異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪

文字の大きさ
11 / 85
第一章:轢いたと思ったら異世界だった

その10 出発侵攻!

しおりを挟む

 「えーっと……」
 「よーし、早速行こうではないか!!」
 「わくわく!」

 外に出てみると親父さんが余所行きの服と荷物を持ち、使用人と思われる人が荷車を引き、挨拶で渡すであろう品物を持ってきていた。

 アグリアスも白いブラウスに青いスカートにつばの広い帽子とアクセサリー数点を身に着け、こちらも着飾っている。彼女は分かるけど……

 「あの、トライドさんも行くんですか?」
 「ああ! 『とらっく』に乗ってみたいからな。さっき乗ったがもっとスピードが出るんだろう? 馬車よりも速いとアグリアスから聞いた。ぜひ一緒に……!!」
 「家は? 奥さん、まだ寝ているんでしょう?」
 「問題ない」

 そう言って荷台の布を剥がすと――

 「ぐー」

 「奥様ー!?」
 「なにぃ!?」
 
 珍しくサリアが驚いた声を上げ、俺は荷台の女性と同じくどっちにも驚いた。
 まだ寝ているアグリアスの母親は若く見え、姉と言われても納得するほどの見た目である。

 「屋敷に誰も居なくて大丈夫、なんですかね……」
 「舞踏会などは一家で出るから心配せずとも問題ないぞ?」

 使用人を残しているしとのこと。
 金庫とかもあるので、よほどのことが無い限り金が奪われたりということもないそうだ。

 「ま、まあ、そこまで言うなら俺は構いませんよ。えっと、それじゃ荷物は後ろで、奥さんは寝台……はサリアが乗るか? 仕方ない上を使うか」
 「上?」

 俺は先に乗り込むと、サンルーフ部分の一部を取り外して覗き込む。
 完全に寝に入ろうと思ったらこの改造したベッドみたいにしている部分で寝るのだが、いつも使っている訳じゃないから汚れてるんだよな……元々、俺は今回押し付けられたトラックなので自分の毛布と枕だけ持ってきていたんだよな。

 とはいえ――

 「ふうん、扇風機があるな。カークリーナーも置いてったのか? シガーソケットに差して使えるかな」

 臭かったりはしないが前に乗っていたヤツが色々と置いていたらしく、生活感溢れるアイテムが転がっていた。
 カーバッテリーに寝袋、ミニ冷蔵庫なんて置くなよ……と思ったが、冷蔵庫はちょっと嬉しいかもしれない。

 「どうです?」
 「おう!? 心臓に悪いだろ!? うーん、ここに寝かせようと思ったんだけど持ち上げるのが大変だな……」
 「ではここに寝かせましょう。私が一緒にここに座るので」
 「スペースは……まあ、あるか……トライドさん、ここに乗せましょう」
 「おお!」

 そこからアグリアスと二人で乗せたのだが、この騒ぎでも起きないあたりこの人の寝坊助は相当なもののようだ。
 荷物もコンテナに載せ、全員が乗り込んだところでエンジンをスタートさせる。

 「うむ、この音は心をくすぐるな」

 何故かエンジン音にうっとりするトライドさん。
 でもヤンキー時代、バイクの音をカッコいいと思っていた俺はなんとなくわかる。

 「よし、それじゃ異世界の初仕事と行きますかね!」
 「おー」

 ハンドルを切り、大通りをもう一度ゆっくり進む。
 そうしていると、子供が走りながら手を振っているのが見えた。

 「おう、危ないからあんまり近づくなよー」
 「うん! かっけえなこれ!! 兄ちゃんのか!」
 「そうだぞ」
 「俺も乗せてくれよー」
 「帰ったら考えてやるよ」

 門に辿り着くまで子供はついてきて目を輝かせていた。
 暇なときにでも乗せてやるかな?

 「少し出てくる!」
 「ええ!? トライド様!?」

 そら驚くわな……
 それでも出してくれと合図をするトライドさんに苦笑しつつ、俺はアクセルを踏み込み速度を上げていく。

 「おお……おおおお!」
 「窓、少し開けときますね」
 「ま、魔法かねこれは!」
 「ヒサトラさんが開けるんですのよ」

 手元のスイッチで窓を開けると感動に震えていた。ここまで喜んでくれると俺も嬉しいので、アクセルをもう少しだけ踏む。
 なんせ周りにはなにもない草原だ、森に入るまではそれでもいいだろう。

 「凄いですね、来た時よりも速いんじゃありませんか?」
 「ああ、燃料のことが気になっていたからな。だけど俺の魔力とやらで動くようになったらしいし、どれくらいもつのか試したいってのもある」

 燃料メータはフルを指していて、特にエンジンや駆動に問題はない。
 真後ろから覗き込んでくるサリアに答えながら俺はナビを起動させる。電子音と共に後部のカメラが起動し、ついでに時間も表示された。

 「これはなんですの?」
 「後ろにコンテナがあって見えないだろ? これで後ろが見えるって寸法さ。まあ、ここじゃ他に車が走っていないからあんま意味ないけど」

 時計は必要なんだよな。
 どれくらい走行したら魔力が減るのか、とか調べておいて損はないはずだ。

 「ううむ……速い……これは品物を届けるのに最適……いや、兵士とか運べば戦争も実は……是非手元に……しかしアグリアスを嫁にはやれん……」
 「トライドさん?」
 「ひぅ!? な、なにかね?」
 「いや、深刻な顔をしていましたけど、酔いました?」
 「酔う? 酒は飲んどらんぞ?」
 「あー、そういうのじゃなくてですね――」

 俺が説明をしようとしたところで、背後から声が聞こえてきた。

 「あー、良く寝たわぁ。メイ、顔洗うから手伝ってぇ……」
 「おはようございます奥様」
 「あれぇ? 今日はサリアだっけ……? ふあ、誰でもいいから洗面所に連れて行ってぇ」
 「残念ながら、それは叶いません。こちらをどうぞ」
 「なにー? えっ!? アグリアス? それにあなたぁ? ……ここは?」

 呑気な声でそういう奥さん。
 旦那と娘に気づいた後、周囲を見渡した後、呟く。

 「私、いつの間にお出かけしたのかしらぁ?」
 
 どうやら寝坊助は性格によるものらしいな……にゅっと寝台から顔を出して俺と目が合う。

 「あら、どなたぁ?」
 「初めまして、俺はヒノ ヒサトラと言います。今は皆さんを隣の領地までお連れしているところですよ」
 「ああ、昨日アグリアスちゃんが言っていた助けてくれた人! ありがとうざいました、私はエレノーラですよぅ」
 「いえいえ、とりあえずそこで申し訳ないんですが、到着までもう少しお待ちいただければ」
 「わかったわぁ。……あ」
 「ん?」

 了承してくれたがすぐに奥さんは小さく声を漏らす。

 「どうしました?」
 「……おトイレに行きたくなっちゃった……」

 声だけじゃなく違うものも漏れそうだと言い出したので、俺はとりあえず一旦トラックを止めることにした――
しおりを挟む
感想 167

あなたにおすすめの小説

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

処理中です...