異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪

文字の大きさ
52 / 85
第三章:最強種と

その51 突然の雨の出来事

しおりを挟む
 「静かな場所だな、こういうところでキャンプをしてみてえぜ」
 「お庭もそんな感じですけどね。でもベヒーモスさんが居るから安心してできるかも」
 <わぉん>

 麓の町から山を登っていると、眼下に見える地上が段々と遠くなっていく。その代わりに静かな森の中へと入っていき、キャンプに最適な場所として心を躍らせる。
 
 <ゴガァ!>

 ……まあ、魔物は居るので父ベヒーモスが居なければ安全にとはいかなさそうだけども。
 しかし、ベヒーモスの力が使えるのでサリアと二人でも撃退できそうだなと、シュールな目をしたキツネっぽい魔物をやり過ごしながらそんなことを考える。魔物と契約し、力を得るとはまたファンタジーな話だ。

 「今日は夜までかかりそうだな」
 「明日の仕事はそれほど多くないから寝る時間はありそうですけど。……あら、雨?」
 「おっと、そりゃ大変だ。おーい父ベヒーモス! コンテナに入るか!」
 <いや、このままで問題ない。たまには雨にあたるのも悪くない>
 
 いいのか。
 本人がいいと言っているのでとりあえずヘッドライトをつけ、ワイパーを動かすとコヒーモスがワイパーと一緒に頭を動かしはじめ、やがて目を回して寝台へと転がって行った。

  <きゅーん……!?>
 「ふふ、可愛い」
 「子供ながらって感じだな。とりあえず山道だしゆっくり進むか」

 切り開かれているだけで道と呼ぶには微妙な場所を登っていく。
 稀に急な坂もあるが、トラックの馬力なら余裕だ。ただ、横転しないとはいえハンドル操作は気を付けないと、崖に落ちたらどうなるかまでは保証できない。

 <む、ヒサトラ前方に人影があるぞ>
 「なんだって?」

 こんな山の中で、と一瞬考えたが登山とか冒険者なら有り得るかと思いなおす。
 少し進むと木の下に三人組の男女が項垂れているのが見え、エンジン音に気づいた男が顔を上げてこちらを見る。なにごとか分からないが、とりあえず近くまで行って声をかけてみた。

 「どうした? 立往生か?」
 「に、人間……? このでかいのは一体……。い、いや、それよりすまない、ポーションみたいなものを持っていないか?」
 「ケガ人がいるみてえだな。この雨じゃキツイだろ、コンテナを開けてやるから乗りな」
 「え?」
 「ベヒーモス、すこしずれてくれ」
 <承知した>
 「え? ベヒーモス……? え?」

 俺は運転席から降りるとコンテナの操作をして開いて、冒険者らしき三人を招き入れる。
 みるとケガをしているのは弓を持った女の子のようで、太ももから出血していた。結構深いなこりゃ……!

 「痛々しいな……。ポーションはないが俺達はこのまま近くの町まで行くつもりだ。そこなら手当できるだろ?」
 「あ、ああ。いいのか?」
 「かまわねえよ。ほら、そっちの兄ちゃん、女の子をこっちのソファに寝かせろ」
 「助かる……!」
 「サリア、悪いが助手席の救急箱を頼む」
 「はい!」

 サリアには一通り説明しているのでこのあたりの連携はばっちりだ。
 とりあえず化膿が怖いのでダッシュボードから出した救急箱を取り出して消毒液を振りかける。
 
 「うう……」
 「なにを……?」
 「我慢しろ。こいつは消毒液だ、化膿を抑える効果があるんだ。あとはこいつを使ってくれ」

 毛布を男に渡すと、コンテナの灯りをつけてから再び運転席へ戻り先ほどより少し速度を上げて山道を進む。
 
 「なにがあったんでしょうか?」
 「魔物と戦って負傷したってのが一番わかりやすいが、無理に聞くこともねえだろ。さっさと病院に連れて行けばいいさ」

 サリアがそうですねと微笑み、たまにコンテナの様子を伺ってくれていた。
 あのケガなら俺達を騙しているとは思いにくい。
 
 魔物は父ベヒーモスのおかげでまったく遭遇しないため上がって来た山道を今度は緩やかに下っていく。
 彼らを拾ってから30分ほどしたところで町へ到着した。

 「おお、陛下からおふれのあった『とらっく』というやつか?」
 「そうです。というか後ろにケガ人が乗っているんで、先に降ろしていいですか?」
 「なんと!? ここではなんだし町へ入るといい!」

 話の分かる門番さんがすぐに招き入れてくれたのですぐに屋根のあるところに止めてから冒険者三人を降ろしてやると、医療院とかいう病院に近い施設へ運ばれた。
 サリアの話だと魔法で治療するから傷は残らないそうなので一安心である。

 男二人がお礼をと言ってきたが、早く連れて行ってやれってことで退散させた。連れて来ただけだし、礼なんていらねえよな?

 「さてと、雨だしさっさと荷物を配っちまおうぜ」
 「ですね。せっかく山に来たのに景色を見れなかったのは残念かな?」
 「ま、機会はあるだろ。ベヒーモスもたまには散歩したいだろうし。背中に乗せてくれよ? あれ?」

 ずっと黙っているのでどうしたのかと思ってコンテナの方を見ると――

 <おお……我の帽子がぐしゃぐしゃに……>

 ――雨でふやけた帽子を両手で持ったまま項垂れていた。

 「そりゃあずっと雨に打たれていればなあ……」
 「お洗濯をして乾かせば元通りですよ!」
 <うむ……>
 <きゅんきゅん>

 そんなに気に入っていたのか。
 コヒーモスに慰めの言葉をもらう父ベヒーモスに雨合羽でも作ってやるかとちょっと思うのだった。 
しおりを挟む
感想 167

あなたにおすすめの小説

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

処理中です...