213 / 253
第八章:エスペランサ動乱編
第二百五話 混沌の中で
しおりを挟む「はあ……はあ……」
「いいかげん貴様も我等の一部となれ。苦しまずに済むぞ? あの影人という者も、確実に殺すことが出来る」
「あいつを殺すのは俺だ……お前達じゃない。それに、あいつを始末した後は世界を滅ぼすんだろ?」
――俺はルルカや師匠、リファが血に染まった後、意識の奥に囚われていた。体の主導権の取り合いと言うべきか、とにかくこの目の前の黒い何かとずっと悶着しているのだ。
どこぞの村で盗賊を半殺しにしていたようだが、俺が何とか止めた結果で、放置していたら村ごと消滅させていた可能性が高い。
そして、肉体が限界を越えてぶっ倒れたため、ようやく会話に至っている、そういうことなのだ。
……そりゃ飲まず食わずでスキルは使うわ、魔力は使うわで倒れるのは当たり前だったりする。俺が目の前の黒い何かを睨みつけていると、やれやれと言った感じで口(?)を開く。
「当然だ。我等集合体は世に恨みを持って消えた『人の魂』なのだ。もちろん原因になった人や災害などあるだろうが『世界』がなければそんな悲劇も無かったであろう? だから滅ぼすのだ」
理にかなっているようで、その実ただの自己解釈だ。集合体ということであれば、色んな魂が混じっているのだろうが、混ざりすぎたのか元からそうだったのか分からないが、雑な結論に達したものだと思う。
さて、こいつの目的は正直どうでもいいんだが、そんな意識の集合体さんがどうして俺の体の中に居るのか。それを聞かなければなるまい。
「……とりあえず月並みで悪いが、お前は何だ? どうして俺の体の中にいる?」
「我等を知らぬか? お前は我等を使っていたのに随分と薄情では無いか」
「使って……?」
俺が眉を顰めると、黒い何かは頷き続ける。
「我等は『生命の終焉』と呼ばれていたかな?」
そう言うと、黒い何かの後ろに無数の手がぶわっと現れた! やべ、気持ち悪い!?
「……お前はスキルだったってのか」
「そう、そうだな。その認識で正しい。人間も、動物も、世界も等しく我等が枯らすのだ」
マジか……流石の俺もこの事実は驚いた。
そういやアンリエッタを襲った冒険者崩れや、イグニスタが『手が』と叫んでいた気がする。使うと、こいつらが『連れて行こう』とする、そんな感じとみていいな。
それと手ということでふと俺も気付いたことがあった。
「この世界に来るとき、扉の向こうで俺を引きずってきた無数の手はお前達か」
「左様。あの女神が開いた扉は『冥界の門』。そこを通る際に見えたものが我等だな。迷わず現世に出れたのは女神の導きだろう」
スキルを与えるためか分からないが、こいつに俺が取りこまれるまで見越してやったのなら大したものだ。影人も協力させていたつもりが、実はただの起爆剤だったのだし。
気絶したまま捨てられていたほうが、魔王的な力も手に入らずマシだったかもしれない……まあ、その場合はいつか影人に殺される未来しかなかった訳だから複雑だ。
「おしゃべりがすぎたな。そろそろお前には消えてもらおう」
「そうはいくか! 『地獄の劫火』!」
武器が無いなら魔法だ! 俺は黒い何かに手を翳し、地獄の劫火を放とうとする! だが――
「!?」
「近づいて来ないのはいい判断だ。だが、いいのか?」
ずるり……黒い何かの体から、小さいナルレアが頭を覗かせてきた。あれはミニレアか!?
「まあ、ただの『スキル』だから、吹き飛ばせばいいだけの話だな。さ、撃ってみるといい」
「くっ……」
俺は手を下げ、魔法を撃つのを止める。確かにただのスキルだが、今まで一緒に旅をしてきたナルレアの分身であるこいつを消すことは……できない。
「(どうすればこいつを退けられる? 魔法は使える。なら、ステータスの入れ替えもできるだろう……だが、ミニレアを助けたとしてもこいつを黙らせないことには完全に体が取り戻せない……)」
「それでいい。我等の一部となれば楽になれる」
無数の手が俺に近づいてくる。あれに捕まったら二度と還って来れない。そんな気がする。考えがまとまらないまま後ずさりをしていると、黒い何かから生えているミニレアが意識を取り戻した。
<あれ……ここは……あ! カケル様! ひゃあぁぁ! わ、私、素っ裸です!?>
「気づいたか! そこから抜けられないか!」
<え! あ、はい! やってみます! んー! ダメです!>
諦めが早いな!?
くそ、どうする!?
「無駄だ。さあ、一つになるのだ……」
◆ ◇ ◆
「ここか!?」
「はい! ここから動いていません! どこかに居ますよ!」
カケルが救った村に、ティリア達は到着した。
慌ただしく入り口に駆けこむと、飛び降りるようにティリアとクロウ、そして芙蓉が馬車から出る。その様子をポカンと見ていた若い村人が思い出しかのように声を荒げながら走ってくる。
「この村に何しにきたー! 盗賊の仲間じゃあるまいな!」
「盗賊、ですか? いえ、私はウェスティリアと言います。この国に居を構える、光翼の魔王です」
「ま、魔王様……!? これは失礼しました。しかしこのような何も無い村にどうして?」
するとクロウが村人の前に立ち、口を開いた。
「この村にカケル、というやつが居るはずだけど知らないか? 僕はクロウ。デヴァイン教の神官だ」
「神官……その割には筋肉が……」
「そこは気にしなくていい! いるのかいないのか!」
「あ、ああ……探しているヤツか分からないけど、見知らぬ男ならリンデの家にいるぞ。この村を救ってくれた後にぶっ倒れちまってな」
若い村人はクロウの剣幕に押され、リンデの家を指差した。一行はリンデの家へと向かい、カケルとの遭遇を果たすことができた。
「こちらです……あの、この方は一体? 意識が朦朧としているというか、独り言を呟いていましたけど……」
「見つけたぞカケル!」
クロウが寝ているカケルに食って掛かるのを尻目に、芙蓉がリンデに説明を始める。
「この人はカケル。訳ありなんで詳しいことは言えなんだけど、確保してくれていて助かったわ。こちらで引き取らせてもらうわね。グランツさん、お願い」
芙蓉が後ろに控えていたグランツにお願いをし、グランツがクロウと共にカケルを持ち上げる。それを見てリンデが驚いて引き止める。
「あ、あなた達がこの人とどういう関係かは分かりませんが、気絶しているんですよ! 寝かせておいてください」
「うーん、ここに居ると何が起こるか分からないの。……それにあなた、魔王のフェロモンにやられているし」
「ふぇろ……? と、とにかくダメです! 安静です!」
「わ!?」
リンデに体当たりされてカケルを取り落とすグランツ。見事に床に叩きつけられ、カケルはベッドの角に頭をぶつけて鼻血を出した。
「おい、カケル! 起きろ! また女の子が毒牙にかかってるぞ!? 鼻血を出している場合じゃない!」
◆ ◇ ◆
グラグラ……
「うお……!? なんだ!?」
手が徐々に近づいてきたのを払いつつ逃げていると、突然足元が揺れた。すると、空間にでかい声が響いてくる。
「おい、カケル! 起きろ! また女の子が毒牙にかかってるぞ!? 鼻血を出している場合じゃない!」
この声……クロウか! 俺を追ってきてくれたんだな! 声が響くと、黒い何かが呻く。
「くっ。仲間か……『信頼』など、そんなものは無いというのに……! いけ、早くやつを掴め……!」
手がわらわらと俺を狙ってくる。そこにティリアの馬鹿でかい声が響き渡った。
「カケルさん起きてください! 美味しい料理を作ってください!」
「トレーネが大変なんです! お願いしますカケルさん!」
おお!? グランツもいるのか!
「ぐう……」
<カケル様! こいつ弱ってますよ!>
「マジか! よし、『速』フルチャージ!」
ドッ!
一気に駆け出し、黒い何かの、顔だと思われる部分を思いっきりぶん殴った!
「手を出せミニレア!」
<はいです!>
ミニレアの手を掴み引っ張ると、ずるっと黒い何かからミニレアが飛び出した。これで、アドバンテージは無くなった! 後はこいつを消せば――
<カケル様後ろ!>
「え? うわ……!?」
ミニレアが叫んだ時にはすでに遅く、俺の首に手が絡みついていた。
「くそ……放せ……!」
手を放そうともがく俺。だけど、あの黒いやつは苦しんでいる。まだ諦める訳にはいかない!
そう思っていた時、耳元で囁く声が、あった。
「もういい……もうやめようカケル? 私とここで、楽になりましょう……」
俺はその声を聞いて驚愕する。
そんな……まさか……
「その声、ね、姉ちゃん――」
<カケル様!?>
その瞬間、俺の意識は完全に途絶えた――
10
あなたにおすすめの小説
リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~
灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」
魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。
彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。
遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。
歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか?
己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。
そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。
そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。
例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。
過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る!
異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕!
――なろう・カクヨムでも連載中――
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜
橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます
網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。
異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。
宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。
セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。
チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~
黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」
女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。
この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。
『勇者道化師ベルキッド、追放される』
『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる