異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪

文字の大きさ
9 / 85
第一章:轢いたと思ったら異世界だった

その8 初仕事へ

しおりを挟む
 というわけで朝食を終えた俺はトラックへと戻っていた。
 明るい内に積み荷のチェックと車の状態を確認しておきたいからだ。

 しかし――

 「……なぜついてきたんだ?」
 「嫌ですよヒサトラさん。私達は運命共同体じゃないですか」
 「面白そうですもの!」

 ――アグリアスとサリアがにこにこ笑顔で後に続いていた。企業秘密ってわけじゃないが仕事があるだろうに。

 「サリアはメイドの仕事をしなくていいのか?」
 「はい。本日づけでヒサトラさんのメイドとなりましたので問題ありません」
 「ふーん、大変だな……って俺の!? どういうことだよ!?」
 「フフフ、これはわたくしからのプレゼントですわ。この世界にきて心細いと思いますし、一人付き人が居れば便利ですわよ」
 「お給金はアグリアス様から出ているのでご心配なく」
 「俺はいいけど、お世話されるほどやることは無いと思うぜ?」

 スカートをつまんでお辞儀をするサリアに肩を竦めながら返すと、トラックの荷台を開く操作をする。
 木にぶつからない位置であることを確認して動き出すウイングに二人が目を輝かせていると――

 「ぶるひーん……」
 「うお!?」

 寂し気に泣く馬をが顔を覗かせた。
 
 「あら! そういえばシタタカを乗せていましたわね」
 「そうだったな……よしよし、降ろしてやるから大人しくしてろよー」
 「ひひん!」

 馬は俺達に気づくと嬉しそうにいなないて大人しく待ってくれ、程なくして昇降機で下におろすと自由になった。
 俺の顔に首を擦りつけてきたあと、アグリアスの前に寄り添う。

 「後で厩舎へ連れて行くからその辺で休んでいなさいな」
 
 馬はその場に座り込んでうとうとし始めたので、こいつはこれでいいだろうとトラックへ目を向ける。
 
 「さて……」

 結構な件数があったから積み荷は相当ある。
 まだ一日しか経っていないし、冷蔵・冷凍機能が無いため腐りやすいものは無かったはずだ。
 食い物はあったとしてもお菓子とか乾物系だろう。

 「この箱、紙ですか? 凄く上等な紙を使っていますわね」
 「ダンボールはこの世界には無いのか、俺の世界じゃそれほどでもねえけど……あ、いや、ダンボールで家を作るようなやつもいるし上等といえばそうなのか?」

 とりあえず近くにあったダンボールをカッターで開けようとポケットから取り出したら今度はサリアが軽く拍手をしてきた。

 「なるほど、やはり戦士ですね。小さいながらも武器を隠し持っているとは」
 「いや、さすがにこれは無理だからな? っと、中はなんだ?」

 カッターで事件を起こすやつもいるが、ダンボール程しっくりはこない。
 さて、そんなことより出てきたものはというと――

 「ほう、コーヒーセットか、それに高級なやつだぞこれ」
 「高いやつ……!!」
 「目の色を変えるな! おう、力強っ!?」

 あんまり詳しくはないがNANAMEIというコーヒーメーカーでそこそこお高いくらいは知っている。
 ドリップコーヒーなのでお湯さえあればすぐ飲めるのはありがたい。

 「これは後で飲んでみようぜ。コーヒーって知ってる?」
 「こーひー? いえ、わたくしは存じ上げませんわ。お父様なら知っているかもしれませんけど」
 「朝食は紅茶だったし、知らないかもなあ。まあ男は結構好きだから親父さんにもご馳走するよ」
 「いいですわね!」

 他人の荷物なので気は引けるが、どうせ置いていても元の世界には戻れないとなれば無駄にするのも勿体ない。
 そこから二つほど開封し、漫画とフィギュアが出てきた。まあ、よくある積み荷である。

 「おーい、ヒサトラ君ー!」
 「あ、親父さん……じゃなかったトライドさん。どうしました?」
 「はっはっは、親父さんで構わんよ! 君の住む場所を探したから伝えに来たんだ」

 早っ!?
 
 食堂を出てからまだ二時間程度だぞ? そんな驚く俺にトライドさんは笑いながら続ける。

 「では案内するので、私もその「とらっく」とやらに乗せてはもらえないだろうか?」
 「え? そりゃ構いませんけど貴族の方が乗るにはちょっと汚れるんだけど……」
 「わたくしは乗りましたわよ」
 「あれは緊急事態だったからで……あ、サリア、さっさと乗り込むんじゃない。三人乗りだから俺とトライドさんとアグリアスが乗ったらもう無理だ」
 「……寝床があるじゃないですか」
 「違反になるだろ……」

 とは言ったものの、別に元の世界じゃないし大丈夫か?
 
 「オッケー、ならみんな乗り込んでくれ! トラックを動かすぞ!」
 「おお、こりゃ凄いな!」
 「ゴブリンもこれで体当たりすれば一撃ですわよ、頼もしいことこの上ないですわ!」
 「……Zzz」

 大興奮の親子に仕事をする気が無いメイドというメンツに苦笑しながら俺はトラックのアクセルを踏み込む。
 すると俺とトラックが『繋がった』感覚があった。

 「これが魔力を使うってことか?」
 「魔力を使っているのかね?」
 「えっと、この乗り物は俺の魔力で動く、らしいです」
 「魔道具の類みたいですわね、こんな大きなものは見たことありませんけど」
 「うむ。これは面白いぞ……」

 親父さんが目を輝かせて車内を見まわし『これはなにかね?』と質問攻めに合いながら町中を進む。
 それと住んでいる人に話をしていたのか、トラックが通る道は大通りなのにみんな端に寄ってくれており、スムーズに進む。

 そして到着したのは――

 「こ、これは……」
 「どうかね? 『とらっく』を置くスペースがあるだろう? それにやはり家はあった方がいい。こちらもプレゼントしよう」
 「いいですね、流石は旦那様」
 「はっはっは、そうだろうそうだろう!」

 ――庭付き一戸建て、という向こうの世界なら夢のような物件だった。

 ドヤ顔のトライドさんに満足気なアグリアスに褒めちぎるサリアという絵面に呆然としていたが、すぐにハッとなって口を開く俺。

 「いやいや、さすがに一軒家はもらえませんよ!?」
 「なあに娘を助けてくれたんだ、これくらいは安いよ。中古だし」
 「ええー……」
 「頂いておきましょう、ヒサトラさん。家があると仕事をするにも便利ですよ?」
 「うーん……」

 俺が悩んでいると、トライドさんが『では、仕事の話をしよう』と話題を切り替えてきた。

 「仕事、ですか?」
 「うむ。君のこのとらっくで娘を本来向かうはずだった隣の領へ送ってくれないだろうか? この家が報酬としてと言えば納得してくれるかな?」
 「なるほど……」

 親父さんはどうしても俺に譲りたいらしい。
 仕事として請け負うならまあ、悪い話じゃないか?
しおりを挟む
感想 167

あなたにおすすめの小説

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

処理中です...