異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪

文字の大きさ
51 / 85
第三章:最強種と

その50 契約効果

しおりを挟む
 「さて、ゆっくり休んだし今日からまたバリバリ働くぞ!」
 「はーい」
 <わんわん!>
 <うむ、情報収集もな>

 バスレイが出現した次の日はソリッド様が来てまた大変だった。
 飯を食って帰るだけなのだが、国王だということを自覚して欲しいものである。
 
 それでも気を使ってくれたのか、朝ごはんを食べて帰っていった。
 明後日は魚屋が仕入れをしたいと移送を頼まれているので、その時にめぼしいものを買って来てくれと頼まれたあたりちゃかりしているよ。

 そんなこんなで今日は南東方面の移動となる。果実や木材の販路で山が多い地域らしい。
 途中までは普通の道で、ふもとの町までは問題なし。

 「いやあ、こんなに早く届くとは思わなかったよ。これから狩りの時期だからこいつが無いとね」
 「またいつでもどうぞ!」

 弓矢で狩りをする冒険者が手紙で王都の鍛冶屋に注文していた矢と矢じりをウチに配送を依頼してきた。
 今、受け渡しが終わったがこれから数か月、増えた魔物の討伐に追われるそうだ。
 素材や肉が手に入る反面、危険も伴いため準備は怠らないのだと笑っていたが物騒である。
 まあ俺がそういう仕事をしていないだけで狩りはメジャーな仕事というのは理解できるけどな。

 それはともかく――

 「さて、サリアとコヒーモスはこっちの方だっけか」

 早めに配達が終わったので手伝おうかとサリアに任せた付近を歩いていく。山の麓イコール魔物も多いことから高い壁があり、戦える人間も多い町ということで武装した衛兵やらがよく目につくし冒険者らしき人間も闊歩している。
 危険だが資源を手に入れるには多少は目を瞑るといったところだろうか。実際、桃やブドウ……だよな? といったフルーツがたくさん店頭に並んでいるのは王都でも見たことが無い。

 適当にコヒーモスとサリアに土産として買い探していると見慣れたツナギを着たサリアの後姿を確認できた。
 ……のだが、少し様子がおかしい?

 「あの、お仕事中なのでそういうのはちょっと」
 「だから仕事が終わってからでいいって言ってんだろう? 首を縦に振るまでここは通さねえけどな!」
 「……」

 チッ、ナンパか。
 いつかは起こりうるだろうとは思っていたが、目の当たりにすると面倒くせえもんだ。念のため担いでいるバットを袋から取り出して近づいていくと、コヒーモスがサリアの前に出て足元で吠えまくっていた。

 <ウウウウウ……がう! わんわん!>
 「なんだぁ?! 犬か……? うるせえな、黙ってろよ」
 <きゅん!?>

 まずい、男がコヒーモスに手を伸ばすのが見えて俺は速度を上げる。どうするつもりかわからんが、ロクでもないことは確かだ!
 しかし距離がまだある……間に合うか!? そう思ったところで、サリアが動いた。

 「待ちなさい」
 「お、なんだ、やっとその気にな――」
 「コヒーモスちゃんになにをするつもりですか!!」
 「――なあああにぃぃぃぃ!?」
 
 おお……!?
 どういう状況か説明しよう!
 コヒーモスを捕まえようとした腕をサリアが掴み、怒りに任せてぶん回した結果、男は派手に吹き飛んで壁に叩きつけられたのだ……! あれ、そんな怪力設定あったっけ!?

 「大丈夫か!」
 「あ、ヒサトラさん!」
 <きゅんきゅん♪>
 
 特にケガなどはない、か。それにしても今のは一体?
 合流したところで、吹っ飛ばされた男が再び突っ込んでくるのが見えた。

 「くそが……!! こうなったら力づくでも!!」
 「サリア、下がってろ。俺がやる」

 そう言って前に出ようとするが、サリアはウインクをして逆に突っ込んでいく。な、なにやってんだ!?

 「止めてくださいって……言ってますよね!!」
 「な!?」
 <わぉーん♪>
 「ぐあぁぁぁぁぁ!?」

 掴もうとした男の腕をすり抜け、突き倒すようにサリアが腕を前に出すと、男は再びぶっ飛ばされ、二回、三回とバウンドをした後うつ伏せになって動かなくなった。

 「そんなに強かったのかサリア……?」
 「えっと……よく分からないんですけど、さっきカッとなった瞬間力が湧いてきて……」
 「そうなのか? まあ、無事ならいいけど……おい、あんた生きてるか?」

 襲い掛かって来たヤツを手当てするかと木の枝でつついてみると、

 「ぶわ!? こ、この俺が小娘に……」
 「おう、元気そうだな? ウチに連れに手を出そうとはいい度胸だが、派手にやられたしこのまま立ち去ってくれるなら穏便に済ませてやるぜ?」
 「なんだ兄ちゃん、俺とやるってのか? さっきは油断したが――」
 「つべこべ言わず立ち去れや? な?」

 俺は今出来る全力の笑顔で、持っていたバットを男の肩にこつんと乗せる。すると、肩アーマー部分がぐにゃりとへこみ、男は鼻水を出して青ざめた後、

 「な、なんだこいつら、オーガの親戚かなにかかよ!?」

 急いで立ち上がり、目にもとまらぬ速さで消えて行った。ふん、ボルボの時以来、久しぶりにキレちまったぜ。

 <わん!>
 「おう、ありがとうな、サリアを守ってくれてよ。トラックに帰ったらこいつを食わせてやる」
 <きゅふ~ん♪>

 なんとも言えない声を上げて俺の足をよじ登り、肩に乗るコヒーモスに苦笑しつつ、サリアに声をかける。

 「残りは?」
 「あと一軒ですね!」
 「よし、一緒に行くか」
 「はい!」

 荷物は俺が持ち、ラスト一個を持って行った後、その辺の露天で昼飯を買ってトラックへ戻るとコンテナの上に載っている父ベヒーモスが子供に囲まれていた。

 「かっけぇ!!」
 <そうだろう? 我ほど強くてカッコいい存在は……痛っ!? こら、尻尾を引っ張るんじゃない!>
 「わ!? すげえ!」
 「戻ったぞ。ほら、こいつは危ない魔物なんだあっち行って遊べよ」
 「はーい」
 「じゃあなライオン!」
 <ち、違う!!>

 子どもたちは父ベヒーモスをライオンと間違えているらしく、そんなことを言いながら散っていく。子供は怖いもの知らずで元気だな。

 <まったく……最強種の我をライオンなどと……>
 「まあ、帽子で角が隠れているから同じに見えるんだよ。ほら、昼飯」
 <おお、助かる。そういえば見ていたが、サリアが派手にやっていたな。あの男が吹き飛ばされるのは傑作だった


 尻尾でパンで肉を挟んだハンバーガーみたいな食い物をさっと俺から受け取りさっきの出来事を口にする。

 「お、見てたのか」
 <うむ。息子と契約したから我等の力を使えるようになったからな。ただの暴漢相手なら余裕で勝てる。魔法でもないから魔封じの魔道具のようなものでも抑えられないから人間の中ではかなり強者になったはずだ>
 「は?」

 俺とサリアが訝しんだ声を上げる。ベヒーモスの力が使える、だと?
 
 「そりゃマジか……?」
 <わん!>
 「そうみたいですね」
 <そうだな。まあ、困るものではなかろう。異世界のアイテムを守るにもちょうどいいだろ>
 「軽いな……」

 確かにサリアがどうにかならないならこれほど安心なことはないので、頼もしい限りではある。
 というか俺もそうなのか?
 なんとなく握りこぶしをつくりながらフルーツジュースを飲み干す。

 ……ま、いいか。次は山の向こう側にあるらしい町へ向かおう。
しおりを挟む
感想 167

あなたにおすすめの小説

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

処理中です...