異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪

文字の大きさ
25 / 85
第二章:異世界を駆ける

その24 護衛は必要

しおりを挟む
 結婚式は無事に二次会まで終え、片づけは明日から始めるとしてお開きとなった。
 俺とサリアは運転席に移動して就寝準備を行い、式場のかた付けと一緒にコンテナを掃除する予定だ。
 ちなみに酔っ払いの墓場と化してしまい、明日が憂鬱になる。

 「私が上でいいんですか?」
 「まあ、いつも通りだろ。おやすみ」
 「はい、おやすみなさい!」

 サリアが天井の蓋をとじて姿を消したので、俺もカーテンを閉めてから寝転がる。
 目を閉じると意識が飛びそうになり、昼寝をしたにも関わらず眠気があるということは意外と緊張して疲れているようだ。

 とりあえず国王様との話は元々俺が頼んでいたことなので話が早くなったとほくそ笑む。
 ただ、ロティリア領とサーディス領の運送業がストップしてしまうので、アテにしていた人たちには申し訳なく思う。王都に越せば拠点が変わるので、引き受けるのが難しくなるからだ。

 一応、王都までは150kmの距離なので飛ばせば数時間で行くことはできるけどな。

 それでも生活環境は一変するだろうし、慣れないことも出てきそうだ。
 ……サリアは、ついてくるかな? 流石に自領地でなくなったらトライドさんも許さないかもしれないし、そうなったら一人で頑張るしかない。

 どちらにせよ話があるまで待ちだな……そう考えながら意識を手放した。


 ◆ ◇ ◆


 そして翌日。
 
 いい天気になったものの、コンテナはモザイクがかかるレベルで荒れていた。これをサリアにやらせるのは酷だと思ったが、メイドはこういう仕事はお手のものらしい。手際のいい彼女を横目に、車載していたデッキブラシと洗剤で掃除をしていると、式場のスタッフが話しかけてくる。

 「大変ですねえお互い」 
 「まあ、お金はもらってますし仕事ですから」
 「はは、あんなきれいな奥さんと一緒ならやる気も出るでしょう、羨ましい限りですよ」
 「え、いや違――」
 
 と、訂正する間もなくスタッフさんはその場を離れ、俺はデッキブラシ片手に固まった。むう、そう言う風に見えるのかねえ……

 「ヒサトラさーん、こっちはこれでいいですかね?」
 「おう!? ……あ、ああ、いいんじゃないか? 後はそっちから水をバケツで流してくれ。俺がブラシで外に押し出す」
 「はーい!」

 急に話しかけられてびっくりした……。結婚式があってさっきみたいな話をされたら意識しちまうだろうが……。
 赤くなった顔を背けて流れてきた水を外に追いやる。
 ちなみにバケツは魔法石とやらが入っていて、魔力を込めると空気中の水分を集めて水を生み出してくれる便利アイテムなのだ。
 俺が使うとほぼ無限に水が出るのでこれがチートというやつかなどと誰にも理解されない呟きをしていたりするのは内緒だ。
 
 「ふう、こんなもんかな。後は乾かしてから閉じればいい」
 「ですね! そろそろお昼ですし、なにか食べに行きませんか?」
 「お、いいな。散歩がてら店を探すか」

 タオルで汗を拭いてからトラックの鍵を閉めていると、正面入り口から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

 「おーい、ヒサトラ君!」
 「あ、国王陛下」
 「ごきげん麗しゅうございます」
 「はっはっは、そう堅くなくていいぞ。私もお忍びで来ているからな」
 「お忍び……」

 入って来た方を向くと、建物や植栽の陰という陰に騎士の姿が見えるのだが……。

 「む……!」
 「どうした、敵か!」
 「……いや、ねずみだった」
 「問題ないな。引き続き警戒を」
 「了解」

 お忍びに対してツッコミを入れたかったが、俺の望む回答は得られないだろう。なので、国王様に声をかけることにした。

 「どうしました? お話は屋敷でやると思っていましたが……」
 「その話だよ。トライド達から話は聞いているから、後は私と君の問題だけだ。どこかへ行くのか?」
 「ええ、お昼ご飯へいこうかと」

 サリアが笑顔で答えると、国王様はなるほどと頷いてから入り口を親指でさしてウインクする。

 「なら飯を食いながら話をしようじゃないか。いいだろう?」
 「国王様が大丈夫なら」
 「決まりだな。それと私はお忍びだ、国王様はやめてくれ。ソリッドでいい」
 「いやいや……ソリッド様、でいきましょうか」
 「まあいいか。ではいこう!」

 俺達が歩き出すと、大勢の騎士達も動き出す。
 よく見たらあちこちにいっぱいいるぞ……。

 そんな調子で違和感を感じつつもついていき、やがて目当てであろう店へと到着。

 「いらっしゃいま……ひっ!?」
 「奥の方は空いているかね?」
 「ど、どうぞ……ご案内します」

 ……ウェイトレスが引き吊った顔をしたのはソリッド様が来たから……ではなく、俺の後ろにいる大量の屈強な騎士達のせいだろう。

 「ユニコーン隊は西へ。ペガサス隊は東だ」
 「ハッ!」

 「将軍、店の裏で残飯を取り合って喧嘩をしている猫を発見しました」
 「餌をやって懐柔しろ。騒がれるのは困る」
 「すぐ対応します」

 「野次馬は如何いたしましょう?」
 「この店から離れるように対応するんだ。抵抗するような拷問しろ」
 「承知しました」

 止めてやれ。
 みんなお前等を野次馬してるんだって気づけ……!!

 「おススメを三つ頼むよ」
 「かしこまり……ました……」
 「ソリッド様はこういうお店で大丈夫なんですか?」
 「たまにはいいのだよ。城で食べるものは素材も腕もいいが、飽きてしまうからな。では、早速だが運送についての話をしようか」
 「はい」

 俺は襟を正してソリッド様の言葉を待つ――
しおりを挟む
感想 167

あなたにおすすめの小説

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

処理中です...