異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪

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第三章:最強種と

その53 情けは人の為ならず?

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 王都での仕事は順調そのもので、他の町にも認知度が高まり日によって向かう方角のローテーションが上手くかみ合って配達遅れや冒険者の拾い上げに遅れたりすることもない。
 素直に従う理由として、やはりコンテナの上に鎮座する父ベヒーモスの存在だろう。
 口コミが広がるにつれて『やべーのがお供にいる』というのも伝わっていくので、サリアやコヒーモス……もとい、アロンにちょっかいを出す人間はもはやいない。

 ちなみにアロンはコヒーモスで、ダイトという名前を父ベヒーモスにつけた。
 由来はアロンダイトというゲームなんかでお馴染みの剣からで、でかくて強力な剣ってイメージからベヒーモスに合うと思ったからだ。

 「ポチなんて弱そうな名前はダメ!」

 と、珍しくサリアに怒られたので悩み抜いた末である。
 
 「お、いいっすねそれ」
 <そうだろう、そうだろう。サリアが作ってくれたのだ>
 <わんわん♪>

 そんな親子の首には名前を書いたプラカードが下がっており、ダイトはドヤ顔で騎士に見せつけていた。
 迷子札みたいでカッコ悪いと思うのだが、こっちにはそういう概念は無いようなので黙っておくのが優しさだと思う。

 というわけで仕事は順風満帆だし、サリアや親子との仲も悪くない。
 たまに来るソリッド様やバスレイなどに驚かされることもあるが、異世界の生活も慣れてきたと思う。

 ……となると、そろそろ本格的に動かないといけないことがある。そう。、母ちゃんを治す薬のこと。

 この国には無いのか情報は乏しい。
 他国に足を運ぶ必要があるかもしれないとはソリッド様やファルケンさんのセリフだ。
 休みの日は慣れるまで家でゆっくりしていたが、そろそろ本格的に動き出しておかないと三年なんてあっという間だ。

 「……ルアンのやつが情報をくれればいいんだがな」
 「そういえば最近出てきませんねえ」
 「忙しいのかもしれねえけどな」

 そんなわけでとある休日。
 トラックの洗車をしながらサリアと治療薬の話をしていた。サリアは洗濯をしていて、でかい帽子や俺の下着なんかが庭に並ぶ。

 最後にルアン話したのはいつだったかと思いながら、汚れを落としていく。ホースとシャワーヘッド、それに高圧洗浄機が荷物の中にあったのでかなり楽をしている。

 「外観は良し、と。コンテナの中も流しておくか」
 
 アグリアスの結婚式の時に盛大にぶちまけられたことを思い出す。
 ソファを外し、足元の泥をデッキブラシで流す。冒険者が乗り降りするので、靴や装備の泥なんかが落ちていたりするのだ。
 積み荷スペースも軽く掃除をして後は乾かすだけ。

 <きゅん!>
 <ふぐ……!? やるようになったな息子よ>
 
 トランポリンから父に突撃するアロンを横目に、テーブルセットに腰かけて椅子を傾けながら空を仰ぐ。
 
 明日も休みなのでどっか国境付近の町にあるギルドに顔を出そうかと思った矢先――

 「こんにちは、運送屋さんはこちらだと聞いてきましたが合っていますでしょうか?」
 「ええ、そうですけど今日はお休みでして……荷物のご依頼だけなら受け付けますよ」
 
 ――ポニーテールの女の子が店を訪ねてきた。

 サリアがやんわりと御用を伺ったところ、両手をポンと合わせて満面の笑みで話を続ける。
 後ろの男二人もどこかで見たことがあるな?

 「それは良かったです! 南の山で助けてもらった者で、お礼をするためはせ参じました」
 「ああ、あの時の! 元気になったようでなによりですよ」
 「少し時間がかかったが、会えてよかったよ」
 「はは、律儀だなあ。サリア、三人にお茶をお願いしていいか?」

 もちろんと言ってサリアが家の中へ消えると、それぞれ自己紹介を始める。
 
 「私はアリーと申します。あの時、処置が遅いか治療院へ行くのが遅れていたら足が無くなっていたかもと言われていて、本当に危ないところだったんです」
 「俺はビリー、このパーティのリーダーをやっている。あの時は本当に神がかっていた、本当にありがとう。あ、これ、つまらないものですが」
 「おお、こりゃどうも……」

 リーダーのビリーになにやらお菓子の詰め合わせを渡されてお互い頭を下げながらやり取りをすると、もう一人の男も頭を下げた。

 「オレはジミー。ビリーの双子の弟だ、ヒサトラさん……だったか? あなたのことは町に戻る途中に色々と聞いて来た。このでかい乗り物とベヒーモスを従えて荷物を運んでいるらしいな」
 「ああ、その通りだ。冒険者を町から町へ運ぶこともやってるぜ。明日は休みでドライブに行こうと思っているんだが、乗っていくかい?」
 「ふふ、結局トラックに乗るんだから」

 サリアがコーヒーを三人に出しながらおかしいと笑う。
 まあ運転自体が好きだし、あまりスピードも気にしないで走れるから気持ちいいというのもある。
 すると、アリーが頷きながら口を開く。

 「いいですね、是非乗せていただきたいと思います。……私達のお礼はここからが本番でして、とある場所へ連れて行って欲しいのです」
 「とある場所?」
 「はい。これはヒサトラ様は難病を癒す薬を探していると聞きました。ギルドなどで情報を集めている、と」
 「確かにそうだ。まさか心当たりが……!?」

 俺が立ちあがりながら声を上げると、三人はゆっくり頷く。
 
 「ほ、本当に? ヒサトラさん、これは……」
 「ああ、詳しく聞かせてくれ」

 俺達は真剣な顔で三人に尋ねる。

 <きゅーん!>
 <ぐふお!? ま、まだまだ……!>

 その横で親子が緊張した空気を打ち消していた……。
 ああ、アロンは可愛いな……。
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