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第三章:最強種と
その45 理由:でかいだけで役に立ちそうにない
しおりを挟む黒い犬かと思いきやベヒーモスの子だった子犬。
その親が獣魔契約をしないかと問いかけてきたのだが、その辺はみな、詳しくないようで当人に聞くことに。
一応、俺はトラックに乗ったままにしてコンテナに載った騎士達は念のため取り囲んでくれている。
「「「おえええええ……!!」」」
汚物をまき散らしながら。
コンテナが汚れるのも困るが、それは俺のせいなので構わなかったのに満身創痍でベヒーモスの前へ躍り出たのは騎士の鑑かもしれない。
さて、取り囲むのは失礼かとも思ったがそれほど気にしていないようでベヒーモスは口を開いた。
<それほど難しくはない。我が人間のお前と不本意ながら主従関係となるのだ>
「不本意、ねえ。ならお前が上だってか?」
<いや、他の魔物ならともかく我とお前は対等な存在で……いわばパートナーとして一緒に生きていく形になる。メリットは我という強者が傍にいること。デメリットは食事は賄ってもらうことくらいだろうか。息子ともども世話になる>
「いや、いいや。お前達、山へ帰ろう?」
<きゅーん……!?>
親父ベヒーモスに引き渡そうとしたが、コヒーモスが俺の腕にしがみ付いて離れようとしない。
困ったなと思いながら目を丸くしている父親に話しかける。
「いや、実際お前みたいなでかいのが王都に行かれても困るし、食費はやばそうだ。俺は冒険者でもないから強さはそれほど必要ねえしなあ。メリットが無さ過ぎんだよ」
<ぬう……まさか即拒否されるとは……>
<わんわん!>
<すまぬ……父は無力だ>
息子に吠えられてシュンとなる親父はちと情けない。まあ、子供に甘いのはどの親でも同じかと少しだけほっこりしてしまう。
だが、ベヒーモス達にはここでお帰りいただかなければならない。
「ほら、諦めて帰れって」
<きゅーん!>
「わ、凄い力。懐かれちゃいましたね」
「うーん、困ったな……」
サリアがコヒーモスの背中を撫でながら困った顔で笑っていると、ソリッド様が助手席から声をあげる。なにか考えていたようだが……?
「ベヒーモス殿、質問だが例えば私が契約をするというのは難しいか?」
「ソリッド様!?」
いきなりの宣言に驚くが城の防衛なんかには役に立つかと思い至る。強力な個体で、食事も城なら用意できると考えるなら安いかもしれない。だが、ベヒーモスは首を振って答えた。
<それは無理だ。息子が懐いているのはそっちの男と女で、我を倒したのはその男だからだ>
「むう、それは残念だ……」
「まあ、仕方ないですよ。ほら、とりあえず息子を連れて行ってくれ」
<わん! わんわん……!>
どうしても離れたくないのか、いやいやと頭を振るコヒーモスに口をへの字にする俺。ベヒーモスも困った顔で俺を見るが、しっかりしろよと思う。するとサリアが口を開く。
「お父さんは他にできることは無いんですか? 私達はこのトラックという乗り物でお荷物をあちこちの町へ運ぶお仕事を始めるんです。それとヒサトラさんのお母さんを治療するための薬を探しています。情報とかあればもしかしたらヒサトラさんが動くかもしれませんよ?」
<ふむ……>
強さ以外ではやはり難しいのだろう、目をつぶって考え込んでいる。
今まで町から町へ運んでいても魔物の脅威というものには会わなかったからさっきの通りなんだが――
<そうだな、やはり我は戦いでしかない。そのとらっくとやらの屋根に乗って守護するのが手一杯>
「なら――」
<まあ聞け。だが薬の方はもしかしたらなんとかなるかもしれん>
「マジか!? なんか思い当たることがあんのか!」
嘘じゃねえだろうなと窓から顔を乗り出すと、ベヒーモスはなるほどと思うことを口にする。
それは魔物と喋ることができるため、戦闘回避をしつつ、魔物から情報を集めることができると言うのだ。
俺達は冒険者じゃないし、ベヒーモスなら言うことを聞くだろうということらしい。
「人間以外からも情報が集まれば単純に数が増えるし、アリかもしれないな」
<うむ。どうだろう、息子が飽きれば契約を破棄してくれても構わない。少し家に置いてもらえないだろうか?>
「ありがたいが……」
「ウチは構わんぞ。町にはおふれを出しておくし、もう少し庭を拡張してもいい。後は本当に町に被害を出さないと約束してくれれば、だな」
珍しく王っぽい言葉を出してベヒーモスに目を向けるソリッド様。そういや怯みもしていないし、覚悟はいつもしてるんだろうな。
<無論だ。ヒサトラが我を制止するよう命令すればいい>
「そこまでするのか息子の為に……」
<息子だからこそだ。……母親は産んだ時に死んでしまってな、なんとか我一人で育てなければならん。小さい間くらいは我儘を聞いてやりたいのだ>
「ああ……」
そういうことか……プライドよりも息子を優先したいらしいや。
俺は母ちゃんの為に奮闘する勢いだが、母ちゃんが俺にやっていたように、親が子を想う気持ちってやつだな。
「……泣かせるじゃねえか。いいぜ、獣魔契約とやらに応じてやろうじゃねえか!」
<おお! よし、なら息子よそっちの女と契約をするのだ>
<うぉふ!>
「どうやるんです?」
サリアが飛びついてきたコヒーモスを抱きしめながら尋ねると、親子がなにか呪文のようなものを口にした後、俺とサリアの前に指輪が出現した。
<それをつけて魔力を込めろ。それで完了だ>
「こう、か?」
「あ、なんか指輪が熱く――」
その瞬間、親子の額に小さく紋様が浮き上がる。これで完了とのことだ。
<よろしく頼むぞヒサトラ、サリア!>
<わんわん!!>
「仕方ねえなあ……」
「よろしくお願いしますねベヒーモスさん! 名前は無いんですか?」
<そうだな……野生の魔物はそんなものだ>
なら考えましょうかとサリアが笑顔で手を合わせ、まずは戻ることが先決だと俺はトラックを回す。
コンテナの上に載って楽をしたいというベヒーモスは見た目にそぐわず意外と軽かった。
騎士達が窮屈そうだったが、まあ最強種の一角らしいので逆に安全だったりしてな。
……にしても、変なのが増えたな。
<わんわん♪>
「今日から一緒ですよー」
ま、コヒーモスは可愛いしサリアも嬉しそうだ。結果オーライってことにしとくかね。
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