国は闇の魔王の力を持った者が治めることになっているので、このままだとクロウがこの国を継がないといけないのだ。

 「だな……クロウは?」

 「国王の部屋へ居ります。私は気にならないのですが、やはりここを襲撃したのは人間なので、魔王の力を継いだクロウ様を快く思わない者も居りますので……」

 少し悲しげな顔をして、ドルバッグさんは職務へと戻って行った。

 「まさかクロウ君がねえ……アニスちゃんも一緒だから大丈夫だと思うけど、もしかしたら不安になっているかもしれないね。早く行ってあげよう?」

 ルルカに促され、俺達は国王の部屋を目指す。勝手知ったるとは言い難いが、戦闘をした場所くらいは覚えているさ!
 
 三階まで行き、重々しい扉の前に到着する。


 「ここか? 国王の部屋らしい扉じゃのう」

 「私の父上の部屋もこんな感じですから、国王と言うのは見栄も必要なのではないでしょうか?」

 「ほっほ、そうかもしれんのう。そういえばわしの父様も――お、話し声が……クロウとアニスじゃな」

 師匠とリファが笑いながら貴族っぽい話をしつつ扉に手をかける。すると中から二人が何やら相談していた。


 ふむ、聞き耳を立ててみよう――




 「クロウ君、魔王になっちゃったね」

 「うん……不可抗力とはいえ、こんなことになるなんて……でも、この力は自分から相手に譲渡することもできるから、元の魔王が見つかったら返そうと思うんだ」

 「そうなんだ。魔王様ってかっこいいからちょっと残念かも」

 「か、かっこいい? そ、そっかあ……」

 「王様! 王様!」

 アニスが声をあげてクロウを激励すると、だらしないクロウの声が聞こえてくる。

 「えへへ……王様……前の王様は『闇狼の魔王』だったみたいだね。僕は狼じゃないから……『闇神官の魔王』とかどうかな!?」

 「おー」

 アニスの無責任な『おー』と共に、パチパチと拍手が鳴る。

 「いいよね! カッコいいよね」

 「うんうん。カケルお兄ちゃんはどう思う?」

 「え”……!?」

 「何だ気付いていたのか。ノリノリだな、クロウ」

 「あ、ああ……!?」

 俺達が部屋へ入ると、アニスがチャーさんを抱えて座ったまま片手を上げてくる。クロウは頭を抱えて両膝から崩れ落ちた。

 「『神官』なのか『魔王』なのかはっきりせんから30点というところかのう」

 師匠がニヤリと笑いながら言うと、リファが同じくクスクスと苦笑しながら口を開く。

 「まあまあ、男の子は強い力に憧れると父上も言っていましたから。兄上がちょうどクロウくらいの時に『俺は最強になるんだ』とか言っていたみたいなので」

 それを聞いてクロウが四つん這いになり、項垂れる。そこへティリアが駆け寄り、肩に手を置いた。

 「だ、大丈夫ですよ。私と一緒に魔王街道を突っ走りましょう! その……『闇神官の魔王』さん……」

 ぷふー! とティリアがこらえていたものを吐きだすと、クロウが暴れ出した。

 「だあー! うるさいな!? ほっといてくれ! くそ……言うんじゃなかった……!」

 「よしよし」

 「……不憫だな、クロウ少年」

 ベッドへダイブしたクロウにアニスとチャーさんが慰めていた。

 「チャーさん、もういいのか?」

 「うむ。傷一つないし、気力もある。心配をかけたな」

 ぺこりと頭を下げる喋る猫チャコシルフィド。どさくさで死に目に会えなかっただろうから、お互い良かったんだと思う。

 「いや、ご主人の遺言、受け取れて良かったな」

 「チャーさん、良かったね」

 ルルカがアニスに抱っこされているチャーさんの背中を撫でてあげると喉を鳴らす。

 さて、クロウをからかうのはこれくらいにして――


 「レヴナント、どうする? ここで話してくれるのか?」

 さっきから一言も発さず、感情の無い顔で俺達を一歩引いてみていたレヴナント。俺は振り返って尋ねると、レヴナントは俺達を見渡しながら、少し笑みがある口を開いた。

 「……そうだね。でもその前に……!」

 「!」

 そういうとレヴナントは俺に飛び掛かってくる!

 「レヴナントさん!?」

 「何のつもり――だ……?」

 ちりんちりん

 ティリアが叫び、俺が身構える。だが、レヴナントは奥の壁に下がっていたベルを鳴らしただけだった。

 「話が長くなりそうだからね、お茶でも用意してもらおうよ。お願いね『闇神官の魔王』様♪」

 「うぐぐ……」

 レヴナントがウインクしながら、アウグゼストで変装をしていた時以外外さなかったマスクを、今の状態で外し始めた。
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