異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪

文字の大きさ
15 / 85
第一章:轢いたと思ったら異世界だった

その14 仕事と休憩

しおりを挟む
 「おーい、中へ入ってくれ!」
 「わかりましたー」

 しばらくして戻ってきたトライドさんの先導で町へ入ることができるようなった。
 俺はトラックをゆっくり動かして門を抜けると、トライドさんの横に緑色の髪と鼻髭を生やしたおっさんが……いや、言い方が良くないな、緑色の友人が立っていた。

 ……緑色の総統を思わせるからダメだな。多分ここの領主さんだろうし、お偉いさんだ。
 ま、まあ、トライドさんの友人ということで……。

 楽しそうに話している二人を追って道を進んでいくと、流石にここでも興味を引かれた人達がなんだなんだと通りにでてくる。

 「危ないから道を開けてさいー」

 窓から注意をしつつしばらく進むとトライドさんと同じくらいの屋敷に到着。
 やはりこの人が今日会う予定の人らしい。

 「こっちに停めてくれるかい?」

 トライドさんの友人がいつの間にか手にしたパイプをふかしながら手で案内してくれ、入ってすぐ右の広い場所へ留めることができた。

 「さて、それじゃ俺達はここで待機かな?」
 「いえ、呼んでるみたいですよ、一旦降ります?」
 「おや、なんだろ」

 サリアと共にトラックを降りると、トライドさんの友人が笑顔で握手を求めてきた。

 「やあ、初めまして。私はジャン=サーディス、この地の領主でトライドの友人だ」
 「日野 玖虎です、初めまして」

 握手をして応じると一服、紫煙をくゆらせてから笑顔で続ける。

 「ロティリア一家を無事に届けてくれて感謝する。特にアグリアスはウチのベリアスの婚約者。当初の予定日に来なかったので心配したが、良かったよ。おっと、立ち話もなんだし中へ入ろうか」
 「そうしよう、皆が待っておるしな」
 「あ、俺はここで待ってますから、帰る時になったら声をかけてください」
 「なに? いや、君も客人としているが……」

 その気遣いは嬉しいが、今回はアグリアスと婚約者の顔合わせに来たんだし俺が呼ばれた訳じゃないことをやんわり伝えて納得してもらう。
 お世辞にもキレイとは言えない作業着だし、ゲストの俺が入るのも違うと思ったからだ。

 「サリアは行ってもいいんだぞ?」
 「いえ、わたしはヒサトラさんのメイドなので大丈夫です」

 なにが大丈夫なのか分からないが残念そうな顔で振り返るジャンさんとトライドさんが屋敷に入るのを見送ってから俺は再び運転席へ。

 「どうするんです? 町にお散歩とかどうでしょう。お金もありますし」
 「あるけど、その前に確認したいことがあるんだ」
 「?」

 不思議そうな顔で首を傾げるサリアは可愛い。それはともかく俺はカーナビのスイッチを入れて声をかける。

 「おい、ルアン聞こえるか? ルアン」
 「ああ、女神さまとお話をするんですね」
 「魔力についてちょっとな。おーい、もしもーし」

 しかし何度か声をかけたり揺すってみるなどしてみたが返事はなく、ナビの画面が表示されたままだった。

 「くそ、出ねえ!」
 「お腹痛いんですかね」
 「その出ねえじゃないからな? まあ急ぎじゃないからいいけど。……というか、このナビいつの間にかこの世界とリンクしてる……?」
 「地図みたいですけこれが『なび』というやつなんですね」
 「だな。ここが屋敷で、敷地がこれ全部だ。屋敷をすぐ出たら店があるな? このアイコンは店だと思うが、パンかな?」
 「かもしれませんね。行ってみます?」

 ナビが本当にそうなったか確認をするため一軒だけならという条件で一番近いパン屋らしき場所へ行ってみようということになった。
 トライドさん達はしばらく出てこないだろう。
 下手すれば一泊するだろうという算段があり、それと町を歩くのも面白そうだからな。
 
 「っと、こっちの世界のお金を入れて……こいつも持っておくか」
 「長い……棒?」
 「ま、大したもんじゃないけど一応な」

 鍵をかけてさて出発……と思った瞬間、どこからともなく声が聞こえてきた。

 「おおお? ウチの敷地になんか変なのがあんぞ……?」
 
 多分トラックのことだろうと声のする方、正面に回ると緑色の髪をツーブロックにした兄ちゃんが居た。
 頭髪の色からしてジャンさんの息子さんだろう、俺達に気が付くと明るい調子で声をかけてくる。

 「よお、これアンタのかい? イカすなこの箱! こりゃなんなんだ? 新しい馬車か?」
 「初めまして、お邪魔してます」
 「おお、堅苦しいのはやめてくれ、オレはそういうの苦手なんだ。ボルボってんだがアンタは?」

 うん、見た目も派手だしヤンキーっぽい喋り方だ。性格は悪く無さそうだが、怒ると手が付けられないとかありそうな感じもする。

 「なら砕けた話をさせてもらおうかな。俺は日野 玖虎、ヒサトラって呼んでくれ」
 「おう! で、こいつはなんだ?」
 「これは『とらっく』と言って異世界の乗り物ですね。わたしの主人、ヒサトラさんだけが操れるアーティファクトです!」
 「な、なんだって……!? こんな可愛い姉ちゃんがメイド……!?」

 驚くのそっちかよ。
 まあ、サリアは確かに可愛い顔立ちをしているから俺みたいなむさくるしい男のメイドと言われたら貴族の坊ちゃんは驚くか?

 「んで、異世界の乗り物ってことはアンタ、異世界人なのか」
 「そうなるな。今日はトライドさん一家を送って来たんだが、暇だし町に出ようと思ってんだ」
 「へえ、折角だしオレが案内すっぜ! 異世界人とか自慢できそうだし」
 「お、なら頼めるか? 近くにパン屋があるはずなんだが」
 「おお、あるある! 行こうぜ!」

 そう言ってボルボが軽い足取りで門へ歩くのを見て俺達もそれについていく……が、サリアが口を尖らせていることに気づいて声をかけた。

 「どうした?」
 「なんでもありません! 行きますよ!」
 「おっとっと……」

 なんか不機嫌になったサリアが俺の腕を掴んで引っ張って歩き出す。
 なんだろうなと思いつつ、俺はボルボの後を追うことにした。 
しおりを挟む
感想 167

あなたにおすすめの小説

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

処理中です...