俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

文字の大きさ
196 / 253
第八章:エスペランサ動乱編

第百八十八話 真・ナルレアとおまけ

しおりを挟む
 
 コンコン


 「ヒッツェ、居る?」

 芙蓉(制服Ver)が、船の底に近い場所までみんなを案内し、とある部屋でノックをする。すると中から、気怠そうな声で返事があった。ちなみにクロウとフェアレイターは興味が無いと言ってここには来なかった。

 「その声は芙蓉さんかい? 居るよ、散らかってていいなら入っても構わない」

 「それじゃ遠慮なく」
 
 ガチャリと扉を開けると、そこはさながら実験室の様相をしていた。所々に酒瓶だか、ビーカーだか分からないものが散乱し、匂いもきつい。

 「くちゃい……」

 「吾輩、外にいるぞ……」

 アニスが珍しく、少し眉を曲げ、チャコシルフィドが早々に退散した。他の面々も顔を顰めていると、ヒッツェと呼ばれた男が机の上に腰掛けて呆れたように口を開いた。

 「だから言ったろう、散らかっていてもいいならってさ。で、正体を明かした頭が何の用だい?」

 「例の件よ。素体はできてるかしら?」

 それを聞いてヒッツェは口元を緩ませて手をパンと叩いた。

 「戻ってくる間に仕上げておいたよ! じゃあそこの彼は今?」

 「ええ、身体を頼んだナルレアです。それで、どこに?」

 ナルレア(カケル)が尋ねると、ルルカもずいっと前へ出る。

 「早く早く!」

 「うわ!? 何だい君は? まあいい、こっちの部屋だよ」

 ヒッツェが隣の部屋へ行き、その後に続くナルレアとルルカ。その後ろをメリーヌとウェスティリアが追う形になった。

 「わくわくしますね!」

 「しかし眉唾な話じゃがなあ……」

 最初の部屋とは違い、全員が余裕で入れるほどの空間があり、綺麗に片づけられていた。部屋の隅にあるベッドに、女性が寝かされているのが見え、ナルレアはそちらへ近づいて行く。

 「これが――」

 「そう、人工的に作った素体だよ。魔物なんかの材料で、それとなく人間に近い形にはなっているけど、基本的にはゴーレムだと思ってもらっていい」

 芙蓉が覗き込むと、すこしだけがっかりした感じで言う。

 「ゼラチン質なスライムで人工皮膚を作ったり、攻撃に耐えうるように皮膚の下を鉄と樹木で構成したり、ってところだけど、やっぱりごついわね。重いマネキンね」

 「仕方ないだろう。マネキンとやらは芙蓉さんの知識にしかないんだから、あとは自分の想像で補完するしかない。これでも美人に作ったと思うけどね。……小さいけど」

 なんせ初めてなものだから幼女サイズしかね、と肩を竦めて答えていると、ルルカがナルレアの素体を触りながらぶつぶつと呟いていた。

 「――ふーん……スライムをここまで薄くできるんだ。一回溶かしてから伸ばすとかかな……間接は歯車? 髪の毛は難しいけど、かつらを使えば……」

 「ふむふむ、君は研究者かな? どうだい、凄いだろ?」

 「ボクは賢者だよ。凄いというのはそうだね。ここまで人間っぽいのを作ったのなら凄いと思う! でもゴーレムだから武骨だねえ」

 「そうなんだよ……一応、樹木ベースで作っているから柔軟性はあるけど、火に弱いし動き硬いんだよ」

 難色を示す二人だが、ナルレアはにっこりと笑って素体を撫でていた。

 「これで十分ですよ。ありがとうございます! 後は私がうまいこと組み替えますから」

 「組み替える? まあいいわ。で、どうやってこっちに移るの?」

 「そうですね、そろそろカケル様も目覚めそうですし、早いとこやっちゃいましょうか!」

 ナルレアがそう言うとスッと素体に口づけをした。

 「ああ!?」

 ルルカの叫びも虚しく、ナルレアの”作業”が終わり、カケルの体がぐらりと揺れて倒れ込む。それを慌ててルルカとメリーヌが支えると、素体に変化が起きた!


 カタカタカタ……

 「震えてるな」

 「ナルレアさん、大丈夫でしょうか……」

 リファとウェスティリアの言葉に反応するように、身体の揺れが激しくなっていく。やがて――

 カッ!

 「うわわ!? 目、目がぁ!?」

 「眩しい!?」

 「ルルカ、こっちへ来るのじゃ!」

 「これは見逃せないわね!」

 ヒッツェが尻餅をつき、メリーヌが目を細めながらルルカを引っ張って行くのを尻目に、芙蓉はサングラスを装備して見入っていた。その内、光が消え、静かに素体が佇んでいる先程と変わらない状況に戻った。

 「失敗、か……?」

 「いいえ、これは……!」

 リファが残念そうに呟き、芙蓉はふるふると肩を震わせながら叫ぶ。すると、素体が上半身を起こしたではないか。

 <ふう……成功しました!>

 ニコリと笑って力こぶを作るナルレアに、ポカーンとする一行、。それも無理はない……なぜならば!

 「いやいやいや、おかしいでしょ!? さっきまで髪の毛が無かったのに、めっちゃさらさらな青い髪ロング! ごっつくて、ぷるんぷるんだった腕が、シルクかってくらい白くて艶があるし! ……あ、でも質感はスライムね。関節のつなぎ目も無いし、極めつけはなんで等身があがっておっぱいがでかくなってるのよ!!!」

 芙蓉が捲し立てるように叫び、相変わらずボーっとしていたルルカがハッと我に返り、参戦する。

 「そ、そうだよ! どう考えてもその結果にはならないよ!? カケルさんの力でもしかしたら何とかなったのかもしれないけど、それにしても……ちょっと……」

 また女の子が増える……と、小さく呟いた声は聞こえなかった。一方、目を瞑ってにこやかに、うんうん、と聞いていたナルレアがひととおり聞いた後、口を開いた。

 <なんででしょうね!>

 「こっちが聞いてるのよ!」

 スパン!

 <痛い……>

 「痛覚もあるのか……興味深い……」

 ヒッツェがナルレアの頬に手を触れようとしたところ、ナルレアがぴしゃりとその手を払っていた。

 <あ、男性のおさわりはカケル様以外許可していませんからあしからず>

 「造ったのは俺だけどね!?」

 わいわいと言い争う光景を、遠巻きに見ていたウェスティリア達が、顔を見合わせてため息を吐いた。

 「また厄介な人が増えましたね。いえ、戦力としてはありがたいのですが……」

 「だな……この先大丈夫だろうか。城に帰りたくないなあ……」

 「むう、わしより大きい。狙っておるのか……?」

 「メリーヌお姉ちゃん、狙ってるって何?」

 「うむ、アニスはまだ知らなくていいのじゃ」

 「?」

 メリーヌは遠い目でアニスの頭を撫でるのであった。

 

 ◆ ◇ ◆


 「ん……んあ……?」

 「目が覚めたか」

 「チャーさん? 俺は一体……って近いな」

 「にゃー」

 目が覚めると、目の前に……本当に目の前にチャーさんがいて、獣臭いと思い、とりあえず顔の前からどける。猫みたいな声を出すチャーさんをお腹に置いて、俺は体を起こした。

 「ここは俺の部屋か。そういや、芙蓉の格好を笑ってから記憶が無いな……」

 「うむ。その後大変だったのだぞ。とりあえずリファ姫がここまで運んできてくれたのだ。しきりに匂いを嗅いでいたが特に体に異常はなさそうだな」

 チャーさんから気絶してからなにがあったのかを教えてくれた。それと聞きたくない情報まで。どうやら、俺が気絶した後にナルレアが表に出て好き勝手やってくれたことが判明。

 ちなみに最初、チャーさんは外で待っていたらしいが、すぐにみんなも外に出て来たらしく、その中に見知らぬ人物……ナルレアがいたのだそうだ。


 「ナルレア……おいナルレア!」

 シーン……

 ナルレアに呼びかけるもまったく反応がない。ステータスを開けてみると、スキルは残っているので無くなったと言うことでは無さそう――

 <ごめんなさいご主人様!>

 そんなことを考えていると、突然頭にキンキン声が鳴り響いた!? なんだ!?

 「やかましっ!? 何だ、ナルレアか? それにしちゃ声が幼いが……」

 <はい! お姉ちゃ……ナルレアさんは、”素体”に移りました! これからはわたしアリゲーターを務めます!>

 「ナビゲーターな。お前はナルレアじゃないのか?」

 <んー、良く分からないですけど、能力の一部をこっちに残したとか言ってました! お姉……ナルレアさんは、だから少しレベルが下がっているです>

 「なるほどな。まさかマネキンだかゴーレムに移るとは……器用な真似をしたもんだ……それじゃ、これから頼むぞ? えーっと……」

 <わたしのことはミニレアと呼んでください!>

 「分かった。ミニレア」

 <えへへー! あ、誰か来ますよ>

 早速役に立ちたいのか、そんなことを言うミニレア。程なくしてコンコンと、部屋にノックが響く。

 「誰だ?」

 「私よ、そろそろ夕ご飯だけどどう?」

 「……お前にやられた傷は深い」

 声の主は芙蓉だった。俺が痛がるフリをすると、最初は激昂しつつもすぐにしゅんとなった。

 「あ、あれはカケルさんも! ……ご、ごめんなさい……」

 「はは、まあいいさ。俺も悪かったよ。それじゃ、夕食がてら、チャーさんから聞いた話をもう少し詳しく効かせてもらおうか――」

 俺は食堂へと向かった。
しおりを挟む
感想 586

あなたにおすすめの小説

エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸
ファンタジー
 普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。  海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。  その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。  もう一度もらった命。  啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。  前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。 ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています

前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る

がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。 その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。 爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。 爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。 『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』 人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。 『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』 諸事情により不定期更新になります。 完結まで頑張る!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

処理中です...